びいどろきらり

作者:崎田航輝

 初夏の優しい日差しに、きらきらと耀く街角があった。
 小さなステンドグラスや、艶めくランプの覆い。窓越しに見える幾つもの工芸品、歩むほどに眩く見えるそこは──硝子細工の店の並ぶ道。
 工房やアンティークの専門店、小物やアクセサリの並ぶ店。どこも無二の硝子製品が並ぶ建物が、軒を連ねている。
 手に入るのは、優美なシルエットのガラスペンや──サンドブラストや切子の模様が燦めくグラスと食器。
 色ガラスのグラデーションや飾りが美しいランプシェードに、多様な世界を閉じ込めたとんぼ玉や、造形も様々なペーパーウェイトまで。
 ここでしか手に入らない品を求めて、行き交う人々も多く。硝子に彩られた時間を皆が愉しげに過ごしていた。
 が、そんな景色の中にひとり、長い影を伸ばす巨躯の男が歩み入る。
 それは鈍色の剣を握り、昏い瞳で街角を見回す罪人、エインヘリアル。その姿に気づいて悲鳴を上げる人々へと──刃をゆっくり振り上げていた。
 そのまま躊躇いもなく、無辜の命を切り捨てると呟きを零す。
「脆いものだ。すぐに、砕け散る」
 矮小なものを見下ろす声音で。だから人は弱いのだと言ってみせるように。罪人は剣を振るい、命を狩り続けていった。

「集まって頂き、ありがとうございます」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)はケルベロス達へ説明を始めていた。
「本日は、エインヘリアルの出現が予知されました」
 現れるのはアスガルドで重罪を犯した犯罪者。コギトエルゴスム化の刑罰から解き放たれて送り込まれる、その新たな一人だろう。
 四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)は頷きを返す。
「警戒していた通りのことが、起きてしまうようだね」
「ええ……それでも司さんの情報提供のおかげで、この悲劇を防ぐことも出来ますから」
 皆さんのお力を貸してください、とイマジネイターは見回していた。
 現場は市街地。
 その一角に伸びる道に、エインヘリアルは現れるだろう。
「一般市民は警察により事前に避難させられます」
「こちらは敵を迎え討つことに集中できるということだね」
 司が言えばイマジネイターはええ、と頷く。
「それによって、周囲の景観を壊さずに終えることも出来るでしょう。ですから、無事勝利出来ましたら……皆さんもお買い物などしていっては如何でしょうか?」
 小物から実用品、アクセサリなど様々なものが手に入る。オーダーメイドを受け付けている工房もあるので、多様な硝子製品を楽しむことが出来るだろう。
「そのためにも、敵をしっかり倒したいね」
「皆さんならば勝利をつかめるはずですから。ぜひ、頑張ってくださいね」
 司に応え、イマジネイターはそう言葉を結んだ。


参加者
水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)
ジョーイ・ガーシュイン(初対面以上知人未満の間柄・e00706)
武田・克己(雷凰・e02613)
ニュニル・ベルクローネス(ミスティックテラー・e09758)
輝島・華(夢見花・e11960)
羽鳥・紺(まだ見ぬ世界にあこがれて・e19339)
プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)
四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)

■リプレイ

●耀の街
 陽光が七彩にほどけて、きらりと燿く街角。
 その美しさに、翼を畳んで着地した四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)は感心の声を零していた。
「硝子細工か」
 こういう繊細なものは自分も好きだ、と。言葉に楽しみな心を滲ませる。
 けれど──すぐに視線を道へ向けて。
「そんな中にエインヘリアルが来るなら、放ってはおけないけどね」
 遠方より路へと踏み込んでくる巨躯──エインヘリアルの姿を捉えていた。
 ジョーイ・ガーシュイン(初対面以上知人未満の間柄・e00706)は肩を竦める。
「毎度毎度罪人をこっちに捨てやがって、クッソ面倒くせェなァ……」
「ああ。本当に、ペット感覚で捨てられても困るんだがな」
 と、頷くのは水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)。
 言いながら溜息をついていると──プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)もまた、そうだねと応えて。
「治安悪すぎだよね。地球をゴミ捨て場か何かと思ってるのかな?」
「暇つぶしにはなるっちゃあなるが……実際、後始末させられてる気がしてならねェんだよなァ……」
 いつか元を絶たなきゃな、と。
 ジョーイはぼやきながらも、戦意は満々で。存分に暴れてやろうと奔り始めていた。
 すると罪人は此方に気づいて剣を握る、が。
「──遅いよ」
 既にそこへ狙いを定める少女が一人。
 艶めく巻き髪を揺らしながら、刃を翳すニュニル・ベルクローネス(ミスティックテラー・e09758)。
 刹那、振るった斬閃に映すのは悪霊の姿。『切裂く鬼火』──灯火に灼かれるように、巨躯を深い衝撃が襲った。
 直後にジョーイが一閃、刃で鎧を穿てば──鬼人も連撃。疾風の剣撃で傷を抉り込む。
 罪人は数歩下がりながらも、此方を静かに見据えていた。
「……番犬か。人を……弱き命を、護りにでも来たか」
「人間が弱い?」
 と、眉を動かすのは武田・克己(雷凰・e02613)。見てみろとばかり、鮮やかな景色に目をやってみせる。
「この街並みも文化も人が作ってきたものだぜ。その情緒が、理解できないか」
「……全ては脆いだけの存在だ」
 罪人があくまで言えば、克己はそうかい、と目を伏せて。
「こういうわびさびが分からないのは可哀想なことだな。それ自体は勝手だが」
 そこから先はやらせねえ、と。
 直刀を抜きながら疾駆。
「こういう日常を守るために、俺たちがいるんだよ」
 何より剣術を収めた一人の武士として──剣を以て理不尽に命を奪う相手を認めはしないから。
 瞬間、眩き刺突で腹部を貫いてみせた。
 よろける巨躯に、プランも頭上へ跳躍。
「踏んであげる。悦んでいいよ」
 蠱惑的な声と共に靭やかな足で貌を蹴り下ろす。
 罪人も剣風を返してきた、が──その只中にふと清廉な光が瞬く。
「痛みも、苦しも。すぐに癒やしますから──!」
 嫋やかな声と、揺らがぬ芯の通った心で。それは輝島・華(夢見花・e11960)が杖から揺蕩わせる色彩の魔力。
 瞬間、光の花を幾重にも閃かせて。眩さと薫風で仲間を回復防護していた。
 そこへニュニルの翼猫、クロノワが爽風を扇げば皆は万全。華は傍らのライドキャリバーを攻勢に向かわせる。
「さあ、ブルーム」
 声に応えたブルームは、翔ける箒の如く滑らかに地を奔り。花弁の軌跡を刷いて巨躯をスピンに巻き込む。
 罪人は反撃を目論む、が、その頭上にかかる影がある。
「させません」
 それは涼風に静やかな声を溶かしながら、軽やかに跳躍する羽鳥・紺(まだ見ぬ世界にあこがれて・e19339)。
 ひらりと鮮やかに翻ると、撓らせた足に力を込めて。星が墜ちるかの如き鮮烈な蹴りを叩き込んでいた。
 ふらつく巨体へ、プランは魔力球を生み出して。
「イイ夢魅せてあげる」
 放つ淡色の夢に、罪人の意識を囚えてゆく。
 時を同じく、司は青紫に燿く属性エネルギーを展開。風の如く己に纏わせて盾としながら──即座に攻撃態勢。
「行くよ」
 罪人の動きより疾く高々と空へ踊り、降下。重力加速度を加えた蹴りで巨体を地面へ打ち倒す。

●剣戟
 血溜まりで呻く罪人は、這い上がりながらも不可解げな声音を零す。
「……何を言おうと、人が脆弱であることは覆らない」
 何故そんな存在を護るのかと、訴えるように。
「人の命は、確かに脆いものなのでしょう」
 だからこそ、と紺は声を紡ぐ。
「それを理解していながら命を踏みにじろうとする所業は、決して捨て置けません」
「ええ。ですから私達が守ってみせます。あなたに命も街も、作品も壊させません!」
 華がぎゅっと自身の拳を握れば──紺も頷きながら光の刃を具現して。
「脆いからこそ懸命に生きる命の強さを、思い知らせてやります」
 踏み込みながら燿く斬線を刻み込む。
 下がる巨躯の、懐へ入り込むのはプラン。
「服、剥いじゃうね」
 囁きながら巧みな刃捌きで鎧を裂いてみせれば──。
「全力で行かせてもらうぜ?」
 ジョーイが弾ける雷撃と共に、刃を膚へ突き刺した。
 血を吐きながらも、罪人は剣を振り回す。が、鬼人は正面から刀で受け止めた。
「しかしまぁ、あんたらみたいなのは寂しがり屋なのかね? グラビティチェインも必要なんだろうが……人のいる所にばっかり現れやがって」
「……斬るべきものを、斬ろうとしているだけだ」
 罪人はそれだけ言って刃を振るう。
 そうかと呟きながらも、鬼人は別段、何かの情報が得られるとも期待していない。ただ注意を引ければ、十分だから。
 直後、罪人を横から襲うのは衝撃波。司の『紫蓮の呪縛』──細剣より放たれた波動が脇腹を斬り裂いた。
「じゃあ、この隙に」
「ああ」
 頷く鬼人がすかさず『santa muerte』──優しき骸骨の聖母の祝福を受けた弾丸を鳩尾、胸、頭に祈りと共に撃ち込むことで、安らかなる死を約束する。
 苦渋の罪人は自己を癒そうとした、が。
「おい、俺の相手しろよ。それとも負けを認めてさっさと退散するか? 腰抜け」
 眼前に滑り込むのが克己。
 罪人がとっさに斬りかかってきても、下がらず剣戟を繰り広げる。
 仰ぐ程の巨躯相手に、一切の怯みはない。
 敵が強ければこそその戦意は高揚するのだから。
「風雅流千年。神名雷鳳。この名を継いだ者に、敗北は許されてないんだよ」
 放つ剣撃は『森羅万象・神威』。大地の気を集約して斬撃に乗せ、爆破を見舞った。
 罪人は足掻くように刃を突き出した。が、司がしかと受けきれば、華が杖をこつりとあてて魔力を注ぎ治癒。
 華はそのまま攻勢に移り『青薔薇の奇跡』──踊る花弁で巨体を包み込んだ。
「さあ、攻撃を」
「ええ」
 応える紺は黒き影を蔦のように畝らせて、『貪欲な寓話』。流動する暗色を巨躯に絡ませ動きを奪う。
 ニュニルはそこへ容赦なく霊力を放った。
 声にだけは、仄かに憐れみを含んで。
「力ある者には弱者の命なんて硝子細工の如きものだろうけれど。それに慈しみを覚えなかったのが、キミ達の敗因だ」
 貫かれて倒れ込む罪人を、プランは見下ろし『理性斬り裂く快楽の花』。
「すごく気持ち良くシテあげる。狂っちゃうかもね」
 優しく撫ぜるように心を奪い、反撃をも許さない。
 司はそこへ剣を踊らせて。
「華麗なる薔薇の舞を、ご覧あれ」
 花が咲き、舞い散る模様を剣撃で描いて巨躯を抉り裂く。
 その頃にはジョーイが上段に刀を振り上げ、大気が揺らぐ程のオーラを纏わせていた。
「それじゃ、終わりだ」
 一息に振り下ろす斬撃は『鬼神の一太刀』。滾る熱量を棚引かせながら、巨体を両断し霧散させた。

●輝きの時間
 プリズムのような煌めきと賑わいが、街角に満ちる。
 番犬達の迅速な事後処理によって、通りは既に平穏。番犬達も散策に赴き出していた。
 その中で克己もまた練り歩く。
「成程、確かに」
 綺麗なもんだ、と。
 視線を巡らせ実感の声を零す。
 並ぶ硝子細工に、七色のステンドグラス。漫ろ歩きながら軒を眺めるだけで、十二分に楽しめる程の光景だった。
 ただ、克己は展示されていたアクセサリーに目を留めて。
「……土産に、良いかもな」
 店に入るとその幾つかを見比べながら。
 花の形の美しいブローチを選ぶと──それを購入。綺麗に包んでもらい、持ち帰ることにする。
「よし」
 それを手に帰路につきながら……道中も硝子色の景色を見遣っていた。

 燿く透明色に、艶めく色彩。
 色とりどりの硝子で作られたアクセサリーは綺羅びやかながら上品で。プランは店の中を歩みつつ楽しんでいる。
「どれも、綺麗だね」
 イヤリングに指輪、ネックレス。
 硝子だからこその自由な造形と色味で、千差万別の品々。どれを買ってもいいと思えるからこそ、迷ってしまう。
「ペンダントとか、お手軽かな」
 と、選んだのは清らかな色の一品。
 華美過ぎず、状況を選ばずつけられるから──うん、と頷くとそれを購入。イマジネイターへのお土産にと、透明感の強いものも買った。
「後は、もう少し眺めていこうかな」
 店から出ると、初夏の爽風を感じながら。
 さらりと髪をかきあげつつ──散策を続けていった。

 暴れるだけ暴れたから、直帰でも構わなかったけれど。
「……ま、たまにゃあ寄り道もいいだろ」
 呟きながらジョーイもまた通りを歩む。暫し見回しつつ、立ち寄ったのはシックな灯りが趣深い、グラスの専門店だった。
 別段、贈る相手が居るわけでもないが。
「『頑張ったテメーへのご褒美』ってやつか」
 柄にもねェけどな、と自身に言ってみせながら。
 それでもウィスキーに合いそうなグラスを見つけると、やはり興味は惹かれた。
 特にロックグラスはデザインも多様。リムの薄さに胴体の丸み……形一つ違えば味も変わってくるのだから悩ましい。
 綺麗な円柱形に、ふくよかな流線型。
 複数のグラスとにらめっこして……数分後。
「あれこれ悩むのもクッソ面倒くせェ! 候補のモンは全部買うか!」
 言うと、折角だからと大人買い。
 テイスティンググラスにショットグラスまで合わせて……両手に提げる程に買って、帰ってゆくのだった。

「……さて、行くか」
 婚約者にもらったロザリオに手を当てて。無事に終わったことへ祈ってから、鬼人は歩み出していた。
 人に余計な迷惑がかからぬならそちらの方が自分もいい。だから番犬と判らぬよう、目立たず人波に紛れ進む。
 すると初夏の風が涼しくて、クールダウンに丁度良かった。
「ここ、良さそうだな」
 と、途中立ち寄ったのは切子が美しい細工物の店だ。
 並ぶグラスは清涼感のある青や、気品ある赤。どれもが目を奪うような微細な模様を持っている。
 鬼人はへぇ、と呟きながら──中でも一際美しいペアグラスを購入。
「一緒に使うのが楽しみだな」
 笑みながら、後は店を出て。人々の無事や景観の修復具合もしかと確認しながら──帰路へ向かってゆく。

 見回せば、宝石にも劣らぬ煌めきが瞬いて。
「見事なものばかり──」
 ニュニルはピンククマのぬいぐるみ、マルコを抱っこしながら、店に並ぶ品に瞳を輝かせていた。
「嗚呼、素敵な世界観……。こんな繊細で色とりどりの光景、胸が躍るね」
 声音に愉しさを交えながら、細工の一つ一つを見ていく。
 灯りに色彩を与えるランプシェードに、精緻なアクセサリーの数々。ニュニルは勿論そういったものは大好きだから、わくわくと足取りも踊って。
「おっとマルコ、触ってはいけないよ?」
 と、時折、手を伸ばすマルコを窘めつつ。
 時間を忘れるようにあちこちを見て回っては、品々に目を留めていった。
 その中でも気に入ったのは、猫のシルエットの入ったグラス。可愛らしくも美しく、絶対に欲しいと注文する。
 二つにしたのは、片方はあの人にあげようと思ったから。
「喜んでくれるかな」
 と、想い人のことを思い出し、マルコと笑い合って。
 それからまた心惹かれれば、お財布と相談しつつ。買い過ぎに注意しつつも、可愛い品を買い揃えていった。

「わ……どのガラスも綺麗……!」
 美しくカットされた硝子のように、青紫色の瞳をきらきらさせて。
 華は並ぶ店を眺めながら、声音に花を咲かせている。
 その内の一軒を覗けば、サンドブラストの飾り物に、可愛らしくも緻密なグラスにと。様々な作品に目移りした。
「見ているだけでも楽しいですね──」
 とはいえ折角なら、お土産も探したい。
 そんな思いで足取りを遊ばせると、目に映ったのは美しい色彩。多様な色味を持ったトンボ玉のついた、簪だ。
「可愛いですね」
 華はじっと見つめてみる。
 涼やかな蒼に季節らしい翠、複数の色が混ざったものも鮮やかで。
 暑くなってきた時分、今年は髪を纏めるのに丁度簪チャレンジをしようかと思っていたところ。
「買って行きましょう」
 そこから華やかさと上品さを兼ねた逸品を買うと──次は日用品。食器も素敵だけれど、気になったのは花瓶。
 花に星、どの色も模様も素敵で。
「見ていて飽きないです──」
 呟きながらも、花の彩が美しい品を購入した。
「良いお買い物が出来ました」
 また素敵な作品を拝見したいですね、と。爽風の中を歩み出しながら、華は傍らに並ぶブルームへと微笑みかけていた。

 周囲の賑やかさに、明るい活気を覚えながら。
「早速、お買い物をしていきましょう」
 待った時間に歩みも仄かに軽やかに。紺は硝子細工の店へ立ち寄っていた。
 並ぶ小物は一つ一つが無二の芸術品。その中で紺はまず、ペーパーウェイトが揃う一角へ足を伸ばす。
「可愛らしいものばかりですね」
 水晶のような造形や、団扇にかき氷、風物詩を象ったものまで。涼しげなデザインの中から、気に入ったものを選んで買うことにした。
 その後はガラスペンの並ぶ場へ。
 流線の美しさ、絡み合う色彩。煌めきと実用性を兼ねたその一本一本を丁寧に眺める。
「どれも、良いですね──」
 さらりと滑るペン先は心地良く、軸もひんやりと快く手に馴染み。目移りしてしまうものばかりだけれど、焦らずじっくり探して。
「……これにしましょう」
 最後には一番使いやすいものを選択。品のある色味の一本を、迎え入れることにした。

 歩くと反射の角度が変わり、光が明滅する。
 硝子細工の陳列された店内も、外に劣らず眩く美しくて。司は煌めく品々を眺めながらゆっくりと歩いていた。
「綺麗な硝子の数々だね」
 硝子から跳ね返った光は、明るくも優しく感じる。それが不思議と涼しい心地を齎してくれて、快い時間だった。
「うーん、そうだね──」
 品はどれも魅力的。
 だから買うとなると少し悩ましいけれど……それでも司はグラスが沢山並ぶ景色の前で足を止める。
「コップなら、普段から使えるからね。どうしようかな……」
 この品が家に加われば、日常が今より少しだけ楽しくなる、そんな予感も覚えて。静かな表情のままに、淡い紫の柄が目を惹くものを購入。
「うん」
 満足に頷きながら。司はそれを大事に手にして、青空の下へ歩んでいった。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年5月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
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