猫と踊れ、舞い踊れ!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
 廃墟と化した倉庫に、電動猫じゃらしがあった。
 この電動猫じゃらしは、多くの猫達を魅了し、虜にしたシロモノ。
 だが、あまりにも性能が良過ぎたため、猫達がグッタリするまで、じゃれ倒してしまうのが難点だったようである。
 それが原因で返品が相次ぎ、倉庫の片隅に追いやられる事になってしまったらしい。
 その場所に蜘蛛のような姿をした小型ダモクレスが現れ、電動猫じゃらしの中に入り込んだ。
 それと同時に、機械的なヒールによって電動猫じゃらしが作り変えられ、家電製品っぽい雰囲気のダモクレスに変化した。
「ネコ、ネコ、ネコジャラシィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、ダモクレスが奇妙な鳴き声を響かせ、廃墟と化した倉庫の壁を突き破るのであった。

●セリカからの依頼
「瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)が危惧していた通り、都内某所にある廃墟と化した倉庫でダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティ・チェインを奪われてしまう事でしょう。そうなってしまう前に、何としてもダモクレスを撃破してください」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ダモクレスが現れたのは、廃墟と化した倉庫。
 この場所に放置されていた電動猫じゃらしが、ダモクレスと化してしまったらしい。
 ダモクレスと化した電動猫じゃらしは、猫まっしぐらな危険なシロモノ。
 そのため、まわりにいる猫達を引き寄せてしまう可能性があるようだ。
「ダモクレスと化したのは、電動猫じゃらしです。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティ・チェインが奪われる事になるでしょう」
 そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
 資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
 ダモクレスは巨大な蜘蛛のような姿をしており、グラビティ・チェインを求めて攻撃を仕掛けてくるようだ。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
瀬部・燐太郎(殺神グルメ・e23218)
地留・夏雪(季節外れの儚い粉雪・e32286)
瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)
八点鐘・あこ(にゃージックファイター・e36004)
佐竹・レイ(ばきゅーん・e85969)
ミアン・プロメシュース(瑠璃の処罰者・e86115)

■リプレイ

●都内某所
「大気圏外じゃあ、物騒な事になっているそうだが……こっちは相変わらずだな」
 瀬部・燐太郎(殺神グルメ・e23218)は仲間達と共に、ダモクレスが確認された倉庫にやってきた。
 ダモクレスと化したのは電動猫じゃらしで、沢山の猫を虜にした罪作りなシロモノ。
 どんな猫でもまっしぐらになって、じゃれつくほどの病みつきレベル。
 そのため、じゃれ疲れてしまい、グッタリとしてしまう猫が相次ぎ、返品が相次いだ曰く付きの商品であった。
「猫じゃらしの調査をすれば、猫さんに会えるような気がしたんだけど……。じゃらし型ダモクレスですよね、そうですよね……」
 瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)が何処か遠くを見つめながら、一般人が入ってこないようにするため、キープアウトテープを張った。
 何やら複雑な気持ちではあるものの、気分は……猫ッ!
 猫の気持ちになって、キープアウトテープの位置を決めているため、野良猫にも効果がある……はず。
 例え、効果が無かったとしても、全身の毛を逆立て、シャーッとやれば、必ず分かってくれるはず。
「……とは言え、今回の敵さんは人々を襲うだけでなく、猫さんまで呼び寄せてしまいそうなので、そうなる前に倒してしまわないとです……! さすがに、猫さん達を巻き込むわけにはいきません……!」
 地留・夏雪(季節外れの儚い粉雪・e32286)が、自分自身に気合を入れた。
 こうしている間も、野良猫達が茂みから顔を出し、キュピィーンと瞳を輝かせているため、嫌な予感しかしなかった。
 だが、キープアウトテープが張られている事もあり、猫達も警戒気味に猫パンチ!
 それに気づいた右院が、野良猫達を睨みつけて、シャーッである。
「初任務。精一杯、務めさせて頂きます」
 そんな中、ミアン・プロメシュース(瑠璃の処罰者・e86115)が、緊張した様子で口を開いた。
 念のため、先程まで見回りをしていたのだが、その途中で野良猫達に襲われ、散々だったようである。
 それでも、玩具とカリカリと猫缶を上げる事で、友好関係を築き上げたため、途中で邪魔をされる心配はない……はず。
 万が一、野良猫達の邪魔が入ったとしても、シャバ代(猫缶)さえ払えば、何とかなるだろう。
「本日限り、猫耳モード。猫耳モードです……」
 その緊張を和らげるため、燐太郎があえて猫耳を装着した。
 コワオモテに猫耳と言う時点で、危険な香りが漂っているものの、それは死と隣り合わせであるが故……。
 いつの間にか、身も心も猫になっているものの、それでも危険な香りを消し去る事が出来ない程、不自然であった。
 だからと言って、ここで止めたら、すべてが台無し。
 故に猫耳、猫耳モード。
 邪魔する者は、すべてKILL。
 プライドも、恥じらいも、猫の間は大丈夫。
「さー、仁義にゃき戦いよーっ♪ えいえいおー!」
 その勢いに乗って、佐竹・レイ(ばきゅーん・e85969)が、黒猫グッズを身に纏い、ノリノリな様子で拳を上げた。
「ネコ、ネコ、ジャラシィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、ダモクレスが倉庫の壁を突き破り、ケルベロス達の前に姿を現した。
 ダモクレスは巨大な電動猫じゃらしを揺らし、ケルベロス達の猫心を刺激した。
「にゃ、にゃんこおもちゃ! こ、これは……じゃれつかずにはいられない! なのです!」
 その途端、八点鐘・あこ(にゃージックファイター・e36004)が興奮した様子で、巨大な電動猫じゃらしを追いかけた。
「ネコ、ネコ、ネココォォォォォォォォォォ!」
 それと同時にダモクレスが、あこの興味を引くようにして、巨大な電動猫じゃらしをブンブンと揺らすのであった。

●ダモクレス
「うっ……ダメとは分かっていても、動きにつられて猫じゃらしを目で追ってしまいますね……」
 夏雪がウズウズとした様子で、巨大な電動猫じゃらしを目で追った。
「こ、これは、めちゃめちゃハードな運動になる予感なのです……!」
 あこに至っては、既に巨大な電動猫じゃらしの虜。
 頭の中まで猫になっているのか、電動猫じゃらしに夢中であった。
 しかし、あこは虎のウェアライダー。
 だが、そんな細かい事が気にならない程、ハイパーテンションであった。
「にゃーん……って、駄目だから!」
 その勢いとノリに乗って右院があこと一緒に飛び跳ね、ハッと我に返って、ツッコミを入れた。
 危うく、あこと一緒に巨大な電動猫じゃらしの虜になりそうになったが、何とかギリギリのところで我に返る事が出来たようである。
「……と言うか、黒猫といえばタンゴでしょっ! 舞うように華麗に退治してあげるわ~」
 すぐさま、レイが気持ちを切り替え、ラクガキファントムで元気いっぱいの黒猫を大量に描いた。
 大量の黒猫達は、まるでダンスを踊るようにしながら、あこと一緒に巨大な電動猫じゃらしめがけて、猫パンチを繰り出した。
 それを目の当たりにした夏雪も、フラフラと電動猫じゃらしに近づき、我慢の限界とばかりに猫パンチを繰り出した。
「このままでは仲間達まで、ねこじゃらしの虜に……! これは確実に処罰が必要ですね」
 ミアンが色々な意味で危機感を覚え、轟竜砲でハンマーを『砲撃形態』に変形させ、竜砲弾をダモクレスに撃ち込んだ。
「ネコ、ネコ、ネコジャラシィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 その一撃を喰らったダモクレスが怒り狂った様子で、肉球型のビームを放ってきた。
「……って、ちょっと! 怪我をしたら、どうするの! もう怒った! ネコは気まぐれ、油断してたらガブッと噛みつくからねっ!」
 レイがムッとした様子で、ストリートダッシャーを発動させ、『空中に浮かぶ道』を描くと、その上を滑走して、今にも噛みつきそうな勢いで、ダモクレスに突撃した。
「レイちゃん、怪我はないかい?」
 それに合わせて、右院がクリスタライズシュートを発動させ、射出した氷結輪でダモクレスを切り裂くのと同時に、強烈な冷気で凍らせた。
 その姿にきゅんと来たレイが、右院を兄貴と呼んで連れて帰ろうとしたものの、言葉が出る前に恥ずかしさの方が勝ってしまい、何も言う事が出来ずに、顔が真っ赤になった。
「な、何とか大丈夫だけど、このままじゃ済まないんだからね! だから、お返し! にくきゅー猫キ――ック!」
 その事を誤魔化すようにして、レイがダモクレスめがけて、スターゲイザーを炸裂させた。
「一期(ワンショット)……一会(ワンキル)……!!」
 一方、燐太郎は劇画タッチのハードボイルドテイストで、一条の虚無(ヴォイド・ストリーク)を仕掛け、猛る怒りの感情を攻撃力に変換した激情の魔弾で、ダモクレスのボディを撃ち抜いた。
 その場所だけ作画が違うとツッコミが入りそうな程、クールでダンディ。
 しかし、猫耳。
 まさに猫耳スナイパー!
「回復します……!」
 その間に夏雪がレイに駆け寄り、ボディヒーリングを発動させ、エクトプラズムで疑似肉体を作って外傷を塞いだ。
「ネコ、ネコ、ネコォォォォォォォォォォォォォォォ!」
 それと同時にダモクレスが電動猫じゃらし型のアームを幾つも伸ばし、絶妙な感覚でユラユラと揺らし始めた。
 それは、まるで催眠術。
 いつの間にか、集まってき野良猫達も、瞳をキラキラ、頭をユラユラ。
「こ、こ、これは……パラダイス、なのです!」
 その途端、あこが瞳をランランと輝かせ、無数に伸びる電動猫じゃらし型のアームの虜になった。
 こうなってしまうと、どのアームにじゃれるのが正解なのか分からない。
 あっちにフラフラ、こっちにフラフラ。
 そのため、頭の中が電動猫じゃらしで、いっぱいになった。
「こ、このままだとマズイ事に……。完全に、確実に、破壊しなければ……」
 ミアンがフォーチュンスターを仕掛け、力を籠めた星型のオーラでダモクレスに蹴り込み、電動猫じゃらし型のアームを破壊した。
「ネ、ネ、ネコジャラシィィィィィィィィィ」
 その事でダモクレスが殺気立ち、ミアンめがけて迫ってきた。
「……無駄です!」
 それを迎え撃つようにして、ミアンが反撃を繰り出し、電動猫じゃらし型のアームを、次々と破壊した。
「虎って、おっきなネコでしょ。ならネコ系女子よ♪ さ、ネコの同士達と連携攻撃よー!」
 その間にレイがあこに声を掛け、電動猫じゃらし型のアームに攻撃を仕掛け、同じように壊していった。
「みんなで、おもちゃクラッシュなのです!!」
 それに合わせて、あこが獣撃拳(ねこぱんち)を炸裂させ、電動猫じゃらし型のアームを破壊した。
 続いて、ウイングキャットのベルが猫ひっかきを仕掛け、別の電動猫じゃらし型のアームを破壊した。
 それは、まるで猫達の宴。
 そこに黒猫や、野良猫達も加わり、パンチ、パンチ、猫パンチ!
「……なんかこう。被害甚大なのにさえ目を瞑れば、めちゃめちゃハイレベルな何かを見た気がする……」
 それを目の当たりにした右院が、何かに取り憑かれた様子で、戦いを眺めていた。
「まあ、何の問題もないだろ。ちょうど猫の手も借りたかったんだ。……助かるぜ!」
 次の瞬間、燐太郎がケイオスランサーを仕掛け、鋭い槍の如く伸ばしたブラックスライムで、ダモクレスの脚部を貫いた。
「ネ、ネ、ネコォォォォォォォォォォォォ!」
 その拍子にダモクレスがバランスを崩し、電動猫じゃらし型のミサイルを飛ばし損ねて自爆した。
「処罰……完了」
 そう言ってミリアが自爆したダモクレスを背にして、そばにいた野良猫を抱き上げた。
 野良猫は不思議そうに首を傾げていたが、ミリアの顔を見つめて、『にゃん?』と鳴いた。
「伝説のにゃんこの玩具をいただくのです……!」
 その途端、あこが瞳をランランと輝かせ、ダモクレスが現れた倉庫に走った。
 倉庫には、沢山の電動猫じゃらしがダンボールの中に入って山積みされていたため、まるで宝物でも見るかのように、あこの瞳がキラキラと輝いていた。
「猫さん達の気持ちが少しわかる気がしました……」
 夏雪がまわりに集まってきた野良猫達に気づき、その頭を順番に撫でた。
 野良猫達は未だに遊び足りない様子で、夏雪に猫パンチを浴びせていた。
「案の定、地上も賑やかなこった。退屈しないぜ、まったく」
 燐太郎が仲間達を見つめ、ホッとした様子で溜息を漏らした。
 おそらく、この光景を見るために、戦った。
 その事を理解しただけでも、十分な収穫であった。
「べ、別に楽しくなんて無かったんにゃから……! あうあう、いつの間にか本当にネコっぽくなっちゃってたわ~」
 そんな中、レイが恥ずかしさのあまり、顔を真っ赤にするのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年5月30日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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