●たったひとつの冴えたやり方だと思っている。
燦々と陽光が降りそそぎやがる、浜辺。
さらさらした白い砂が足裏を焼くそこに、鳥の人はいた。
「なぜ、世界から争いは消えぬのだろうな……」
寄せては去ってゆく波の音を聴きながら、顔に似合わぬ壮大なことを言いだす鳥。
「争いは良くない。誰も幸せにはならないんだ……どうして皆そこに気づかない」
「まったくです……」
「人とは……浅はかですね」
「うむ。だが争いはなくならないだろう。それが人の性ゆえに……」
周りで片膝ついて賛同してくる信者たちに頷く鳥。
世界のあらゆる争いを憂いている。
それは確かにそうなのだろう。鳥さんも信者たちも表情に嘘はなさそうだ。
しかしひとつ気になることがあった。
彼らのすぐ横に大きなブルーシートがひろがり、そこに半端じゃねえ量のクリームパイが積み上げられて山を成しているのだ。バラエティ番組で見る真っ白のアレである。
そこからひとつパイを取り、鳥さんは信者たちへ振り返った。
「争いは消えぬ。それは真理だ。しかしそうであるならば、争いのすべてをパイ投げで解決することにすれば世界は平和になるんじゃなかろーか!!」
「ナイスアイディアっす!」
「けが人も出ないし超いいね!」
それまで神妙な顔してた信者たちが、急に元気に立ち上がる。
「誰も傷つかないパイ投げこそ人類がたどり着くべき到達点……これは世界中にひろめるべき日本の最高の文化なんだよ!!」
「フゥー! パイ投げ最高ォー!」
「じゃあしません!? 今からしちゃいません!?」
「オーケーわかった! 行くぞてめぇら! 今から戦争の始まりだぁぁーー!!」
信者のノリノリの一言を発端に、パイ投げバトルロイヤルを始める皆さん。
海辺を水着姿で駆け回り、しかし男同士の熱いパイ投げに興じる彼らの姿は、とてもじゃないが見るに忍びないものだった。
●実力でもって黙らせるほかあるまい
話を聞き終えたカテリーナ・ニクソン(忍んでない暴風忍者・e37272)が、首を振る。
「せっかくの海だというのに哀れなBOYたちでござるな……」
「そうっすね……」
悲しげに同意するのは黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)だ。
そのまま2人は「はぁ」とか「ふぅ」とかため息をつきはじめた。
なので、猟犬たちは暇潰しにとりあえず脳内で情報整理をした。
争いを平和的に解決できるパイ投げスゲェ、とかいう鳥が現れた。
鳥は信者とした男たちを海辺に集め、男だらけのパイ投げ祭りを開催している。
見てられねぇよ! 何とかしてやってくれぇ!!
――という感じだった。
少なくともダンテから言われたのは大体そんな感じだった。
「このままじゃ信者たちがパイ投げのプロプレイヤーになってしまうかもしれないっす……そうなったらお先真っ暗っすよ! 彼らが戻れなくなる前に何とか、何とか正気に戻してやってほしいっす!」
「世界中の争いに介入してたら命がいくつあっても足りないでござるな。しかも装備は無害なパイだけ……文字通り必死でござるな!」
熱く訴えてくるダンテの横で、HAHAHAと笑うカテリーナ。
ノリが違いすぎる。
しかし信者たちを放っておいたらまずいのは確かだろう。すぐ死ぬもん。
だが鳥さんの洗脳ぢからも強力である。俺たちのカシラはやらせねぇ的なノリで鳥さんを守ろうとする信者をどうすればいいんだってばよ、と猟犬たちはダンテを見た。
「ビルシャナの教えを皆さんが否定する……これはまさに争う状態っす。そうしたらビルシャナはおのずとパイ投げで解決しようとするはずっす!」
くわっ、と言いきるダンテ。
「もちろん信者たちも参戦して、皆さん対ビルシャナと信者って構図になるっすね。そうしたらこっちのもんっすよ……パイを投げつけて気絶させればいいんすよ!」
お仕事がめっちゃ簡単になった。
パイ投げでダウンさせとけば鳥さんに加勢することは不可能。
彼らをすべて砂浜に沈めたあとでゆっくり鳥さんを葬れば――。
「ちなみにビルシャナもパイ投げの勝敗に従うんで、パイ投げに勝ったらおとなしく死んでくれるっす」
戦う必要もなかった。
「ふむふむ。仕事がEASYなのはいいことでござるよ」
横で聞いてたカテリーナがうんうんと頷く。
「とりあえず海でパイ投げしてくればいいとか楽勝でござる。もう勝ちは見えてるわけでござるから……ここは盛大にパイ投げを楽しむでござるよ!」
YEAH、と胡散臭いサムズアップをする似非忍者。
かくして、猟犬たちは海辺のガチンコパイ投げバトルに出場することになるのだった。
参加者 | |
---|---|
叢雲・蓮(無常迅速・e00144) |
シルフィリアス・セレナーデ(紫の王・e00583) |
卜部・泰孝(ジャンクチップ・e27412) |
シデル・ユーイング(セクハラ撲滅・e31157) |
栗山・理弥(見た目は子供気分は大人・e35298) |
カテリーナ・ニクソン(忍んでない暴風忍者・e37272) |
アンヴァル・ニアークティック(バケツがガジェット・e46173) |
鈴城・咲(焔の拳・e56641) |
●暑くなりやがったな
眩しい太陽!
白い砂浜!
駆けてゆく水着少女!
「海っすー」
シルフィリアス・セレナーデ(紫の王・e00583)である。
現場に到着するなり、シルフィリアスは一直線に海へと消えていった。
馬鹿やっていてもきっと誰かが止めてくれる……とか思ってたけどそんなことはなかったんだぜ。
ツッコめる人が、割といなかったんでな!
「パイ食べ放題と聞いて」
卜部・泰孝(ジャンクチップ・e27412)もこの体たらくである。
ヘリポートで何を聞いていたの? 寝てたの?
「え? 違う?」
全然違いますよ。
「まあ良い、彼も良くやってくれてるしね。私も、加工するのは初めてなんだ」
ちらりと横を一瞥した泰孝が、肩を竦める。
彼がチラ見したものは――。
「そぉらパイだぞぉー!」
「ぐあーーっ!」
「やったな畜生めー!」
「ぐへーーっ!」
砂浜に散開してパイ投げに興じる鳥さんと信者の皆さんだった。
5秒ぐらい見つめていた叢雲・蓮(無常迅速・e00144)が、ふにゅんと肩を落とす。
「絵面的にはこう……華がないよね、残念だけれども。なんで何人かお姉ちゃんを誘わなかったのだよ?!」
「声をかけられなかったんですかね。恥ずかしくて」
「シャイな鳥さんだったのだよ!?」
くいっと眼鏡ポジを整えるシデル・ユーイング(セクハラ撲滅・e31157)にしがみつく蓮くん。このスキンシップセンスが鳥さんにもあれば……。
「後、パイ投げって日本文化なのだよ? パイって時点で……?」
「まあ文化と言える面もあるかもしれませんが……SHOWAならばいざ知らず、このREIWAの時代にパイ投げとは……コンプライアンス的に苦情殺到ですよ」
「笑止! コンプライアンスとか笑止!」
蓮とシデルの話を聞き逃さなかった鳥さんが、鼻で笑う。
「コンプライアンス重視で世界平和はどうでもいいの? だとしたら許さんよ? パイ投げする?」
「お? お?」
しかも信者ともどもめっちゃ喧嘩腰で来る。
「私たちとやる? いいよ。パイ投げは面白いから、私も大好き」
鳥たちと蓮たちの間に顔を出す鈴城・咲(焔の拳・e56641)。ニコッと好戦的に笑うオウガに鳥たちもまたニヤリと笑い返す。
が、彼らはすぐにパイを投じることはしなかった。
投げずにスッと栗山・理弥(見た目は子供気分は大人・e35298)のほうを見た。
「なんだその装備はぁぁ!!」
「え?」
不意の声にきょとんとする理弥。
彼は、紙皿を繋げて作った大盾を持っていた。
「神聖なるパイ投げに防具などとぉ!」
「防具がダメって決まりはないだろ。顔面にパイ食らって視界が塞がれると厄介だし、何より……俺は甘いもの嫌いなんだ!」
「個人的事情ッ!」
きっぱり言いきる理弥くんにきっぱりツッコむ鳥。
そこから2人の言葉の応酬は始まった。
砂の上を飛び交う騒がしさ――を聞きながら、カテリーナ・ニクソン(忍んでない暴風忍者・e37272)はしかと頷く。
「パイでパイを洗う仁義なき戦いのYOKANでござるな」
「パイでパイを洗うパイいっぱいパイパイ祭ですか。確かに信者の雄っぱい祭ですね」
ちょっと何言ってるかわからないけど、それっぽく返すアンヴァル・ニアークティック(バケツがガジェット・e46173)。
悠然と傍観きめこむ2人は……メイド服とうさスーツだった。
「なんでメイド服なんですか?」
「何となく着替えたでござるよ。お主こそ何ゆえうさうさでござるか?」
「いえ何か鞄開けたら入ってたので……前の仕事で使ったんですよね」
夏空の下、世間話しだす2人のコスプレ。
本格的なパイ投げWARが始まるまで、歓談は続きました。
●投げろ! あと食え!
夏の海。
その爽やかな風景に、白いクリームが飛び散る!
「はっ!」
「ぎゃああー!?」
「こ、こいつー!」
「そんなノロいパイ、当たらないぜ!」
信者たちとパイの応酬を繰りひろげるのは、シデルと理弥である。
「くっ、パイが当たらない!」
「諦めるな! 投げ続ければいつか!」
実力の差を感じつつも、パイ投げを止めない信者たち。その弾の多くは2人にかすりもしないが、何発かは体に到達した。
だが被弾ではない。
理弥の紙の盾に阻まれていた。
「なんて卑怯な……」
「防御は戦闘の基本だ! てか、紙皿でも本物の戦闘に比べたら紙装甲すぎるだろ……文字通り……」
「ええ、紙では心もとないですね」
スッ、と理弥の隣にやってくるシデル。
その顔は――クリームまみれだった。
ニチャ、と眼鏡を外すと恥ずかしいほどその部分だけ素肌がくっきり。
「……このメガネが無ければ危うい所でした」
「いやいやいや!?」
「がっつり被ってますけど!?」
サブ眼鏡に交換するシデルさんに浴びせられるバラエティ感のあるツッコミ。
そっからいくらツッコんでもシデルさんは「被ってない」の一点張りだったので、信者は痺れを切らしてパイ持って走り出した。
「ならば直接!」
「おっと、そうはいかんでござるよ!」
「へぶあっ!?」
割りこんだカテリーナが盾(別の信者の顔面)でパイを受け止める。紙皿を顔につけた人間をぽいっと捨てると、彼女は信者にカウンターパイを決めた。
「べぶっ!?」
「ひ、人を盾にするとは!」
「怒っちゃいやーん」
するっ、と別の信者の陰に隠れるカテリーナ。
男ですからね、信者も一瞬でデレデレです。
そしてその緩みきった顔面に、シルフィリアス(さんざ海で遊んで戻ってきた)はおもっくそパイをぶん投げました。
「げぼぁっ!?」
「パイ投げで解決するためにはパイ投げで相手に勝てる実力が必要っす。その実力があるか確かめてやるっす」
「ちょっ、ぐりぐりはやめべべべべっ!?」
紙皿で無慈悲に顔をこするシルフィリアス。カテリーナがさりげなく羽交い絞めにしてるので抗いようもなく、信者はあえなく鼻の中にクリームをねじ込まれてゆく。
信者の窮地に気づいた鳥さんは、弾かれるように駆けだした。
「待ってろ! いま私が助け――」
「くらえー、私の必殺、二重パイ投げ!」
「ぐああああああっ!!?」
顔面を挟みこむような一撃をくらい、視界を真っ白にされる鳥。両手に持ったパイをダブルで居合のように繰り出した咲は、鳥の後方にくるくるっと着地した。
「やっぱりパイを当てるのって楽しいね!」
「まったくですね。特にこういううるさい鳥を黙らせるのが」
「んぐぐぐーーっ!」
鳥さんの背後に回ったアンヴァルが、嘴へとパイをぶっ刺す。2発3発と矢継ぎ早にパイを被せられて――ついには嘴を開けないほど大量の紙皿が連なっていた。
「むぐぐぐっ!」
「ふむふむ。もっとパイを顔に欲しいと」
「なら、これでも食らえー。顔をパイだらけにしてあげるよ!」
「んんーー!?」
アンヴァルの意訳により捻じ曲げられる言葉。すかさず反応した咲に再びダブルパイアタックをくらった鳥さんの姿は、悲惨以外の何物でもない。
「盛り上がってやがるな」
「みんな楽しそうなのだよ?」
砂の上に立つ机を2人で囲みながら、パイ戦争を外から眺める泰孝と蓮。
サボり決めこんでる2人の口はもごもごしている。
普通にパイ食ってた。
「なかなかの出来だぜ。こうやってフルーツを添えたら店で出せるんじゃねぇか?」
「甘くて美味しくて幸せなのだよ! あ、このチョコソース使っていいのだよ?」
「あぁ、いいぜ」
「ありがとなのだよ!」
泰孝の許しを得て、パイにチョコソースぶっかける蓮。
ちなみにフルーツもチョコソースも全部、泰孝が持ってきやがったものである。
「ボク、今日きてよかったのだよ~!」
「マシュマロもあるからな。好きに試すといいぜ。なに、パイ投げは他の連中がよろしくやってくれるはずだ」
「頼もしいのだよー!」
わいわい、と盛り上がるパイ試食会。
仕事、しろ。
●パイなるもの
ところで前章では蓮くんがパイ投げをサボっていたな。
『この子、可愛さに飽かして楽することを覚えちゃったのかしら……』
と心配する人もいたかもしれない。
だが安心してほしい。
「ボクも頑張るのだよ! ゴーゴーなのだよ!」
「ぼへあっ!?」
砂浜の上には、砂上を駆け抜けて信者たちの顔にパイをぶつけてゆく蓮くんの姿がありました。水着だしゴーグル着けてるしやる気MAXでした。
未だに後方でパイ食ってる泰孝とは違かったよ! やったね!
「こんな楽しそうなヤツ、絶対に負けないのだよ~!!」
「ぐはー!?」
「お前らとはくぐった修羅場の数が違うんだよ!」
「おぶぉっふ!?」
遊ぶようにパイをヒットさせてゆく蓮と、ひゅるりと跳躍しては信者の顔面にパイをダンクショットしてゆく理弥。
2人にかき回されて、信者たちの連携はガタガタになっていた。
「くそ、どうすればいいんだ!」
「リーダー! 俺らに指示を――」
「ごべん、ぶび」(ごめん、無理)
「リィィダァァーー!!?」
助けを乞うて振り向いた信者たちの目に飛び込んできたのは、相変わらず紙皿で口を塞がれてアカン状態になってる鳥さんだった。
いや、むしろ悪化している。
嘴の根本まで突き刺さったパイの紙皿によって、直に眼とか色々封印されているのだ。
あとシデルに直にパイを押し付けられているのだ。
「ぶぼぼぼ……」
「紙皿がふやけきったパイなら、邪魔な嘴を貫通させることもできましたね」
「こいつリーダーを殺す気か!?」
「ちくしょう! そうはさせねぇ!」
「おっと危ない」
鳥さんを助けるべく信者が投げたパイを、横に動いてかわすシデル。
行き場を失ったパイは虚空を飛んだ。
んで、その先でパイ食ってた泰孝の机に直撃した。
正確に言うと、机に直撃してぶっ倒して、泰孝が精魂込めてウキウキトッピングしていたクリームパイを四散させた。
「NOoooo!」(オレのトッピングパイがぁぁぁぁ!)
響き渡る泰孝の絶叫。
そしてその頭上に落下する、パイの残骸。
面白い姿になってしまった男は、口についてたクリームを拭った。
「てめぇら! もう許さねぇぞ!」
「泰孝さん! このパイを使って!」
「おう!!」
パイをしこたま重ねたパイの塔を持ってきた咲が、怒り狂う泰孝にささっとパイを渡す。受け取った泰孝はそれを構えて猛獣のごとく信者たちに突っこんでいった。
青空に木霊する悲鳴を聞きながら、咲はくるっと振り返る。
同時にパイタワーがぐらっと揺れる。
「おっとと、バランス保つのが難しいね。ともあれこれを使って皆投げてね!」
「咲さん。こっちに欲しいっすー」
「はーい今もってくねー」
「弾の補充などさせん! 先におまえを倒してやるぁー!」
ふりふりと手を振るシルフィリアスに向かってくる咲。彼女がパイを渡す前にと、信者がシルフィリアスに向けてパイを振りかぶる。
「そうはいかないっす!」
機敏に察知したシルフィリアスが盾を構える。
カテリーナという盾を!
「これであちしにはノーダメージっす!」
「拙者を使うでござるか。まあ構わんでござるが……」
「くらえぇー!」
投げこまれるパイ。
しかしそのとき不思議なことが起こった!
飛んでくるパイに正対しようと身をよじったカテリーナの胸のパイが、勢いよく弾んだあまりパイをピッチャー返ししてしまったのだ!
「ぶへあっ!?」
「マイ胸部装甲が跳ね返してしまったでござるか。いやあ申し訳ないでござる」
「な、なんて凶悪なパイなんだ……!」
「ぐふっ」
鼻の下を伸ばして喉を鳴らす信者。そしてカテリーナの後ろで吐血するシルフィリアス。
念のため説明しておこう!
シルフィリアスさんは平たい! 何がとは言わないがね!
「拙者がメイド服でよかったでござるな。これがビキニとかだったら、ドミノ並べの記録挑戦中ににゃんこが乱入した体育館のように、阿鼻叫喚となったでござろう」
勝ち誇るカテリーナ。
それを遠巻きに見つめるアンヴァル。
「私も胸元にパイを盛れば、リアルダイナマイトモードに……いやまてよ。クリームは牛乳イコール乳。つまり、クリームいっぱいのパイをいっぱい食べればおっぱいがいっぱいおっきくなると?」
うん、これは頭がバグってますね。
「そう言えば、父の日に(牛)乳を贈ろう! って話を聞いた気がするけど、やはり生乳の方が人気あるのかな? どうなんです?」
「いや知らんけども……」
「どうして知らないんですか!」
「ぎゃあーー!?」
期待外れの答えをした信者の胸板に、2つのパイをぶち当てるアンヴァル。
「すげー圧倒的な超巨乳ちゃんですね! 雄っぱい! 雄っぱい!」
「や、やべぇよ! こいつやべぇよ!?」
「目が! 目が死んでるよォォー!」
パイを両手にして荒ぶるアンヴァルから逃げ惑う信者たち。
もちろん逃げ切ることなど叶わず、アンヴァルに、というか猟犬たちのアタックをくらって全員無事に気絶しました。
●もっと汚れるような
「効かないっすよ」
「ぬぐっ!?」
投げ込んだパイを紫の髪でガードされ、鳥さんが狼狽える。
信者が沈んだ後もひとり頑張っていた鳥さんだが、劣勢は覆せるものではなかった。
手元にはもう、残弾もない。
「これまで、か……」
「ああ。静かに眠りやがれ!」
「ぶべっ!?」
泰孝のジャンクアームが唸り、パイがダイレクトに鳥の顔面へとぶつけられる。
見事なまでのクリーンヒット。
ゆっくり前のめりに倒れる鳥は、もう起き上がることはなかった。
「いちおうトドメっすー」
「ぎゃあーーっ!!?」
シルフィリアスが異形化した髪の毛でガブッとやったので、本当にもう起き上がることはなかった。
「わぁー。パイのクリームでべとべとだなぁ、どっかに洗う場所とか無いかな?」
「私もスーツがべたべたですね。クリーニングお持ちの方います?」
「あ、俺できるぜ。今いくー」
全身クリームまみれにした咲が自身の服をつまみ、シデルがきょろきょろと視線を巡らすと、パイを回収していた理弥がパタパタと走ってきた。
戦いは無事に終われど、被害は甚大だった。主に汚れとか。
あと、顔面をパイで覆われてぶっ倒れてる蓮くんとか。
「きゅ~……綺麗に貰っちゃったのだよ……」
「それは大変ですね」
すげなく声をかけたのは、熱心にパイをトッピングしているアンヴァルだ。
人参グラッセやらさくらんぼを飾ったパイを見て、ふぅと額を拭う。
「白い丘の上に桜色の……別のパイみたいですね!」
「何を言ってるかわからないのだよ……?」
「まあ、わからないほうがいいでござるよ」
伏したままの蓮の横に立つカテリーナ。
水着姿である。汚れたメイド服はその辺に脱ぎ去ってきたらしい。
「クリームまみれで大変そうでござるな。お主も海に入るでござるよ!」
「えっ。でも今ボク、前も見えないのだよ?」
「なら拙者が抱えるでござる!」
「あっ、あーっ!?」
小脇に抱えられ、カテリーナに運ばれてく蓮。
海にどぼーんした彼が、更にべたべたになったのは言うまでもないよね。
作者:星垣えん |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年6月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 3
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