翠風の季節

作者:崎田航輝

 過ぎる春を見送って、初夏の香りを感じる頃。
 新たな季節の色彩に彩られて、人々を赴かせる景色があった。
 街道から続くそこは──散歩道を植物が飾る、緑豊かな庭園。
 歩むほどに、開き始めた花の鮮やかな色合いが美しく。アーチを描いて道に架かる葡萄棚もまた開花時期で、微細な花で趣きある眺めを作り上げていた。
 その一角に建つカフェもまた、人々で賑わっている。
 パフェやケーキ等のスイーツと共に、人気なのは瑞々しいフルーツを使った飲み物。
 苺にオレンジ、林檎にさくらんぼ。色彩豊かな果実を使ったスムージーに、フルーツティー。アップルサイダーを始めとするドリンクや、シードルを含む果実酒まで。
 美しい植物を眺めながら楽しめる爽やかな甘味に、人々は舌鼓を打っていた。
 と──そのカフェの裏手側。
 建物の一角、資材庫となっているそこへ、かさりかさりと這い寄る影がある。
 それはコギトエルゴスムに機械の足が付いた、小型ダモクレス。
 窓の隙間から内部に侵入すると、旧型のジューサーへと近づいて。いつから使われていないのか、置かれたままのそれに──入り込んで一体化していた。
 俄に動き始めたそれは、手足を生やして資材庫から出てゆく。そうして草花に彩られた散歩道へと飛び出して──人々へと襲いかかっていった。

「……刻々と、季節が移り変わって行くわね」
 爽風の吹くヘリポート。
 明るい太陽の下、キリクライシャ・セサンゴート(林檎割人形・e20513)は風の暖かさを感じて呟いていた。
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)もそうですね、と頷いている。
「もうすぐ夏が訪れる……時間の流れは、早く感じるものですね」
 ただ、そんな季節の景色を楽しめる庭園に、ダモクレスが出現してしまうのだと言った。
 園内のカフェにある資材庫に旧いジューサーが置かれていたようで……そこに小型ダモクレスが取り付いて変化したものだという。
「このダモクレスは、人々を襲おうとするでしょう」
「……阻止、しなければならないわね」
 キリクライシャが言えば、イマジネイターも頷いて説明を続ける。
「戦場となる場所は庭園内の道となります」
 一般人は警察の協力で事前に避難がされる。こちらは到着後、敵を迎え討つことに集中できるでしょうと言った。
 景観も護れるはずですので、とイマジネイターは続ける。
「無事勝利できた暁には、皆さんも庭園を楽しんでいっては如何でしょうか」
 葡萄棚や花園を眺めて散歩したり、カフェで休みながら景色を楽しむのもいいだろう。
 テレビウムのバーミリオンが見上げてくると、キリクライシャはそっと頷く。
「……それも、楽しみね」
 そのためにも戦いはしっかりしなければね、と。言えば、イマジネイターもええ、と声に力を込めた。
「皆さんならば、人々も庭園も護れるはずですから。ぜひ頑張ってくださいね」


参加者
メリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)
シャーリィン・ウィスタリア(千夜のアルジャンナ・e02576)
火倶利・ひなみく(スウィート・e10573)
羽鳥・紺(まだ見ぬ世界にあこがれて・e19339)
キリクライシャ・セサンゴート(林檎割人形・e20513)
ヒエル・ホノラルム(不器用な守りの拳・e27518)
姫神・メイ(見習い探偵・e67439)
静城・依鈴(雪の精霊術士・e85384)

■リプレイ

●翠彩
 そよぐ花木が、柔風に季節の薫りを抱かせる。
 緑が鮮やかに映える庭園。歩み入る静城・依鈴(雪の精霊術士・e85384)は暖かな木漏れ日に瞳を細めていた。
「もう夏が訪れる季節か……時間の流れって早く感じるわね」
「今の時期、こんな庭園でのんびりと過ごすのも心地良さそうよね」
 姫神・メイ(見習い探偵・e67439)も帽子の鍔に手をかけ見回す。
 在るのは銘々の色彩を帯びた草花達。遠目に映るカフェから、甘さも香ってくるから。
「この季節だからこその飲み物なんかも、楽しみたいものね」
「そのためにも──迷惑なダモクレスは早く倒してしまわないとね」
 と、依鈴が見据える先。
 路の向こうから硬質な足音を鳴らしてくる影があった。
 手足を生やしたその円筒形に、シャーリィン・ウィスタリア(千夜のアルジャンナ・e02576)は頬に仄かに手を当てて。
「まあ──ジューサーに取り憑くなんて、嫌だわ」
「こういったダモクレスも、いなくならないね」
 うーん、とメリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)も息を零しつつ見つめていた。
 それでもそれが敵であるならば、すぐに戦いの態勢へ。
「ひとまずっていうか、見つけ次第倒すしかないのかな」
「そうね。憩いのひと時を邪魔するのなら」
 ──相応の覚悟は出来ていまして?
 日除けのヴェール越しに、月彩の瞳に怜悧な色を湛え。シャーリィンは光を透かす翼を広げて翔び立っている。
 ダモクレスは敵意を以て応えるよう、回転刃を唸らせる、が。
 既にヒエル・ホノラルム(不器用な守りの拳・e27518)がその掌に煌々と蒼光を輝かせていた。
「受け取ってくれ」
 静やかな声音と共に、シャーリィンへ打つのは『双掌氣貫』。内部に宿った氣が魂を研ぎ澄ませ、鋭敏な知覚を齎した。
 同時、メイが銀粒子を撒いて強化を重ねれば──剛速を得たシャーリィンは滑空し一撃。夜風を伴う鮮烈な蹴りを叩き込む。
「メリルディちゃん」
「うん、任せて」
 と、メリルディも陽色の魔力を渦巻かせ魔弾を発射。眩い衝撃を与えると──ヒエルのライドキャリバー、魂現拳も氣を纏い突撃。樹脂の躰を軋ませる。
 ダモクレスはそれでも反撃の凍風を起した。が、そこへ冷気を拭うそよ風が吹く。
「もう、寒い季節じゃないからね!」
 それは真っ直ぐに火倶利・ひなみく(スウィート・e10573)が注ぐ『とある令嬢の眸』。
 氷雪を澄み渡らせるよう、優しく視界を撫でてゆくその心地が──零下の苦痛を取り祓い傷を癒やしてゆく。
 陽光が戻れば、そこに林檎樹を生き生きと成長させるのがキリクライシャ・セサンゴート(林檎割人形・e20513)。
 時を早回したように生らせた黄金の果実が、風に揺れて落ちると──弾ける甘露で皆を守護し、体力を保っていた。
 視線を戻したキリクライシャは、敵の構造を素早く見取る。風を生むモーターに、果汁を湛えた筒、鋭い刃。
「……よく冷えた風の中を甘く誘惑してくるのね。……ならその刃で、グラニテでも作ってくれるのかしら?」
 呟かれた言葉に、ダモクレスはまるで実践してみせるように再び駆動する、が。
「タカラバコちゃん!」
「……リオン」
 ひなみくとキリクライシャが呼びかければ、ミミックとテレビウムが疾駆。
 タカラバコがカラフルな飴玉を撒いて惑わせれば、バーミリオンが一閃、ナイフで足元を裂いてみせた。
 傾ぎながらもダモクレスは抗おうとするが──。
「──そこまでです」
 静風の声音で羽鳥・紺(まだ見ぬ世界にあこがれて・e19339)が虚空へ手をのばす。
 瞬間、揺らめくのは再びの眠りに誘う闇色の靄。
 それは敵自身から生まれる悪夢。『まつろう怪談』──自身の行末に恐怖を抱くよう、ダモクレスは動きを止めていた。
 その一瞬に、依鈴が純白のスライムを投擲。躰を穿ってみせると──。
「次、お願いね」
「うん」
 頷くメリルディが小さな幻影を招来する。
 尾をゆらりと揺らす黒猫の姿をしたそれは、咥えたカードから槍騎兵を召喚。冴え冴えとした氷気の槍を突き出させて──機械の躰を貫いてゆく。

●烈戦
 風の間に、機械の音が鳴る。
 弱りながらも、ダモクレスは刃の音を響かせ続けていた。それは未だ自身が動けることを訴えているかのようで。
「以前はきっと、私たちのように庭園を訪れる者に美味しいドリンクを提供するため、一役買っていたのでしょう」
 それが死を運ぶ凶器となった事に、紺は悲運を感じないではいられない。
 故にこそ、と。
「今まで良くしてくださった功績が台無しにならないためにも、悲劇を起こす前に食い止めましょう」
「ああ。これほど景色の良い、穏やかな場所で惨劇を起こさせる訳にはいかないからな」
 ヒエルが呟けば──うん、とひなみくも力強く頷いた。
 風景ばかりでなく、美味しいお菓子に素敵な飲み物、楽しみは幾らだってあるのだから。
「其れを邪魔するやつは許せないんだよ~!」
「……そうね」
 と、翼で風を泳ぐキリクライシャも──バーミリオンの画面には果物画像ばかり。
 心で楽しみにしながら、けれど仕事はしかと全うしてみせるように『林檎剥』。靴先に刃を添わせ、林檎を剥くように曲線蹴撃を見舞う。
 破片を散らすダモクレスへ、紺は連撃。光剣で眩い斬撃を加えれば──雪白の翼で飛翔した依鈴が手を翳し。
「──吹雪の様に舞う鈴蘭を」
 その身に受けてみなさい、と。
 掌より零すのは『鈴蘭の吹雪』。はらはらと雪のような白花が風に舞い、吹き抜けて。薫りと共に敵を包み込んでゆく。
 ダモクレスは足掻くように刃を飛ばす。が、面前に滑り込むヒエルが、腕に氣を纏って衝撃を弾き返してみせた。
 ダメージこそゼロではない。だが即座に気合を発露して痛みを吹き飛ばせば──。
「私も手伝うわね。少し我慢していて頂戴」
 メイがしゃらりと包帯を繰って患部に巻きつけていた。
 聖なる力を内包するそれは、淡く握りしめると光を帯びて。暖かな感覚を齎し傷を消し去っていた。
 そのままメイが連続して七彩の光で鼓舞すれば、ヒエルは増大した力を以て拳の一撃、ダモクレスを突き飛ばす。
 転げた機械の躰へ、メリルディも羽ばたいた。
「行くよ──コル」
 握られた濡羽色のナイフは、応えるように昏く明滅して命を求める。直後にはメリルディの腕を自ら振り回すように刃を奔らせ、ダモクレスの四肢を寸断した。
 ひなみくは虹色の爆発で決め手を後押しするように。
「最後はお願いだよ!」
「──ええ」
 シャーリィンは血の魔力から、飢えた毒蠍を這い出させる。
「貴方は美味しいものを沢山作って、役目を十分に果たし終えたのよ」
 だからこれで、畢り。
 夜の娘から放たれた『狂食の毒蠍』は、飢餓を満たすように鋭く毒を刺す。蝕まれたダモクレスは、砕けながら朽ちていった。

●翠の刻
 花と木々が陽を透かす景色に、笑顔と愉しげな声音が響く。
 戦いの痕を癒やして無事を伝えることで、既に人々は平和な時間を取り戻している。番犬達もそれぞれの時間を過ごし始める中──ヒエルもまた見回して。
「時間に余裕はあるか……ふむ」
 折角護った場所でもある。景色を楽しもうと、歩み出していた。
 眺めれば、花はすっかり初夏の色。清楚な紫陽花に、鮮やかな鳳仙花。薫りも入り混じり爽やかな空間だ。
 そんな彩りを楽しみながら……ヒエルはその足でカフェへ向かう。平素から、こういう場所に来ない訳でも無いけれど──。
「身内と来ると騒がしいからな……」
 一人でのんびりするのもいいだろうと、テラス席についてメニューを広げる。
「ほう……果実酒もあるのか」
 まだ日が高いが、酔わない程度に飲む分には罰は当たらないだろうと。
 ブルーベリーの果実酒でふくよかな甘さを味わうと──次に洋梨を使ったペリー酒も一杯。優しい味わいと喉越しを堪能した。
「もう少し、休んでいくか」
 風に花薫る中、時間の流れはゆったりしていて。ヒエルは暫しそんな景色と味を楽しんでいった。

 歩む度に、きらきらと明滅する陽の光が眩しくて。
「暖かいなぁ」
 爽風と共に感じられる夏の心地の中、メリルディはのんびりと庭園を散歩していた。
 明るいサルビアや薔薇に交じり、可憐な露草も垣間見えて。花々を眺めるほどに、季節の巡りを実感できる。
 そうして一回りしたあとはカフェへ。
「あ、これにしよう」
 嬉しげにメニューを見るのは、そこにフルーツティーのサイダーを見つけたから。
 仄かな甘味の林檎と、優しい酸味のオレンジを加えたものを選び。ビスケットをお共に、その一杯を味わった。
「ん、美味しい」
 甘酸っぱい薫りが快く、メリルディはその味に表情を和らげて。
 陽の光が溶けた爽やかな風に、さらさらと髪を揺らしながら──緩やかな初夏の時間を過ごしていく。

「美味しそうなのが沢山あるね!」
 ひなみくはテラス席の一角で、お品書きに瞳を煌めかす。フルーツもスイーツも飲み物も、色彩豊かで心惹きつける。
「タカラバコちゃん、何が良い? 今日は頑張ったもんね」
 だから好きなもの頼んでいいよ、と。
 隣を見ると、タカラバコはかぱかぱ楽しげに揺れて……光の靄でメニューを指していた。
「うんうん、スムージー? いいよ!」
 ひなみくが笑顔で頷くと、タカラバコは更に隣を指す。
「うんうん、サイダー? いいよ!」
 ひなみくが爛漫に応じると、タカラバコはまた更に隣へ。
「うんうん、梅チューハイ?」
 と、そこでひなみくは少し止まって。
「……お酒は駄目かな!」
 ブーイングするミミックだった……けれどひなみくはそこは譲らずに。代わりにフルーツたっぷりのケーキを頼んだ。
「美味しいね!」
 苺にキウイ、メロン。瑞々しい甘味を味わいつつ。
 タカラバコもフルーツをつまみながら、滑らかなスムージーと、サイダーのしゅわしゅわに満足げなのだった。

「──此処は、涼しいわね」
 苦手な日差しにややくったりしつつ、シャーリィンはカフェへ。日陰の席へと静かに座っていた。
 早速頼むのは、シードルとさくらんぼのパフェ。
「嗚呼、でも王道の苺も捨てがたいわ……」
 悩ましげながら、まずは二品を実食。ひんやりとした林檎の薫りと、新鮮な果実の甘さに暑さを引かせていく。
 ただ、周囲をきょろきょろ見渡せばメリルディやひなみくの姿も見えて──彼女らの頂いている品にもまた目移り。
「美味しそうね」
「ケーキも飲み物も、美味しいよ!」
 と、応えるひなみくが魅力を語れば──メリルディもまた頷きを返した。
「こっちも、果物の味がよく出てるよ」
「何方も、良いわね」
 シャーリィンは追加注文しようか迷いつつ、ビスケットをふと見遣って。
「そう言えば、メリルディちゃんの手作りお菓子もいつも美味しいわ。また何か是非作って欲しいのだわ」
 うん、と応えるメリルディと暫し会話を交わすと──更に甘味が食べたくなってきて。
「……こういう時は思い切ってたくさん頂かないと」
 食いしんぼうでもきっと怒られたりしない、と。
 決めるとケーキにビスケット、飲み物も頼み……景色と甘味を満足行くまで味わっていった。

 葡萄棚に生る花は、とても小さい。
 けれど清廉な白は翠にアクセントを加え、景色を一層爽やかにしていた。
「とても、綺麗ですね……」
 紺はアーチをくぐりながら、庭園の美観を眺めている。花と緑に満たされた眺めはまるで絵画の中のように鮮やかで。
「次は──」
 こんな景色と共に美味を楽しめたら、と。
 カフェのテラス席に座り、低い柵の向こうに景色を望みながらケーキとアップルティーを注文した。
「良い香り……」
 果実から溶け出た薫りに、淡い甘やかさ。それが芳しさと相まって紅茶は美味。
 ケーキは勿論、濃紅の苺がたっぷりのクリームと黄金比。甘酸っぱさと滑らかさを楽しんで、また紅茶を飲めば風味も倍増だった。
 それから静かに本を開き、のんびりと読書。
 これから益々暑くなるのだろう。
 心に思いつつ、まだ柔らかさの残る日差しを身に受けながら──紺は寛ぎの時間を過ごしていく。

 枝垂れる緑が爽風にそよぐ。
 キリクライシャはアーチを彩る葡萄棚を眺めながら、席に座っていた。カフェの品揃えは豊富で──。
「……どれも綺麗、ね」
 その彩に翠の瞳も仄かに忙しく動き。
 スムージーに紅茶、サイダーと、林檎を使ったものは一通り注文。旬の果物もと、苺のタルトレットに、キウイやメロンが眩いトロピカルなパフェも頼んだ。
「……美味しい、わ」
 早速頂けば、紅茶は薫り高く、スムージーは濃厚。サイダーも口当たりよく楽しめる。
 タルトレットは一口サイズが可愛らしく幾つでも食べられて。パフェはクリームやアイスと共に口に運べば冷たさが快かった。
 そうして満足の心持ちで一息つくと。
「……後はお土産、ね」
 タルトレットにケーキもと、スイーツは一通りお持ち帰り。ここでは飲まなかったシードルも、最後に買って。
(「……これを飲む場所は……」)
 彼の隣と決めているから、と。
 大荷物に困り顔な顔文字のバーミリオンと共に──美しい景色の中を帰路についてゆく。

 テラスへ上ると、翠風に薄縹の髪が踊る。
「いい眺めね」
「ええ、本当」
 メイが眼下に見える花の絨毯を見下ろしていると──後に続いてやってきた依鈴もまた、茂る季節の緑を見つめて頷きを返していた。
 僅かに高台となっているテラス席は、広く庭園内を望める。
 植物の楽園は、陽が眩くても涼やかで。快い温度の中を、二人は席につきメニューを選び始めていた。
 写真に写る品々に依鈴は感心の声音だ。
「この季節になると、美味しい果物も沢山出来るのね」
 それから、メイさんは何にする? と視線を向ける。メイも品々の名前に悩ましげにしつつも、そうねと頷いて。
「ダモクレスとの戦いに疲れたから、のんびりと飲み物を飲みたいわ。……オレンジのスムージーとか、とても美味しそうだわね」
 言って選ぶのは、オレンジに甘夏と夏みかんも合わせた橙の鮮やかな逸品。依鈴もなるほどと頷き……こちらもスムージーを注文する。
 やってきたのは苺にラズベリー、ブルーベリーを加えたベリーづくしのスムージー。
 紅紫の色合いと甘酸っぱい薫りがなんとも魅力的で──早速一口飲んでみると、ん、と依鈴は頷く。
「自然の甘みが濃厚で、とても美味しいわ」
 たっぷりの果実が含まれているけれど、テクスチャは滑らか。瑞々しいベリーの水分が舌触りを良くして、それでいて果実感も楽しめた。
「うん。こっちも爽やかよ」
 と、メイもオレンジスムージーに舌鼓。心地良い酸味の後に甘味がやってきて、小さな果肉の粒も含まれていて食感も愉しい。
「別のも頼んでみましょうか」
「いいわね」
 メイが言うと依鈴も頷き、またメニューを眺める。
 賑やかというよりは、穏やかに。友人同士、気の置けない空気の中で、二人は初夏の美味を楽しんでいた。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年5月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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