決戦! 螺旋業竜~竜が落ちる前に

作者:のずみりん

 その日、空は竜と化した。
 衛星軌道上に出現したあまりにも巨大なドラゴンの名は『スパイラス』
 螺旋忍軍の主星と竜業合体を果たした螺旋業竜は、名の示す通り惑星スパイラスそのものであった。
 だが圧倒的な質量に反し、その声は小さい。
 それは惑星スパイラスの全てを喰らう過酷な竜業合体と移動が閉じ込められた慈愛龍たちドラゴン軍団にも大きなダメージを与えた証左であるが、それすらも今や問題はない。
『たどりついたぞ、螺旋の盟友よ』
 天使を思わせる翼のワイバーンタイプが空を駆ける。円環の輝きを放ち、尾に絡む数珠が軽やかに音を響かせ、鬨の音となす。
 スパイラスだけではない。『瑞花のパトリアーク』と名付けられたドラゴンを筆頭に多くはない、だが選りすぐりの精鋭竜たちは螺旋業竜スパイラスを利用し、その身を保ち地球まで到達しようとしていた。

「第二王女ハールの撃破と大阪城地下の探索、ありがとう。皆のおかげでエインヘリアルと攻性植物の同時進行は回避され、新たな脅威を掴むことができた」
 リリエ・グレッツェンド(シャドウエルフのヘリオライダー・en0127)がそういって示したのは、ドラゴン。
「本星のドラゴン、更にサリナ・ドロップストーンたちが警戒していた惑星スパイラスのドラゴンたちまでもが竜業合体によって地球へと到達しようとしている」
 サリナ・ドロップストーン(絶対零度の常夏娘・e85791)の警戒、黎泉寺・紫織(ウェアライダーの・e27269)、エマ・ブラン(白銀のヴァルキュリア・e40314)たちが要請した天文台の協力、死道・刃蓙理(野獣の凱旋・e44807)から注意喚起されたNASAの解析は、迫る最強のデウスエクスとその作戦を、こう弾き出した。
「ドラゴンたちの狙いは、スパイラス落とし! 無茶な竜業合体により慈愛龍率いるドラゴン軍団はその戦力ほとんどを失っているが、螺旋業竜スパイラスを衛星軌道上から落下させることで取り戻そうとしている」
 螺旋業竜スパイラスとはすなわちスパイラスそのものだ。
 それが日本を直撃すれば衝撃だけで天文学的規模……数百万数千万の被害が発生し、人々の生命とグラビティがドラゴンのものとなってしまうだろう。
「これを防ぐには先鋒を務めるドラゴン戦力の防衛戦を突破し、落下前に螺旋業竜スパイラスをぁん然破壊するしかない……既にヘリオンは宇宙装備で待機させている。後は……頼む、ケルベロス」
 螺旋業竜スパイラス本体は地球への移動以外の戦闘力を失った状態だが、その巨大な質量の破壊には多くのケルベロスたちによる一斉攻撃が必要だ。
 タイムリミットは迎撃開始から十二分。それまでにドラゴンを撃破し、スパイラスへの攻撃に移る必要がある。
 もしも間に合わなければ、その被害は想像を絶するものとなるだろう。

「私たちが迎撃に上がるポイントはここ。予想されている相手はこれだ」
 リリエが示したのは天使を思わせる翼と氷、雪を思わせる白と蒼の美しいワイバーンタイプのドラゴン。
「ドラゴンは『瑞花のパトリアーク』と呼称されており、その特徴から螺旋忍軍と接点があったのではないかと推測されている」
 かのドラゴンの攻撃は推測を裏付けるような『螺旋』。その翼から放つ螺旋掌や、螺旋氷縛波に酷似したブレス、分身の術や螺旋手裏剣の竜巻の技のような強力な螺旋の嵐も確認されている。
「またこれはパトリアークに限った話ではないが、ドラゴンたちの基礎能力は破格だ。グラビティの枯渇と道程で弱体化しているとはいうが、そのような状況だから何とか戦える相手……という事は忘れないようでほしい」
 弱点を突くとするなら、グラビティが螺旋忍軍に近い傾向から予想がつけられるかもしれない……といいつつもリリエは戒めるように今一度強く言う。
「敵は強大で、状況は極めて厳しい。だが阻止限界点までに螺旋業竜スパイラスを破壊できなければ……逃げ場はない」
 リリエをそう締めると敬礼を一つもって示す。
 地球の命運は、ケルベロスの双肩にゆだねられた。


参加者
一式・要(狂咬突破・e01362)
ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)
マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)
リティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)
御忌・禊(憂月・e33872)
差深月・紫音(変わり行く者・e36172)
凍月宮・花梨(魔剣使い・e39540)
夢見星・璃音(災天の竜を憎むもの・e45228)

■リプレイ

●螺旋の数珠が鳴る
 ヘリオンの駆け上った衛星軌道上は、既に色が溢れていた。
 徐々に細部を増して迫る影は白と緑、無数の竜が描いた螺旋。それが果てしない竜業合体の末、星さえも我が身とした『螺旋業竜スパイラス』の姿だった。
「色々世話になった。先に礼を言っておく」
 言い残し、マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)の『LU100-BARBAROI』クローラーがヘリオンデッキを蹴る。
 機内スピーカーの声が何事かを叫んでいたが、伝達する大気のない世界までは届かない。
「そういうの、『フラグ』って言うんじゃない?」
「かもな。今回ばかりはどうなるかわからん……SYSTEM COMBAT MODE」
 代わりに響くのは一式・要(狂咬突破・e01362)からの混ぜ返す通信。
 大気を伝わる声は通らなくとも、マークらレプリカントにはアイズフォンがあり、そうではない要たちにも短距離ながら電波と骨伝導で会話を可能とするインカム通信機がある。
 それは宇宙用装備と共にNASAはじめ宇宙開発公社から託された希望。人類すべての叡智が是非もなく結集されるほどに、この敵は危険すぎる。
「ここまで来たからには、退く訳にも行かないよね」
「えぇ、これ以上は……絶対に」
 いつも見上げてきた星空に並び立つ凍月宮・花梨(魔剣使い・e39540)の高ぶった声に、夢見星・璃音(災天の竜を憎むもの・e45228)が静かにうなずく。
 元より退く先などないのだ。
 敵の目標は自分たちの母星、地球。日々を暮らす日本。
 見つめる先で螺旋のドラゴンがぐんぐんと巨大さを増すのは、自分たちが接近しているのみではない。
「時計時刻合わせ、全天観測開始。目標、13天文距離……12.5!」
 加速しているのだ、竜が。
 急速に輪郭をはっきりとさせる全貌を取り巻く光へ、リティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)のアームドフォートに接続された『増設レドーム・センサーユニット』が索敵の唸り声をあげる。
 その無数の輝きこそが、この惑星竜を護衛する慈愛龍の軍勢。先陣をきった仲間たちのグラビティの光が始まった死闘を告げる。
「さて、死合う相手は何処にか……」
 メタリックバーストが散布するオウガ粒子が研ぎ澄ます感覚のなか、差深月・紫音(変わり行く者・e36172)は戦化粧を紅さした目じりを回す。
「……音?」
 しゃらり。
 真空の世界にそれは響いた。
「不知火の……いけない!」
 御忌・禊(憂月・e33872)の警告。
 心身に刻まれた宿敵への反射は異常事態の理解より数段早く、しかし仲間たちの反応より『それ』は速かった。
「MOVE US!」
「っ、マーク!?」
 インフェルノファクターを燃やすティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)の体が跳ね飛ばされだ瞬間、螺旋の吐息がマークの尾を引く『メインブースター』の炎ごと飲み込んだ。
 奇跡的に間に合った。彼の戦闘システムが『T307D・CORE』コアユニットの異常を叫ばなければ、どうなっていたか。
 それほどの速度と、力。
「っく!」
 凍結、破砕。氷縛の螺旋へ『4型追加装甲』を吹き飛ばされたレプリカントの体が宙を跳ね飛んでいく。
 一瞬にして接近、必殺を打ち込んだ竜が羽ばたく。
 『アームドフォートMARK9改』を振り回して姿勢制御し、即座にティーシャは『カアス・シャアガ』重砲の弾幕。
 当たらない。
 雄大に宇宙を宙を舞う氷雪の天使が如くぼやける翼は、その巨体が幻かの如くグラビティをすり抜けさせる。
「っ、内蔵兵装ロック解除……グラビティフィールド展開。放電ユニット起動」
 ならばとリティの『ライトニングウィップ』が空間を横断。逃がしはしないと薙ぎ払う一撃は手ごたえこそあったが、直撃には遠い。
 そしてまた音が鳴る。
 しゃらり。しゃらり。
「雪か水しぶきを撃ってるみたいだよ!」
「分身術の一種です……で、あるなら……」
 叫ぶ花梨へ答えるように、禊もまたマークへと分身術の癒しを施す。
 数珠が鳴る。
 再びドラゴンの放つ螺旋が要を撃ち抜くなか、禊は『神舞・魂振』を手にした。
「美しきあの星を守れるのならば……これが平和への道だと言うのなら……お願いします」
 描かれる『魂振・獄焔陣』が、花梨たちスナイパーへと地獄の炎の破剣を託して燃える。
「ありがとう。十分よ……誰が逃がすと思った?」
 託された力は当てなければならない。そして二人のスナイパーはそれを為した。
 揺らめく地獄の炎から鋭く読み取った機動へ、璃音は『噛ミツクモノ』を放つ。
『……!?』
 死角から翼を襲う死魂合成の怪物。舞い散る白羽のなか、ドラゴンの端正な顔が歪んだ瞬間。
「奪い取ってあげる、よ!」
 花梨のスターゲイザーが翼腕を切り裂いた。

●瑞花のパトリアーク
 右羽を半ば裂かれ、なお『瑞花のパトリアーク』は悠然とケルベロスたちに立ちはだかった。
『最優先提案、撤退……拒絶……第二案承認……自動修復システム起動……』
 『R/D-1』戦術システムの無機質な電子の声だけが響く宇宙で、禊は無言に拝礼する。パトリアークもまた、応えるように首部を下げた。
『それが意志か、稚児よ』
「然り……」
 声を伝えるものなき衛星軌道で禊と宿敵が何を以て、何の意志をかわしたか仲間たちには想像するしかない。
「やるだけのことをやるだけだ。あいつ一人に背負わせるつもりもねぇよ」
 だが元より禊の因縁との対決への手助けのために駆け付けたのだ。想像することは難しくない。
 一人進むをほおってはおけぬと、紫音の蹴り放ったフォーチュンスターにパトリアークの体が跳ねた。
「翼一つ程度、ひるむほどもない、か。承知の上……っ」
 螺旋の力が切り裂く宇宙を、リティの『エアロスライダー』が駆ける。
 対艦戦用のチェーンソー剣に巨大破城超鋼槌を並べ、城塞防盾とアームドフォートを接続したその姿は宇宙駆逐艇が如し。
 問題ない。文句を言いそうな元の使い手は数年前、念入りに叩き潰してある。
「システムオールグリーン、全武装セーフティ解除」
 宣言の前、螺旋の竜巻を受けた要が身を跳ね飛ばされ、またヒールに助けられる。
 アラームが鳴る。残り六分。
「いや御友人への心配ありがたいけど、御忌君はこっちで上手くやってるからさ……!」
「使えるカードは出し惜しみしない、早々にお引き取り願おう」
 一撃で大半を持っていかれるドラゴンの火力だが、死ななければ癒しと手数は此方が上だ。
 要の皮肉にあわせ、加速を載せた『重力鎖集束破城超鋼槌』がパトリアークの左翼を穿つ。円環めいた光背が煌めき、抵抗する反動をアームドフォートのサブアームで強引に抑え込み、振り向く。
『……!』
 巨体がよろめいた。初めての直撃で有効打。
 あらぬ方向に曲がった翼を一瞥したパトリアークの背で光翼が羽ばたく。
 敵の推進は失われていないが、それを出させただけでも朗報だ。
「情報共有、破壊グラビティは有効、攻撃を収束して」
「任されました、よっ」
 数珠鳴りの音は攻撃、ではない。
 気安い要の声と盛大な『水鏡』のオーラに惑わされたパトリアークの身が払われたのだ。
「……おっと失礼。どこが逆鱗か定められず……苦情は後程、生きてたらってね」
『シュゥッ』
 身をよろめかせる『逆鱗剥がし』が沸き上がらせた衝動への螺旋ブレスへ、今度は庇い立ったマークが受ける。
『ダメージレベル、イエロー。但し火力低下を同時に確認』
「GOOD JOB」
 追加装甲を失い猶予はないが、それでも鋼の肉体は耐えた。
『姿勢制御用バーニア』を細かに吹かして軌道修正、凍結にひび割れた『ガンナーシールド』を投棄。
 幸いまだマウントした『M158』ガトリングガンは生きている。
「その口、閉じてもらうよ」
「永劫にな!」
 残弾ありったけを叩き込んだガトリング連射が弾幕を張るなか、璃音は張り倒すように縛霊撃を叩きつける。
 打撃と共に放射された網状の霊力がその顎を閉ざすと同時、真正面からティーシャの『ゲヘノム・アックス』が地獄の炎を叩きつける。
『……ぬぅっ』
 パトリアークは抗った。わずかに逸らした顔に斧刃がずれ、スカルブレイカーは右目へと吸い込まれる。
「パトリアーク様……っ」
 思わず禊の声が漏れたその時、宇宙に螺旋が渦巻いた。

●螺旋の宇宙を抜けて
 真空の衛星軌道上に雪と氷の嵐は吹いた。
『全て、遅すぎたか』
 螺旋の巻き起こす超常の竜巻がケルベロスたちを包囲するなか、パトリアークの声がぼやけて響く。
「十分経過……耐えきれる?」
 『対艦戦用重力鎖鋸剣』へと持ち替えたリティは時間を、仲間たちの損耗に目をやり呟く。
 パトリアークのグラビティは不知火一派に由来する螺旋忍の技である。
 範囲は狭く、強力。
 確実に一人を倒して火力を削り、スパイラス到達までの時間を稼ぐ……それがかのドラゴンの戦術だ。
「全力で殴り込んで一か八か、面白くなってきたじゃないの?」
「大丈夫、通すよ……誰に来ても」
 螺旋の氷に切り裂かれた肉体をオウガメタルに覆い、紫音は唇を釣り上げる。
 桜花剣舞を舞った花梨が呼応するように大きく高度を取る。研ぎ澄まされた斬霊刀が絶対零度の輝きを散らす。
 苦痛は『ペインキラー』でやわらげ、なお満身創痍。だがそれで十分だ。
 致命傷にはまだ至らないが、全力を叩き込めば二分で挽回は出来る。あと二撃でケルベロス二人は確実に倒れる、その二人がクラッシャーでなければ勝ち、そうでなければ負けだ。
「頼む」
「そう言われちゃ、仕方ないわね」
 ここから回復に回す余裕はない。
 しかし、すまないとは言わない。紫音の信頼に軽口一つ、無言の頷き一つ。
 収束する螺旋竜巻に要とマークが散開しつつ、前へ。
 装甲は砕け、要の『Rusa-Lka』ジャケットも凍り付き、その機能の大半を失ったが、それでも。
「……星を、落とさせなどいたしません……必ず、止めて見せましょう」
『獣の子が立ちはだかるか……残念だ』
 迫る螺旋に、禊が放つのもまた螺旋。
 メディックの位置から放たれた逆回転の螺旋がドラゴンの分身術を拡散させていく。姿を露わにしたパトリアークの操る螺旋が狙う先は。
『いけ!』
 凍結し、あらぬ方向に折れ砕けていく四肢。
 ハンドサインと、それを誘導した『RED EYE』が仲間たちを振り向かせない。
「腋部から抉じ開ける、続いてっ」
 言うと同時、リティは『エアロスライダー』から兵装パージ、自信も同時に蹴って飛ぶ。
 慣性のままぶつけられた『対艦戦用城塞防盾』がパトリアークに引き裂かれるのを目くらましに、加速する体から大きく伸ばした『対艦戦用重力鎖鋸剣』が脇から腕へとズタズタラッシュを叩きつける。
 振り抜き、勢いのままに離脱……できるか?
「今度はあたしの番ね……頼むわ」
 投げられた言葉を要は紫音にそのまま返す。
「独学の喧嘩殺法と侮るなかれ……間合いの詰め方はお手の物ってな!」
 竜巻がまた一人仲間を飲み込み消していくのを背負い、紫音は裂ぱくの気合での両の腕を抉り込む、与えられた傷痕に。
「これで……焼かれてしまえぇぇーッ!」
 切り裂かれ、抉り開かれた傷口へ飛び込む花梨の『グラインドファイア』。
 空気のない世界に匂いもないが、その赤熱し焦げ溶ける肉は見ているだけでも強烈だ。
 ならば冷やしてやる。
「ティーシャさん!」
「……終わりだ!」
 零距離から体内に打ち込まれたティーシャのアイスエイジインパクト。生命の「進化可能性」を奪う一撃がパトリアークの心臓機関を凍結させていく。
「もう、あなたちによって人々の暮らしが脅かされるわけにはいかない。これ以上は」
『稚児、よっ』
 絞り出すようなパトリアークの鳴き声。
 凍結する肉体へと縛霊手を叩きつけながら、璃音は呼びかけられた先を振り向く。
「……いつか、参る日はくるでしょう……ですが……今は……」
 数珠が音もなくほどけ、弾けていく。
 憂いを増した禊の頷きに、璃音の縛霊撃は凍り付いたパトリアークへを握りしめ、粉砕していった。

●振り返ることはできない
「残り時間は!?」
「ゼロだよ、もう猶予がない」
 破砕アームを引きずるティーシャに言うと、リティは目を伏せる。
 ただでさえ不安定な衛星軌道上、力尽きた仲間たちを直ちに救助に向かいたい。だがそれを許す時間はない。
「……進みましょう……報いるために……」
「手当の時間もねぇのか……!」
 傷ついた『神舞・魂振』を鳴らし、呼びかける禊に紫音は唇をかむ。
 その音は鎮魂ではない、生存と任務完遂への祈り。
 二人の苦渋の声へ、花梨は勇気づけるように『氷晶の一閃』の鞘を鳴らす。
「大丈夫よ、ケルベロスも、デウスエクスも、大概には不死身だもん……そのためにも」
 言って、花梨が見上げるのは空を覆うドラゴン。
 目前にせまる『螺旋業竜スパイラス』こそ、『大概ではない事態』そのものだ。星を守り、力尽きた仲間たちを守り抜くため、目前の空を覆う超巨大ドラゴンを通すわけにはいかない。
「合体だか何だか知らないけど、ドラゴンにこの地球は壊させない!」
 絶対に倒す。絶対に阻止する。
 璃音の意志を載せたディスインテグレートが不可視の分解消去空間を形成し、その大きさを増していく。
 チャンスは一度、ケルベロスたちはタイミングを合わせての一斉攻撃に勝負をかけた。
「全出力をアームドフォートに集中。墜ちるのは、お前等の星だけだ。地球に落とさせは……しない」
 リティは振り向かない。そこにリリエ達ヘリオライダーがいる事はわかっているから。だから今は目前の脅威だけに集中できる。
「時間合わせ……今!」
 時計の針が十三分を指した瞬間。
 璃音の虚無魔法が、リティの『強行偵察型アームドフォート』が、ケルベロスたちの全力が迸る。
 グラビティの輝きは螺旋業竜の体へと突き刺さり、無数の爆発となって闇を照らした。

『目標……消失……認……』
「……おぉ」
 ノイズ交じりの戦術システムの声に、マークはかろうじて動く頭部を旋回させた。
「お互い……った……ね」
 要の半壊した通信機が応えてくれた。
 千切れ漂う竜の数珠だったものに身を助けられ、二人は衛星軌道上で成功を知った。
 空一面を覆う螺旋業竜の姿は既にない。
 ただ、地球へと降り注ぐ無数の流星雨だけが後には残されていた。

作者:のずみりん 重傷:一式・要(狂咬突破・e01362) マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年6月4日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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