決戦! 螺旋業竜~はじめてのちきゅう

作者:質種剰

●慈愛龍+惑星スパイラス
 ドラゴニア。
 それは、判明している中では最も早くグラビティ・チェインが枯渇し始めた、ドラゴンたちの主星である。
 その枯れゆくドラゴニアから慈愛龍に率いられて、惑星スパイラスへ移動したドラゴンたちがいた。
 彼らは虎視眈々と地球への侵攻の機会を狙っていたが、予想だにしなかった事態によって計画に狂いが生じる。
 スパイラルウォーの敗北。
 この一大事によって、慈愛龍の大軍勢は、ゲートが破壊された惑星スパイラスに隔離されてしまったのだ。
 だが、慈愛龍と大ドラゴン軍団はめげなかった。
 何としても星の海を渡るため、スパイラスのすべてを喰らい尽くして、竜業合体を行った。
 その結果、誕生したドラゴンが『螺旋業竜スパイラス』である。
 螺旋業竜スパイラスは残った数少ない同胞たちを率いて、グラビティチェインの枯渇に喘ぎながらも、ついに星の海を渡った。
 地球の衛星軌道上。
 スパイラスの後に続く群れの中には、『覇蝕龍ジョウガ』の姿もあった。
 長い胴体の周りに色鮮やかな宝玉を浮かべた黒竜は、初めて訪れる地球を目覚して、真空の闇を泳いでいた。

●衛星軌道へ
「第二王女ハールの撃破と、大阪城地下の探索、お疲れさまでした~!」
 小檻・かけら(麺ヘリオライダー・en0031)が、まずは皆を労ってから話し出す。
「第二王女を撃破したことで、エインヘリアルと攻性植物による同時侵攻の危機を回避できましたから、まさに僥倖であります!」
 大阪地下では、ドラゴン勢力から『本星のドラゴン軍団が竜業合体によって地球への到達を目指している』という情報も得られたという。
「ですが、地球に迫り来るドラゴンは、本星のドラゴンだけでは無かったのであります」
 サリナ・ドロップストーン(絶対零度の常夏娘・e85791)が警戒していた、スパイラスに遺されたドラゴンたちが竜業合体によって惑星スパイラスとも融合し、地球の衛星軌道上へ出現することも予知できたのだ。
「この予知は、黎泉寺・紫織(ウェアライダーの・e27269)殿、エマ・ブラン(白銀のヴァルキュリア・e40314)殿が協力を要請していた天文台からの情報や、死道・刃蓙理(野獣の凱旋・e44807)殿が注意を喚起していたNASAの解析によって、より詳しい情報がもたらされたのであります」
 詳細な予知によると、無茶な竜業合体で慈愛龍の率いていたドラゴン軍団は殆どが失われた上に、残ったドラゴンたちもグラビティ・チェインの枯渇によって、戦闘力を大きく損なっていることが判った。
「それでも慈愛龍は、竜業合体した惑星スパイラス……螺旋業竜スパイラスを衛星軌道上から日本へ落下させ、その衝撃で殺害できる数百万数千万の人間のグラビティを略奪することによって、失った力を取り戻そうとしてるのであります」
 これが実現すれば、当然ながら地球は終わってしまうだろう。
「ドラゴンが出現する衛星軌道上のポイントは既に割り出したであります。皆さんには、グラビティチェインの枯渇で弱体化している慈愛龍らドラゴンを撃破し、螺旋業竜スパイラスの破壊をどうかお願いします!」
 頭を下げるかけら。
「皆さんにドラゴンを迎撃していただく場所は衛星軌道上となります。そこまでは宇宙装備ヘリオンで移動するであります」
 無重力空間での戦闘となるものの、ケルベロスが戦うにあたって特に支障は無いという。
「なんならケルベロス大運動会でお馴染みのジェットパッカーとかの移動用装備を積んでおくでありますから、どうぞご自由にお使いくださいませ♪」
 螺旋業竜スパイラス自体には、竜業合体によって地球へ移動する以外の戦闘力は無い。
「でもその巨大な質量を破壊するためには、作戦に参加した皆さんが、最大出力のグラビティで一斉攻撃する必要があります」
 ただし、迎撃開始後12分以内に『覇蝕龍ジョウガ』を撃破できない場合は、スパイラス落下阻止の攻撃が間に合わなくなってしまう。
 敗北あるいは時間切れでスパイラスの総攻撃に加われないチームが5チーム以上となった場合、戦力不足によりスパイラスの落下を完全に防ぐことができなくなるので注意して欲しい。
「そんなわけで、スパイラスへの総攻撃前に皆さんが戦っていただくのは『覇蝕龍ジョウガ』であります」
 覇蝕龍ジョウガは、長い胴体や尾を敵へ叩きつけたり、あるいは巻きつけて締め上げたり、浮遊させた宝玉を操ったりして攻撃する。
 長い尻尾で薙ぎ払ってくる『除』は、敏捷に優れるが射程の短い複数攻撃。斬られたかのように鋭い痛みと気圧されに注意。
 また、尻尾と胴体で締め上げてくる『呪』は、射程と破壊力に秀でた単体攻撃な上に、頑健性に満ちて相手を縛める力が強いという。
 理力や魔法に優れた宝玉『蝕』は射程の長さと同時に別々の敵を攻撃できる弾数を誇り、着弾した箇所から一気に毒を行き渡らせて徐々に全身を蝕んでいく。
「惑星スパイラスを竜業合体させるなんて無茶苦茶なとんでもない状況でありますが、皆さんの双肩に地球の命運がかかってるであります。どうか阻止限界点までに、螺旋業竜スパイラスを破壊してくださいね。ご武運を」
 かけらはそう説明を締め括って、彼女なりに皆を激励した。


参加者
不知火・梓(酔虎・e00528)
日柳・蒼眞(うにうにマスター・e00793)
氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716)
千歳緑・豊(喜懼・e09097)
七宝・瑪璃瑠(ラビットバースライオンライヴ・e15685)
ユグゴト・ツァン(パンの大神・e23397)
マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)

■リプレイ


 地球の命運を賭けた決戦の日。
 8人は宇宙用装備を着けたヘリオンで衛星軌道上へあがってきた。
 月面やプラブータともまた違う、寄って立つ足場の無い宇宙空間での戦いは、ケルベロスに初めての興奮や不安を齎す。
 だが、視界の大部分を圧迫する螺旋業竜スパイラスの存在感が、8人を悠長な感慨に浸らせてはくれなかった。
 そして、実際には遥か遠くを移動する螺旋業竜スパイラスの落下よりも速く、衛星軌道上へ到達する大ドラゴン軍団。
 覇蝕龍ジョウガもその軍勢の中にいて、早速長い尻尾を鞭のようにしならせ叩きつけてきた。
「アラームはセット済みなんだよ! 10分後にチカチカ光ってくれるはずなんだよ!」
 首にかけた骨伝導インカムを使って仲間へ報せるのは、七宝・瑪璃瑠(ラビットバースライオンライヴ・e15685)。
 機内での相談の際、最初に挙がった懸念事項が時計だった。
 ジョウガとの戦いに時間制限がある以上、残り時間を把握するためのアラームは必須。
 とはいえ、真空たる宇宙空間では音が伝わらないため、瑪璃瑠含めた何人かは発光機能の備わった刻刻を持ってきたのだ。
「それじゃ、攻撃開始なんだよ!」
 仲間らが口々に了承する中、瑪璃瑠は獣化した手へ重力を集中させて、ジョウガの方に向き直る。
 バチィィィン!!
 指の間から鋭い爪の飛び出た肉球ハンドが高速で振り下ろされ、重量のある平手打ちをジョウガの鼻先へお見舞いした。
 続いて。
「此処で止めねば我が仔の殆どが絶望に苛まれる。ならば身を呈しても倒しに向かうべきか」
 いつも泥酔して酩酊状態なユグゴト・ツァン(パンの大神・e23397)が、珍しく真剣な面持ちで決戦へのやる気を見せていた。
「何者で在れ仔は仔だ。ならば全力で愛してやる」
 と、総ての生命を自らの仔と思い込むスケールの大き過ぎる認識は、未だ健在なユグゴト。
「私の胎に還る事を赦す、愛らしい貴様――おいで」
 それでいて、デウスエクスはお仕置きする対象だともしっかり心得ていて、今もジョウガへ向かって林の乙女を嗾けていた。
 ——殺せ。殺せ。殺して終え。奴が我等を滅ぼすものだ。殺される前に殺して終え。
 まるで精神を蝕まれそうな囁きが風のようにジョウガの鼓膜を揺らし、心の均衡を崩していく。
 ミミックのエイクリィも主に負けじと筒状の身体でジョウガへ突撃、ガブリと長い腹へ喰らいついた。
「まさに俺達が地球の絶対防衛線。勝つしかない、か……」
 日柳・蒼眞(うにうにマスター・e00793)は、やや緊張した声で呟く。
 とはいえ、大運動会でお馴染みのジェットパッカーを活用して跳ね飛んできた辺り、それなりに心の余裕はありそうだ。
(「無重力化だと形や感触も違ったりするのかな?」)
 何せ、そんな痴的好奇心を満たすべく、機内では何度も感触を確かめるように小檻のおっぱいを揉みしだいていた蒼眞だ。
「戦いってのは力押しだけじゃない。目先の結果だけに捕らわれず、常に先を見据えて布石を打ち続けるのがジャマーの戦い方ってもんさ」
 日頃と違う中衛になっても、臆することなくオウガ粒子を周囲に撒き散らして、前衛陣の集中力強化に努めていた。
 一方。
「ドラゴンてのは、本当に滅茶苦茶な生きもんだなぁ」
 実際は遥か遠くにあるはずのスパイラスの大層巨大な姿を目の当たりにして、不知火・梓(酔虎・e00528)は驚嘆していた。
「序に執念が凄ぇなぁ。全くもって、感心しちまうねぇ」
 などと呑気に呟く梓だが、当然ながら簡単にやられてやるつもりなど無く、長楊枝を吐き捨てては身も心も戦闘態勢に入っている。
「他人に迷惑かけたらどうなるか、きつく仕置きしてやろうかね」
 返り討ちにしてやると意気込んで放つのは、Gelegenheitによる雷刃突だ。
 雷の霊力帯びし切っ先が目にも留まらぬ速さで刺突され、ジョウガの腹をしかと捉えた。
「まさかあの後からずっと移動してたって事なの……? 座して死を待つくらいなら、ってところなのかしら」
 氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716)は、今や螺旋業竜スパイラスと化した慈愛龍たちの執念と恐るべき行動力へ、素直に驚いていた。
「戦闘時間も限りがあるし、回復用のドローンは少なめで行きたいわね」
 と、残り時間を気にしつつも、小型治療無人機の群れを通常モードで展開するかぐら。
 前衛陣の守りを固めると共に、出会い頭に自分たちがジョウガから負わされた怪我をも治癒した。
 他方。
「大丈夫、こういう時のケルベロスはとっても強いから。……この星に住む皆がいつも通りの明日を迎えられるように頑張らないと、ね」
 マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)は、自分の背中にべったりくっついて震えているアロアロを宥めていた。
 アロアロだけでなく自分にも言い聞かせるような声音だが、やはり第一には初めての宇宙遊泳にビビって泣きそうなアロアロを慰めるためだろう。
「フラは神様に祈りを捧げるためのもの、勝利を祈って踊るから」
 ともあれ、気を取り直して楽しげにフラダンスを踊り出すマヒナ。
 ただでさえ巨体なジョウガがつられて踊る様を想像すればますます笑顔になれそうだが、東洋竜っぽい外見のおかげで、実際は長い胴をうねうね動かしていてもそれがフラなのかどうか判りづらい。
「……!!」
 ジョウガは反撃とばかりに大口を開いて咆哮をあげると、周りに漂っていた宝玉を飛ばしてきた。
 各々が自立しているかのように違う軌道で襲い掛かってくるため、誰か狙われているか読みづらく、故に回避も容易ならない。
「危ないっ!」
 それでも、間一髪でかぐらが瑪璃瑠を庇い、宝玉の突進を食らって吹っ飛ばされる。
「おふ……ッ、えれえれえれえれ……!」
 マヒナの身代わりになったユグゴトなどは、全身を襲った衝撃に背中を波打たせていた。
 アロアロは主の意思に忠実に、声なき祈りを捧げて味方の回復に専念している。
 同じ頃。
「『チーム』でスパイラス破壊に行くのが目的だからね。あくまでジョウガは過程、じっくり楽しめないのが残念だ」
 口ぶりの割にどこか楽しそうに見えるのは、千歳緑・豊(喜懼・e09097)。
 地球の命運よりも今目の前の殺し合いが楽しくて、ロクでもないと重々承知しながらも名残惜しくなってしまうそうな。
 元ダモクレスらしい嗜好と人間らしい良心の呵責が合わさって、より豊を人間臭くしているのかもしれない。
「せっかく手痛い反撃をしてくる相手なのにね」
 それでも雷電の銃爪を引く指は容赦なく神速で弾を撃ち込み、ジョウガの宝玉を砕いてみせる豊だ。
「ドラゴン達も生き残るのに必死だろうけれど、それはこちらも同じ!」
 ローレライ・ウィッシュスター(白羊の盾・e00352)は、勇猛果敢に躍り上がってジョウガへ肉薄。
「もらった!」
 『砲撃形態』に変形したドラゴニックハンマーを力一杯振り抜き、竜砲弾を発射した。
 命中した弾が盛大に爆ぜるものの、その轟音が耳を劈いたりはせず、否が応でも宇宙空間にいる事実を思い知らされる。
 狙いすましたローレライの射撃は正確にジョウガの尻尾を捕捉して、体力を削るだけでなく確実に動きを鈍らせていた。
 テレビウムのシュテルネも手にした凶器でジョウガの尾を懸命に切り刻んでいる。


 戦いは続いた。
「…………!!」
 体力の半分以上を失ったジョウガは怒り狂って、長い尻尾を縦横無尽に振り回し、ユグゴトたち前衛陣をバシバシと薙ぎ払ってくる。
 ローレライを庇ったアロアロをシュテルネが回復する一幕などもあった。
「生きるんだよ」
 瑪璃瑠は負傷した仲間を励ましながら、アニミズムアンクを頭上へ掲げる。
「生かすんだよ!」
 二律背反矛盾螺旋・夢・クリフォトから発した光の刃が、瑪璃瑠とユグゴト、そして大自然を霊的に接続。
「それがボクたち――瑪璃瑠なんだよ!」
 大自然による加護は想定よりも膨れ上がって、ユグゴトの傷を大きく癒した。
「嗚呼、感謝する」
 大幅に体力が戻ってきたユグゴトは、恍惚とした表情で内に溜めていた黒い魔力を放出。
「悪い仔にはお仕置きせねば。胎内に還れば皆、快楽の極みと伴に在る」
 魔力の塊はトラウマボールとなってジョウガの胴体へ吸い込まれるように加速、そのまま太い腹を撃ち貫いた。
「細工はりゅうりゅう、仕上げを御覧じろ……なんてな」
 蒼眞は某冒険者の能力の一端を身に宿して、常ならざる気魄の一太刀をジョウガへ浴びせる。
 稲妻の闘気篭もりし刀身が、ジョウガに少なくないダメージと感電にも似た衝撃を与えた。
「お代は見てのお帰りよ、ってなぁ」
 絶えず不規則な動きでジョウガの虚を突いて、斬りつけるのは梓。
 誘導された意識の空白にはGelegenheitの刀身もそれを振り下ろした梓の姿も映らず、瞬間疾った光の軌跡が激痛を残すだけだ。
「みんな、メリルたちの時計が光ったから、今がちょうど10分経過、だよ」
 マヒナは骨伝導式携帯トランシーバーセットの有用性に内心感謝しながら、オラトリオヴェールを展開。
 オーロラのような光に前衛陣を包み込んで、彼らの負傷を治療した。
「名残は惜しいが、メインは君じゃないからね」
 豊はレプリカント特有の機能である胸部を変形、展開させて発射口を露出させる。
 そこから放たれた必殺のエネルギー光線が、ジョウガの黒い胴体を派手に撃ち貫き、眩い爆炎で覆い隠した。
「私は此処だ!」
 言うや否や、Twilight Crimson Flameで素早く斬りつけるのはローレライ。
 その斬撃は影の如く密やかに、ジョウガがそれと気づくより速く、奴の鬣を掻き斬っていた。
「悪いけど、ぶつかる前に壊してあげるわ」
 かぐらは、刻一刻とこちらへ近づいているスパイラスへ啖呵を切ってから、
「その前に、守ってるやつを何とかしないとね」
 ゾディアックソードの刃をジョウガへ向けて突撃、抉り刺した傷口から雷の霊力による強烈な麻痺を与えた。
 8人の猛攻へついに耐えかねたジョウガがようやく息絶えたのは、戦闘開始から数えて11分後の事だった。
 疲労を感じる暇もなく蒼眞が中衛から前衛へ移動したり、瑪璃瑠やマヒナが少しでも皆の怪我を治そうと奔走していれば、総攻撃までの1分の猶予など瞬く間に経ってしまう。
 それでも、自分たちの他にも螺旋業竜スパイラスを破壊すべくケルベロスたちが散開して待機していると思えたから、充分に心丈夫である。
 総攻撃開始の時刻はすぐに訪れて、衛星軌道上のケルベロスたちが一斉にグラビティの光を放つ。
「兄様のいる地球を護るためにも……マグノリア・アインソフオウル!」
 瑪璃瑠のワイルド化した左目が光った刹那、
「夢は傍ら」
 零夢現・月光華から眩い閃光が真空を疾った。
「現の果てまで!」
 スパイラスに比べれば吸い込まれそうなぐらい小さなオーラの弾丸だが、瑪璃瑠の全身全霊を込めたその一撃は、必ずや奴の喉笛へ噛みついてくれるに違いない。
「私の全部で抱いてやる」
 ユグゴトも全力で黒色の魔力弾を撃ち出す。スパイラス崩壊の悪夢がすぐそこまで迫っているのをいち早く見せつけるかのように。
 エイクリィも偽物の財宝を懸命に投げつけている。空気抵抗を受けない真空ならではの大遠投だ。
「……惑星スパイラスにいた筈の螺旋忍軍の方々は本当にご愁傷様、だな……」
 そんな同情をしつつ、自分もグラビティを繰り出すのは蒼眞。
(「ドラゴンに殺されたなら死んではいないだろうけどコギトエルゴスム回収は絶望的だしもう蘇生される目もほぼ無いだろうしな……」)
 同じく総攻撃に参加する梓は、
「斬り結ぶ 太刀の下こそ 地獄なれ 踏み込みゆかば 後は極楽、ってなぁ」
 どれだけ自身が負傷していようと、痛がる素振りを最後まで見せなかった。
「ドラゴンの執念ってほんとすごいと思う……けど、生きたいのはワタシも皆も同じだから……!」
 マヒナは夜明けの花を組み上げて、竜を象った稲妻を解き放つ。
 アロアロも飛んでいく雷の竜を追いかけるように、召喚した原始の炎を放射した。
「ターゲット」
 地獄の炎でできた獣を嗾けるのは豊。
 大柄な犬は五つの目を光らせて牙を剥き、長い尾をたなびかせてスパイラスへ向かっていく。
「最後まで気を抜かずに行きましょう!」
 かぐらはドラゴニックハンマーを砲撃形態へ変化させ、轟竜砲を発射。
 他のグラビティと変わらず、何にも遮られず速度も落ちない竜砲弾が、気が遠くなる距離を飛んでいく。
「今こそ、日々の鍛錬の成果を見せる時!」
 An die Freudeの主砲を一斉発射するのはローレライ。
 光の帯が幾筋も虚空を貫き、スパイラスへ集束していく。
 シュテルネの放ったテレビフラッシュも細く長い光芒となって、フォートレスキャノンに並んだ。
 数多のケルベロスたちからグラビティによる光や炎、弾などが放たれ、それら光線が螺旋業竜スパイラスへ届いた瞬間、各部位で爆発が始まった。
 小さな爆発は泡のように数を増やし、規模を膨らませて、螺旋業竜スパイラスの大半を消滅させる。
 辛うじて消滅しなかった部分も、爆発に耐えきれず分離し、小型の破片となって大気圏に吸い込まれていった。
「……此奴等は、大気圏にて確と燃え尽きて塵と化す、のか?」
「そのまま落ちそうなデカさだなぁ」
 幾ら本体に比べれば小型とはいえ、スパイラスの破片の大きさへ不安に駆られた8人がグラビティをぶつけていると、すぐにヘリオンが回収しにきてくれて、宙域を脱出。
 8人は安全圏にてようやく、螺旋業竜スパイラスの撃破成功を噛みしめることができた。
 同じような懸念に駆られたケルベロスらの尽力もあって、スパイラスの砕かれた破片は全て、流星雨となって空を彩るに違いない。

作者:質種剰 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年6月4日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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