番犬二十一

作者:久澄零太

「ブラックジャックって、最高だよね……」
 鳥さんのその一言が全てを物語っていたが、そこで終わってしまうと話が続かないから最後まで聞いてくれると嬉しい。
「シンプル故にイカサマは不可能、だからこそ誰もが平等にして平和に競い合うことができる。ンゥ! 素晴らしい!!」
 頭がハイになってる鳥オバケは翼とトランプを広げて。
「いくぞ同志たち! このゲームの素晴らしさを世に広めるのだ!」
『イェスギャンブル! ゴーブラックジャック!!』

「みんな大変だよ!」
 大神・ユキ(鉄拳制裁のヘリオライダー・en0168)はコロコロと地図を広げて、とある閉鎖されたホテルを示して。
「ここにブラックジャックこそ最高ってビルシャナが現れて、信者を増やそうとするの!」
 じゃあそれを否定してぶちのめせばいいのかってーと、それやると乱暴者め! って説得できないんですって。
「そこで、みんなにはブラックジャックで勝負を挑んで欲しいの。ビルシャナは平等とか不正できないとか言ってるから、とにかく勝ったり、逆に物凄く負けたりして不平等なゲームなんだって思わせれば信者が眼を覚ましてくれるよ!」
 で、なんでそんな依頼なのに四夜・凶(泡沫の華・en0169)がスタンバイしてるかと言えば。
「私の経験的に、こういう依頼はなんでか仲間割れするから、フォローに凶を呼んでおいたよ」
 なんでそんな事になるんだろうね? フシギダナー。
「ちなみに、戦闘になったら敵は赤いカードで火を放ってきたり、黒いカードで味方を攻撃させたり、ジョーカーで自分の傷を無かったことにしたりするよ!」
 まぁ、そんな技を使ってくるのは、戦闘にもつれ込んだらの話。恐らく鳥オバケはそこまで至らず残念な最期を迎える事だろう。
「一見安全なビルシャナだけど、その分一般の人に馴染みやすい危険なビルシャナだからね。なんとしてもやっつけちゃお!」
 拳を突き上げるユキだが、果たして何人の番犬がまともに戦闘をするのだろうか……。


参加者
日柳・蒼眞(うにうにマスター・e00793)
モモ・ライジング(神薙桃龍・e01721)
シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)
ノアル・アコナイト(黒蝕のまほうつかい・e44471)
鹿目・きらり(医師見習い・e45161)
夢見星・璃音(災天の竜を憎むもの・e45228)
シャムロック・ラン(セントールのガジェッティア・e85456)

■リプレイ


「まずはここから始めぶぎゃぶろす!?」
 開幕前からやらかす日柳・蒼眞(うにうにマスター・e00793)。正拳突きの残身をとるユキは吹雪のような視線で。
「相変わらず懲りないんだから……この変態!」
「意外とイカサマする方法ってあるんですねぇ」
 すぐ後ろで番犬が吹き飛んでいるが、ルクティリア・スナイプシス(氷華・e84715)は『分からない!ブラックジャックのズルの仕方!!』なる本をぺらり。
「人の手が入る以上は当然とも言うべきでしょうが」
 のしっ、頭にのしかかる重量に、ユキがふるふる。
「えっと……何かな?」
「いや、頭の中に何かこれをやらなきゃいけないって来まして」
 腕の中にユキを納めて、頭に体を乗せるように抱きしめたら浮いた両脚をパタつかせるルクティリア。持たざる者のユキに、持つ者の彼女は、少々『重かった』。そしてこの隙を見逃す蒼眞ではない。床を転がって跳ね起きながら、低位置から絶壁に向かってぴょーん。
「貧乳もまた良し!」
 ユキのまな板(意味深)に頬を押し付けて、なだらかな丘の上を往来……してたら、ガッと頭を掴まれて。
「こんの……」
「おー」
 引っぺがし、頭を床に叩き付けた際に一緒に振り回されるルクティリア。彼女の目の前で蒼眞は摩擦熱で白煙を上げながら開いたドアへ引きずられていき。
「ド変態ぃいいい!!」
「アッヅァアアアア!?」
 目的地に向けてシューッ!
「ブラックジャックって、最こ……」
 バリンッ!チュドーンッ!!
『教祖様に隕石が当たったー!?』
 せっかく鳥さんがトランプを用意していたのに、燃え盛る蒼眞がぶち当たって台無しに。
「あら、ディーラーがこの程度で倒れるなんて情けない……ここから先は私が引き継ぐわね」
 スタンバってたモモ・ライジング(神薙桃龍・e01721)がトランプをシャッフル……なんで準備してたって分かるか?紫のバニースーツに黒のジャケット重ねて、バニーカチューシャつけて備えてない方が驚くと思う。
「ギャンブルかぁ。私あんまりやったこと無いんですよね。イカサマの仕方もわからないし、普通にやるしかないか……」
 ギャンブルとは無縁なスーツ姿のシフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)が席に着き。
「せっかく成人したし、ギャンブルの一つでもやれないとね。ブラックジャックはよく遊んだなあ」
 夢見星・璃音(災天の竜を憎むもの・e45228)は懐かしむような顔で着席。経験者と初心者が混ざっちゃったかー……。
「とりあえずは勝負しましょうかー」
「なるほど、思っていたよりも簡単にできるんすね。これなら自分でもめっちゃ勝てそっす!」
 ルクティリアとシャムロック・ラン(セントールのガジェッティア・e85456)に至っては、ルールブックを読みながら……だと?
「い、一応半分色違いのウィッグは持ってきましたが……」
 ノアル・アコナイト(黒蝕のまほうつかい・e44471)は怒られそうな物を持ちこむんじゃない!!
「えっ、違うんですか?」


「勝つならぴったり二十一で勝ちたいんで、ギリギリまでヒット」
 リスクと言うものを考慮しないシャムロックは、手札が二十一に満たないと見るや否や一枚ドロー。数字を合計して、ニカッ。
「お、これで二十一っす!やっぱ男は攻めなきゃ駄目っすよね!」
「ふむ、取りあえず引かない事には始まりませんよね……」
 シャムロックの成功を見ていたシフカが「私にも」と一枚もらうのだが。
「くっ、一瞬でバースト……しかし、その為に賭け金は少なくしてあるわけですし……」
 ギャンブルに必要なのはリスクマネジメント。どう勝ったら稼げるかを考えるのは勝てる人間がすることであって、初心者が気にする事ではない。にもかかわらず、そこで変に勝ちを狙いに行くと……。
「………あり?今度はバーストしちゃいました?」
 こうなる。しかも調子に乗って勝ちに行ったりするから、先の稼ぎが吹っ飛んだもよう。
「つ、次はまた自分が勝つっすよ!」
 負けを取り返そうと倍額を賭けるシャムロックだが、左右からツッコミが。
「本当にそんなに賭けて大丈夫ですかー?」
「私が言うのも何ですが、さすがに危ないのでは?」
 疑問符を浮かべるルクティリアと心配するシフカだが、当のシャムロックは頑なに。
「ここぞで勝てなきゃ男じゃねぇっす!いざ尋常に……勝負!!」
 初期の二枚の合計は十五。
(確率で五分五分ってとこっすか……やるっきゃねぇっす!)
 使う数字は一から十だが、トランプには絵柄って物があってだな?
「来いっ!」
 引いたカードはシャムロックをあざ笑うかのようなクイーン。
「バーストっす……!?」
 愕然とするシャムロックに、モモがにっこり。
「で、どうするの?シャムロック『ちゃん』?」
「ここで終われるわけねぇっすよ!大勝ちして帰りは美味い焼肉でも食いに行く為に、まずはこのセントールランス質屋に入れてきますんで!」
 お財布の中身が帰りの電車賃(数百円)しかないシャムロックは戦線離脱していった……。
「あなたの犠牲は無駄にはしません……」
 その背を見送ったシフカが、あることに気づいてしまう。
「一度使われたカードは出にくくなる……つまり、絵柄の確率は下がっているのです……!」
 間違ってはいない。間違ってはいないのだが。
「今度こそ私の初勝利……というか勝たないと私も手持ちが……!」
 複数回やって一度も勝てず、追い詰められたシフカが勝負に出たものの。
「絵柄ではありませんけども!ありませんけども!!」
 十のカードを引いてバーン☆素晴らしく運がないな君は。
「あらら……」
 苦笑する璃音はカードをチェックすると小さく唸り。
「ちょっとリスキー……いや、ここはダブルダウンで!!」
 賭け金を倍にして三枚目を引いた璃音は、キング。手元には十と、裏返しのエース。
「来たッ!ブラックジャック!!」
 勝利に拳を握る璃音……しかぁし!
「あ、私二枚でブラックジャックだから」
「えぇええええええ!?」
 まさかのモモが、初期手札で二十一。
「ざーんねーんでーしたー♪」
 璃音が崩れ落ち、ノアルと鹿目・きらり(医師見習い・e45161)が参戦。
「色々な事ができるんですね~私もやってみます!」
「これを機会に、趣味を増やしてみても良いかも知れませんね……勝ちに行かせて頂きます」
「……フラグにしか聞こえないな」
 あ、蒼眞も復活した。さーて、メンバー新たにゲーム再開です。
(さぁ、サターン。任せますね)
 と、ここで早速きらりは翼猫をモモの後ろにさりげなーく配置。クローズのカードを伏せる瞬間に覗き見る事ができれば勝率は跳ね上がる。
(手札さえ分かってしまえばこちらのものです!)
 むふー、勝利を確信するきらりだが……波乱の幕開けはここからだった。


(最初の手札は……十六ですか)
 サターンに瞬きの回数で数字を教えてもらい、オープンカードと合計。ディーラーは十七以上という縛りがある為、モモは少なくとも一回はカードを引く事になる。
(六以上でバーストしますが……)
 で、一枚引いたきらりの手持ちが二十。
「私はここでストップしますね」
「こういうのは勝ちを狙いに行くから負けるんだよな……」
 一方、定石通りに挑む蒼眞の手札は十八。正直際どいところだが。
「バーストしたらそれまで……俺もストップ」
 バーストのリスクはディーラー側にもある。であるなら、勝ち急ぐよりディーラーの自滅に賭けた方が分がいい事もあるのだ。と、まだ余裕のある番犬に対して。
「こ、ここで勝てなければ今日の晩御飯が……!」
「落ち着こう、こういうのは技術と計算で全てが成り立ってるんだから大丈夫、大丈夫……」
 負け込んでいたシフカと璃音はヤバかった。具体的には半分涙目で十八に追加ドローしたり、薄い微笑みを浮かべながらも全身をガタガタ震わせながら二十でストップかけたり。
「バースト……」
 四を引いて撃沈するシフカの傍ら、ノアルが十九でストップをかけると。
「じゃあ私も一枚追加で……あ、ブラックジャック」
 モモが実に爽やかな笑顔で六を引き、伏せたカードをオープン。
「……え、これ以上何をベットすればいいの?今日の私普段着のゴスロリドレスだから脱がし厳禁だよ?」
 青ざめて、自らの体を抱きながら後退る璃音に対して、シフカは。
「それです!」
 服を全て脱ぎ捨てた!!
「お金がないなら服を賭ければいい……何の問題もありませんね!!」
 おめめぐるぐる。駄目だこいつ、早く何とかしないと……。
「ま、負けたら身包みを剥がれてしまうんですか……!?」
 博打と混ざってるノアル、その視線がチラと一度も勝っていない凶の下へ。
「はわわわ……!」
 ギューンと赤くなるノアルだが、彼がシャツを脱ぎ捨てる所を想像したところで、『ある事』を思い出し、サーッと青ざめていく……。
「わ、わたしが代わりに脱ぎます!」
「なんと!じゃあ後二回は挑めますね!」
「……あれ?」
 ノアルがシフカの身代わりに設定された!
「あれー!?」
 脱がされてる奴がいる場面で、主語を抜いてそんな事言ったら、そうなるわな。
「ただいま戻り……何があったっすか!?」
 ここでシャムロックが帰還。目に飛び込んできたほっそりした背中に驚きつつも。
「服を奪われても終われない……ギャンブルってのは恐ろしいモノなんすね……!」
 逆にこれもまた仕事なのだと、腹を括ったようだ。番犬達の思いが交錯する中、次のゲームは……。
(サターン……次の手札は……むむ、二十ですか)
 窓際でお昼寝のフリをする翼猫から札をリークしてもらい、きらりは唸る。
(という事は、二十一以外に勝ち目はありませんね……)
 きらりの手札は十一。十を引かなければ勝ち目はない。
(ですが、十のカードは数字と絵柄で他のカードより多く入っていますし……)
「引きます!」
 バーストはありえないのだ。ならばと貰ったカードは……三。
「むぅ……」
 引かなければ負け確定、ならばリスクを背負ってでも。
「わんもあ!」
 プレッシャーで変な声が出たきらり、引いたのは、ジャック。
「はうっ!?」
(こっちが先に来てくださればよかったのにぃ……)
 しゅん、と肩を落とすきらりの傍ら、シフカはテーブルをバン!
「引きます!」
 脱いでテンション上がってないかこの人?ピンチでハイになってるんだろうか……ただ、こういう時は冷静な判断を欠いているもので。
「うなぁあああ!!」
 六のカードを手に崩れ落ちた。
「三以下なら行けたのに……」
「なんでそんな分の悪い賭けに出ちゃったんですかー!?」
 めそめそ、テーブルに涙の池を作り始めたシフカだが、ノアルの肩をポム。
「私に次はないので、お支払いをお願いしますね」
「うぅ……本当に私が払うんですね……」
 とはいえ、ここでノアルが勝っていればいいだけの話。話なのだが。
「ストップします!」
 彼女の手札、十九なんですよねー。
「漢シャムロック、ここで退けるわけがない!いざ、参る!!」
 シャムロックはシャムロックで、十八なのに引くというシフカと同じパターン。モモの手札を知らないとはいえ、ここで突っ込んだら……。
「ぬぁあああ!一多い!?」
 四を引いて撃沈。
(そろそろ仕掛けるか……)
 阿鼻叫喚の中、蒼眞の目がキラリ。引いたカードはクイーン。彼の手札はジャックとキングなのだが……。
「ブラックジャック」
「……へぇ?」
 裏返してあったジャックをひっくり返すと、エースになっている。その様子に、モモは目を細めて、じー。獲物を見つけた豹のような顔をするが、視線に対して蒼眞はウィンクを返して見せる。モモのオープンされた手札を前に番犬達が崩れ落ちる中、蒼眞とモモの間に静かなスパークがバチバチ。
「つ、次です、次こそは……」
 自分に運がないと察しているシフカだが、虚ろ目の彼女はノアルの服をひん剥こうとして。
「ま、待ってください!最初は角です!角からですー!!」
「取れるんですか!?」
 鹿角を生やしたきらりがあわあわ、口元を隠す目の前で、POKI☆
「実はとれちゃうんですよ~」
 シフカと自分の賭け金の分、両角を失ったノアルが「どうですか~?」と凶の方を見るのだが。
「そういえば誕生日にケーキで何かあったんだって?もー、忘れてたよー。せっかく私の腕を見せるチャンスだったのにー」
「ハハハご冗談を」
「しれっと酷い事言ってない!?」
 璃音と信者とババ抜きしてた。
「なんで参加すらしてないんですかー!?」
「用意してたチップが尽きたので……」
「私も服を脱ぐのはちょっと……」
 参加しないんじゃなくて、できないんだから仕方ないよね。
「もー!こうなったら、私の本気を見せちゃいます……!」


(本気……ね?)
 クスリ、モモが笑う。
(純情可憐な女の子に、イカサマが見抜けるとは思えないな……)
 ニヤリ、蒼眞が口角を上げる。
「さぁ、行きますよ!!」
 ダーティーな番犬二名を前に、果たしてノアルは勝てるのか!?次回!『イカサマバニーVSスケベケルベロスVSゴーストドラゴン!?』をお楽しみに!!
「いや、ここで決着つけるわよ?」
 酷い事になるから流そうと思ったのに、モモに冷たい視線を向けられてしまった……。
「なに、普通にやって普通に勝てば……」
「蒼眞さん、袖口にカードを隠してますね?」
「……えっ」
 ノアルの言葉に蒼眞が固まり、シャムロックがグッと彼の腕を掴むと、何枚かのトランプがポロリ。
「隠し持ってた手札……卑怯者め!それでも番犬男子っすか!?」
「いや、これそういう依頼だし……」
 正直、蒼眞の言ってる事の方が正しいんだけど、一旦置いておこう。
「なるほど……不正するとノアルさんに暴かれるのですね。ならば今度こそ私でも勝てるはずです……!」
 などと、カードとは関係ない所でイカサマしているきらりがドロー、バースト。
「そんな……」
 見事過ぎるフラグ回収を披露してくれた。シフカ?不貞腐れて膝抱えてるだろ?察してやれよ。
「このブラックジャックは公平ではありません、相手側が有利に出来ています!」
「負けた人はみんなそう言うのよ……」
 身を乗り出して指を突きつけるきらりだが、モモはどこ吹く風。それどころか、いやいや、とルクティリアがきらりの方を止めに入り。
「他は四枚ずつだけど十のカードは十六枚もあるのに十七以上になるまで引かなきゃいけないってルールもあるから、ディーラー側はバーストがしやすいよね?むしろディーラー側が不利じゃないですか?まぁ、それはそれとして……」
 ニコリと、純粋に気になったような顔つきで。
「最初にカードを配る時に、狙ったカードを配る技法があるんでしたっけ?」
「さぁ、どうかしらね?」
 意味深な笑顔が飛び交う心理戦の中、ノアルはマイペースに手札とにらめっこ。
「えーと私の手札が十九……次に引くのが五で、モモさんの手札が十六だから、私の負けですね~」
「え、何で分かるの?」
 手札だけ見てテーブルに伸びてしまったノアルに、璃音が絶句。モモが一枚引いて、公開すると言った通りの二十一……。
「ふふふ、全てはカード(に憑いてる怨霊)が教えてくれます……モモさんがカードを隠し持ってるのも、分かってますよ?」
「えっ」
「失礼」
 突然の指摘に後退ったモモを、抱き留める形でシフカが確保。モモが暴れる度に全裸のシフカが違う意味で危ない事になりつつ、バニースーツからは使用している物と全く同じトランプが……。
「イカサマじゃないっすか!?」
 シャムロックの怒号に、モモは奥歯を噛むが……。
「いえ、モモさんはズルしてませんよ?カードがそう言ってますし……よく見てください」
 ノアルはモモの隠していた方のトランプを示して。
「使ってないから指紋も何も残っていないはずですよ~」
「じゃあなんで持ってたんですか?」
 きらりの当然の質問に、モモが照れ臭そうに顔を背けて。
「説得に失敗したら、分かりやすいイカサマ仕掛けた方がいいでしょ?」
 スリルを求めるモモだが、信者の……一般人の命を犠牲にするリスクを背負うつもりはなかったという事だろう。
「これで、イカサマができると分かりましたね!」
 ノアルがドヤ顔で信者を見るが。
「あ、皆さんサンドイッチ食べに帰りましたよ」
「なんでですかー!?」
 もはや超常現象だからじゃないかな……。
「じゃあここから先はこれを賭けて勝負しましょう?」
「え、返してもらえるものじゃないの!?」
 不敵に笑い、巻き上げたチップを置くモモに璃音が叫ぶが。
「ギャンブルで奪われたものは、ギャンブルで取り返すのが筋って物でしょう?」
 ここからが本番と言わんばかりに、小さなチョコを口に含むモモと言う名のラスボス……。
「私達の戦いは、ここからなんですね……」
「勝って皆で焼肉食べにいくっすよ!!」
 サターンを頭に乗せたきらりの傍ら、シャムロックが得物を……構えようとして質に入れてきたことを思い出し、シフカが局部を両手で隠して立ち。
「あの、その前に鳥さんは……」
「はっ!一体何が……」
 半ば忘れられていた鳥さん、至近距離で見つめてくるルクティリア。
「ふー……」
「え、ちょっと待っ」
 カチン。目覚めと同時に凍結された鳥さんを、ルクティリアがツン、ガシャン!
「さぁ、ギャンブルの時間よ……!」
 鳥さんが始末された今、番犬達の新たな戦いが始まる!

作者:久澄零太 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年6月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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