●都内某所
「ワシは常々思うんじゃ。ヤンデレショタこそ最高じゃ、と! つまり、アレじゃ。おぬしらがいれば、ワシは幸せという事じゃ。……とは言え、ワシはヤンデレショタが何なのか、よく分かっていないんじゃが、要するにアレじゃろ。ヤンキーなショタ……もしくは病んでるショタの略称じゃろ? まあ、細かい事は良いんじゃ。大切なのは、ワシがおぬしらを好きと言う事じゃ! ところで、おぬしらに聞きたいんじゃが、ワシの飯は、まだかのー」
ビルシャナが廃墟と化した施設に信者達を集め、自らの教義を語っていた。
信者達はビルシャナによって洗脳されており、『オラ、ジジイ! これが好きなんだろ! ほら、喰え! 喰いやがれ!』と叫びながら、瞳孔の開いた眼で、メシを口に押し込んでいた。
●セリカからの依頼
「柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ビルシャナが確認されたのは、都内某所にある施設。
この場所にビルシャナが信者達を集め、なかなかハードなプレイを愉しんでいるようである。
「今回の目的は、悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事です。ただし、ビルシャナ化した人間は、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やしています。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまうため、注意をしておきましょう。ここでビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
セリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていく。
信者達は洗脳状態に陥っているため、ビルシャナが好き過ぎてヤバイ事になっているらしく、愛情と暴力が紙一重な感じになっているようだ。
「また信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。とにかく、ビルシャナを倒せば問題が無いので、皆さんよろしくお願いします」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ビルシャナの退治を依頼するのであった。
参加者 | |
---|---|
モヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624) |
肥後守・鬼灯(度徳量力・e66615) |
柄倉・清春(大菩薩峠・e85251) |
佐竹・レイ(ばきゅーん・e85969) |
●都内某所
「なんだか嫌な予感しかしねぇな。いや、マジで。さっきから何だか背筋に寒気が走っているしよぉ。これってアレだろ、霊の仕業……いや、違うな。もっと身近な……って、きゃり子……まさか、お前……」
柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)は仲間達と共に、廃墟と化した施設にやってきた。
この施設は以前まで孤児院だったようだが、院長だった男性が少年達に如何わしい事をしていた事が発覚し、閉鎖に追い込まれてしまったようである。
そのせいか、妙な空気が漂っているものの、それ以上にビハインドのきゃり子の様子が……おかしかった。
最初は単なる気のせいだと思っていたのだが、身の危険を感じるほど、ヤバイ雰囲気。
このまま何も起こらなければいいと思っているものの、それでも嫌な予感が消える事はなかった。
「ショタっていうか……ただのヤンキー予備軍ね、これ」
そんな中、佐竹・レイ(ばきゅーん・e85969)が事前に配られた資料に目を通し、辻斬りの如くズバッと斬り捨てた。
おそらく、この場に男性信者達がいたら、それだけでブチ切れ。
問答無用で釘バットを振り回し、襲い掛かってきても、おかしくないような一言であった。
「そもそも、ヤンデレショタは、暴力を振るうだけでは御座いマセン……ッ。もっと対象を愛するがゆえの行き過ぎた……想いが……あるのデス! 例えるなら、それは……それはァ……!」
モヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)が興奮した様子で、マシンガンの如く言葉を吐き出した。
「……おっと、熱くなってしまいマシタ。一刻も早く間違ったヤンデレを是正致しマショウ」
だが、途中でまわりとの温度差に気づき、モヱが小さくコホンと咳をした。
「なるほど! ではでは、僕はショタの範疇ではないはず! それでは、行きましょうか!」
そう言って肥後守・鬼灯(度徳量力・e66615)が、思いっきりフラグをねじ込むと、廃墟と化した施設に入っていった。
●施設内
「……って、もう始まっているんだが!? だ、大丈夫か、マジで!」
施設に足を踏み入れた瞬間、清春が驚いた様子で声を上げた。
ビルシャナは男性信者達にボコられ、床に転がって悲鳴を上げていた。
そのため、既に死亡寸前、虫の息。
しかし、その顔は笑顔に満ち溢れており、とても幸せそうだった。
「そんな事したら死んじゃいますよ~」
すぐさま、鬼灯がビルシャナに駆け寄り、心配した様子で庇うフリをした。
だが、実際には心の底から、ドン引き。
少し触れただけでも、全身に鳥肌が立つほど、身体が拒絶反応を示していた。
「なんだ、テメエは! 余計な事をすると、ブッ殺すぞ、ゴルァ!」
その途端、男性信者がリーゼントヘアを揺らし、オラオラスタイルで迫ってきた。
「あんた達みたいなのが盗んだバイクで走りだしたり、二人で一つとか言いながら、地元じゃ負け知らずに暴れ回ったりしているんでしょっ。ほんっっっと迷惑だわ! キッズヤンキー、ゴーホームよ!」
レイが嫌悪感をあらわにしながら、男性信者達を施設から追い出そうとした。
「なんだと、ゴラァ! シメっぞ、ゴラァ!」
それに抵抗するようにして、金髪の男性信者が頭を上下させながら、レイにジリジリと迫ってきた。
他の男性信者達も、頭を上下させながら、同じように迫ってきたため、何やらシュールな感じになった。
「……と言うか、ヤンデレってヤンキーのことじゃないですよ~」
その視線に気づいた鬼灯が、男性信者達にツッコミを入れた。
「そんな訳……ないだろ。そんな訳が……!」
その言葉が胸に突き刺さったのか、男性信者達が激しく目を泳がせ、あからさまにオロオロとし始めた。
おそらく、自分でも『これでいいのか? いや、違うだろ』という気持ちがあったのだろう。
故に、普通であれば、軽く流せば済むような事だが、男性信者達にとっては、重い一言であった。
「みんな騙されるな! ヤンデレショタは、ヤンキーショタの略! ……間違いない! ワシが言うんだから、嘘であるわけがない! ワシを信じろ! ワタだけを!」
その事に危機感を覚えたビルシャナが、適当な事をでっち上げた。
「そ、そうだよな。ビルシャナ様が間違った事なんて言う訳……って、調子乗ってんじゃねーぞ、ゴルァ!」
スキンヘッドの男性信者が、無理やり自分自身を納得させ、恥ずかしそうにビルシャナを蹴り倒した。
まわりにいた男性信者達も、『お、おう!』と言った感じで、何となく納得した。
「まあ、ヤンの解釈がブレッブレなうえに一般的なものと異なっている事に関しては目を瞑りマショウ。ですが、そこに『デレ』はあるのでショウカ……? デレないのは攻略対象ではなくモブ!!」
モヱが男性信者達を前にして、キッパリと断言をした。
「お、俺達がモブだと!?」
モヒカン頭の男性信者が、驚いた様子で目を丸くさせた。
まわりにいた信者達も、モブ並にピッタリと息を合わせ、同じように目を丸くさせた。
「いやまぁ病んでなければワンチャン人気出る可能性はありますが……」
モヱが今にも消えそうな声で、小さくボソリと呟いた。
その間、きゃり子が熱心に何やら訴えていたが、ビハインドは会話が出来ないため、身振り、手振りで熱くなっていた。
それでも、魂の言葉で訴えかけているせいか、念の力によって、ビルシャナを黙らせ、大人しくさせているようだった。
「……何だろう、この違和感」
そんな中、鬼灯は仲間達と違う扱いを受けている事に気づいた。
いつの間にか、まわりには男性信者達が集まっており、一見するとヤンデレショタ様一行的なノリ。
それだけならまだしも、ビルシャナがしれっと横に立っており、鬼灯の肩を抱き寄せ、イイ笑顔を浮かべていた。
そのため、一見するとグッドファミリー感が漂っているものの、鬼灯からすれば鳥肌モノ。
それでも、ビルシャナがイイ笑顔を浮かべていたため、『こっち見んな!』という気持ちが湧き上がった。
「ま、こんな教義を信じて、枯れた鳥のおじいちゃんの相手をするよりも、あたしみたいな超絶キュートな美少女のお世話をした方がいいでしょ? いまなら一番の下僕にしてあげるんだからっ。ほら、にゃ~ん」
その間に、レイが男性信者達の心を鷲掴みにする勢いで、渾身のセクシーポーズを決めた。
「……」
しかし、男性信者達は、無反応。
今にもまわりが凍り付きそうな勢いで、冷ややかな視線をレイに送っていた。
「……って、あたしの魅力がわかんないなんて脳みそ猿以下なんじゃないっ! べ、別に悔しくなんかないわよ! あんた達みたいなガキこっちから願い下げよっ!」
レイが薄っすらと涙を浮かべ、必要以上に強がった。
「そんな事より、じーちゃん遊ぼうぜ!」
次の瞬間、清春が幻術【驟雨】(シュウウ)を仕掛け、零の術を使った幻術でショタ化すると、抜刀術を混ぜ合わせた技を繰り出し、ビルシャナを斬り捨てた。
「い、いま確かに……」
ビルシャナが信じられない様子で、目をパチクリさせた。
一瞬、清春がショタっぽく見えたため、思わずガン見してしまったが、ただの幻だったのか、気がついた時には傷口から大量の血が噴き出し、足元を真っ赤に染めていった。
「テ、テメエ! ジジイってやってイイのは、俺達だけだ!」
男性信者達が一斉にブチ切れ、ケルベロス達に襲い掛かってきた。
「ただの暴力装置は論外ッ! という事で御座いマス……!」
それを迎え撃つようにして、モヱが手加減攻撃を仕掛け、次々と男性信者達の意識を奪っていった。
●ビルシャナ
「うぐぐ……馬鹿なっ! ワシの最高傑作達が……。ならば、新たに作るのみ……!」
ビルシャナが色々な意味で危機感を覚え、超強力なビームを放ってきた。
それは相手をショタ化する危険なビーム。
「えっ? ちょっと待って! このビームに当たったら、色々な意味でマズイ事に……」
そのビームをモロに喰らった鬼灯が、身体に違和感を覚え、必要以上に焦り始めた。
単なる気のせいかも知れないが、何故かビルシャナの事が愛おしく思えてしまい、とにかく殴って、悪態をつき、思いっきり抱きしめたい衝動に襲われた。
それは恋する乙女の如く、複雑な気持ち。
胸がドキドキ、心がイライラ。
「何も遠慮する事はない。さあ、ワシの胸に……!」
そんな空気を察したビルシャナが、無駄にイイ笑顔を浮かべて、両手を開いた。
「つーか、俺がいれば他の奴なんていらないだろ? いらないよな? ほら、早く言えよ! 言わねぇなら、そう思えるようにしてやるからよぉ!」
清春が凄くイイ笑顔を浮かべながら、隠し持っていた刃物で、ビルシャナの傷口をザクザクとえぐった。
「これは綺麗な赤ですね。ビルシャナにピッタリの赤です。だから、もっと赤を……。赤を……赤を!」
鬼灯も、どす黒い感情を滲ませ、毒々しい絶望に縁どられた目をグルグルさせながら、ビルシャナの身体をザクザクと突き刺した。
「アイツら、ヤベェ!」
それを目の当たりにした男性信者達が、ドン引きした様子でガタブルと体を震わせた。
おそらく、男性信者達は、理解したのだろう。
自分達の間違いを……。
「これはヤンデレ……と言うよりも、病んデレデスネ。いや、正確には……まあ、ここで説明は不要デスネ」
そんな中、モヱが沼のヌシになり掛けていた自分の気持ちを正し、殺神ウイルスで対デウスエクス用のウイルスカプセルを投射した。
そのため、ビルシャナは自らの肉体を癒す事が出来ず、肉の塊になるまで、ふたりにザクザクと刺されて息絶えた。
「……と言うか、もう終わっているから! いつまで刺している気なの? それよりも、これ見て! この動画……SNSにあげたらバズると思わない? あ、嘘、嘘、だから、そんな怖い目で見ないで! 怖いっ! 怖いから……!」
そう言ってレイがふたりの視線に怯えつつ、ぎこちなく愛想笑いを浮かべるのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年6月6日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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