男女平等のミニスカ

作者:芦原クロ

 気温が上昇し、夏の気配が近づきだした時期。
 とある公園の隅に、謎の集団の姿があった。
『ミニスカは涼しいし、可愛らしいわよね! 男性も女性も年齢も問わず、みんなミニスカをはくべきだと思うの。男性のミニスカなんて誰得って言ったら……私得! 眼福ものよね! 女性のミニスカも可愛いし……だから、私がはかせることにしたわ。これこそ、より多くの人が可愛いを体験し、幸せになれる道だと思わない?』
 異形の者は目にもとまらぬスピードで、10名の信者たちを全員ミニスカ姿にさせた。
 気づいたらいつの間にか、ミニスカをはいていた……そんな状況である。
 10名の信者たちは異形の者の技に惚れこみ、無茶苦茶な教義に賛同し、公園内に居る他の一般人たちもミニスカにしてしまおうと賛同した。

「悟りを開いてビルシャナ化した人間が、事件を起こそうとしているぜ。犠牲者が出る前に阻止し、一般人の救出とビルシャナの討伐を頼みたい」
 霧山・シロウ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0315)は、ケルベロスたちに頭を下げた。

 信者と共にビルシャナが、配下を増やそうとしている所へ、乗り込むことになる。
 ビルシャナの言葉には強い説得力がある為、このまま放っておくと、一般人が配下になってしまう。
 一般人が配下になったとしても、ビルシャナさえ倒せば元に戻るので、救出は可能だ。
 ただし配下は弱く、倒すと死んでしまう為、攻撃しにくい面倒な敵となる。配下が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるのは間違い無い。
 ビルシャナの主張を覆すような、インパクトのある主張や説得を行ない、信者の配下化を防ぐのが最善の方法だろう。
 インパクトのある主張をしていれば、ビルシャナはケルベロスたちに意識を向け続ける。
 インパクトや精神的ダメージのある説得をすれば、10人も正気に戻り、配下化の阻止が可能となる。
 尚、正気に戻った信者は逃げてゆくので、特に構わなくて平気なようだ。

「ミニスカート……長さの基準は一般的に、膝丈よりも短いものだな。膝より高い位置に裾が有るもの、がミニスカートというようだ。ビルシャナにミニスカをはかされると、【恥ずかしい】や【トラウマ】などのバッドステータスが掛かる可能性が高い」
 男性は特に……と、苦々しげに言葉を紡ぐ。
「地味な依頼かも知れないが……放っておけば、ビルシャナの言動で心に傷を負い、自ら死を選んでしまう一般人も出るだろう。あんたさん達なら人々の心も守り抜いてくれると信じてるぜ」


参加者
ピジョン・ブラッド(銀糸の鹵獲術士・e02542)
若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506)
朱藤・環(飼い猫の爪・e22414)
アンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762)
エルム・ウィスタリア(薄雪草・e35594)
八点鐘・あこ(にゃージックファイター・e36004)
柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)
 

■リプレイ


「え? オスの鳥が女の子の下着見たさに語ってるかと思いましたけど、メスの鳥なんですかぁ」
 がっくりと肩を落とす、ミニスカートワンピにニーソ姿の若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506)。
 下着が見えないよう、オーバーパンツまで着用して来たというのに、敵は女性のビルシャナなのだ。
「……ありえない、いろんな意味で。まあ、精神衛生上に悪いものを見させられる前に、迅速に屠殺しましょう」
 やる気が増し増しの、めぐみ。
「エルムさん、白ワンピ似合ってますよー?」
「ミニスカート対策に足の処理もばっちり……いえ、レプリカントなのでそもそも問題はないです。うん」
 エルム・ウィスタリア(薄雪草・e35594)に、清楚な白色のロングワンピースを贈った朱藤・環(飼い猫の爪・e22414)は、カメラでエルムを撮りまくっている。
 やるからには、似合う女装を、徹底的に追い求めるタイプの環。
 環に対し、今回は気持ちが怯え気味のエルムは、可愛らしい帽子が風で飛ばないよう片手でおさえる。
 そんな些細な仕草ですら可憐に見え、無駄に女装がよく似合う、エルム。
 対して……。
「待っちなさーいっ。あんた達にミニスカを穿く資格などなーし!」
 ビルシャナと信者たちに大声を掛ける、柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)。
 風にミニスカを揺らし、堂々と近づく清春の姿は――衝撃的過ぎるモノだった。
『ひっ!? バケモノ!? い、いや、男性のミニスカは私得の眼福……って、やっぱ無理! 怖い!』
 うろたえるビルシャナを見て、信者たちも怯えだす。
 あっという間に2人の信者を正気に戻した清春は、下手なメイクの所為で、顔面はバケモノ状態。
 そして毛は剃らぬスタイル。
 更に筋肉質な体躯の為、色々と、キツ過ぎるのだ。
 極めつけはオネェ口調。
 同じ旅団の友人、八点鐘・あこ(にゃージックファイター・e36004)でさえ、ダッシュで物陰に逃げ込むほどだった。


「うわあ」
 咄嗟に一言が、口から零れ出てしまう、アンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762)。
 ビルシャナの行為にか、それとも清春の姿に対してか。どちらにしても、「うわあ」である。
「ミニスカートって言ったら60年代のスタイルだよね! てことで、ビビッドなローズピンクのAラインミニワンピで参戦」
 ピジョン・ブラッド(銀糸の鹵獲術士・e02542)も女装をしており、丸襟のノースリーブミニワンピースを着用。
 ターコイズブルーの裏地とパイピングが、ポップな印象を与える。
 更には、白いロンググローブ、そしてチャンキーヒールの靴。と、徹底している。
「初夏だから生足だよ。無駄毛は綺麗にしてきた」
 ピジョンの口調は普段とは変わらず、女装を恥ずかしがっている様子は見えない。
「は、恥ずかしくは……ないのです?」
 男性陣の濃さに驚き、まるで警戒する野良猫のようにじりじりと少しずつ近寄りながら、あこが尋ねる。
「恥ずかしい? うん、そうだね……。鳥にインパクト与える方法が他に思いつかなかったんだ」
 遠い目をしながら答えるピジョンを見て、危険は無いと分かり、あこは元の位置へ戻る。
 自分の年齢である、27歳のミニスカは常識的に考えてきつい、というのが本音のアンセルムだが、蔦で繋がれている人形はミニスカにしている。
「ミニスカ可愛いよね? 似合うよね?」
 ひらひらしたフリルやレースで少女趣味たっぷりの、可愛いミニスカドレス姿の人形を、威圧的に自慢しだす。
 1人の信者がドン引きして我に返り、逃げ去ってゆく。
(「タイトミニスカと、ねこあしの微妙さをアピールしようと思ったら周囲がもっと大惨事になっていたので……あこは……普通にミディアムやロング丈の良さを推すのです……!」)
 ぎゅっと両手を握り、目標を決める、あこ。
「あらっ、お人形さんもみんなもカワイーわねぇ。なでなでしちゃうわよっ、もぉ!」
 タイミング良く掛かった清春の言葉に、驚いて飛び跳ね、猛ダッシュで物陰へ逃げる、あこ。
 尻尾や毛皮を膨らませ、冷や汗を掻いてプルプル震えながら、様子を見ている。
『私が求めているのは、より多くの人が可愛いを体験し、幸せになれる道ぃ……性別も年齢も季節も関係無いわ……』
 清春を見る度に、インパクトを受けて苦しみ、ぐったりしながらも言葉を発する敵。
「えっと、ミニスカも良いものですが季節を問わずにはダメなんですよ。冬場のミニスカの厳しさ分かります!?」
「信じられない? はい全員、紙とペン持って。ビルシャナも」
 エルムの説得にアンセルムが加勢し、紙に、ミニスカ(極寒)。と、書かせる。
「そう、極寒なんです! すっごく! 足がっ! 寒いんですよ!? タイツをはいてても物凄く寒さが突き刺さるし!」
 紙に書かれた文字を指差し、力いっぱい心の底から叫ぶ、エルム。
 2人の女性信者が同意を見せ、正気に戻った。
『そんなにヤバいの? 女性はミニスカはいてるだけで可愛いしオッケーじゃね?』
「私もみんなのミニスカート見たい派だからあれですけど……穿くだけでオッケーとか、ミニスカ様舐めてますよね?」
 男性信者の失言が、環の感情を揺さぶった。
「ご存じの通り、ミニスカ様は偉大です。偉大であるがゆえに、穿きこなすには相応の脚をお持ちでなくてはなりません。ふくらはぎと太腿にかける、女子の涙ぐましい努力をご存じない!?」
『俺、男だから』
 分からない、と首を横に振る、ミニスカ姿の男性信者。
「ケア用品を買い、SNSで話題の脚痩せストレッチを試し、ちょっと値段の張るタイツまで手を伸ばす! 穿くと決めたのならばミニスカに見合う脚をなさい!」
 タイトミニスカートに、黒ストッキングを着用している環が、ストッキングに包まれたままの細い脚を見せる。
「性別を問わず、もダメです。男の人に穿かせるのならいろいろと大変なんですよ! 主に! 足の処理で! そのまま穿かせたら大惨事ですよ?」
 エルムも加わり、すね毛の処理をしていないミニスカ姿の男性信者たちを、追い詰める。
「見てみたいですか? 何かのバリアで守られた足を!」
 何かのバリア、と書いて、すね毛。と読んだエルムは、清春を指し示す。
「いーのね、あんた達もこーなりたいわけね!?」
 腰をくねくねさせながら、ノリノリで応える、すね毛丸出しの清春。
「すね毛処理は基本中の基本です! レッツブラジリアン!」
『ミニスカってそんな苦労するものだったん、痛ぇっ!』
 ムダ毛が気になる箇所にワックスを薄く塗ってシートを張り、ばりっと一気に毛根から抜き去る、環。
 ツルツルになったそこを痛そうにさすりながら、我に返って去ってゆく男性信者。
 畳みかける、環。
「あ、そうそう。ミニスカって結構見えやすいんですよねー、下のお召し物が。ミニスカを穿くならそちらの対応も義務です。まだでしたらすぐにでも手配しますよー?」
「えっと、男性がミニスカートって、下着はどうするんですか……トランクスではすぐに見えちゃいますし、それ以外のものはラインが出ちゃいますよ。それでもいいんですか?」
 環の指摘と、めぐみの発言が炸裂。
 正気を取り戻した男性は顔を真っ赤にして、脱兎の如き勢いで逃げて行った。


「ミニスカではドロワーズのようなふんわり下着がはけないのです!」
 和風のロリータ服を着こなし、あこはミニスカのデメリットを主張する。
 ピジョンも、違うファッションを勧める方向性だ。
「ロングコートの裾のひらひら感、良いと思わないか? きちんと着たり崩したりで個性を演出できるよ」
 取り出した、自分のケルベロスカードを信者たちに見せる、ピジョン。
「夏には向かないけど、それなら冬のミニスカートは寒いって話。それとコートを着るならミニスカートは向かないよ」
 疑問符を浮かべる信者たちの前で、ピジョンは自前の黒コートを着た。
「何故なら……男が! ミニスカートを履いて! コートを着ると! 犯罪者っぽすぎる!!」
『コートなんて着なくていいわよ!』
「ほらみてこの生足コートの下何も着てないみたいじゃん! ズボンの良さを思い出して!!」
 敵の主張をガン無視し、ピジョンは必死に信者たちに訴えかける。
『変質者と間違われるのはなぁ……』
『待って! コートを着なければいい話でしょ!?』
「情熱も意志もない癖にミニスカを穿くたぁ言語ドーダン斎藤ドーサンよ! 気合がなくっちゃ服に着られるのが精々よ。それじゃ美の華は咲かないわ……」
 心が揺れている信者を引きとめようとする敵だが、清春のウィンクが飛んで来た為、インパクトを受けまくってパタリと倒れた。
 あっさり信仰を捨て、帰ってゆく信者。
「あたし達のよーに自分の意思で服を着てるのかしら!? 危うさを秘めて、可愛らしく、純真無垢に、使命感を持ってると言えるの!?」
 清春は残った信者たちに向け、問い掛ける。
「ミニスカが似合うのは、残念だけど……男女年齢場所問わず、じゃないんだ」
「……こほん。ミニスカですと、露骨に似合う似合わないが出るんです」
 アンセルムの言葉に続き、エルムが一度咳ばらいをし、説き始める。
 アンセルムは紙に、ミニスカ(30)、ミニスカ(大根)、ミニスカ(オーク)、……と書き込んでいる。
「……みんなが穿くものだと、いつでも穿けると、これでも言えるかい? 想像してみようか」
「想像してみてください。短いスカートにミチミチに詰まった足を。美しいと思いますか?」
 アンセルムと組んで、エルムが説得の言葉を重ねた。
「想像出来ないなら絵を描いてあげようね」
 容赦なく、アンセルムは分かりやすいよう、絵まで描く始末だ。
「ミニスカは、どんな状況なら似合うか、誰なら似合うか、のシビアな判断が求められる物なんだ。その判断ができない内は、ミニスカを穿く、穿かせる、なんてできないよ」
 すらすらとペンを走らせ、絵を描きながら語る、アンセルム。
「あこのような尻尾があってもふもふな種族はスカート自体が広がって困るのです! 女子だからと言って平等とは限らないのです……!」
 あこは頬を膨らませ、ぷんぷんと怒りモードだが、そんな姿も愛らしい。
「というわけで膝丈スカートがしっぽもいい感じで、布地の柄が大きめだとお洒落にバリエーションをつけやすくて、おすすめなのです……!」
 無難な推し語りをする、あこ。
 あこの愛らしさと主張が深く刺さった9人目の信者が、癒されたというように、ほくほくした雰囲気で帰ってゆく。
「まあ、百歩譲って、自分の趣味でというなら、下着や、すね毛の事とかの問題を解決してれば、見なかった事に出来そうですけど。問題を残していたり、他人に強要するなら……実力行使をするしかないですね」
 いい笑顔を向ける、めぐみ。
「あたしのような存在を世に解き放ちたいわけなのね!? アビスを覗きたいのねっ!?」
 信者と敵に迫る、清春。
 敵は清春のインパクトが大きい所為で、得意のミニスカをはかせることも出来ず、動けない。
 情けないその姿と、迫って来る清春とを交互に何度か見て、10人目の信者は信仰を捨てて飛び退くように逃げだした。
「あなたもそんな無駄毛だらけじゃだめじゃないですか、脱毛してあげますね」
『これムダ毛じゃなくて羽毛よ!? いだだだ!! ちょ、毟らないで!』
 めぐみは無慈悲に容赦無く、敵を殴りながら羽毛を毟っている。
「今日は……とっても災難だったと思うので……こんな日が命日にならないようにしてほしいのです……!」
 元信者たちが自殺しないよう願いながら、ベルと共に敵を攻撃する、あこ。
「見えてはいけないお召し物が見える……。ええ、一線を越えたわよ」
 華麗にステップを踏みながら敵に接近し、その度にミニスカの裾がめくれ、下着が露わになってしまう清春。
 きゃり子が、たじたじになって動けないのも気にせず、清春は愛に溢れた仕草で敵を攻撃。
「鳥にトラウマ与えちゃって!」
 マギーに指示し、オーラの弾丸を放つ、ピジョン。
 メンバーの猛攻により、敵は完全に消滅した。


「他人に不快感を与えたり、強要するような趣味は良くないですね」
 戦闘後、ぽつりと呟くめぐみ。
「……何かの間違いでミニスカ穿かされる事を考えて、足はきれいにしておいたけど」
 なにも無くて良かったと息を吐く、アンセルム。
「あうあう」
 説得時は開き直っていたものの、終わった今となって、エルムはものすごい涙目になりながら鳴いている。
「BSには掛かっていないのに、大丈夫なのです……?」
「ミニスカートは穿かされてないし、説得でトラウマでも有ったのかな」
 エルムを心配げに見守る、あことピジョン。
 トラウマといえば……と、ピジョンは清春を見て笑う。
「清春、気合い入り過ぎじゃん。ビルシャナが、何も出来てなかったね!」
「たまにはハジけるのも大事よ~」
 ピジョンにウィンクを飛ばし、ノリノリ状態の清春。
「エルムさんは今になって緊張が解けたんですよー。きっと。さて……トランクスは許さん」
 女装姿を撮影したカメラとデータの保護を万全にしてから、環は清春目掛け、走り出す。
「あら? あたしと追いかけっこしたいの? 捕まえてごらんなさ~い☆」
 逃げ回り、終始楽しそうな清春だった。

作者:芦原クロ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年5月22日
難度:普通
参加:7人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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