夜光を翔ける

作者:崎田航輝

 摩天楼のそびえ立つ都会は、夜こそ眩い。
 燿く極彩色のネオン、道路を行き交う車のランプ。無数の光が明滅し、幾重ものざわめきが折り重なって、賑やかな様相は途絶えることを知らなかった。
 ただ、そんな街の中にも建物の間には薄暗闇が存在していて──その一角にひとつ、人知れず転がっている機械がある。
 それは流線型の美しさと、無駄の削がれたシンプルな構造を併せ持つ四本腕の小型機──ドローン。
 空撮用のカメラのついたモデルで、いつかは街を空から映していたのだろう。だが空中から落下したのか、壊れてから投棄されたか。それは既にプロペラも折れていて、ボディもくすんでいる。
 おそらく捨て置かれてからかなりの時間が経過しているのだろう。今はただ都会の隙間に横たわり、誰に見つかるでもなくただ眠るばかりだった──が。
 そこへかさりと音を立て、這い寄ってくるものがある。
 それはコギトエルゴスムに機械の足の付いた、小型ダモクレス。ドローンに辿り着くとその機体と一体化し──ばきりと音を鳴らして巨大化。
 プロペラで強い風を起こし、辺りに風圧を撒きながら飛び立っていた。
 カメラを下方に向けて、夜景の中に蠢く人波を捉える。直後には、高速で降下して──そのドローンは人々の只中へと襲いかかっていった。

「集まって頂きありがとうございます」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)はケルベロス達に説明を始めていた。
「本日出現が予知されたのはダモクレスです」
 とある市街の一角に、放置されたドローンがあったらしいのだが──そこに小型ダモクレスが取り付いて変化してしまうのだという。
「ドローン、ね」
 と、呟くのは六星・蛍火(武装研究者・e36015)。仄かに静かな声音で、イマジネイターへ視線を向けていた。
「警戒していた通りの敵が出た、ということね」
「ええ。蛍火さんの情報提供により、起きる悲劇を未然に防ぐことが出来ます」
 このドローンが人々を襲う前に撃破を、と。イマジネイターは皆を見回していた。
 蛍火も頷いてそれに応えると、イマジネイターは説明を続ける。
「ダモクレスとなったドローンは、夜の街に飛び出します」
 ビル街を縦横無尽に飛び回り、複雑な軌道を取って戦ってくるはずだ。
「機動力に、遠近に渡る攻撃。相応の戦闘力のある敵と言えるでしょう」
「こちらも戦い方を考えていったほうが良さそうね」
 蛍火が言うと、イマジネイターはええ、と応える。
「ビル上を移動して位置取りを考えたりするなど、策を練っておくと良いかも知れません」
 元の姿より巨大化してもいるので、飛び乗ったり掴まったりして攻撃を加える事もできるだろう。
「街を守るなら、しっかりと撃破しなければね」
「ええ。ぜひ、頑張ってくださいね」
 イマジネイターはそう声に力を込めた。


参加者
源・那岐(疾風の舞姫・e01215)
パトリシア・バラン(ヴァンプ不撓・e03793)
塩谷・翔子(放浪ドクター・e25598)
六星・蛍火(武装研究者・e36015)
モヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)
カロン・レインズ(悪戯と嘘・e37629)
天瀬・水凪(仮晶氷獄・e44082)
如月・沙耶(青薔薇の誓い・e67384)

■リプレイ

●夜光
 天鵞絨のような深色の夜空を、街明かりが眩く照らしている。
 眠らぬ都会も、今は人々が退避して静寂。
 けれどその中に唯一、建物の隙間から上昇してくる機械を見つけて──六星・蛍火(武装研究者・e36015)はビル上から視線を注いでいた。
「まさか、私が危惧していたダモクレスが本当に現れるとはね」
 吹き上げる風にこがねの髪を強く踊らせながら、瞳に映すそれは──四肢のように張り出した腕にプロペラを付けた小型機のダモクレス。
「ドローン、ですか?」
 如月・沙耶(青薔薇の誓い・e67384)はその姿を確認しながら、柔らかな言葉を零す。声音には物珍しげな色も含まれていた。
 そんな義妹の表情に源・那岐(疾風の舞姫・e01215)は頷きを返している。
「最近は性能の良い色んな種類があるそうですが。沙耶は外の世界に出て一年も経ってないから、馴染みが薄いかな?」
「ええ、でもテレビでよく見ますから。場所やものを調べるのに最適なんですよね?」
 悠々と浮上し始めているその機械を見て、沙耶は言葉に実感を込めた。
 確かに、と。
「あれが、人が集まるところを的確に攻撃するようになったのなら──」
「……ぞっとしますね」
 那岐も想像して微かに声音を静める。
 あれが既に、それを実現できるだけの兵器なのだと識っているから。
 ふむ、と。隣の建物へ昇っていた天瀬・水凪(仮晶氷獄・e44082)も、短く敵影を見つめている。
 周囲に人はなく、強大な相手に比べればあのドローンはまだまだ小さな敵。現状、多大な危機ではないとも言えた。
 だが、それでも看過出来ないことに変わりはないから。
「油断せずに挑もうか」
「そうですね」
 那岐も頷くと、沙耶へ視線を送って。
「無辜の命を護る為に。行きましょう、沙耶」
「ええ、姉様、止めましょう。私が仕掛けますので、後詰めお願いできますか?」
「OK」
 那岐が応えると、沙耶は言葉に違わず。ダモクレスを見下ろすと──白翼を広げて飛翔していた。
 そのまま夜風に乗って滑空しながら、杖先へ月光を収束。その輝きを瞬く雷光へと転化して放出した。
 弾ける衝撃がドローンへ命中すると──既に那岐は跳躍。くるりと廻りながら落下して、痛烈な蹴り落としを見舞っていく。
 直下への慣性を受けたダモクレスは、プロペラを唸らせて地上への逆戻りを拒む。だがその頃には水凪が手を伸ばしていた。
「……止まっていてもらおう」
 瞬間、下方から陽炎の如き揺らめきが生まれる。
 それは大地に潜む死者の無念。這い寄るように、捕らえるように──『喚起』されたその全てがドローンへ縋り動きを鈍らせた。
 同時に水凪の傍から舞い降りるのが匣竜の青嵐。蒼く煌めくブレスを重ね、機械の躰へ傷を刻んでゆく。
「今のうちに、頼む」
「では戦線の強化を実行致しマス」
 生まれた間隙に、応えて指先を翳すのはモヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)。
 収集したグラビティを碧色に輝かすと、地球上に渦巻くエネルギーの軌道を魔法陣化。虚空に光を描くように円陣を成し、眩い煌めきを放出していた。
 『ヴォルテックスプログラム-β』──前衛へと溶け込んでゆくその光が、破軍の力を齎してゆく。
 時を同じく、塩谷・翔子(放浪ドクター・e25598)もふと夜空を仰いでいた。
 藍色の天球は、晴れ渡っていて星も覗ける程。けれど翔子が口遊むように雨を喚ぶと──澄んだ空からぽつぽつと清らかな雫が降る。
 それは『紅雨』。後衛の仲間に触れた清廉な雨滴が、破邪の力を与えていた。
「これで一応、準備は整ったかね」
 翔子が言って見据えていると、ドローンも再び浮遊し銃口を向けてくる。
 だが敵が攻撃してくるのは、予想済み。翔子が腕に巻き付いていた白竜、シロを素早く翔び立たせると──。
「頼みマス」
 モヱの声に応じてミミックの収納ケースもビル上を駆け出していた。
 羽撃く青嵐も加わったその前線に、並んで跳ぶのが──パトリシア・バラン(ヴァンプ不撓・e03793)。
「さあ、サーヴァントちゃんたち。気合いれてイくワヨ」
 言いながら、しかと防御態勢。
 背後の仲間に射線が通らぬように、自らを堅固な盾として。
「倒れなければ勝てル!! シンプル!! ヤるぞ野郎ドモ!」
 気合の漲る声音で、ドローンの射撃を真正面から受け止めてみせる。
 弾丸の雨の如き衝撃は無論、軽くない。けれどサーヴァント達と共にパトリシアは耐え抜き斃れなかった。
 直後には、カロン・レインズ(悪戯と嘘・e37629)が流体を燦めかせている。
「少しだけ待っていてください。治療も一緒に行いますから」
 宙に天の川を架けるよう、伸びやかに拡がったそれは──星々を生み出すように無数の粒子を散らせてゆく。
 仄かな暖かさを持つその光は、触れる程に傷を祓って意識までもを澄み渡らせていた。
「月影も、サポートをお願いね」
 と、蛍火が呼びかけると──黒の匣竜も鳴き声と共に治癒の光を注ぎ、パトリシアの体力を保ってゆく。
 パトリシア自身も降魔の力を金籠手に乗せて一撃。思い切りのいい打突を加えて生命力を奪い取っていた。
「これで問題ないネ」
「それじゃあ──フォーマルハウト」
 よろしくね、と。
 カロンが傍へ瞳を向けると、傍のミミックがかぱりと肯定の合図。再度の射撃を狙おうとしているドローンへ、耀くエクトプラズムを飛ばす。
 靄に絡まれ速度を緩めたダモクレスへ──躊躇いなく飛び降りるのが蛍火。
「この拳を、見切れるかしら?」
 身軽に宙返りしながら、放つのは靭やかな拳。重力を加えた打突で敵を大きく下がらせていた。
 その頃には翔子が前衛の知覚強化を遂行。沙耶も『運命の導き「正義」』──信念を確固とさせる祝福を与えて後衛の抗魔の力を底上げしている。
 遅れてダモクレスが高く舞い上がろうとするが、既に遅い。
「させません」
 着地していた那岐が、大槌から蒸気と共に砲弾を発射。機械腕の一端を穿つと──モヱもまた砲口を真っ直ぐに向けて。
「追随しマス」
 爆炎を上げて、砲撃が一直線に飛来する。近距離からの衝撃にプロペラの一つを散らせて、ダモクレスは高度を大きく下げていった。

●夜奔
 短い間隙に、番犬達は包囲網を整える。
 その中で、地面付近から反撃の機を窺っているドローンを、カロンは見つめていた。命を得た機械の躰にも、戦い前からあった古創やくすみが大きく残っている。
「ドローンって比較的新しいイメージだったんですけど……こんなことになってる個体もあるんですね」
 打ち棄てられたその証左を瞳に映して、抱くのは寂しさにも似た物悲しさだった。
 ダモクレスはただ、一層羽を回転させて浮上の助走をつけている。
 過去を取り返そうとしているのか、怨みにも似た思いが在るのか。心の無いその機械が、如何な目的意識に突き動かされているのかは判らない。
 けれどそれが無辜の人々を害するなら、退くわけにはいかない──それだけは確かだから、カロンは仄かに声音に力を込めて。
「……行きましょう」
「勿論ヨ」
 応えるパトリシアは、既に真っ直ぐに疾駆し始めていた。
 ビルの屋上を駆け抜け、縁に足を駆けて跳ぶ。一段高い建物へ移ると、更に跳躍を重ねて高みからダモクレスを見下ろしていた。
 同時に頭上に掲げるのは、大気を歪めるほどの魔力の塊。
「コレで、トラウマになってしまえばイイヨ!」
 直下に投げ下ろした暗色の輝きは、違わずダモクレスを包み、その機械の魂をも昏き迷夢に陥れる。
 カロンは空から一等星を降ろすよう、そこへ眩い光を蹴り出して。ドローンの腕の一端を鈍い音と共にひしゃげさせた。
「さあ、今です──」
「うむ」
 短く返しながら、光翼で滑空するのが水凪。
 ネオンが明滅する夜の中を、一直線に舞い降りて。光の軌跡を描きながら、銃の照準にしかとダモクレスを捉えていた。
 瞬間、奔る輝きは氷気の蒼。
 突き抜ける零下の衝撃に、機械のボディが軋みを上げると──そこで青嵐が水凪の傍から飛び出て体当たりを畳み掛ける。
 乾いた音と共に、ドローンは地面へ激突した。それでも停止せずに風圧の塊をばら撒いてくる、が。
 パトリシアがしかと防御すれば、直後には翔子が柔く握った拳をそっと開く。
 するとふわふわと揺蕩うのは、光の蝶。
 翔子が思い描く侭に、羽を動かしパトリシアへと触れたそれは──淡く消えて優しい癒やしを齎していた。
 仲間の体力に憂いはない。けれどダモクレスもまた再び地面から離れつつあるのを見て、翔子は軽く息をついていた。
「しっかし、あんなモンが空を飛ぶんだから不思議だねェ……ケルベロスも空飛んだりするし、今更かもしれないけどさ」
「そうデスネ。飛行するダモクレスがいてレプリカントの誰も飛べないのは不思議では御座いマスガ──」
 と、モヱは自身の体を見下ろすように呟いて。
 それでもと、すぐに視線を敵に向けた。
「世界中の皆様と繋がる能力は、決して悪くはありマセン」
 その感覚もその心地も、心を得なければ手に入らなかったもの。故にこそ、同じ機械の命でも敵であるならば見逃すつもりはないから。
「参りマス」
 指を突き出し、電子情報配列を撃ち出す。
 ダモクレスの内部へ侵入したそれは、自己複製によってウイルスへと変貌。動力を深く蝕み始めていた。
 その好機を、沙耶は逃さない。
「姉様、合わせます」
「では私から行きますね」
 那岐は即座に応えて剣先に焔を滾らせていた。
 動きに迷いはない。沙耶には義妹へ向ける愛情だけではなく、深い絆を持つ戦友としての信頼も抱いているから。
 瞬間、那岐が燃え盛る御業を放ってドローンを掴み上げると──それに応ずるように、沙耶が鳥の姿を彷彿させる木槌を向けていた。
 鳴いて嘯くように、囀るように。風音と共に放たれた砲弾は機械の胴を直撃、躰に深い亀裂を刻み込んでゆく。
 傾いだダモクレスはカメラを巡らせながら、間合いを測って自己修復を試みた。けれどそれによって得た力を、カロンは捨て置かない。
 ──勝利を導く星達よ。
 空を見上げて語りかけるように。その眩い導きを望むように。
 『夜空案内のセプテントリオン』──明滅する天球が静かな光を降ろしてドローンの加護を奪い去っていた。
 その輝きに敵が惑う内に、一息に奔って彼我の距離を埋めるのは蛍火。ゴシック調の衣の裾を柔く棚引かせながら、宝刀へ月色の冷気を纏わせている。
 一瞬遅れてダモクレスはプロペラを駆動させるが、既に蛍火は至近距離。
「これで、氷漬けにしてあげるわ!」
 振りかぶる刃から溢れる温度は、冬の星を思わせる清冽な氷点下。刹那、繰り出す剣閃がドローンの腕の一本を断ち切り、その躰を地へと叩きつけた。

●夜街
 ハレーションする街明かりの中で、機械の影が不安定に揺れる。
 ダモクレスは破損した躰で、あくまで飛び続けようとプロペラを動かしていた。均衡を保つことすら出来ぬまま、自己を癒やして少しでも生き永らえようとして。
 那岐は静かに見つめながら、握る剣を決して下げはしない。
「頑張って働いていた事は評価しますが」
 故にこそ容赦は与えられない、と。
 地を蹴って踊るように、鮮やかな剣閃を奔らせる。『風の戦乙女の戦舞・漆黒』──美しき舞いが冥色の風を巻き起こし、ドローンが得た力を破砕した。
 後退するダモクレスへ、カロンは杖先を向ける。放たれた光は直線を描いて命中し、機械の体を深々と貫いた。
「今です、次の攻撃を」
「ええ」
 応える蛍火は壁を蹴り、夜空を背に翻る。
 足へ抱く光は、街明かりと星の明かりをオーバーレイしたように眩く。煌々と魔力を棚引かせる蹴撃がダモクレスを突き飛ばした。
 破片を散らせながらも、ドローンは距離を取ろうと蛇行しながら上昇する。だが翔子がビルの屋上からそれを見下ろしていた。
「逃しはしないよ」
 軽く足場を蹴って宙へ踊ると、針を投擲してウイルスを注入。ばちりと白光を瞬かせて動力をショートさせる。
 そこに隣の建物の屋上から、モヱが狙いをつけていた。
「射撃シークエンスへ移りマス」
 瞬間、撃ち下ろした砲弾でダモクレスを穿ち、破砕音を伴って再び地へ堕とす。
 翔ぶ力を失ったドローンは、身じろぐことしか出来ない。
 それでも足掻くように風の刃を放った、が。その衝撃を腕で弾きながらパトリシアが肉迫していた。
 連撃をする猶予も与えず、そのまま一撃。魔力閃く拳を叩き込む。
「後は頼むネ!」
 その言葉に頷く沙耶は、揺蕩う氷気を魔弾へ変えていた。そうして指先を、後方へ煽られたドローンへと向けて。
「──お勤め、ご苦労様です」
 労いの声と共に、発射。終わりを導くようにドローンを貫き凍結させていた。
 機能を停止させてゆくダモクレスへ、水凪が飛来。垂直に宙を滑り降りながら、翼で更に加速し零距離に迫っている。
「これで最後とさせてもらおう」
 速度のままに、放つのは水塊の如く透明に燿くオーラ。蹴撃と共に撃ち込まれたそれは強く弾け、飛散し、ドローンを粉砕した。

 夜の街に静けさが戻る。
 着地した水凪は、機械の残骸に視線を遣ってその沈黙を確認していた。
「終わったな」
「みたいだねえ」
 建物から地面へと降り立った翔子も、頷き見下ろす。
 砕けたドローンは既に原形もなく、樹脂や金属の欠片を辺りに散らすばかり。
 棄てられて、人の敵として終わった機械。
 カロンにはその事が少し可哀想に思えて──破片を拾い、埋められるところを探して供養することにした。
 これで少しは浮かばれてくれるだろうかと、静かに思いながら。
 パトリシアは暫しその様子を見てから、戦場へ視線を戻す。
「……廃棄物のダモクレス化、これで何回目カシラ」
 思えば長く続く戦いで、そのたびに人も街も危機に瀕する。何とか元を絶てないのだろうかと、そんな思いももたげていた。
 それでも今ここで、多くの人の命を守れたのは事実だから。
「ヒールだけはしておこうカ」
「ええ」
 蛍火は上方を仰ぐ。地面だけでなく、戦いに使った建物にも点々と傷が残っていた。
「直せるところくらいは直しておかないとね」
「そうデスネ。入念に、修復致しマショウ」
 モヱも路へヒールをかけながら、低い建物から高い建物へと順番に移動しつつ修復作業をこなしていく。
 ヒールが済むと、助力していた那岐と沙耶は視線を巡らせた。警察へも連絡は終わらせてあり、徐々に人通りも戻りつつある。
 そこにあるのは足音と光が交差する、賑やかな夜の街。
 人々を空から脅かすものは、もう存在せず。那岐は一つ頷いて、歩み出す。
「帰ってお風呂ですね」
「そうですね」
 沙耶も隣に並んだ。
 家族がお風呂を沸かして待っている、だから帰るべき場所に帰ろうと。雑踏の音に、自分達の足音を溶かして──帰り道へと進んでいった。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年6月5日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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