決戦! 螺旋業竜~狂気呼ぶ光を突破せよ

作者:青葉桂都

●衛星軌道を泳ぐ竜
 地表よりはるか彼方、宇宙と空の狭間にそれは現れた。
 ねじくれた無数の竜が混ざり合う異形の怪物。
 ほとんどの竜はすでに原形をとどめていなかった。それが竜たちの行動がいかに無茶なものであったかを物語っている。
 だが、一部にはまだ形を保っている竜が残っていた。
 そのうちの1体は、青みがかった光をまとう、銀の鱗を持つ竜だ。
 なによりも目立つのは、その蛇のように長い胴体に刻印された『VII』の文字。
「――竜業合体による負担がこれほどとはな。コンセンテス・ディラゴーネの一騎たる我をここまで消耗させるか」
 紫の瞳で眼下に存在する大地を見据え、竜は呟いた。
「だが、たどりついたぞ、重力に満ちたこの星へ。さあ、このディアナ・レヴィーアがすべてを狂わせてやろう」
 竜の体が月光のごとく淡い輝きを全身にまとう。
 長い胴体をくねらせて空を泳ぎ、ディアナ・レヴィーアは螺旋業竜スパイラスと共に地球へ向けて降下していった。

●竜の降下を阻止せよ
 集まったケルベロスたちに対して、石田・芹架(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0117)は語り始めた。
「第二王女ハールとの戦闘と、大阪城地下の探索、お疲れさまでした」
 ハールを倒して攻性植物とエインヘリアルの共闘を阻止することができ、大阪城地下の探索ではドラゴン勢力が竜業合体によって本星から地球に向かっていることがわかった。
「さて、地球に向かうドラゴンはドラゴニアのものだけではないことがわかりました」
 サリナ・ドロップストーン(絶対零度の常夏娘・e85791)が警戒していた通り、螺旋忍軍の本星スパイラスに残されたドラゴンたちも竜業合体を行ったようだ。
 スパイラスを竜業合体によって取り込んだドラゴンが地球の衛星軌道上に出現することが予知された。
 黎泉寺・紫織(ウェアライダーの・e27269)、エマ・ブラン(白銀のヴァルキュリア・e40314)の要請により調査していた天文台から情報が送られてきている。
 また、死道・刃蓙理(野獣の凱旋・e44807)が行っていた提案からNASAでも情報解析に動いており、より詳しい情報が確認されている。
「無茶な竜業合体によりスパイラスで慈愛竜メルセデスが率いていたドラゴン軍団のほとんどは失われているようです」
 残ったドラゴンたちも、グラビティ・チェインの枯渇によって大きくその戦闘能力が損なわれているようだ。
「ですが、慈愛竜は竜業合体したスパイラス……螺旋業竜スパイラスを衛星軌道上から日本に落下させて力を取り戻すつもりでいます」
 螺旋業竜スパイラスが衛星軌道から落下した場合、その衝撃によって数百万から数千万の死者が出ることが予想されている。
 実現すれば日本は壊滅し、地球は終わってしまうだろう。
「ドラゴンが出現する衛星軌道上のポイントはすでに確認できています。皆さんは宇宙に出て、慈愛竜以下のドラゴンたちを撃破し、螺旋業竜スパイラスを破壊してください」
 よろしくお願いします、と芹架は頭を下げた。
「ドラゴンたちのうち、この場にいる皆さんに撃破していただく敵はディアナ・レヴィーアという名の1体です」
 蛇のように体を持つ優美な竜。体に『VII』の文字が刻印されているのが特徴だ。
 竜業合体による移動で戦闘能力を減らしているが、それでもケルベロス1チームと互角以上に戦える力を持っている。
「さらに、今回の作戦には時間制限があります」
 螺旋業竜スパイラスの巨大質量を破壊するには、作戦に参加したケルベロスが最大出力で一斉攻撃を行う必要がある。
 しかし戦闘開始から12分を過ぎれば落下阻止攻撃が間に合わなくなってしまう。
 つまり各チームはその時間までに担当するドラゴンを倒さねばならない。
「スパイラス攻撃に加われないチームが5チーム以上になると、スパイラスの落下を完全に防ぐことができなくなると予測されています」
 強敵との戦いだけでなく、時間とも戦わねばならないのだ。
 芹架はそれからディアナ・レヴィーアの戦闘能力について説明を始めた。
「まず、全身から見る者を狂わせる青白い光を放つことができます。具体的には、これを浴びると過去のトラウマを呼び起こされてしまうようです。範囲攻撃です」
 さらにこの光を一転に集中して、より強力な狂気の光を放つこともできる。攻撃対象は単体となるが、浴びたものは敵味方を識別できなくなってしまう。
「頭部の先端は鋭い角となっており、これを用いた直接攻撃は非常に高い攻撃力を持っています。この角による攻撃は青い光の影響を増幅する効果もあるようです」
 芹架は一度言葉を切った。
「今回の戦場は衛星軌道上になり、移動は宇宙装備のヘリオンで行います。無重力空間での戦いとなりますが、ケルベロスの皆さんなら支障なく戦うことができるでしょう」
 あるいは、もし必要なら大運動会で使うジェットパッカーなど、機動用の装備を使ってもいい。いずれにしても宇宙だからといって困ることはない。
「ゲートを破壊しただけで終わらないのは、さすがドラゴンというしかありませんね。しかし、ケルベロスの皆さんならばそんな強大な敵にも打ち勝つことができるはずです」
 そう言って、芹架は頭を下げた。


参加者
シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)
ジョーイ・ガーシュイン(初対面以上知人未満の間柄・e00706)
神門・柧魅(孤高のかどみうむ缶・e00898)
ウォーグ・レイヘリオス(山吹の竜騎を継ぐもの・e01045)
アリア・ハーティレイヴ(武と術を学ぶ竜人・e01659)
神白・鈴(天狼姉弟の天使なお姉ちゃん・e04623)
神白・煉(死神を追う天狼姉弟の弟狼・e07023)
クリームヒルト・フィムブルヴェト(輝盾の空中要塞騎士・e24545)

■リプレイ

●ケルベロス、宇宙へ
 宇宙用装備のヘリオンは地球の重力を振り切り、落下してくる脅威へと突き進んでいた。
「騒々しい宇宙旅行になりそうだ」
 呟いたのは神門・柧魅(孤高のかどみうむ缶・e00898)だ。
 いまだ彼方にありながらも、巨大すぎる敵の姿はすでに見えている。
「こんなのが落ちたらロックどころではないのデス! 絶対に防ぐのデスよ、それがロック!」
 シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)はギターの弦を弾いた。
 奏でる短いフレーズが、戦いにおもむく彼女の戦意をかきたてる。
 螺旋業竜スパイラス……そのそばには、このチームが倒すべき目標もいるはずだ。
「制限付きの戦闘で相手がドラゴン…あの頃を思い出すなァ……。クッソ面倒くせェことになる前に全力で倒さねェとな!」
 ジョーイ・ガーシュイン(初対面以上知人未満の間柄・e00706)が思い出しているのは、はたしてどの戦いか。ドラゴンとの戦いは、いつだって激戦だった。おそらくは、今回もそうなるだろう。
 やがてスパイラスをとりまく竜たちが見えてきた。
 ケルベロスたちはそれぞれに必要な装備を身に付けて、宇宙空間へと飛び出す。
「オウガん時に異星には行ったが宇宙空間での戦いは初めてだな」
 神白・煉(死神を追う天狼姉弟の弟狼・e07023)は背中のジェットパックを操作し、はじめて出る無重力の空間に適応しようとしている。
「まさか宇宙で戦う羽目になるとは思わなかったよ。久しぶりの戦闘依頼だけどこんなのが地球に落ちたらシャレにならないし、足を引っ張らない様に頑張らないとね」
 アリア・ハーティレイヴ(武と術を学ぶ竜人・e01659)が視線を向けたのは、1人の女性だった。
 煉と同じ色の髪と瞳を持つ彼女は、巨大なスパイラスを見上げている。
「ドラゴニア本星からの襲来は予期されてましたけど、まさか星と融合してこっちが来るなんて諦めの悪い……っ」
 神白・鈴(天狼姉弟の天使なお姉ちゃん・e04623)は漆黒の宇宙にオラトリオの翼を羽ばたかせる。
 そんな姉やアリアを一瞬横目で見てから、煉は飛び出した。
「戦わずして負けた無念を晴らしに来たってか? いい加減しつこいぜドラゴン! 星落としなんてやぶれかぶれを成功させるわけにゃいかねぇよ」
 スパイラスへ向けて、煉は宇宙を駆ける。
 真空の宇宙では言葉は通じない。無線機を持ち込んだ者もいたが、どうやら妨害されているようだ。
「ボクたちヴァルキュリアを受け入れてくれた地球を護るため、絶対に螺旋業竜スパイラスの落下は阻止するであります!」
 要塞のごとく鎧で身を固め、ヴァルキュリアのクリームヒルト・フィムブルヴェト(輝盾の空中要塞騎士・e24545)も光の翼で宇宙を飛んだ。
 他のケルベロスたちも、まっすぐにスパイラスへと突っ込んでいく。
 前方に、蛇のように細長い体のドラゴンが立ちはだかった。
 青く光を放つ鱗には、巨大なVIIの文字が刻まれているのが見える。
(「来たな、ケルベロス。これ以上は近づかせぬぞ」)
 竜は口を開いたが、声は聞こえない。ただ、威圧的に口を開く仕草は強い脅威を見る者に感じさせていた。
 もっとも動きを止める者は1人もいない。
 敵の姿を見て、ケルベロスの幾人かが表情を変えている。
 そして、1人のドラゴニアンが真っ先にドラゴンへと突っ込んでいった。
(「コンセンテス・ディラゴーネが一騎、ディアナ・レヴィーアの光を浴びて――狂気を抱いて死んでいけ、ケルベロス!」)
 真空の空間で言葉は聞こえずとも、その目が確かにケルベロスへと挑みかかってきている。ポニーテールにした金髪をなびかせて、彼女はボクスドラゴンと共に飛ぶ。
「まさかこのような形で相まみえるとは……始祖からの因縁、今ここで断ち切ります!」
 ウォーグ・レイヘリオス(山吹の竜騎を継ぐもの・e01045)は旗を備えた聖槍を振り上げる。
「神裏切りし13竜騎(ノブレス・トレーズ)が一騎、山吹のウォーグ! 参る!」
 そして、戦いははじまった。

●狂気を呼ぶ青き光
 地球の青い光に照らされながら、ケルベロスたちは青白い光を放つ竜へと向かう。
 ディアナ・レヴィーアは大きな口を開けて、咆哮をあげたようだった。
 そして、ドラゴンが放つ青白い光はケルベロスたちに容赦なく降り注いでくる。
 狂気へと誘う光は近づいていく前衛たちをとらえて過去を呼び起こさせる。
「レッツ、ロック! ケルベロスライブスタートデスよー!」
 シィカの演奏も真空の世界では聞こえない――が、彼女を知る友人たちならば、叫んだ言葉がなんなのか聞かずともわかっただろう。
 聞こえているのかどうかなど、シィカは気にしていなかった。
 演奏しながらも攻性植物に黄金の実をつけさせ、シィカは青白い光を浴びた仲間たちを輝きで包み込んだ。
 冥刀「魅剣働衡」を構えたジョーイを先頭に、他の仲間たちは全力でディアナ・レヴィーアへと攻撃を加えていく。
 もっとも、ケルベロスたちを優に超えるドラゴンの巨体は意外にも素早く動き、攻撃を回避していた。
 数分の間戦いは続く。前衛の攻撃は、半分から3回に1回はかわされているだろうか。
(「チッやっぱ当たらねェか……クッソ面倒くせェ……」)
 ジョーイは心の中でぼやきつつも、次の瞬間にはゲシュタルトグレイブを構え直す。
 稲妻をまとった突きを繰り出す彼の前には、見覚えのある敵が立ちふさがった。
 青き光によって呼び起こされた記憶の中の敵の姿だ。
(「こんな宇宙にまでやってきやがって……今はテメェの相手してる暇ねェんだよ! すっこんでろ!」)
 槍を敵に突き立てながら、叫びが敵をかき消した。
 そんな中でも後衛から放つ狙撃役の攻撃はドラゴンの巨体を確実にとらえていた。
 ボクスドラゴンのリュガと共に回復を行っている鈴を挟んだ左右で、アリアと煉が攻撃を繰り返している。
 鈴が紙兵を虚空にばら撒き、リュガが属性をインストールして攻撃を浴びている前衛を回復していた。
「攻撃は当たんねぇと意味がねぇからな」
 煉はジェットパックで加速して、一気にドラゴンへ接近する。
 宇宙空間に鋼のブーツが煌めいて、重力を操った蹴りを狙いすまして叩き込む。
 後方へと離脱しながら、彼は姉と並ぶアリアを見た。
 姉に対して、好意を抱いている青年。
(「姉ちゃんの好みが自分より強い頼れる人だから、努力してんのは知ってる。この機会にちっとは良い所見せろよな」)
 リボルバーを構えて詠唱する彼を見て、煉は心の中で呟く。
(「スナイパーの腕、俺とどっちが上が見てやるよ」)
 煉が狙撃役の距離まで戻るよりも短い時間で、アリアの魔法は弾丸を形成し終えた。
「とっておきだよ。ちょっと痺れちゃうかもね」
 遠距離から十分に狙いをつけて、引き金を引く。
 雷をまとった弾丸はドラゴンを貫き、宇宙に火花を散らして感電させていた。
 足を止め、あるいは麻痺させ、2人は敵の回避力を削る。
 ヴォーグのボクスドラゴン、メルゥガもブレスを吐いて敵の傷口を広げていた。
 攻撃は徐々に当たりやすくなっていくが、それでも強敵であることに違いはない。
 柧魅を狙ったドラゴンの突撃を、ヴォーグはかばった。
「さすがと言うべき力ですね」
 背中まで貫いた角を引き抜き、聖槍に掲げた旗を彼女は振りかざす。
「まだ倒れるには早いであります! 光よ!」
 クリームヒルトが構えている盾から光が彼女を包み込んで、腹部に開いていた大穴をふさいでくれる。
 彼女はテレビウムのフリズスキャールヴと共に、仲間をかばいつつ回復に努めていた。
 癒しの光の中で、ヴォーグはこの強敵と戦ったという始祖に思いをはせながら気弾による攻撃を放つ。
「あの角、折ってしまえば弱体化するかもな。できたら試してみたいとこだな」
 柧魅はヴォーグの背後から接近しながら考える。
 とはいえ、角を的確に狙うには、この距離は近すぎる。後方からでもリスクは大きい。この状況でしかけるべきことではないと、すぐ彼女は思い直した。
「それよりも、オレがやるべきことは高いダメージを入れることだ」
 マフラーをなびかせて敵の頭のあたりへ近づくと、柧魅は鋭い回し蹴りを叩き込んだ。結局角には当たらなかったが、銀の鱗を深々と切り裂く。
 竜はまだ揺らぎもしない。そして厄介な光で反撃してくる。、
 当初は前衛に向けて放たれていた光は、やがて後衛……特に、癒し手である鈴へと向けられる。
 収束した青白い光が鈴を貫くと、青い髪が虚空へひるがえる。耐性があるので倒れはしない……が、それでも光は心を蝕む。
 親しい人たちの傷ついた姿が鈴の目に映る。片腕を失った弟。倒れる父と、奪われた母。
 背後から憎い仇が鈴を押さえつけている。視界には救えなかったビルシャナの契約者や、攻性植物に乗っ取られた少女……殺さざるを得なかった犠牲者たちが見える。
 次の瞬間、真空の宇宙で聞こえるはずのない涼やかな鈴の音が、鈴の頭の中に響いた。
 視界に映る敵だった者たちは仲間のケルベロスで、背後から押さえつけていた……いや、抱きしめて呼び戻そうとしてくれていたのがアリアだと、鈴は理解する。
「鈴、大丈夫だよ、目を覚まして!」
 呼びかけてくるアリアの声は、真空中でははっきりと聞き取れないが、顔を見ればそんなことを言っているのはわかる。
 煉が心配そうな……そしてなにか複雑な表情で鈴を見ている。
「大丈夫だよ、レンちゃん。それに、ありがとう、アリアさん」
 ヘッドセットの無線機はスパイラスの影響でかうまく働かないので、身ぶりも交えて鈴は弟とアリアに呼びかける。
「魔を退ける鈴の音を……お母さん……」
 そして、鈴は髪飾りとしていつもつけている、母からもらった鈴を鳴らした。
 神代の鈴に宿った魔を退ける力をさらに重ねつつ、青い光によって受けた精神の傷を癒す。
 アリアと煉、そして他の仲間たちが、ディアナ・レヴィーアへと攻撃をしかけていく。
 敵は再び光を後衛に向けて放ってきたが、それが鈴をとらえることはもうなかった。
「ボクの友人をこれ以上傷つけさせないであります!」
 クリームヒルトの大きな盾が、敵と鈴の間をふさいでいたからだ。
 戦いはそろそろ10分を越えようとしていた。

●竜を討て!
 シィカはセットしておいたタイマーが振動していることに気づいた。
「皆さーん! もうすぐ10分経過するデス! 一斉攻撃タイムデース!」
 声はもちろん届かないので、シィカは呼びかけると同時に派手な色の信号弾を飛ばして合図をする。
 もはや守っている時間ではない。
 ケルベロスたちは全力の攻撃を加えていく。
 そして、10分が過ぎた。
「最後は華々しく、派手にしてやろう……くっくっく」
 柧魅が自分も巻き込むほどの超強力な爆炎を起こした。
「派手じゃないけど、僕も全力で行かせてもらうよ!」
 アリアのチェーンソーがズタズタに敵を切り裂いたところで、11分が経過する。
 残り1分。
 敵はすでに瀕死のように見えたが、それでもドラゴンの体力は侮れない。
 シィカがまずチェーンソー剣で敵をズタズタに切り裂き、鱗を削って防御を砕く。
 間髪いれずに突っ込んだのはジョーイだ。
「一発デケェの行くからしっかり受け止めろよ? ……でぇりゃァァァ!!!!」
 鱗の隙間に、鬼神のごときオーラをまとったジョーイの一撃が命中した。
 ディアナ・レヴィーアがたまらず叫びをあげる……が、まだ敵は動いている。
「ここで止めるでありますよ!」
 クリームヒルトがハンドサインで合図を送りつつ、計算された一撃で鱗の破損をさらに広げた。
「姉ちゃん!」
「うん!」
 声は通じずとも視線で意図を合わせて、鈴が時空凍結弾で凍らせた場所に、煉が蒼炎をまとって激しいラッシュを加える。
 まだ、ドラゴンのまとう輝きは消えていない。
 もはや時間もない。
 地球へ降下するスパイラスをバックに、残るケルベロスたちとサーヴァントたちの攻撃が立て続けに敵へと襲いかかる。
 その中の1人は、祖先との因縁を持つヴォーグだった。
「Galdstyle―Dragonic Fatal Arts―The Final Strike! EVOLDRAGON-GLORY!」
 ヴォーグは、ガルド流裂破竜闘術の奥義を構えた。
 己の中に宿るグラビティを聖槍に込める。
 青く輝く竜のオーラと共に、穂先はディアナ・レヴィーアの巨体へ吸い込まれていく。
 舞い上がる竜のごとき一撃を受けて、ドラゴンが細長い体を大きくのけぞらせる。
 それからすぐに――リミットまで残りわずかな時間を残して、ディアナ・レヴィーアの銀色をした体は宇宙に砕けた。

●スパイラスへの総攻撃
 時間は残りわずかだった。
 ドラゴンの肉体で構成された異形の巨大な星は今や地球に限界まで迫っていた。
 螺旋業竜スパイラスへの総攻撃を行うべく、無数のケルベロスたちが周囲を取り囲んでいる。どうやらほとんどのチームはドラゴンとの激戦を制して総攻撃に加わることができるようだ。
 空いている一角で一塊となって、8人のケルベロスとサーヴァントたちは総攻撃に加わった。
「さあ、ロックな攻撃行くデスよー!」
 シィカがギターをかき鳴らして、仲間たちに呼びかける。音は届かずとも、きっと気持ちは届くはずだ。
「メルゥガ、やりますよ! こんなものを落とさせるわけにはいきません!」
 ヴォーグがボクスドラゴンと並び、気弾とブレスを飛ばした。
「青き星を狙う邪悪な星は、俺ら双星がぶっとばす!」
 煉と鈴の姉弟が、並んで身構え?。
「燃え尽きろぉぉ!!」
「凍りついて!」
 怒りの炎を宿した狼頭のハンマーから飛び出した砲弾と、神秘の羽扇から放つ弾丸が、弧を描いてスパイラスへと食らいついた。
「これで終わりだよ! 僕のとっておきも食らってもらうからね!」
 雷をまとったアリアの弾丸が、それを追うようにスパイラスへと飛んだ。
「絶対に落とさせはしないであります!」
 フリズスキャールヴが放つ光の中から、氷結の輪がクリームヒルトの手から飛んだ。
 ジョーイは巨大な醜い集合体をにらみつける。
(「クッソ面倒くせェことしやがって。お呼びじゃねェんだよ!」)
 集めたオーラがスパイラスへと飛んでいき、その表面で爆発する。
「さあ、派手に爆散してくれよ!」
 柧魅の言葉通り――次の瞬間、無数のケルベロスから総攻撃を受けたスパイラスの表面で、いくつもの爆発が起こり始める。
 広がっていく爆発の中で、それを構成するドラゴンたちの肉体と共にスパイラスが消えていく。
 巨大な塊の大半が消滅して、いくらか残った破片が流星となって落ちていく……だが、それらは十分に小さいもので、地球に影響を与えることはなさそうだ。
 ヘリオンが迎えに来るまで、ケルベロスたちは自分たちが守った青い星を、静かにながめていた。

作者:青葉桂都 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年6月4日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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