●1より2より3
平和な住宅街にひっそりと建つ一軒家。
そこに鳥さんはいた。
居間の一角に置かれた、アイスクリーム店みてーな冷凍ショーケースが存在感を放つ空間で、鳥さんは信者たちと向かい合っていた。
「最近、暑くなってきた。暑くなってきたということはアイスの需要が高まる」
「そうっすねー」
「冷たいアイスクリームですっきりしたいっすよねー」
軽いノリで頷く信者たち。
彼らの反応に「そうだろうそうだろう」と嬉しそうに笑うと、ショーケースをひらいた。
中には色とりどりのアイスクリームが並んでいる。片手にコーンを持った鳥さんはディッシャーでアイスをすくい、ぺたぺたとコーンに乗せてゆく。
その数、3段。
ざっくり硬めのコーンに串団子よろしく3種のアイスを乗せると、鳥さんは自由の女神ポーズで高々と掲げた。
「夏が迫りくる今だからこそ私は言いたい。アイスクリームはトリプルに限ると!」
「トリプル……!」
「なんかもう響きがいいですよね、トリプルっていう……」
「うむ!」
羨ましげに見てくる信者たちの前で、鳥さんはパクッと最上段のアイスを喰らう。
「1度に3つの味を楽しめるんだぞ? シングルとかダブルとかもはや足元にも及ばん強さだろう。戦いは数って言うし」
「確かに3種類ってのは大きいっすよね」
「2つは定番で手堅く、残る1つで冒険とかもできますね!」
「ふっ、さすがは私が見込んだ者たち……もう多くを語る必要はあるまい。さあ、コーンを手に取って、好きなフレーバーを積み積みするのだ!」
『おおぉーーーー!!!』
鳥さんの指示を合図に、信者たちがショーケースに殺到する。
そうして皆してアイスクリームをすくい、ぺちぺちとトリプルにしまくる光景は、なんだかとても楽しそうでした。
●食べにいこっか
「もう準備万端よ、イマジネイターさん! 早く出発しましょ!」
「いえ、梢子……まだ皆さんにちゃんと説明を――」
「何を言ってるの!? のんびりしていたらあいすくりーむが全部食べられちゃうかもしれないわ! それだけは絶対に避けないと!」
零距離まで顔を寄せる勢いで、朱桜院・梢子(葉桜・e56552)がイマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)に迫っている。
ヘリポートで猟犬たちを待ち受けていたのは、そんな食い意地あふれる会話だった。
しかも、終わる気配もなかなか見えなかった。
「さあ! 早く私を連れてってちょうだい!」
「梢子、袖を引っ張らないでください……!」
袖をつかむ梢子のパワーに抗えず、ずりずりとヘリオンへ連行されるイマジネイター。
このままじゃ状況がまるでわからねえ。
と思った猟犬たちは、ちょっと横で申し訳なさそうに佇んでいた葉介(ビハインド)に視線を向けた。葉介はすぐに状況を記した資料を差し出す。
それを読んで一同は『アイスはトリプルに限る!』とか言ってる鳥の存在を知る。
「このままではビルシャナの教えがひろまることは必至です。なので皆さんで、このビルシャナを倒してきてください」
ヘリオンへと遠ざかりながら仕事をこなすイマジネイター。
鳥さんについてる信者たちはどうすればいいかな的な質問を投げると、それに対してもイマジネイターはしっかりと答えてくれた。
「現場では信者たちがアイスクリームを食べて盛り上がっています。しかし冷たい物を大量に食べればきっと調子を崩すはず。そのタイミングで『トリプルにする必要もないのでは?』などと疑問を投げかければ目を覚ましてくれるでしょう」
ふむふむ、と要旨を理解する猟犬たち。
そうなると別に説得を急ぐ必要はなさそうだ。信者たちがアイスの食べすぎでお腹を壊すのを待つまでは暇を持て余す可能性がある。
そして現場にはアイスクリームがたくさん置いてある。
ここまで考えて猟犬たちはすべてを理解した。
「まあ、アイスクリームを食べて待ってもいいと思います。トリプルにさえすればビルシャナも快くアイスクリームをくれるでしょうから」
「そう! つまりあいすくりーむが食べ放題! だから早く鳥さんの家に行きましょ! 葉介もほら乗って!」
イマジネイターを操縦席に押しこんだ梢子が、自身も颯爽と乗りこんで猟犬たち及び葉介にぶんぶんぶんと手招きをする。
かくして、一同はアイスクリームを貰いに鳥さん家にお邪魔することになりました。
参加者 | |
---|---|
青葉・幽(ロットアウト・e00321) |
片白・芙蓉(兎晴らし・e02798) |
華輪・灯(幻灯の鳥・e04881) |
火倶利・ひなみく(スウィート・e10573) |
シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532) |
朱桜院・梢子(葉桜・e56552) |
藤林・九十九(藤林一刀流免許皆伝・e67549) |
ザラ・ガルガンチュア(旧き妖精譚・e83769) |
●暑い日ですもの
むしむしと暑い住宅街を、2人の女が爆走していた。
「アイスよー! おアイスさまよー!」
「あーいす! あいす! あいす!」
アイス食べ放題にテンションやべぇ状態の片白・芙蓉(兎晴らし・e02798)と火倶利・ひなみく(スウィート・e10573)である。これで2人とも成人である。
「梓紗も好きなのを食べるといいのだわ!」
「タカラバコちゃんもね!」
『――♪』
2人の足元では帝釈天・梓紗(テレビウム)とタカラバコ(ミミック)も跳ねたり踊ったり転がったりすごい。すごすぎてこわい。
しかし、そこへストップがかかる。
「2人とも待ってください!」
華輪・灯(幻灯の鳥・e04881)である。
いつも止められる側なのに……てな感じでアナスタシア(ウイングキャット)が感動してる横で灯は決然と言い放った。
「実は私、溶けて零れても大丈夫なようにクリーニングを準備してきました!」
「助かるのだわー!」
「うおー! 灯ちゃーん!」
同類だった。
そのまま走ってく3人は姦しいどころの騒ぎではない。
が、朱桜院・梢子(葉桜・e56552)はまるで意に介していなかった。
「あいす食べ放題……! しかも無料!」
意識がアイスに全振りだった。
全振りすぎて眉根が寄ってるレベルである。その真剣な悩みっぷりに葉介(ビハインド)も呆れるばかりですよ。
「お腹を壊さないか、やっぱり少し心配ですね」
そっ、と腹に手をあてがうシフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)。
しかしその憂いも一瞬。
「……ま、いっか!」
けろっと思考を切り替えるシフカさん。
一団の後ろのほうを歩く藤林・九十九(藤林一刀流免許皆伝・e67549)は、手で光を遮りながら太陽を見上げる。
「皆はしゃいでいるな。この気温では無理もないか」
「ええ、暑い日はアイスを食べなきゃね。寒い日でも食べるけど」
九十九の言に鋭い視線を返したのは、青葉・幽(ロットアウト・e00321)。
その手の指の間には、さりげなくアイスクリーム店の年間パスが挟まれている。
「食べるわよ……」
「……」
幽の全身から漂う圧に、何も言えねー九十九だった。
「……まぁ、璃珠もアイスを食べたがってたし丁度いい仕事だろう」
「――♪」
九十九の隣をてこてこ歩いていた璃珠(ビハインド)が、にぱっと笑って兄の顔を見上げる。
と、そんなことをしているうちに。
「ここか!」
ザラ・ガルガンチュア(旧き妖精譚・e83769)が、鳥邸の門前にザッと立つ。
その玄関を上がって進んでいった先には――。
「ふぅー! アイスー!」
「美味し……美味し……」
うん、鳥と信者たち。
めいめいトリプルのアイスを持って狂喜する人たちがいた。
だが、やはり目を引くのはアイスのショーケースだ。さながら店を訪れたような光景にザラは興奮し、気づけばもう中を覗きこんでいた。
「惜しい! これだけのアイスを揃えられる腕を持ちながらビルシャナに堕ちるとは……」
人であったならば。
そう思わずにはいられない、ザラだった。
●たべほーだい
簡潔に言おう。
猟犬たちは秒でアイス会に溶けこんでいた。
「やっぱり王道のバニラとストロベリーにハズレはないわね。このピスタチオも意外と美味いじゃない」
三段アイスクリームを真剣な顔で味わった幽が、首を縦に振る。
「妾のトリプルも美味しいぞ。すっきりしたマンゴーソルベに、コーヒーとチーズケーキを合わせたのだ!」
「マンゴーソルベ……アタシも食べてみようかしら」
「食べる? ならばすくってやるぞ?」
得意げに掲げられたザラのアイスに興味を示す幽に、鳥さんがディッシャーがしがしさせながらすかさず尋ねてくる。
幽は、ショーケースを眺めた。
「じゃあマンゴーソルベとキャラメル、あと何にしようかしら……」
「コーヒーは苦みも効いていて美味しかったぞ?」
「そう? ならコーヒーで」
「あいよぉ!」
「では妾も幽と同じのを食べてみるとしよう」
「かしこまりー!」
幽とザラのオーダーを承り、ずこずこアイスをスクープする鳥さん。
その他方。
「――!」
「ん? ようやく決まったか。なになに……ストロベリーにラズベリー、それとさくらんぼのアイス……? やたらピンクピンクしているな」
鳥さんから渡されたアイスを九十九に嬉しそうに見せびらかす璃珠。
対して九十九は――。
「……」
「どうした? 璃珠?」
璃珠がジッと物言いたげな視線を送る。
九十九のバニラと抹茶、そして紅芋というチョイスは何だかジジくさいの一言だった。
と、そこへ――。
「きゃー! アイス持ってる璃珠ちゃん可愛いんだよ~!」
歩く騒音もといHINAMIKUが、ポラロイドカメラを構えて突撃してきた。
「はい笑ってー!」
「――♪」
「ねぇ見て見て、わたしのアイスも璃珠ちゃんのと似てるんだよ~。一緒に撮ろ~?」
イェーイ、と璃珠とタカラバコと一緒に自撮りをキメるひなみく。ストロベリーとラズベリー、ブルーベリーを重ねたアイスは璃珠に負けず劣らずガーリーだ。
「乙女としてベリーは欠かせないよね……あっ、幽ちゃんたちが新しいの食べてる! 撮ってこなきゃ! タカラバコちゃん、ふぉろみー!」
「忙しい奴だな……」
嵐のように去ってく人を見送り、アイスを齧る九十九&璃珠。
一方、部屋の一角では芙蓉さんがうるさかった。
「あのねあのね! アイスにも彩が必要と思うの! ということで私のアイスは、いちごミルク! 抹茶! バニラ!」
「ふむ、定番が揃ってますな」
「いやしかし、この色の組み合わせどこかで……」
「あら、おわかりかしら?」
ふふんと胸を張る芙蓉。
「そう三色団子カラー。夏を感じながら春を惜しむ……これが日本人のおわびさびというやつよ」
「団子を模しただと……!」
「天才か!」
「もっと褒めてもいいのよ!」
鼻高々のままアイスをぺろっとする芙蓉さん。
アイスを三段乗っけただけでここまでドヤ顔ができる人はそうはいな――。
「皆さん見てください!!」
いました。
自分を見てー、とばかりにアイスを天にかざす灯ちゃんがいました。
「大正義、大王道のストロベリーを基礎に! 白桃、メロンと重ねて! 私をイメージしたトリプルの完成です!」
「あら、自分イメージアイス? 天才なの?」
「ふっ、ばれてしまったようですね!」
言葉を交わす芙蓉と灯。
「味は爽やか見た目もキュート! 名付けてエンジェルスペシャルです!」
「自分で天使だと……!」
「恥ずかしくないの?」
「てゆか猫かわいい」
信者たちは戦慄するが灯は満足げだ。そして我関せずでマンゴーアイスとかぺろぺろしてるアナスタシアは可愛い。主人より可愛い可能性がある。
「みんな楽しんでいるようで何よりね」
騒がしさの裏で、シフカはコーンの最後のひとかけをパクッ。
敬語が取れて素の口調になってるあたり、相当楽しんでいた。
「次はそこのグレープソルベとブルーベリー。あとチョコレートで」
「かしこまりー!」
シフカの注文を受けた鳥さんが秒でトリプルアイスを完成させ、シュッと提供。
それをシフカもまた、ぱくぱくぱくと無言で食べきる。
「たくさん食べてもらえると作った甲斐があるな」
「小豆とミルク、あとチョコミントで」
「あ、はい」
頼んでは作るを繰り返す2人。
その横では、梢子が真剣な顔でアイスたちを見つめている。
「何をどう組み合わせて食べればいいかしら……!」
「まだ悩んでいるの?」
ぐぬぬ、と懊悩する梢子に意外そうな顔をするシフカ。
「組み合わせなんて何でもいいじゃない」
「それじゃあいすを最高に楽しむことができないわ! 三つを何にするか、どう重ねるかも大事なのよ……よしまずはばにら、ちょこ、いちごで!」
ようやく決断に至った梢子が、鳥からアイスを受け取る。
王道のトリプルアイスを見つめて、梢子はうっとり頬を染めた。
「ほら雪のように白い私の肌、艶やかな茶髪、桃色の頬と美しい私を表現する組み合わせじゃない?」
滔々と語りつつ、はむっとアイスを食べる梢子。
だが、ものの数秒で平らげると再び苦悩ターンに入る。
「次は抹茶と小豆で和風にするのもいいわね。みんとやぶるーはわいで爽やかなのもいいし……ああ一度に三つしか積めないのがもどかしい……」
「たくさんあるから適当に頼めばいいのに」
「そうね」
梢子を見守る鳥とシフカの眼は、優しかった。
●腹は大丈夫か
「初夏でもやっぱりアイスだよね……あ、私はちなみに冬でもアイス派だよ。おこたに入ってアイス! 良いよね~!」
「アタシも季節問わずアイスは食べるわね」
アイス食べながら、和やかにトークするひなみくと幽。
パーリィは和やかに進んでいた。
だが――。
「うおっ!?」
「わりィな、わたしのワンピースがアイス食っちまった」
信者と(わざと)ぶつかったひなみくが、服にアイスをつけながら仁王立ち。
皆が一斉にそちらを見ると同時、アイスを失った信者が項垂れる。
「俺のアイスが……」
「トリプルだと数が多い分、こういうときの精神ダメージが増えそうよね」
静まった空間にぼそっと声を投じたのは、シフカだ。
その言葉に信者たちもハッとなる。
「確かに……」
「重ねるとバランスを崩しやすくなるし、リスクも高まるわ」
冷静なシフカの指摘に沈黙する信者たち。
だが、別の信者や鳥は猛然と反対した。
「バランスとかは気を付ければ済む話だよ!」
「そうだ! それよりもロマンが重要だろうが!」
「うんうん、ロマンは大事だね」
こくこくと頷くひなみく。
「なら次は四段を作るといいよ。四段には夢があるよね。四段だよ? オレオレオレオレオだよ?」
「なん……だと……!?」
驚愕する信者。
三段を超える四段――それはトリプルを至高としていた彼らには凄まじい衝撃だった。
「ひなみくさんの言うとおりよ!」
続けて声をあげたのは梢子。
彼女は――葉介に持たせたコーンに、そーっとアイスを積んでいた。
「一つ二つ、三つ、四つ、五つ……もうちょっと……あー!!」
「よ、欲張りすぎだーー!?」
「……段重ねあいすの宿命ね……でもそれでも、高く積んでみたいって気持ちはあいす好きなら分かるはずよ……!」
「そ、それは……」
諦めずアイスを重ねる梢子の姿に、信者は言い返せない。
彼女の欲望は確かに理解できたから。
それと――。
「腹が……」
「アイス食いすぎた……」
いよいよ腹にキていたからだ。
「ふふ、体を冷やしすぎたようですね。なんて愚かな……!」
にやり、と灯が信者たちへ笑った。
正確に言うと、お腹を押さえて蹲りながら涙目で笑った。
「おまえもか……!」
「恐らく今夜が山ですね。やめましょう食べ過ぎは……」
「た、耐えろ! 耐えるんだ!」
信者たちに背中をさすさすされる灯。
11人が顔を青くしていると、見かねた九十九と幽が魔法瓶を出した。
「まぁ、なんだかんだいってアイス3つは中々腹に来るよな」
「いくら暑くなったって言ってもまだ初夏なのよ。朝晩はまだ冷え込む日もあるし、季節の変わり目は体調を崩し易いの。いきなりアイスをトリプルだなんて、お腹壊すに決まってるじゃない」
こぽこぽ、と紙コップに注がれた液体が湯気を昇らせる。
「そ、それは……」
「ほら、温かいコーヒーあげるからこれ飲んだら帰んなさい。アイスは節度を持って、楽しむのよ」
「もしコーヒーが苦手な奴がいたら、こっちで緑茶でも飲んで温まっていけよ」
「ありがとうございます……!」
「緑茶!?」
這い進むように殺到する信者と灯。とダッシュで来る芙蓉。
熱い飲み物でひとまずの救いを得て、灯たちはふぅと額を拭った。
「助かりました……」
「トリプルは気を付けなきゃあかんな……」
「このままでは最強になってしまうわ! その覚悟があるのね……!?」
「なんか1人だけテンション違くね?」
ウッキウキで緑茶を飲んでる芙蓉にきっちりツッコむ信者。
が、当然のようにスルーするのが芙蓉である。
「ところでここにアツアツのコーヒーがあるし、私はバニラアイスにたっぷりかけてしまうわ」
「な、なにぃ!?」
「うむ。妾もエスプレッソを用意してあるのでかけておくか」
「こっちも!?」
芙蓉の、そしてザラの暴挙にビビり散らす信者たち。
熱いコーヒーでじわり溶けたバニラアイスは、もはや悪魔的な絵面。
「トリプルなら無理だけど、シングルで頼めば最初からこれができてしまうのよね……つまり冬でもアイスむしゃむしゃ大変余裕!」
「くうっ……!」
「アフォガードは美味しいぞ。食べてみたくないか?」
「た、食べたいけど……!」
信者たちの両サイドから、アイスをもってにじり寄る芙蓉とザラ。
ダメ押しとばかりにザラは、クッキーとメロンパンを取り出した。
「トリプルでなくとも美味しい食べ方はいくらでもある。クッキーでサンドすれば食べ応えもあり食感の違いが楽しめるし、メロンパンのアイスサンドというのもあるぞ。ほら試してみたくなったのではないか?」
「サンド……だと!」
ザラの勧めに身を乗り出す信者たち。
そんな彼らの前で、芙蓉は毛布をひろげた。
「ところでここに着る毛布もあるのだわ! どう? 降伏した者には毛布を着させてあげるわー!」
「毛布……!」
立ち上がる信者たち。
正気に戻った彼らが毛布とアイスサンドに殺到したのは、その一瞬後のことだった。
●美味しい1日
「やっぱりお腹は温めたほうがいいわね」
「乙女として救われた気がします……!」
甘いココアをお腹に落としたシフカと灯が、片隅でほぅと息をつく。
鳥さんをパパッと葬った猟犬たちは、まったりと事後処理に当たっていた。
「さすがにいくらか余っているな。寮の土産に持って帰るか」
「よーし皆でテイクアウトだよ! タカラバコちゃんも……あ、タピオカミルクティーで忙しいか……」
ショーケースに残されたアイスに手をつける九十九とひなみく。璃珠に見守られながらタカラバコがトリプルアイス(3つともタピオカミルクティー)をばくばく食ってる横で、せっせとアイスを取り分けはじめる。
その中には、顔面蒼白でディッシャーを握る梢子もいた。
「食べすぎてお腹が……でもお持ち帰りだけはしないと!」
「……」
葉介が呆れかえるのを尻目に、うおおおと最後の気力を振り絞る梢子さん。
一方、芙蓉やザラはぺちぺちとその場で三段重ねを作っている。
「私もイメージアイスよ! クッキーで耳を作ってみたわ~!」
「妾も青いアイスがあったから作ってみたぞ。探せばあるものなのだな!」
自作したアイスを見せあい、きゃいきゃい楽しげな2人。
そして、2人を横目に、幽は積み重ねたアイスクリームを見つめてふふっと笑った。
「やっぱり、締めはクッキーアンドクリームで決まりね」
三段すべて揃えたそれを、はむっと食べる幽。
そっと頬を押さえるその顔は、今日一番の笑顔だった。
作者:星垣えん |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年6月4日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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