風の切先

作者:崎田航輝

 青々と茂った翠が、初夏の風に揺れている。
 さらさらとそよぐその音の中に交じるのは、気合の掛け声と木刀が風を切る音だった。
 澄んだ自然の空気の漂うそこは──剣道場。
 街の景色から隔絶されたように、周囲を竹林に囲まれた中。道場前の平地で若者達が腕を磨こうと活発に野外鍛錬に励んでいる。
 浮世から離れた環境では、集中力が淀む暇もなく。力ばかりではなく、心をも研ぎ澄ませるよう、皆が剣の道に邁進していた。
 けれどそこに──がさり、と。
 不意に異質な音が響いて、師範も門下生も手を止める。
 人でも、ましてや自然のものでもない歪な気配。皆がその違和感に、異常事態だと気づく──その頃には竹林の間から影が歩み出ていた。
 それは人を超える巨躯。
 くすんだ具足に長物の刃を佩いて、鋭い眼光で見下ろす罪人──エインヘリアル。
「剣に覚えがあるのだろう」
 ならば刃を交えさせてもらいたい、と。
 声音に戦意を滾らせながら、ぎらりと刀を抜いていた。
 若者達は、ただ立ち竦むしかない。師範も含め、中には抵抗を試みようとする者はいたけれど──罪人は刃を振るい、その全てを斬り伏せた。
 逃げる者も抗う者も、一瞬後には血の海に倒れゆく。斬った人間の、その手応えのなさに罪人は目を閉じて。
「力なきものの剣術とは、この程度か」
 そうとだけ言い残して、静寂の道場を去っていった。

「集まって頂き、ありがとうございます」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)はケルベロス達へ説明を始めていた。
「本日は、エインヘリアルの出現が予知されました」
 現れるのはアスガルドで重罪を犯した犯罪者。コギトエルゴスム化の刑罰から解き放たれて送り込まれる、その新たな一人だろう。
 これを放置しておけば人々が危険にさらされる。
「そこで皆さんには撃破へ向かってほしいのです」
 現場は剣道場。
 竹林に囲まれた環境で、敵はその林の中から現れるだろう。
「こちらは先んじて到着した後……人々を逃した上で待ち伏せするといいでしょう」
 事情を話せば、すぐに理解してもらえるはずだ。敵が現れる方向も判っているので、避難に苦労することはないはずだ。
「ただ、敵も相応の戦闘力を持っていますので警戒を」
 何より戦いを求める相手で、無論こちらにも躊躇なく斬りかかってくるだろう。
「それでも、皆さんならば勝利を掴めるはずですから」
 健闘をお祈りしていますね、とイマジネイターは言葉を結んだ。


参加者
伏見・勇名(鯨鯢の滓・e00099)
クレーエ・スクラーヴェ(明ける星月染まる万色の・e11631)
ランドルフ・シュマイザー(白銀のスマイルキーパー・e14490)
アルシエル・レラジェ(無慈悲なる氷雪の白烏・e39784)
天瀬・水凪(仮晶氷獄・e44082)
ラグエル・アポリュオン(慈悲深き霧氷の狂刃・e79547)
オルティア・レオガルデ(遠方の風・e85433)
ミアン・プロメシュース(瑠璃の処罰者・e86115)

■リプレイ

●剣
 揺れる竹林の響きが、風音を彩る。
 美しい緑の中、森閑とした剣道場で──ミアン・プロメシュース(瑠璃の処罰者・e86115)は剣士達へ事情を伝えていた。
「……故に、これからエインヘリアルが凶行を目論むでしょう」
「詰まり此処はすぐに危険になる。早く立ち去った方がいい」
 声を継ぐのは天瀬・水凪(仮晶氷獄・e44082)。冷静に周囲の気配を探りながらも、方向を示して促している。
 彼らは頷きながら、中には躊躇うものもいた。
 己が剣を扱うからこそ、と。
「俺達にできることは無いのでしょうか」
「悪いがアンタらじゃ、加勢しても無駄死にどころか利敵行為にしかならねえよ」
 だから今は大人しく退いてくれ、と。
 絆されず、ランドルフ・シュマイザー(白銀のスマイルキーパー・e14490)は声を返す。どんなことがあっても死なせたくない、だから語気を微かに鋭くして。
 彼らは少し静まる。
 そんな中、伏見・勇名(鯨鯢の滓・e00099)は無表情のままに、ぐるぐると腕を振るってみせた。
「だいじょぶ。たたかうは、ぼくのしごと。まかせろ」
「そういうことだ。アンタらの分も喰らわせてくるからよ」
 ランドルフもそう拳を握れば──剣士達も最後には皆が避難を納得していた。
「そう、向こうへ真っ直ぐ逃げてくれれば、安全だよ」
 と、移動する彼らをアルシエル・レラジェ(無慈悲なる氷雪の白烏・e39784)は柔和な声音で導いていく。
 程なく道場が無人となり静寂に包まれると──ラグエル・アポリュオン(慈悲深き霧氷の狂刃・e79547)は一先ず安堵の吐息。
「これで後は戦うだけだね」
 言葉は隣の弟に向けたもの。だけれどアルシエルは未だ変わらぬ塩対応で……返事もせずに待ち伏せ場所へ歩んでゆく。
 それに少々しょんぼりしつつも、めげずにラグエルも戦いの備え。包囲陣を作れるよう、皆と緩やかな円形に立った。
 ミアンも並びながら、剣士達の鍛錬の様子を思い返す。
「地球の方々の武術……単純な武力以上に、精神修養の意味合いが強そうに感じられましたね」
 それは番犬としての力を高めることとも、また違うのかも知れないと考えながら。ミアンは視線を竹林に向けた。
「いずれにせよ、無為に散らされるべき命には非ざるもの」
 かの罪人は確実に討たねば、と。
 思って見据える先──がさりと、異質な音が聞こえる。
 それは葉を掻き分ける巨躯の足音。直後に竹林を抜けて出てくるそれは、具足の罪人──エインヘリアル。
「……人の気配が、少ないな」
 これで滾る斬り合いが望めるのか、と。
 その巨躯は一瞬、そんな呟きを零している。
 それは本能的なものだったろう。予想と違う光景に、何処か拍子抜けたようでもあった。
 けれどその少ない人影が、罪人にとっての命取り。
「斬り合いなら望むところ……と言いたいがそれは私の役目ではないね」
 だから譲るよ、と。
 言ったのは横合いのラグエル。
 罪人が違和感と共にそちらを見た瞬間──音が響くのは背後の竹林からだった。
「良いよ。斬り合いがしたいというのなら」
 ──僕が相手してあげる。
 涼やかな声と共に、翠を縫って奔り抜けてきたのはクレーエ・スクラーヴェ(明ける星月染まる万色の・e11631)。
 濡羽の髪を揺らがせて、漆黒の鴉を彷彿させる刀をすらりと抜き放っている。
 罪人ははっと振り返り、刃を振り上げようとした、が。
 その動きが途中で止まる。
 それはクレーエのビハインド、桜が花吹雪が吹き抜けさせて、濃密な春風で巨躯を縛っていたからだ。
「ありがとう」
 言いながら、クレーエは一刀。靭やかな剣閃を奔らせ、巨体へ裂傷を刻みつけていた。
 蹈鞴を踏みながら、罪人は初めて驚きに目を見開く。
「……番犬、か」
「──そう」
 静やかに肯定の声を返すのはオルティア・レオガルデ(遠方の風・e85433)。
 戦いを願うなら、望み通りにしてやると。握る刃へ眩い雷光を抱かせて、強く腕を引き絞っていた。
 己に剣の覚えなんて、大してありはしないけれど。
「振って、当てれば、斬れる。それくらいは、分かる……」
 お前を斬るにはそれで十分、と。
 武人ではなく、ただの咎人を断ち斬り退かせるように。強烈な刺突で、弾ける光と共に突き飛ばす。
 その隙に、ラグエルは己の殺戮衝動の一端を前衛へ分け与え──。
「アルシエル」
「もうやってるよ」
 ぶっきらぼうに応えたアルシエルも寂寞の調べを奏で、後衛にも破魔の力を齎していた。
 下がっていた罪人は、オルティアの言葉に侮られたと思ったか。力を込めて刃を振りかざす、が、既にその頭上へ高々と跳んで逆光を浴びるのがランドルフ。
「させるかよ」
 風を巻き込んでくるりと廻ると、白銀の光を棚引かせて蹴撃を叩き込む。
 よろめく巨躯は、それでも反撃に風の刃を飛ばすが──その頃にはミアンが防御態勢。クレーエも共に己が身を盾として受け切った。
 直後にはミアンが大地より清廉な魔力を立ち昇らせて自身らを治癒。水凪もまた、刃に星明かりを明滅させている。
 無数の星屑となって弾けた光は、守護星座を成して護りの加護を形成。清らかな眩さで皆の体力を保っていた。
 軽く息をつきながら、水凪は敵へ視線を遣る。
 異星の咎人。その変わらぬ殺意と戦意に狂った心に、微かに瞑目するように。
「……相も変わらずに面倒な輩だ」
「其処に剣戟があるのなら、求める。ただそれだけだ」
 そこに如何な咎が在るとも思わぬように。罪人は言いながら連撃を狙う──が。
「んうー。たたかうのが、すきか」
 その横合いより勇名が手を伸ばしていた。
 発射するのは、煙を靡かす小型ミサイル。
「なら、いっぱいどかーん、する」
 罪人は刃で受けようとするが、無謀なこと。着弾したそれは足元から爆発し、巨大な火花を上げる。
 『ポッピングボンバー』──虹を描くようにカラフルに閃く灼熱が、巨躯の全身を包み込むように灼いていった。

●武
 土煙の中で、巨躯は膝をつく。
 躰に無数の傷を刻みながら──それでも相貌は愉快げだった。ゆらりと立ち上がると、傷の奔った目に喜色を浮かべて。
「強者とまみえたのは、幸運だ。武を持つ者同士、最上の剣戟が望めそうだ」
「……『武』だと? ハッ」
 と、ランドルフは呆れ声を零す。
「違うな──己の、そして誰かの命を護るのが『武』の道さ! 死なない奴が武人を気取るなんざ茶番にもなりゃしねえ!」
「確かにそうだな」
 アルシエルも声音を微かに荒れさせ、肩を竦めていた。
「斬り合いがしたいんだったら人を巻き込まず、勝手にお前らだけでやってろっての」
「……汎ゆる者を斬ってこそ、武勇だ」
 罪人はあくまで言って、刀を下段に構え直す。
 だからランドルフはそうかい、と自身も拳を強く握り込み。
「だったらこっちも同じだ。中身の伴わねえCosplay野郎は──とっとと御退場願おう」
 地を蹴って一息に懐へ。螺旋渦巻く掌打を打ち込み、肋を軋ませた。
 その機にクレーエも至近へ奔り、夜風の如く鋭き剣閃を重ねてゆく。呻く罪人が剣撃を返してこようとも、それを受け、流し、躱し──剣戟を続けた。
 殊更に披露する機会はなくとも、自身は紛うことなき刀剣士。故に敵が斬り合いを求むなら、それを真っ向から受けるだけの力があるから。
 無論、その上で。
「譲るつもりはないよ。──桜」
 声に桜がふわりと飛翔。クレーエと揃いの雰囲気を持つ和装を棚引かせながら──虚空より桜の枝を撓らせ、巨躯の腕を払う。
 そこへクレーエは連撃。鎌鼬の如き斬撃の嵐を加えていった。
 血を吐く罪人は、それでも斃れず居合を放つ。衝撃波となって飛んできたそれは、暴風のようにラグエルの膚を裂いてきた。
「……」
 耐えながら、ラグエルはその衝撃に殺意の深さを実感する。
 妖剣士の自分と刀使いのエインヘリアル。その本質は何処か似通っているのではないかと──腰に佩く、禍々しい黒色のオーラに包まれた喰霊刀に触れながら。
(「この狂気に飲まれれば、私もああなるのだろうか」)
 微かに眦を下げる、その思考は──しかし直後に断ち切られた。
「そこまでにしとけよ」
 それは澄んだ鎌を掲げる、アルシエル。
 苛立ちを向ける先は、刀を振るい続けている罪人だ。
「アレに傷をつけて良いのは、お前じゃねぇっての」
 兄を一瞥しながら、振りかぶった刃を投擲。巨躯の腕元を深々と斬り裂いて攻撃を止めさせていた。
 ラグエルははっとしてから、アルシエルへ駆け寄る。
「アルシエル……!」
「……一応言っとくが心配してるわけじゃないからな? 違うから喜ぶなよ?」
「うん……!」
 面倒そうにするアルシエルだったが、そんな様子をも喜ぶように、ラグエルはこくこくと頷いているのだった。
 すぐ後には、水凪が剣を握っている。
「治療を行おう。青嵐」
 勿忘草の瞳を向けると、それに鳴いて応えるのが美しき匣竜。
 水凪の肩口でふわふわと羽撃くと、澄明な青銀の輝きを閃かせていた。燿く水流のようになったそれは、ラグエルへと流れ込み傷を祓ってゆく。
 同時に水凪自身も剣先でアステリズムを描き、星空の加護を現出。暖かな心地で中衛を包み、アルシエルも共に癒やしていた。
 ラグエルも自分達へ治癒の氷雨を降らせれば──ミアンもまた清らかな靄を足元より昇らせて中衛を回復している。
「では、反撃へ」
 体力が万全と見れば、ミアンはそのまま攻勢へ。陽光の如き後光を発現すると、流線を描かせて放出。巨躯の節々を貫いた。
 血煙を噴きながら、罪人は苦渋を浮かべる。無論、前進は止めずに刃を振り上げるが──その接近をオルティアは許さない。
「……させない、から」
 脚に力を込め、地を踏みしめて。
 下段から掬い上げる剣戟は、純粋に斬るための剣技とは違う。膚を抉りながら、同時に巨体を振り飛ばすそれは──拒み、弾く一撃。
 巨躯が大きく後ろに投げ出されると──。
「後はお願い、したい」
「んう、わかった」
 応えて待ち構えるのが勇名だった。
 体勢を崩しながらも、罪人は剣を翳して防御を目論む。だが奔りながら、大振りの鎌を振り上げる勇名の方が疾い。
「これでざっくり、いくぞ」
 小柄から放たれる一撃は、鋭利。高速の回転を伴って投げ出された刃は、巨躯の具足を突き破り、躰を引き裂き血潮を散らせていった。

●道
 血溜まりの中で罪人は苦悶を零す。
 声音には、全てが信じられぬという感情が滲んでいた。
「まさか、俺が……敗北するというのか」
「……ええ」
 ミアンは静かに、事実を告げる。
 それは始めから決まっていたのだと言うように。
「罪人とはいえエインヘリアルの方にこう申し上げるのも奇妙な感覚ですが。これは最早単なる処罰でもなく──処刑です」
「……」
 罪人は唸り声を零しながらも、死を拒むように自己を癒やした。が、そこへ真っ直ぐ疾駆するのが勇名。
 腕に装着した掘削機を猛烈に駆動させて──零距離から突き出して一撃。
「ドリルぎゃりぎゃり、だぞー」
 腹部を貫いて罪人の加護を粉砕してみせる。巨躯がふらつき下がると、勇名は皆へも振り返って。
「みんなで、どんどんいくぞ」
「ああ」
 応えるアルシエルが『Blood Bullet』。血を媒介にした弾丸を放つと、ラグエルもまた凍て風を吹かせて、氷雪で罪人の全身を刻んでいた。
 鈍る動きで、罪人も刃を振り回すが──ミアンが自身の躰を以て受け止めると、同時に黄金の光を躰に巡らせ自己回復。
 水凪も眩いオーラを与えて傷を塞ぐと、連続で攻撃へ。掲げた腕に雷光を降ろし、その輝きで罪人を穿った。
「畳み掛けてくれるか」
「うん」
 頷くクレーエはSict《Cattus Vnenum Est》──漆黒の猫を駆け出させ、踊る爪撃で巨躯の命を削いでいく。
 罪人は朦朧と、間合いを取ろうとする。けれどその動きを感知魔術で把握して、オルティアは反射的に肉迫していた。
 蹂躙戦技:舌鼓雨斬──近付くことへの恐怖心を押し閉ざしながら放つ技は、オルティアにとっては普遍のことではないし、例外と言える。
 けれどそれが必要な刃なら、振るうのだと。光明燿く一太刀で巨躯の腕を斬り飛ばした。
 斃れゆく罪人へ、ランドルフは銃口を突きつけている。
「『死』への恐怖を味わいな!」
 刹那、瞬く輝きと共に放たれるのは『バレットエクスプロージョン』。
「喰らって爆ぜろ! Cosplay野郎ッ!!」
 魔法力による爆発を生み出す特殊弾は、命中すると共に烈火を生み出して。巨躯には耐えきれぬ熱量で肉体を散らせてゆく。
「あの世に逝ったらテメエも切り刻んでもらうといいぜ、得物は鋸らしいがな」
 ランドルフが言って、銃をくるりと回して収める。煙が晴れると──罪人は霧散して、残骸すら残っていなかった。

 剣道場に被害は及んでいなかった。
 それでも地面に荒れた箇所はあったから、勇名はヒールをして回っている。
「これで、おっけーか?」
「うむ」
 頷いて、自身も修復作業をしていた水凪は見回した。野外の平地は元通りに均されて、美しい景観が戻っている。
「……良かった」
 オルティアは小さく安堵の息をついていた。これで道場の者達を待たせず、すぐに帰ってきて貰えると思ったから。
 実際、無事を伝えると彼らは迅速に戻って、番犬達に礼を言った。
 そんな彼らにランドルフは避難時の非礼を詫びる。
「言い方がキツくなって悪かったな」
 師範も門下生も、いいえと首を振り。そのおかげで今自分達の命があるからと、また礼を述べたのだった。
 ああ、とランドルフは頷く。そして彼らの笑顔を護れたことに改めて安堵して──誇りにも思った。
 程なく鍛錬が再開されると、ミアンは暫しその風景を見学する。
「私の処刑技巧とは正反対の活人の武──」
 彼らの武はこういうもので良いのでしょう、と。
 それぞれに求める道と力がある。真摯に剣に向き合う彼らに、その事を自身も学ぶ思いだった。
 拍を刻むような剣士達の気合の声を──ラグエルは一瞥しつつ、弟へ声をかける。
「私と、一度で良いから手合わせをして欲しいな」
 今度こそ弟を守れるように。
 そしていつか自分がエインヘリアルと同じように斬る事に執着した時に止めて貰えるように。ある程度弟に実力は追いついたと感じているから、それを確かめたくて。
「いつかな」
 と、アルシエルは適当に流した。
 兄が追いついてきたことは判っている。だからこそ、しっかりと肩を並べてからと、そう思ったから。
 ラグエルは苦笑する。
「すぐに追いついてみせるから、待っててね」
 強い決心と共に。今はまず、アルシエルと並んで帰路についていった。
 クレーエもまた歩み出す。
 脳裏には奥さまの顔と──和風の景色から想起した、お菓子を浮かべて。
「水菓子でも、お土産にしていこうか」
 それに桜が頷きを返すから、クレーエは微笑んで。街へと歩を進めていった。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年6月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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