カフェなのに美味しいおにぎりを出してくる……!?

作者:星垣えん

●和カフェ
 昼下がりの街並み。
 多様な店の並ぶ通りの一角に、そのカフェはあった。
「んー♪ お米が美味しいー」
「このほぐれる握り方がまた……味噌汁も美味い……」
「テイクアウト何にしよーかなー」
 テーブル席を囲み、あるいはショーケースに並ぶ品々を見て顔を綻ばせる人々。
 彼らの前にあるものは――おにぎりである。
 鮭やらおかかやら、昆布やら明太子やら……メニュー自体は取り立てて珍しいということはない。しかし齧ればほろりと崩れる温かいおにぎりは絶品であり、それ目当てにカフェを訪れる者は多かった。というか大体おにぎり食いに来てる客だった。
 好きな具のおにぎりを数品、そして日本茶と味噌汁。
 そこへ2、3品、唐揚げとかの副菜を合わせたセットメニュー。
 それが、店の定番だった。
「大ぶりなおにぎりが良いのよねー」
「やっぱ日本人だからなのか、落ち着くなーこういうの……」
「おにぎりを崩して茶漬けにするのがまたたまらんのだ……!」
 めいめい、注文したおにぎりを幸せそうに味わう人々。
 まさにその『おにぎりカフェ』は至福のランチタイムといった風情だった。
 ――しかし、そこへ呼ばれもしないのに現れて!
 扉をでんぐり返しでぶち破って入店してくるのが!
「貴様らぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!!
 カフェを謳いながらおにぎり売るとかどういう了見だぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!!」
 ええ、鳥です。

●やったーおにぎりだー。
「今日はおにぎりを食べに行くんだね」
「あ、まあそうっす」
 淡々とお財布の中身を確認するリリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)に、黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)がもう言いきった。
 カフェでおにぎり売るの許せないとか言ってる鳥が現れた、とか。
 カフェに被害が出る前にビルシャナを倒してくださいっす、とか。
 信者は1人も連れていないんで皆さんならたぶん楽勝っす、とか。
 いろいろ力説してたけど『おにぎり食べに行く仕事』と言いきったダンテ君だった。
 軍資金を確認したリリエッタがそっとお財布を仕舞う。
「美味しいおにぎり。リリは何を頼もうかな」
「おにぎりの種類はそれなりにあるみたいっすよー。シソとか梅とか鮭とか一般的なものは大体揃ってるっすねー。それに美味しいお米を活かして、出汁茶漬けとか卵かけごはんとかも注文できるらしいっす」
「むぅ、おにぎりって色々できるんだね」
「美味しいおにぎりと味噌汁、日本茶……これは最高に決まってるっすよ」
 おにぎりセットを思い浮かべたダンテが、ぼけーっと顔を緩ませる。
 しかし猟犬たちとて、それは理解できることだった。
 なんせ温かいおにぎりと味噌汁だもの。
 どんな死闘の後だって落ち着けること請け合いだもの。
「まあ、というわけなんで皆さん存分に楽しんできてくださいっす!」
「お腹を空かせないとだね。そういえば、お持ち帰りもできるのかな?」
「できるっす! おにぎりだけっすけどね!」
 最高に爽やかな笑顔で、リリエッタにサムズアップするダンテ。
 かくして、猟犬たちは美味しいおにぎりを出してくれるカフェに向かうのだった。


参加者
オイナス・リンヌンラータ(歌姫の剣・e04033)
セレネテアル・アノン(綿毛のような柔らか拳士・e12642)
ロージー・フラッグ(ラディアントハート・e25051)
陽月・空(陽はまた昇る・e45009)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)
ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)
大森・桔梗(カンパネラ・e86036)

■リプレイ

●奴に居場所はない
 突然だが!
 現在の状況をお伝えしよう!
「ここがおにぎりを出してくれるカフェですかー。楽しみですね!」
「痛い! イタタッ、やめてー!」
「人気の味を存分に堪能しますよ~! 珍しさもないメニューで集客できるということはそれだけ美味しいということですからね~!」
「やめ、ホントやめてーー!?」
 カフェの店先で鳥さんがボコにされていた。
 ロージー・フラッグ(ラディアントハート・e25051)とセレネテアル・アノン(綿毛のような柔らか拳士・e12642)によって引き倒され、撃たれたり殴られたりしていた。
「おまえらホンマ……大勢で虐めるとか心が痛まないのか!」
「カフェは道を歩けば何軒も見つかりますが、大体はパンか麺物ですよね。おにぎりを出してくれる所は少ない気がします。これは期待しか湧きません」
「…………副菜……どれにしよう。最近依頼に行ってなかったから、懐が寂しい……」
「せめてこっち見て! こっち見ながら殴って!」
 店の外観を見上げたっきりノールックで攻撃してくる大森・桔梗(カンパネラ・e86036)と陽月・空(陽はまた昇る・e45009)に、鳥さんの悲痛な訴えが飛ぶ。
 軽視のされ方が半端じゃなかった。
 もしかしたら俺は石ころだったのかもしれない、とか思うほどスルーされていた。
 横たわったまま現在進行形で集中攻撃されている鳥さんは、身を丸めてがっちり守りを固めながら悲嘆に暮れる。
「どうして……俺はあるべきカフェの姿を説いただけなのに……!」
「むぅ、カフェでおにぎり売っちゃダメとか偏見はよくない」
「よ、ようやく俺の声が届いた!?」
「まだ元気ですわ! 一緒に叩きましょう、リリちゃん!!」
「あーーーーっ!!?」
 がばっと体を起こした鳥さんにすかさずバシバシするのはリリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)とルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)だ。
 話を聞いてくれたのも束の間の夢、鳥さんはボッコンボッコン殴られて見る間にアスファルトにめり込んでいった。
 そこへさらに――。
「いつも思うけど邪魔なのよ!! カフェにおにぎりを置いていけないなんて誰が決めたっていうのよ!」
「ぷげぇっ!!?」
 ローレライ・ウィッシュスター(白羊の盾・e00352)が振り回すアームドフォートの砲塔が、脳天に炸裂しました。
 それも1回ではない。
「あなたもおにぎりにしてやろうかしら!」
 執拗にぶん殴られていた。
「――!」
 なんなら一緒にいるシュテルネ(テレビウム)も普通に凶器で殴ってくる。
 刻一刻と全身をアスファルトに沈めながら、鳥さんは唸った。
「解せぬ……カフェにおにぎりなど合うはずがなかろうもん……」
「確かにカフェでおにぎりはなかなか聞かないのです。しかしどうでしょうか、お茶にはおにぎりがあうのです!」
「いやそりゃ日本茶なら合うけど――」
「お米の可能性は無限大なのです!」
「アァーーッ!?」
 反駁しかけた鳥さんを、オイナス・リンヌンラータ(歌姫の剣・e04033)の容赦ない二刀が、いやプロイネン(オルトロス)と合わせた三刀が切り刻む。
 かくして滅ぶ悪。
 猟犬たちは武器を収め、前へと歩き出した。

 がーっと開いた自動ドアをくぐると、冷房の効いた天国でしたよ。

●ここからが戦いだ
 透明のショーケースの内に整然と並ぶ、お米の三角形。
 てっぺんに具を覗かせたそれらを、リリエッタは横から順繰りに見つめていた。
「むぅ、あっち、おにぎりの中からエビが飛び出してるよ? これは確保だね」
「ならわたくしは……あっ、このアボカドエビマヨにしますわ!」
 隣について一緒におにぎりを眺めていたルーシィドが、見出した異色のおにぎりを指差して楽しげに笑う。
 あまりにも日常シーンである。
 少し前までいた鳥のことなんて忘れてる人たちの会話シーンである。
「お赤飯のおにぎりなんていうのもあるんだね……でも、お赤飯はお祝い事の時に食べるものだよね……食べてもいいのかな?」
「え? え、えーと、それはもちろん……はっ、いえいえ、大丈夫ですわ食べても問題ありませんきっと美味しいはずっ」
 ぐっ、と拳を握るルーシィドさん。
 その丸眼鏡の下の目つきは、ひどく怪しい。
「じゃあこれにするね」
「あの、あとでひとくち、しぇあさせて頂いても?」
 やたらもじもじして、リリエッタへ上目遣いをキメるルーシィドさん。
 あれ、これただの日常シーンじゃない気がしてきました。

「おにぎり、美味しい……!」
「お店の味というやつなのですー」
 テーブル席に隣り合って座り、もぐもぐとおにぎりを頬張るローレライ&オイナス。
 温かなおにぎりは米粒一つひとつが感じられて、そこへおかかや高菜の味わいも加わってくる。しばし2人が言葉を忘れるのは必然だった。
「やっぱりおにぎりはおかかよね……連続でいけちゃうもの……」
「ローはおかかが好きなんですっけ。おかかもおいしいですよね。ボクは高菜が好きなのですー」
「高菜、辛くない?」
「そんなに辛いですか?」
「……」
 高菜おにぎりをニコニコと食べるオイナス。ぺろりとおかか2個を平らげたローレライはじっとその高菜おにぎりを見た。挑んでみてもいいかもとか思ってると思う。
「僕は昆布にしたけど……これも定番の美味しさだね……」
「昆布美味しいですよね。おかかも美味しかったですけど、これもまた甲乙つけがたいですね」
 黙々と昆布おにぎりを味わっているのは、空と桔梗の2人である。
 のんびりと茶を啜ると、2人は「ふぅ」と息をついた。
「落ち着きますね」
「うん……」
 卓上のおにぎり(BIG)に視線を落とす空。
「僕はシソ昆布が一番好きかな……こっちの明太子昆布も面白くて良いね……」
「昆布にも種類があるのは奥深いです」
「ね……あ、煮卵おいしい……」
 あむっと齧ったおにぎりから黄身がとろける。その濃厚ぶりと淡白な白身に舌鼓を打つ空を見ながら、桔梗もまた梅おにぎりに口をつけた。きゅっと窄まる酸味とほかほかの米もまた定番の味である。
「どのおにぎりも美味しいのは……やっぱりお米が良いんでしょうね~」
 塩むすびをぺろっと食べたセレネテアルが、指についた米粒をぱくっ。
「炊き方がよいおかげか、お米自体に炭水化物的な甘さが感じられて美味しいです~! そこに合わさってくる塩のアクセントもまた絶妙でたまりませんっ」
「セレネテアルさんの仰るとおりですねー」
 横でおにぎり並べていたロージーが、ニコニコと笑う。
 お米が美味しい――というセレネテアルの言葉に頷く彼女が注文していたのは、ツナマヨにエビマヨ、カニマヨに明太マヨ、鶏マヨ等々……。
 米も何もねえほど、マヨネーズだった。
「ロージーさん、それは……!」
「いやー私マヨ系大好きでして。でも勿論それ以外も好きですよ!」
 むふー、と巨大な胸を張るロージー。
 しかしセレネテアルとて、そこにツッコむ野暮な女ではなかった。
「マヨはいいですよね~。私もツナマヨを頼みますよ~! というかメニュー全部頼んじゃいます~!」
 ぐっ、とサムズアップしやがるセレネテアル。
 それからガチで全おにぎりを注文した彼女の両手から、おにぎりがなくなる瞬間はなかったようです。

●和の心!
 もぐもぐしては、ほろほろと崩れる米。
 その絶妙な握り具合、無表情っ娘のリリエッタの頬もわずか綻ぶほどである。
「おにぎり……リリでもぎゅっぎゅって作れるけどすごく硬くなっちゃうんだよね」
「上手い方だとこうも美味しくなるんですね……」
 エビのぷりぷりした食感を味わいながら、しみじみ話すリリエッタ&ルーシィド。
 副菜の卵焼きをぱくっと口に放ると、2人の陶然とした顔はいっそう緩んだ。
「何だかほっこりしますわー」
「お味噌汁もおいしいね、ルー」
「ええ。来てよかったですね、リリちゃん」
 普通に仲良しっぷりを見せつける2人。
 それを、もぐもぐとツナマヨを食べながら見てる桔梗とセレネテアル。
「微笑ましい光景ですね」
「きっとおにぎりの力ですね~。ツナマヨ美味しいですっ」
 ツナマヨたっぷりのおにぎりをまるっと口に収めるセレネテアル。10個は食っておきながら未だ勢い衰えぬさまを見ながら、桔梗は天むすをあむっと。
 ぴったり海苔で覆われたそれを口いっぱいにして味わって、桔梗は瞑目した。
「これは食べ応えがあります……」
「なんていう美味しそう感……! これは私も食べないわけには……!」
 謎の使命感に駆られ、頼んだおにぎりの山を慌てて探るセレネテアル。
 それを尻目に、ローレライはせっせと焼きたらこのおにぎりを平らげていた。
「たらこの塩気と食感が最高ね……そしてそこに合わせるお味噌汁!」
 ジャガイモや玉ねぎ、かき卵と具材たっぷりの味噌汁を飲んでうっとりするローレライ。
 続けて野沢菜の漬物で箸休めすると、ローレライはきょろきょろ卓上に視線を泳がせる。
「次は……次は……」
「ローの食べっぷりはいつ見ても気持ちがいいのですー」
 次なる獲物を求めて彷徨うローレライの姿に、自然と微笑を浮かべるオイナス。オルトロスともども梅おにぎりを食べていた男は、それを食べきるなり立ち上がった。
「美味しそうなの探してくるのです! 待ってて!」
「えっ、オイナスさん?」
「気にしないで下さい! いっぱい食べるローが大好きなのですー!」
「オイナスさーん!」
 ずだだだだ、とショーケース前へと旅立ってゆくオイナス。勇ましき彼の背中を見送りながら、ローレライはだし巻き卵とタコさんウインナーをぱくぱくと口に入れる。
 そんなコントじみたやり取りをBGMに、ロージーはゆったり味噌汁を啜っていた。
「お味噌汁の優しい味わいが喉から胃腸に染み渡りますねぇ……」
「うん、日本の味だね……」
 はふぅ、と吐息をこぼすロージーに同調し、空が味噌汁(豆腐とネギ)のお椀を置く。
 さらにチーズとニンジンとインゲンの肉巻きをもぐっ。
 ちりめんじゃこをたっぷりまぶしたほうれん草のおひたしもぱくっ。
「やっぱりおにぎりには、こういう和の副菜が合うね……」
「玉子焼きの甘みもおにぎりに大変合うと思います!」
 一切れの卵焼きを箸でつまみ上げるロージー。
 が、彼女の一押しはそれではない。
 卵焼きを口に放りこむと、ロージーは卓の脇のほうに置いていた小皿を見せた。
「でもやっぱりおにぎりのお供といえばこれですよね、たくあん! 塩気に混じる甘さと確かな触感、口にしたあとすぐにおにぎりが欲しくなっちゃうやつです!」
「たくあん……確かにおにぎりにぴったり……」
「ですー!」
 たくあんをぽりぽりと食べるロージー。
 それを食べ切った彼女が「すいませーん!」と新たな注文に向かったのは、言うまでもないだろう。

●だいたい食べたりない
 たとえばおにぎりを茶碗に入れたとする。
 そこに溶いた卵を流しかけて、タレとか加えてみたとする。
 ざっくり混ぜて食べてみたとする。
 その結果。
「あ~……これは美味しい……」
「普段はやりませんが……これほど美味しいものでしたか」
 セレネテアルと桔梗は、美味にうっとり酔っていた。
 美味しい米に美味しい卵を合わせているのである。そりゃ無条件に美味くて、箸も止まらないってもんだった。
 しかも、ぶっかけるのは卵だけに限らない。
「僕はお茶漬け……」
 茶碗に入れた梅鮭のおにぎりに出汁を流し、箸で崩す空。そこにちりめんじゃこの残りをふりかけ、海苔をぱらぱらと散らせば一瞬で絶品茶漬けの完成である。
「うん、肉巻きや煮卵のおにぎりで濃くなった口の中が酸味でさっぱり、お茶でさらさらと流し込めるね」
「お茶漬けもいいですね。私も頼みましょうか……」
「ん~。締めで頼んだはずなのに何だかもっと食べたくなってきちゃいました~!」
 茶漬けをかっこむ空くんを見て、追加注文を思案する桔梗。セレネテアルに至ってはすでに席を立っている。茶漬けを食う気しかない。
「卵かけごはんにお茶漬け……そっちを頼むべきだったかしら?」
「確かに見てると美味しそうなのですー」
 こんもりクリームが乗ったプリンを食べながら、むむむと思考を始めるローレライ。普通にカフェっぽいデザートを楽しむ彼女の言葉にオイナスはうんうんと頷いている。
「でももう甘い物の口になってしまったのよね……悩みどころだわ……」
「あ、じゃあ今度食べればいいと思うのです。またローと2人で来たいのですー」
「はっ、そうね! そうしましょうそうしましょう!」
 ぴこーんと頭に電球(イメージ)を灯したローレライが、親指立ててるオイナスに「それだわ!」とばかりに指を立て返す。
 ナチュラルにいちゃついていた。
 だが安心してほしい。
 なんかいちゃいちゃしてるのは、ローレライとオイナスだけではない。
 ルーシィドが、そーっとそーっとリリエッタの頬に顔を近づけているのです。
 しかも、あまつさえぺろりと舌を!
「……お米粒があったので、食べちゃいましたわ、リリちゃん」
「ん。ありがとね、ルー」
 うふふと笑うルーシィドに、普通にお礼を言うリリエッタ。
 ちくしょう! 何なんだ! 指で取るんじゃいけないって言うのか!
「そういえば、お赤飯のおにぎり食べたいって言ってたよね。はい」
「あ、ありがとうございます! リリちゃん!」
「ルーの食べてるのも美味しそうだね? リリも貰っていい?」
「も、もちろんですわ!」
 食べかけの赤飯おにぎりと、食べかけのベーコンチーズ焼きおにぎりを「あーん」と差し出しあう2人。
 その手の人なら悶絶しそうなシーンだった。
「皆さん、仲が良くて微笑ましいですねー」
 もぐもぐとマヨ系おにぎりを食べまくっている皆のアイドルもといロージーが空気を緩和してくれなかったら、今頃かなり一人客にはつらい空間になってましたよ。

 数分後。
 空き皿ばかりとなった食卓で、ロージーはお腹に手を当てていた。
「さすがにお腹いっぱいですね。まだまだ色々食べたくなっちゃいますけど……それは次の機会のお楽しみにしましょうか!」
「そうですね」
 かちゃ、と食後のコーヒーを置く桔梗。
「切り上げるタイミングも大事ですし……本日はこれで」
 あとは塩おにぎりでも買って帰りますか、と桔梗がショーケース前を見る。
 そこには、店にやってきたときと同様の真剣な顔でおにぎり類を見つめるリリエッタとルーシィドの姿があった。
「寮のみんなにもお土産買わないとね。リリたちが食べたやつと……みんなが食べてたのも買っておこうかな」
「それがいいですわー」
 胸の前で、ぽんと手を叩くルーシィド。
 そうして2人が注文をするのと入れ替わりに、空はケース前を離れた。
 パンッパンに膨れた、テイクアウトの袋を両手装備で。
「……足りるかな」
 中身の人気おにぎり詰め合わせを覗いて、不安げにこぼす空。

 もちろん足りませんでした。

作者:星垣えん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年6月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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