健気で可愛い男の子が大好き！

■リプレイ

●都内某所
「……見るからに怪しいな」
　ヒエル・ホノラルム（不器用な守りの拳・e27518）は警戒心をあらわにしながら、ビルシャナが拠点にしている施設にやってきた。
　ビルシャナが拠点にしている施設は、以前まで怪しげなセミナーに利用されていた場所で、何かトラブルが起こって、しばらく廃墟になっていたらしい。
　そのトラブルが何なのか、ハッキリした事は分かっていないものの、沢山の被害者を出している事は間違いないようである。
「これって、所謂、ショ……」
　そんな中、若生・めぐみ（めぐみんカワイイ・e04506）が、吐き出そうとしていた言葉を飲み込んだ。
　一瞬、単なるショタスキーだと思ったが、場合によっては人間に虐げられて同族（鶏）の恨みを晴らすため、小さな頃から洗脳しようとしているのではないか……という考えが脳裏を過った。
　さすがに、それはないとは思うが、的を得ていた場合は……寒気がする。
　そのせいか、いつもと比べて足取りが重く、気持ちもどんよりとしていた。
「まあ、利用は何であれ、目的はひとつでしょう。本当に何もしないつもりなら、こんな所に集めたりしないはずですし……。このままだと信者さんの身に危険が……！」
　地留・夏雪（季節外れの儚い粉雪・e32286）が、色々な意味で危機感を覚えた。
　いまのところ、信者達に被害は出ていないようだが、何かイケない事をされていてもおかしくない。
　そんな不安を振り払うようにして、夏雪が仲間達を連れて、廃墟と化した施設に足を踏み入れた。
「いいわよ、いいわ。素敵。素敵よ」
　施設の奥からは、ビルシャナの不気味な笑い声が響いており、男性信者達が恥ずかしそうに声を漏らしていた。
「ちょーと待ったー。イエスショタ、ノータッチが基本よ！　それを直接ふれるどころかやましいことを考えるなんて、見過ごせないわっ」
　次の瞬間、佐竹・レイ（ばきゅーん・e85969）が勢いよくドアを開け、ビルシャナを叱りつけるのであった。

●施設内
「ちょ、ちょ、ちょっと待って！　な、何か誤解をしているようだけど、私は何もしていないわよ！　なんて言うか、ほら……アレよ、アレ。服が乱れていたから、ちょっと直した……感じ？　そうよ、そう！　絶対に、そう！　だって、私……一度だって、そう言う目で、この子達を見た事がないモノ。ね、そうでしょ？　ね、ね、ね？」
　その途端、ビルシャナが激しく動揺した様子で、ツラツラと言い訳を並べ始めた。
「そ、そうです！　ビルシャナ様は絶対に悪くありません」
　金髪の男性信者が、躊躇う事なく答えを返した。
「ビルシャナ様に限って、やましい事なんて……」
　大人しそうな男性信者が、今にも消え去りそうな声で呟いた。
　他の男性信者達も、何かに取り憑かれた様子で、みんなビルシャナが正しいと断言をした。
「信者さんは、この異常な状況で感情がマヒしてきているみたいですね……。こんな事、絶対に間違っているはずなのに……」
　夏雪が何やら察した様子で、男性信者達をマジマジと見つめた。
　男性信者達は完全にビルシャナの言葉を鵜呑みにしており、疑う事を知らないようだ。
「みんな、冷静になって考えてくれ。こんな廃墟に屯っていたら、家族が心配すると思わないか？　少なくとも俺は主張のヤバいビルシャナまでいる廃墟に夏を一人で行かせるのが心配でついてきた訳だが……。お前達もこんな所でビルシャナに騙されていないで、早く帰って家族を安心させてやって欲しい。ビルシャナが本当にお前達の事を大切に想っているのなら、こんな事はさせない筈だ」
　ヒエルが夏雪に寄り添うようにして、男性信者達に語り掛けた。
「そ、それは……その……」
　男性信者達は動揺した様子で、オロオロ、あたふた。
　何か言葉を発しようにも、何もイイ言葉が浮かばない。
「何か勘違いしているようだけど、私はこの子達を保護しているの。悪い大人達のせいで、穢れてしまわないように……。だから、胸を張って言えるわ。私は何も悪い事をしていない。健気で可愛い男の子こそ至高だって！」
　ビルシャナが無駄にキラキラとした瞳で、自分の正当性を訴えた。
「……ビ、ビルシャナ様ッ！」
　それだけで男性信者達は胸をきゅんとさせ、瞳をキラキラと輝かせた。
「ビルシャナがお前達を呼び寄せて眺めているのは、お前達を護るためではない。俺には模られた料理を食べる前に、まずは見て楽しんでいる段階にしか見えん」
　ヒエルが男性信者の想像を掻き立てるようにして、わざと恐怖心を植え付けた。
「そ、そんなはずは……」
　短髪の男性信者が、不安げな表情を浮かべた。
　他の男性信者達も動揺して様子で、互いの顔をチラ見していた。
「わ、私は何もしていないわ！　だって、私達はこの子達を愛しているもの！　だから、何もしていないもの！　つまり私は純粋な気持ちで、この子達と接しているの！　何の気持ちもなく、邪な感情も抱く事なく、ただまっすぐこの子達を見つめているの！　それなのに、私を疑うなんて……それこそ有り得ないわ！」
　ビルシャナが青ざめた表情を浮かべ、自分の無実を訴えた。
　だが、言い訳をすればするほどドツボにハマッており、動揺を隠せない様子で、両目がギョロギョロとしていた。
「だからと言って、安心して良い、という事なんてないのです……！　皆さん、何で不安だったか思い出してみてください……！　何故、皆さんは廃墟にいるのですか……？　その状況自体がおかしいですし、それを不安に思う事も間違ってはいません……。何もしてこないのではなく、既に何かされているのです……！　そして、その不安な状況に陥っている原因は催眠術です……。皆さんを集めたあそこにいる犯人をよく見てください……！　催眠術を得意とする人類の敵のビルシャナさんです……！　今の状況を冷静に見つめ直して、目を覚ましてください……！」
　夏雪がまっすぐ男性信者達を見つめ、真剣な表情を浮かべて語り掛けた。
　その途端、男性信者達が不安げな表情を浮かべ、一斉にビルシャナの顔を見た。
「催眠術って何よ、それ！　みんんな、誤解よ。この人達は、私に難癖をつけて、陥れようとしているだけ！　だって、そうでしょ？　催眠術なんてありえない！　そんな力が使えるんだったら、とっくの昔に使っているはずだから……！」
　ビルシャナが無駄に綺麗な目をキラキラさせ、自分の正当性を訴えた。
「それに、皆さん。いつまでも可愛い子供でいられない事くらいは分かりますよね。成長し、声が低くなり、体格もよくなり、可愛くなくなったら……この鳥、間違いなくあなたたちを捨てますよ。……間違いなく、絶対に！」
　めぐみがキッパリと言い放ち、男性信者達の顔色を窺った。
「……えっ？　そんなはずは……ないですよね？」
　その言葉を聞いた男性信者が、一斉にビルシャナをチラリ。
　みんな不安を隠す事が出来ず、動揺しているようだった。
「そ、そんな訳がないでしょ。そんな訳が……」
　ビルシャナが声を震わせ、自分の無実を訴えた。
　だが、男性信者達は、不安げ。
　『まさか、ビルシャナ様に限って……』という気持ちがあるものの、身を寄せ合って震えていた。
「……確実に飽きて捨てる未来しか見えませんね。場合によっては証拠隠滅とばかりに殺処分してくるかも知れませんよ。それでもいいんですか？」
　そこに追い打ちをかけるようにして、めぐみが男性信者達に語り掛けた。
　その途端、男性信者達が、ビルシャナをガン見ッ！
「す、捨てる訳ないでしょ！　捨てる訳が！　だって、あなた達は、私の可愛い子達だから……。絶対に捨てる訳がない！　絶対に、ね！　だから安心して！　あなた達を捨てたりしないから！」
　ビルシャナが動揺を隠せない様子で、しどろもどろになった。
　その間に、何か良い言葉を引き出そうとしていたが、頭の中が真っ白だった。
「そもそも、健気で可愛い男の子を見るにあたって、あんたは邪魔でしかないのよ！　あんたも少女漫画とかラブコメを見て思ったことあるんじゃないかしら。『はーい、ヒロインちょっとはけてねー』って！　あんたという存在がいることで健気で可愛い男の子同士の絡みにザッピングが入るのよ、そんなこともわかんないの！？　つまり、あんたの教義は自分の存在の否定も同然なのよ！！」
　そう言ってレイが呆れた様子で、ビルシャナの前に陣取った。

●ビルシャナ
「……もういいわ。何も言っても、無駄って事ね！　だったら、みんな死ねばいいのよ！　私の未来のために！」
　ビルシャナが逆ギレした様子で、ビームを放ってきた。
　そのビームは当たった相手を、可愛い男の子に変える危険なモノ。
　少し、かすっただけでもショタっ子間違いなしの危険なビームであった。
「未来のため……か」
　すぐさま、ヒエルが両手両足に氣（オーラ）を纏い、ビルシャナが放ったビームを避けると、旋刃脚で電光石火の蹴りを放ち、ビルシャナの急所を貫いた。
　それに合わせて、ライドキャリバーの魂現拳が、デットヒートドライブで、ビルシャナを追いつめた。
「うくっ！　許さない！」
　ビルシャナが恨めしそうな表情を浮かべ、クチバシを小刻みに震わせた。
　しかし、男性信者達は、何も手助けが出来ず、ガタブル状態。
　小動物のように瞳を潤ませ、戦いを見守る事しか出来なかった。
「それなら、あなたに未来を見せて上げます。あなたに相応しい未来の夢を……」
　めぐみがイイ笑顔を浮かべながら、ビルシャナにトラウマボールをぶつけた。
「いやああああああああああああああああああああ！」
　その途端、ビルシャナが巨漢の漢達に囲まれ、ばぶーと甘えられる悪夢を見た。
　それはビルシャナにとって、地獄の一時。
　自分が求めていた未来と真逆のモノを見えられ、心の底から嫌がっているようだった。
「……良い夢が見れたか？」
　その隙をつくようにして、ヒエルが氣刃脚（キジンキャク）を仕掛け、氣の力を上乗せした蹴りで、再びビルシャナの急所を貫いた。
　続いて、魂現拳がキャリバースピンを放ち、ビルシャナを足止めした。
「よくも、やったわね。許さない！　絶対に、許さない！」
　ビルシャナが怒り狂った様子で、再びビームを放とうとした。
「男の子に触れた瞬間、あなたは一線をこえてしまったのよ……。あんたとは、生まれる時代が違えば友達になれたかもしれないのにね。でもイケメンの蕾を摘むなんて無粋は許さないわよ。同じメンクイとして、あたしが引導をわたしてあげるんだからっ！」
　それよりも速くレイがスーパー神風デリンジャーアタック！（イザノトキノゴシンジュツ）で空高く舞い上がり、懐から取り出したデリンジャーをぶん投げた。
　放り投げられたデリンジャーはまっすぐビルシャナの頭に突き刺さり、大量の血が噴水の如く噴き出した。
「う、嘘……。こんなのって……」
　その一撃を喰らったビルシャナが血の泡をブクブクと吐き、白目を剥いて息絶えた。
「洗脳は解けましたか……？　まだ不安なら僕達と一緒にお家に帰りましょう……！」
　夏雪がホッとした様子で、男性信者達に視線を落とした。
　男性信者達は未だに不安そうにしており、みんなで瞳をウルウルとさせていた。
「……夏、お前が頼れる男なら、その子達をしっかりと家まで送り届けてやれ。強さだけが男らしさではない事を忘れるな」
　ヒエルが何やら察した様子で、夏雪に声をかけた。
　そんな中、レイが未来のイケメン達の成長に期待しつつ、帰路につくのであった。

作者：ゆうきつかさ	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2020年6月5日 難度：普通 参加：4人 結果：成功！
得票：格好よかった 1／感動した 0／素敵だった 1／キャラが大事にされていた 1
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