ビルシャナは十代の女性こそ至上と説く

作者:紫村雪乃


「どのような女性が素晴らしい?」
 深夜。町外れの倉庫の中に響きわたる声が問うた。
 声の主。どうやら男であるらしい。らしいというのは、男が人の姿をしていないからで。
 男は汚れた羽毛に覆われていた。鳥怪である。ビルシャナであった。
 そして、彼の前には異様な雰囲気を持つ十数人の集団があった。年齢は様々であるが、全員、男である。
「十代!」
 男たちが叫んだ。
「そうだ。女性は十代に限る! それ以外は不要!」
 ビルシャナが喚く。そして命じた。
「十代の女性こそ至高! それ以外の女性を殲滅するのだ!」
「おお!」
 信者たちが叫び声をあげた。


「鎌倉奪還戦の際にビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)はいった。
「悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事が、今回の目的。このビルシャナ化した人間が周囲の人間に自分の考えを布教している所に乗り込む事になります」
「どのような考えなの?」
 問うたのは和泉・香蓮(サキュバスの鹵獲術士・en0013)という名のサキュバスであった。ほとんど裸といっていい悩ましい姿をさらしている。
「十代の女性こそ至高。それがビルシャナ化した人間の考えです」
「十代の女性?」
 可笑しそうに香蓮は笑った。
 確かに十代の女性は魅力的だ。が、それ以外の年代の女性にも、それぞれの素晴らしさがある。それがわからないビルシャナは愚かとしかいいようがなかった。
「はい。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、ほうっておくと一般人は配下になってしまいます。ここで、ビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が配下になる事を防ぐことができるかもしれません」
 セリカはいった。ビルシャナの配下となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのようになってしまう。そうなれば厄介であった。
「インパクトのある主張、ねえ」
 悪戯っぽく香蓮は笑った。手っ取り早いのは十代ではない女性の魅力を見せつけることだ。サキュバスである彼女の考えは、その女性が男性と愛し合う姿を見せるというものであった。
「ビルシャナさえ倒せば一般人は元に戻ります。配下が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
 香蓮の思惑など知らず、セリカはいった。
「ビルシャナの戦闘方法は?」
「破壊の光を放ちます。さらには炎も。そして経文を唱え、相手の心を乱します」
 周りにいる人間の数は十ほど。配下となった場合、多少は強化されるようであった。
「教義を聞いている一般人はビルシャナの影響を受けているため、理屈だけでは説得することは出来ないでしょう。重要なのはインパクトになるので、そのための演出を考えてみるのが良いかもしれません」
 セリカはいった。
「もしかすると恥ずかしい姿をさらしちゃうことになるかもしれないけれど、まあ、それも楽しいかもしれないわね」
 うふふ、と香蓮は艶っぽく笑った。


参加者
叢雲・蓮(無常迅速・e00144)
日柳・蒼眞(うにうにマスター・e00793)
ラインハルト・リッチモンド(紅の餓狼・e00956)
盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)
メレアグリス・フリチラリア(聖餐台上の瓔珞百合・e21212)
 

■リプレイ


「どのような女性が素晴らしい?」
 深夜。町外れの倉庫の中に響きわたる声が問うた。
 声の主。どうやら男であるらしい。らしいというのは、男が人の姿をしていないからで。
 男は汚れた羽毛に覆われていた。鳥怪である。ビルシャナであった。
 そして、彼の前には異様な雰囲気を持つ十数人の集団があった。年齢は様々であるが、全員、男である。
「十代!」
 男たちが叫んだ。
「そうだ。女性は十代に限る! それ以外は不要!」
 ビルシャナが喚く。そして命じた。
「十代の女性こそ至高! それ以外の女性を殲滅するのだ!」
「おお!」
 信者たちが叫び声をあげた。
 その時だ。倉庫の入口のドアが開く音が響いた。驚いて振り向くビルシャナの目は、飛び込んできた四人の男女の姿をとらえている。
 叢雲・蓮(無常迅速・e00144)、日柳・蒼眞(うにうにマスター・e00793)、ラインハルト・リッチモンド(紅の餓狼・e00956)、盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)、メレアグリス・フリチラリア(聖餐台上の瓔珞百合・e21212)。ケルベロスであった。
「何だ、貴様らは?」
 ビルシャナが怒鳴った。すると女と見まがうほどに美しい少年が口を開いた。
「ケルベロスなのだ」
 少年ーー蓮はいった。
「ケルベロス? 邪魔をするつもりか」
「ああ」
 目にしみるような青空を思わせる蒼髪の若者が頷いた。蒼眞である。
「お前の思い通りにはさせないぜ。十代の少女が良い、というのは分からなくもないけど現代では未成年者に手を出すのは色々と問題があると思うぞ…」
「問題?」
 くつくつと可笑しそうにビルシャナが嗤った。
「俺は人を超えた存在。人間どものつくった法や常識など何ほどのことやある?」
「馬鹿な。お前は本当に自分の考えていることが正しいと思っているのか。もし十代の女性以外いなくなったりすれば、どうする? 今後は強制的に禁欲生活だけど、衆道に堕ちろとでも…? 大体、十代以外の女性を殲滅するとなると自分の母親や祖母も殲滅するのか? それに十歳未満の幼女はこれから十代の少女に成長するだろうに不要だというのなら、最長でも後十年経てば十代の女性は存在しなくなるだろうに…」
 呆れたように蒼眞はいった。難しい問題ではない。それが何故ビルシャナにはわからないのであろう。
「くっ」
 ビルシャナが言葉に詰まった。そもそも論理的な思考などないのだから無理はなかった。
 そのビルシャナを見やりつつ、蒼眞は胸の内で思っている。女性は十代に限るって、随分と幅広い指定だな、と。十九歳と十歳では、やはり違うと思うのだ。
「まあ俺自身は女性は十代だろうと二十代だろうと性欲の対象として喜んで抱きますがね…」
 蒼眞はふわりとメレアグリスを見比べた。
 ふわりは十八歳。どこか眠たげな、しかし目の覚めるような美少女だ。
 一方のメレアグリスは二十五歳。引き締まった肉体からは年に似合わぬ色香が滴り落ちている。
 年齢の違う二人。が、二人とも魅力に溢れている。どちらかが優れているということはなかった。
「ボクもそう思うのだ」
 蓮は同意した。とはいえ、蓮は少年だけあって性的に直接的ではない。
「ほっぺにちゅってしてくれたりむぎゅ~って抱きしめてくれたり頭を撫で撫でしてくれたりしたら、別に女の人の年齢に拘らなくったって嬉しいけれど…」
「わかってるじゃないか」
 蒼眞がニッと笑んだ。すると蓮は訝しげに小首を傾げた。
「なんで十代だけなんだろ? …あ。もしかして、して貰ったコトが…? はわわ」
 何を思いついたか、蓮は慌てて口をおさえた。
「まったく」
 締まった腰に手をあて、メレアグリスが口をとがらせた。
「十代オンリーとか、ケーキしか食べないのと同じじゃない? もっと果物とかお団子とかお肉とかお魚とか食べたくない? あたしは美味しいぜー、多分! いや絶対!」
 メレアグリスは断言した。そして腹を空かせた女豹のように舌なめずりした。
 実際、メレアグリスは腹を空かせていたのだ。性的、という意味において。
「ま、あたしの方も食べさせて貰うけどね! うへぇー…おなかすいたよお…」
 独語したメレアグリスの腹が鳴った。どうやらメレアグリスの胃と膣はつながっているらしい。
 メレアグリスは仲間にむかって色っぽい流し目をくれた。
「くっついて良いのはラインハルトくんだっけ? 蒼眞くんだっけ? ま、いいや! 色んな意味で溜まってそうな方で!」
 メレアグリスが誘った。ニヤリとしたのは蒼眞である。


「何をするつもりだ。やめろ!」
 ビルシャナがメレアグリスに駆け寄ろうとした。すると、その前に赤髪の若者がするりと滑り込み、立ちはだかった。
 人間ではない。獣耳がぴんと立っている。ウルフドッグのウェアライダーなのであった。
「邪魔はさせません」
 若者ーーラインハルトは冷然とした口調でいった。華奢であるが、鞘の内の刃を思わせる剛さを感じさせる若者である。
「エインヘリアルや攻性植物のせいで大変なことになっているのに…ビルシャナはブレないな~…」
 眼前のビルシャナを見つめ、ラインハルトは呆れたような、同時に感心したような語調で呟いた。
「さて、まずは色々言いたいこともありますが…十代以外の女性を殲滅は流石に極論過ぎませんか?」
 信者たちにむかってラインハルトは問うた。
「そもそも、貴方達の大好きな十代の女性も成長するまでは一桁の女性の時もありますし、成長したら二十代にもなりますし…色々自分達の主張が面倒くさいと思いませんか?」
「うっ」
 信者たちには声もなかった。確かにラインハルトのいう通りではある。が、ビルシャナの呪縛は論理を超えたところにあった。
「仕方ない。まぁ、戦闘は真面目に行きますか」
「どけ!」
 ビルシャナの目から赤光が迸り出た。
 細胞そのものを滅殺する破壊光線だ。撃たれたラインハルトの肉体がじゅうと灼ける。
「全部癒してあげるの……」
 妖精のように軽やかにふわりがラインハルトに駆け寄った。
「痛いのも苦しいのも全部、今は忘れちゃって良いの。ふわりが愛してあげる、忘れさせてあげるの……」
 抱き起こし、ふわりはラインハルトを抱きしめた。爛れた傷に口づけする。さらには濡れた舌を這わせた。
 愛されている。
 その想いがラインハルトの全身の血を奔騰させた。超人域にまで高められた自然治癒力がラインハルトの傷を癒やしていく。
「ふん。馬鹿め」
 ビルシャナがラインハルトに嘲笑をむけた。
 刹那だ。白光が疾った。どす黒い瘴気にも似た呪詛をしぶかせつつ。
 ぱちりと鍔鳴りの音を響かせ、蓮が納刀した。抜刀術ならではの一閃である。遅れてビルシャナから鮮血が噴いた。
「油断は大敵なのだ」
 蓮はいった。戦いとは残酷なもの。敵の隙をつくことに対する迷いは、蓮にはなかった。
「まだだ」
 ラインハルトが立ち上がった。凄まじい闘気が彼の全身から立ち上る。
 擬似・闇堕化。自身、そして別人格である闇それぞれいう魔力を組み合わせることにより、己の脳と身体の潜在能力を限界まで引き出す技である。
 膨大な魔力がラインハルトの肉体細胞を一瞬間ではあるが爆発的に活性化した。その余波により、ラインハルトの肉体そのものが変容。朱の着物をまとった少年の姿がそこにあった。
「な」
 ビルシャナの声は途切れた。一瞬で間合いをつめたラインハルトに切り裂かれて。


「おいで」
 まるでママが最愛の坊やにするように、メレアグリスが蒼眞を招いた。すると蒼眞はおずおずと近寄っていった。
「いいこ、いいこ、いつも頑張ってて偉いねえ、お疲れさまぁ」
 慈母のように微笑みながらメレアグリスは蒼眞の頭を撫でた。ごくり、と唾を飲み込んだのは蓮である。あんな色っぽいお姉ちゃんに自分も頭を撫でて欲しいと思ったのだ。
「じゃあ、次は」
 淫らに微笑むと、メレアグリスは衣服を脱ぎ始めた。官能的な裸体が露わとなる。
 たわわに実った重そうな乳房の先端が天をつかんばかりに上を向いていた。尻はむっちりと丸みをおびており、柔らかく、そして弾力がありそうだ。秘肉を縁取る恥毛は鮮やかなピンク色であった。
「おお」
 信者たちの口から歓声があがった。十代の少女がもつ瑞々しさはないが、メレアグレスの肉体は、それを補って余りある肉感的なものであったのだ。
「はぁい、君もいっしょに脱ぎ脱ぎしようねー」
 メレアグリスが蒼眞から衣服を剥ぎ取る。下着をずらした時、勃起した蒼眞の肉棒がはねあがり、メレアグリスの顎を打った。
「ふふふ。元気だね」
 メレアグリスは蒼眞を抱きしめた。そこまでが彼女の我慢の限界であった。
 メレアグリスは蒼眞を押し倒した。蒼眞はされるがままになっている。
「美味しそ。いただきまーす」
 蒼眞の顔を跨ぐと、メレアグリスは屹立した肉棒に舌を這わせた。裏筋とくびれを特に念入りに攻める。肉棒のいやらしい味がメレアグリスの口腔内に広がった。
「うっ」
 下半身を走り抜ける快感に呻きながら、蒼眞はメレアグリスの尻を鷲掴みにし、自らの顔に近寄せた。ぱっくりと割れた女陰に口を押しつける。舌で愛液をかき混ぜ、メレアグリスの最も敏感な肉芽を転がした。
「ああん。もう駄目ぇ」
 蒼眞の肉棒から口をはなすと、それをメレアグリスは自らの女陰に押し当てた。一気に尻を落とす。
「くっ」
 肉棒が、ぬめりとした肉襞に包まれる快感に、蒼眞は思わず声をもらした。はあん、とメレアグリスもまた喘ぎ声を発する。
「ああん。蒼眞くんの、いい。奥まで届いてるう」
「メレアグリスのもいいぜ。膣がぬめぬめして、締めつけてきて」
 メレアグリスの乳房を揉みしだきつつ、蒼眞は腰を突き上げた。あわせるようにメレアグリスが尻を振る。たまらず蒼眞が呻いた。
「も、もうだめだ。で、射精る」
「いいわ。きてぇ。ああん。膣内に射精してぇ!」
 メレアグリスが秘肉を締めつけた時、蒼眞が白濁液を彼女の膣内にぶちまけた。


「やめろ!」
 ビルシャナが炎を放った。紅蓮の火球がつながったままの蒼眞とメレアグリスを灼く。
「そんなことしちゃいけないのー」
 ふわりが必死の目をビルシャナにむけた。念力による破壊。ビルシャナの身が爆発した。
「ぐあっ」
 爆発の衝撃にビルシャナがよろけた。その眼前、幻のようにラインハルトが現出する。
「そもそも、何をもって十代の女性こそ至上と説くのでしょう? 若さですか? 恋愛や性知識の未熟さ等からくる初々しさですか?」
 ラインハルトは問うた。今度は信者たちだけでなく、ビルシャナにも問いかけているようだ。
「…結局の所、エッチなことがしたいだけなのでは? それなら、十代も二十代もそこまで変わりありませんよ? むしろ経験のある二十代の方が経験も包容力もある分、貴方達にはオススメだとは思いますが?」
「だ、黙れ!」
 ビルシャナが激昂した。どうやら図星らしい。
 薄く笑うラインハルトの刃が閃いた。迅雷の一閃だ。
 ビルシャナを切り裂いたラインハルトの刃から空の霊力が迸り出た。
 そのビルシャナの目は、接近する蓮の姿を捉えた。
「死ね!」
 瀕死のビルシャナは、死力を振り絞り、破壊の赤光を放った。が、高速機動する蓮を捕捉することができない。
 怪光を置き去りにし、蓮はすべるように疾走。ビルシャナの右斜め後方に回り込んだ。
「蓮くん、がんばれなのー」
 ふわりの声援。その声におされるように、さらに速度をあげた蓮がビルシャナとすれ違う。
 刹那、蓮が抜刀したと見とめ得た者が果たしていたか、どうか。
 蓮の刃がびょうと鳴った。それは風切る刃音であるか、はたまた潜めた怨霊の哭く声であるか。
 ちん、と澄んだ鍔なりの音が響いた時、ビルシャナの首から鮮血がしぶいた。


 戦いは終わった。が、蒼眞とメレアグリスはいまだに肉体をからませている。信者たちは食い入るように、そんな二人を見つめていた。
「蓮くんは見ちゃだめなのー」
 ふわりに抱きしめられ、蓮は顔を彼女の胸に埋めた。
「むぎゅ」
 苦しいはずなのだが、何故か蓮は嬉しそうだった。

作者:紫村雪乃 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年5月9日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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