決戦! 螺旋業竜~無機質な単眼の不死鳥

作者:なちゅい


 空に現れた巨大な物体……螺旋業竜スパイラス。
 地球の衛星軌道上、かつ日本への落下軌道にそれはある時現れた。
 星の海を渡る為にスパイラスの全てを喰らい、竜業合体を行って誕生したドラゴンである。
 スパイラスの周囲には、慈愛龍を筆頭とする様々な姿形をしたドラゴンの姿がある。
 中には、全身に炎のオーラを纏った単眼のドラゴンがいて。
「…………」
 大きく翼を羽ばたかせはするものの、その瞳は全く瞬きすらもせず、じっと地球を見下ろす。
 全く感情が感じられぬ巨大な赤い水晶球のごとき瞳。一方で、それを覆いつくす鳥のような姿をした燃え上がる体躯。
 強い覚悟を持って飛来してくるそのドラゴン、『単眼の不死鳥』は有り余る闘志を燃え上がらせて。それでいて、冷静沈着に任務をこなすべく、他のドラゴンと歩調を合わせて地球へと降下してくるのである……。


 とあるヘリポートにて。
 空に現れた物体の情報についてヘリオライダーに聞くべく、多数のケルベロス達が姿を見せる。
「第二王女ハールの撃破と、大阪上地下の探索、お疲れ様。陰ながら応援していたけれど、結果を出せてよかったよ」
 リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)が笑顔で作戦に臨んだケルベロス達を労う。
 第二王女を撃破した事で、エインヘリアルと攻性植物による同時侵攻の危機を回避できたのは、僥倖と言える。
 また、大阪地下では、ドラゴン勢力から本星のドラゴン軍団が、竜業合体によって地球に到達しようとしているという情報も得られたとのことだ。
 しかし、地球に迫り来るドラゴンは、本星のドラゴンだけでは無かったのだ。
 その事態はすでに、サリナ・ドロップストーン(絶対零度の常夏娘・e85791)が警戒していて。
「スパイラスに遺されたドラゴン達が竜業合体によって惑星スパイラスと合体し、地球の衛星軌道上に出現する事が予知されたんだ」
 この予知は、黎泉寺・紫織(ウェアライダーの・e27269)、エマ・ブラン(白銀のヴァルキュリア・e40314)が協力を要請していた天文台からの情報、死道・刃蓙理(野獣の凱旋・e44807)が注意を喚起していたNASAによる解析によって、より詳しい情報が確認されている。

 その詳細な予知によると……。
「無茶な竜業合体により、慈愛龍が率いていたドラゴン軍団は殆どが失われてしまっているね」
 残ったドラゴン達もグラビティ・チェインの枯渇によって、戦闘力を大きく損なっている事が判明した。
 だが、慈愛龍は、竜業合体した惑星スパイラス……螺旋業竜スパイラスを、衛星軌道上から日本に落下させ、その衝撃で殺害する数百万数千万の人間のグラビティを略奪する事で、失った力を取り戻そうとしている。
「何としても止めないと、地球は壊滅してしまうよ」
 ドラゴンが出現する衛星軌道上のポイントは既に、リーゼリットを含むヘリオライダーが割り出している。
 作戦に参加するケルベロス達には、グラビティチェインが枯渇して弱体化している慈愛龍らドラゴンを撃破し、螺旋業竜スパイラスの破壊を願いたい。


 ヘリオライダーがそれぞれ討伐してほしいドラゴンの案内をしている状況だが、リーゼリットが討伐を依頼したのは、『単眼の不死鳥』と呼ばれるドラゴンだ。
「見た目は巨大な炎の鳥だね。かなりの体力を持っていて、全身に纏う炎のオーラと無機質に感じられる単眼からグラビティを使用してくるよ」
 ポジションはディフェンダーで、体力の多さを見せつけてくる。
 ただ、後述の理由もあり、できる限り火力をぶつけて討伐したい状況だ。
「戦場となるのは、衛星軌道上だね。そこまでは宇宙装備に換装したボクのヘリオンで向かうことができるよ」
 無重力空間での戦闘となる。移動など慣れながらの実戦となるだろうが、ケルベロスとして戦う分に支障はないで安心して戦いに臨みたい。

 全体作戦としては、それぞれ、担当したドラゴンを……ここでは『単眼の不死鳥』を討伐した後、螺旋業竜スパイラスの破壊を行うことになる。
 スパイラスは竜業合体によって地球に移動する以外の戦闘力はないものの、その巨大な質量を破壊するには、作戦に参加したケルベロス達が最大出力のグラビティで一斉攻撃して破壊する必要がある。
「ただし、迎撃開始後、12ターン以内に『単眼の不死鳥』を撃破できない場合、スパイラス落下阻止の攻撃が間に合わなくなってしまうよ」
 敗北あるいは時間切れでスパイラス攻撃に加われないチームが5チーム以上となった場合、戦力不足によりスパイラスの落下を完全に防ぐことが出来なくなる。
 確実に地上に被害が出てしまう状況となる為、くれぐれも留意の上でドラゴンと交戦したい。

 惑星スパイラスを竜業合体……改めて考えればとんでもない状況である。
「それだけ、ドラゴン達も決死の覚悟で地球に向かってきているということだろうね」
 このスパイラスを阻止せねば、地球は滅亡してしまう。
 今回の作戦に……ケルベロスの双肩に地球の命運がかかっていると言っても過言ではない。
 周囲にいるドラゴン達はグラビティ・チェインの枯渇によって弱体化こそしているが、強大な敵だ。勝利するのは決して簡単ではない。
「スパイラスが阻止限界点に達してしまうまでに、何としても破壊を。……よろしく頼んだよ」
 リーゼリットは最後に頭を下げてケルベロスへと作戦の参加を願い、説明を締めくくったのだった。


参加者
幸・鳳琴(黄龍拳・e00039)
ラインハルト・リッチモンド(紅の餓狼・e00956)
羽丘・結衣菜(マジシャンズセレクト・e04954)
ピコ・ピコ(ナノマシン特化型疑似螺旋忍者・e05564)
影渡・リナ(シャドウフェンサー・e22244)
スノードロップ・シングージ(抜けば魂散る絶死の魔刃・e23453)
ミミ・フリージア(たたかうひめさま・e34679)
雑賀・真也(英雄を演じる無銘の偽者・e36613)

■リプレイ


 大気圏を飛び出したヘリオン。
 衛星周回上にまでやってきたケルベロス達は準備を整え、空へと飛びだす。
「宇宙戦用に推進器と呼吸は確保しました」
 ピコ・ピコ(ナノマシン特化型疑似螺旋忍者・e05564)は淡々とした態度で、それらが機能することを確認する。
「さて、イグニスの遺産がついに牙を向いた感じね」
 死してなお、ケルベロスを、地球を苦しめるエインヘリアル第五王子。
 2度と暗躍してほしくないと、羽丘・結衣菜(マジシャンズセレクト・e04954)は心底迷惑がる。
「今まで、色々危険な事はありましたが……地球そのものの危機は初めてかもしれませんね」
 そう口を開いたラインハルト・リッチモンド(紅の餓狼・e00956)は思わず武者震いしてしまう。
「ドラゴン達もまた性懲りもなく仕掛けて来るね」
 一方で、その敵影を確認した影渡・リナ(シャドウフェンサー・e22244)は酸素ボンベや命綱用のロープをチェックしつつ呟く。
「大きなドラゴンとはまたやっかいじゃのぅ」
 まだ、宇宙空間の動きに不慣れなミミ・フリージア(たたかうひめさま・e34679)の視線の先には、惑星に多数のドラゴンが竜業合体した螺旋業竜スパイラスがある。
「それに、本当にドラゴンいっぱいじゃのぅ」
 そして、それを地球へと落とそうとしている慈愛龍を含む多数のドラゴン。
 事前に情報が得たことで備えられてよかったと、ミミは事前に動いていたケルベロスにささやかな感謝を示していた。
「んー……、ドラゴンもしつこいデスネ」
 ゲートが無くなったなら、大人しくしてほしいとスノードロップ・シングージ(抜けば魂散る絶死の魔刃・e23453)は本音を漏らす。
「マ、こっちに来るならば痛い目を見てもらうダケデス……っと」
 もっとも、襲い来るなら倒すまでと彼女は徹底抗戦の構えだ。

 多くを犠牲にし、てここまでたどり着いているドラゴン達に、もはやなりふり構う余裕はないのだろう。
 だが、こちらにも背後に地球があると幸・鳳琴(黄龍拳・e00039)は護るべき存在を強く意識して。
「これほど負けられない、と思った1戦は初めてです」
「うむ、わらわは負けぬ、のじゃ」
 鳳琴に同意するミミは皆を守る役目を果たす。
 地球にドラゴンをたどり着かせなければ、また皆も喜ぶはずだ。
「絶対に地球には近づけさせない!」
 リナの言葉に頷き、結衣菜はやることは変わらないと気持ちを新たにして。
「ドラゴンの降臨なんて許すわけには行かない」

 チームを組むケルベロス達が個々のドラゴンへと立ち向かう中、こちらのメンバー達は真っ赤に燃え上がる炎のオーラで体を包む『単眼の不死鳥』の元を目指す。
 移動中に、ケルベロス達は改めてハンドサインなど連絡手段を確認し合う。
 邪魔な不死鳥を討伐する為に与えられた時間は僅か12分。
 手早く片付けて可能な限り螺旋業竜スパイラスへと攻撃を仕掛けねば、破壊できずに地球……日本へと降下して多大なる被害を及ぼしてしまう。
 皆、タイマーを10分後にセットし、11分のタイミングで全力攻撃を仕掛けられるようにしていた。
「耐久力のありそうな竜じゃし、短期決戦で挑むのじゃ」
 盾となるミミが回復を優先して立ち回り、敵の攻撃を防ぐ。
 スパイラス破壊の為、短期決戦に臨みたいところだが……。
「強さは本物ネ。面倒なことこの上ないヨ」
「不死鳥が相手か」
 じっとこちらを見つめてくる相手に、スノードロップが辟易とすると、雑賀・真也(英雄を演じる無銘の偽者・e36613)が巨躯の敵に向けて愛刀を構えて。
「なら、お前の無限の命と俺の無限の剣、どちらが上回るか……勝負と行こうか」
「……絶対に、勝つッ。負けられるか!」
 真也に続き、強く意気込む鳳琴の叫び。
 ハンドサインで戦闘開始を指し示すケルベロスへと対抗するように、翼を広げた単眼の不死鳥が炎のオーラを激しく燃え上がらせるのだった。


 単眼の不死鳥……。
 全長10mもある正式名称は不明のこのドラゴンは、その名が示すように炎鳥を思わせる姿をしている。
「デハデハ、アタシの鮮血魔術でボッコボコにしてやるデース」
 まずはオーラを浴びせかけようとしてくる不死鳥を前線メンバーが食い止める間、黒い翼を羽ばたかせたスノードロップが敵の頭上へと移動して。
 魔術の前に体を温めるかのように、彼女は不死鳥へと襲い掛かる。
「スーパースノーちゃんキックデース」
 オーラを燃やす敵へ、痛烈な一蹴をスノードロップが叩き込み、その動きを制しようとする。
「これでも宇宙戦闘は何度も経験済だよ!」
 早期撃破を、とリナは突破口を切り開くべく構えた槍で宙を切る。
 武器から放たれた魔力と幻術が混じり合って無数の風刃となり、リナは巨躯の敵に斬撃を見舞い、動きを止めようとしていく。
 続けて、空中へと雷撃が駆け巡る。
 真也の両手に握られた夫婦双剣の刃に雷が纏い、それらが一気に敵に向けて突きを繰り出して行ったのだ。
 不死鳥が少しの間でも硬直したのであれば、ラインハルトが近づき、無数の霊体を憑依させた喰霊刀で相手の体を切り裂いていく。
 今回はタフな相手だとラインハルトは聞いている。
 ならばこそ、高威力の技で押し切りたいところ。毒で体力を削れればなおいい。
 重力下とは違って立体的な位置取りを心掛けるピコは各自が孤立しないように、また孤立させないように位置取る。
 ともあれ、連携しながら効率的に攻め立てるべく、紅翼の闘魂を纏った鳳琴が仲間達の攻撃の穴を埋めるよう攻め入る。
「これが地球人が生み出す『鳳凰』と『龍』です――いざ!」
 巨大な敵目がけ、掌打を叩き込む鳳琴。
 放たれた竜は不死鳥に負けじと法王の如く炎翼を広げ、敵の巨躯を焼き払わんとする。
 不死鳥は確かに体を炎のオーラで燃やすが、それだけではない。
 大きな一つの瞳は只ならぬ眼力で相手を凍らせ、またはその身を竦めさせてしまう。
 その視線から、ミミはテレビウム菜の花姫と共に守りに当たる。
「全力で防げば、わらわの壁はなかなか超えられぬじゃろう」
 チームメンバーで一番小さなミミだが、目の前の相手の攻撃を通すまいと身を張っていた。
 体力がある序盤は回復よりも攻撃を優先し、ミミは菜の花姫が凶器で殴り掛かった直後、体に纏うバトルオーラを弾丸として飛ばし、相手の炎のオーラをはぎ取ろうとする。
「マジックショーの開幕よ」
 一時的にオーラが無くなった部分目がけ、結衣菜が魔力を宿すオウガメタルを直接叩き込む。
「我が魂は鋼鉄なり。無限の剣戟が存在する我が世界、今、ここに顕現せよ」
 刻々と過ぎゆく時間の中、真也が衛星軌道中での交戦だろうが、関係なしに自らの空間を展開する。
 そこは、多数の剣戟が突き刺さる領域。
 彼は突き刺さる剣を次々に両手に握り、連続斬りを繰り出して。
「無限の剣戟世界!」
 相手の背に回り込んだ真也はXの字を刻み込む。
 だが、巨体を持つ不死鳥はまるで応える素振りすら見せず、じっと単眼でケルベロスをねじ伏せようとしてくる。
「させはしません」
 そこで、仲間へとナノマシン製の紙兵を散布して守りを固めていたピコが攻撃に転ずる。
 放たれたピコの氷結の螺旋は、不死鳥の体表面の一部を凍りつかせてしまう。
 スノードロップもオラトリオとして時空凍結弾で相手を凍らせながらも、追撃をかけて鹵獲した魔法を直接浴びせかけようとして。
「哀れな不死者に死の祝福を」
 死を齎す死神の歌声の力を解放し、スノードロップは相手の体力を削いでいく。
 戦いが進めば、ケルベロスのグラビティによって、少しずつ不死鳥の動きが硬直する。
 そこをリナは見逃さず、強気な態度で大きく槍を振り上げた。
 重力に囚われない変幻自在の戦い。圧倒的な大きさで翼があろうが、宇宙空間ならば地の利はドラゴンだけにはないと言わんばかりに、リナはその巨躯を切り裂かんと確実に刃を浴びせかける。
 ただ、不死鳥はなおも眼力でケルベロスをねじ伏せんとして。
「この程度の消耗でしたら……」
 ラインハルトは降魔の拳を叩き込み、体力を回復させながら継戦を続ける。
 その時、ミミの用意したタイマーが振動する。早くも5分が経過したのだ。
 しかしながら、単眼の不死鳥はなおも倒れる素振りをみせず、ケルベロス達へと燃え広がるオーラを浴びせてくるのである。


 過行く時間の中、ケルベロス達は相手の炎のオーラと力ある眼力に耐えながら、衛星軌道上で交戦を行う。
 相手の動きは少しずつ鈍っていると鳳琴は疑わず、卓越した体術を苛烈に叩き込み、グラビティによる衝撃で敵の身体を凍り付かせる部位を広げていく。
 なにせこれだけ攻撃を続けているのに、ビクともしない非常にタフな相手だ。
 結衣菜は絡め手を織り交ぜ、鳳琴の攻撃の直後に差し込むようにして影の斬撃を見舞う。
 スノードロップが繰り返し時空凍結弾を放つなど、間違いなく敵の体表面は大きく凍り付いている状況であり、そこをメンバー達が攻撃することでダメージソースとなっている。
 呪詛を込めた槍の一撃を突き出すリナは、この宇宙空間だからこそできる立体的な攻めを行い、不死鳥を苛む。
 飛行できる状況は、この場にあっては有利とはならない。
 一度、裂帛の叫びをあげて傷を塞いだ真也も、凍り付く敵の身体目がけて自分からは見えない場所を起爆し、敵を翻弄する。
「回復を頼みます!」
 自らはルナティックヒールで力を高めつつ癒すラインハルトだが、自身を含む前衛メンバーの負傷を……特に盾と回復を兼任するミミの疲弊が大きいと後衛メンバーに呼びかける。
 そこで、唯一の回復役となる結衣菜のシャーマンズゴースト、まんごうちゃんが祈りを捧げて回復に当たってくれる。
「ダミー投影開始」
 それでも厳しいと判断したピコが回復を重ね、ナノマシンによるホログラム投影によって一時的に回復力を活性化させる。
「今のうちに、態勢を整えて下さい」
 ミミはピコの呼びかけを受けてありがたく回復に当たり、菜の花姫の応援動画と合わせて立て直しをはかり、体を駆け巡る痺れをなくす。
「わらわもやられてばかりではいられぬからのぅ」
 現状は耐えている彼女だが、程なく転機が訪れる。
 自らのタイマーが知らせてくれる10分の合図。
 そして、結衣菜を始め、皆のタイマー、そしてリナ達がサインで11分が経過していることを知らせる。
 素早く、スノードロップが時空凍結弾を撃ち込み、その場所を見つめた結衣菜が時間の経過を気にかけて。
「もう、時間がないわ」
 結衣菜はまたも音と気配を消し、一気に敵の体へとオウガメタルでの一撃を叩き込むと、回復に当たってくれていたまんごうちゃんも非物質化した爪でなぎ払い、不死鳥の霊魂を切り裂いてくれる。
 いくら不死鳥の名がついていても、デウスエクスである以上はケルベロスが倒せる相手のはず。
 前のめりに攻撃を行うメンバー達。
 リナは槍を手に無数の風刃を巻き起こして、不死鳥の体を切り裂く。
 いくらタフな相手とはいえ、相手も限界は近いはず。
 それは、単眼に籠められた力の弱まりを見ても明らかだ。
 仲間達がうまく戦線を持たせてくれており、継戦を続ける真也は2つの刃を大きく切り上げ、仲間達が刻み込んだ傷をより深くえぐるように裂いていく。
 だが、不死鳥はなおも倒れず、こちらを睨みつけてくる。
 相手も決死の覚悟でやってきている。倒れられぬと踏ん張っているのだろう。
 だが、覚悟をかけて戦いに身を置くのは、ケルベロスも同じ。
「この星には、大切な……守らないといけない人がいるんだ! 命をかける覚悟ならすでに出来ている!」
 ラインハルトが狙うのは、その目だ。
「特攻……!」
 彼もかなりその身に傷が増えてきていたが、それを顧みることなく身を投げ出す。
 弱ったとはいえ、単眼の力はラインハルトの身体に多大なる負荷を与え、体のあちこちから大量に出血してしまう。
 それでも、彼は自らの喰霊刀を相手の単眼目がけて突き刺し、深く、深く差し込んでいく。
「脳まで損傷させてやる……!」
 死に物狂いのラインハルトの一撃に、さすがのドラゴンも苦しみ、暴れ始める。
 そのドラゴンは格好の的だ。時間がないことを察したピコが忍者刀で不死鳥の傷をなおも抉って。
「あと1分です」
 ピコが仲間達へと伝える。ここで倒せなければ、間違いなくスパイラス撃破の手数には加わることができなくなる。
「負けられない……必ず倒します!」
 鳳琴は力を振り絞り、握る斧に刻まれたルーンを輝かせて。
「そうです。地球が、地球がなくなれば……」
 不死鳥は鳳琴を単眼の力で押さえつけようとするが、彼女の勢いは止められず。
「あの人と結婚することだってできないでしょうがッ!」
 振り下ろされる重い刃は、相手の単眼を切り裂いてしまう。
 声にならぬ叫びを上げ、うなだれる単眼の不死鳥。
 そいつはもう翼を羽ばたかせることなく、衛星軌道上を漂い始めて。
「先に寝てろ。お前の仲間たちをそっちへすぐに送ってやる」
 真也はそう一声かけ、急いで仲間と共にスパイラスの阻止へと向かうのである。


 一斉攻撃までもう1分もない。
 メンバー達は急いでポジションにつき攻撃を開始するが、かなりの速度で移動するスパイラスとはかなり距離が開いている。
 この為、ケルベロス達は砲撃という形での攻撃を行うこととなる。
 結衣菜のみ、チームメンバーの回復に当たっていたが、スノードロップは時空凍結弾を、ミミは星形のオーラを発していく。
 近距離での攻撃を考えていた真也もやむなく精神を集中してスパイラスを爆破し、ピコも氷結の螺旋で破壊の手を加えていく。
 全身全霊を込めるリナも、皆と合わせて風の刃を発射する。
 かなりの数のケルベロスが参加していた一斉砲撃。
 次の瞬間、スパイラスの各所で爆発が巻き起こり始める。
 かなりの質量があったそれは爆発によって分離し、破片となって大気圏へと落ちていく。
 一部ケルベロスは、なおも細かくしようと破壊を続けていたようだ。
「……何とか止めたか」
「やった……私達で、地球を守ったんですっ!」
 安堵する真也に続き、喜ぶ鳳琴は喜びを分かち合おうと青髪のシャドウエルフの少女を探す。
「早く、皆の顔が見たいな……」
 なんとかこの戦いを潜り抜けたラインハルトは地球を見下ろし、仲間や大切な人の顔を思い浮かべるのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年6月4日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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