ブロンドヘアーの女性こそ至高である!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
「俺は常々思うんだ! ブロンドヘアーの女性こそ至高である、と! だって、そうだろ! そもそも黒髪なんて魅力が無いだろ? あんなモノは、ゴミ同然! ハッキリ言ってムラムラしない! 嘘だと思うんだったら、試してみろ! 絶対に……反応しない。念のため、言っておくが、これはフリではない! フリじゃないからなっ!」
 ビルシャナが廃墟と化した施設に信者達を集め、自らの教義を語っていた。
 信者達はビルシャナによって洗脳されており、頭の中はブロンドヘアーの女性でいっぱいになっていた。

●セリカからの依頼
「花見里・綾奈(閃光の魔法剣士・e29677)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ビルシャナが確認されたのは、都内某所にある施設。
 この場所にビルシャナが信者達を集め、ブロンドヘアーの女性が、いかに素晴らしいかを訴えつつ、イケない妄想を膨らませているようだ。
「今回の目的は、悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事です。ただし、ビルシャナ化した人間は、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やしています。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまうため、注意をしておきましょう。ここでビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
 セリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていく。
 信者達は洗脳によってブロンドヘアーの女性が好きになっているだけなので、説得するのは簡単。
 実際には、ブロンドヘアーの女性であっても、全然OKだったりするため、簡単に寝返る事だろう。
「また信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。とにかく、ビルシャナを倒せば問題が無いので、皆さんよろしくお願いします」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ビルシャナの退治を依頼するのであった。


参加者
花見里・綾奈(閃光の魔法剣士・e29677)
姫神・メイ(見習い探偵・e67439)
静城・依鈴(雪の精霊術士・e85384)
四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)

■リプレイ

●都内某所
 燦燦と照りつける太陽の下、ケルベロス達が集まったのは、廃墟と化した施設であった。
 元々は、日本がバブル景気に浮かれていた頃、ノリと勢いで建てられたシロモノ。
 そのためか、デザイン重視で、利便性をガン無視している感じであった。
「……ブロンドヘアーか。僕はそこまで髪の色には拘らない方だけど、人々の中には熱狂的なブロンドヘアーのファンがいるものなんだね」
 そんな中、四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)が、廃墟と化した施設を見上げた。
 よく見れば、何となくブロンドヘアーの女性……っぽい。
 まるでブロンドヘアーの女性が微笑んでいるようにも見える。
 おさらく、それはシミュラクラ現象のため。
 コンセントの差し込み口が顔に見えるというアレである。
「確かに金色の髪は綺麗だけど、ブロンドヘアーが全てでは無いことを教えないといけないわね」
 静城・依鈴(雪の精霊術士・e85384)が、自分自身に気合を入れた。
 事前に配られた資料を見る限り、ビルシャナ達はブロンドヘアーの女性が好きなだけ。
 しかも、信者達はビルシャナによって、洗脳されているだけなので、説得するのは、それほど難しい事ではないだろう。
「それに、髪だけで女性の価値を決めるなんて、なんとも理不尽な事よね。女性には、各々異なった魅力というものがあるのに……」
 姫神・メイ(見習い探偵・e67439)が、深い溜息を洩らした。
 それだけ、ビシルャナ達にとって、ブロンドヘアーが重要なのかも知れないが、その事だけを評価して欲しいと思う女性は少ないだろう。
「確かに、こういうビルシャナは迷惑です、ね。これ以上、被害が出る前に、私達で倒してしまいましょう」
 そう言って花見里・綾奈(閃光の魔法剣士・e29677)が、ブロンドヘアーの髪を揺らしながら、廃墟と化した施設に足を踏み入れるのであった。

●施設内
 施設の中は、ほんのりと甘い花の匂いに包まれており、ブロンドヘアーをモデルにした彫像が何体も飾られていた。
 ビルシャナ達にとって、ブロンドヘアーの女性は、女神にも等しい存在らしく、どれも神々しく感じられた。
 だが、ブロンドヘアーの女性を神格化するあまり、現実離れしている印象が強く、本物のブロンドヘアーの女性を見たら、ショックを受けそうな勢いだった。
「いいか、お前ら! 俺達にとって、ブロンドヘアーの女性は、至高の存在。ブロンドヘアの女性がいれば、何でも出来る! 例え、火の中、水の中……。ありとあらゆる状況も、ブロンドヘアーの女性がいれば、乗り越えられる! 明日への希望を見いだせる! だから手段を選ぶな! どんな方法を使ってでも、ブロンドヘアーの女性をゲットせよ!」
 室内にはビルシャナ達がおり、ブロンドヘアーの女性を連れ去るため、あれこれとイケない計画を企てている最中だった。
「確かに、ブロンドヘアーは魅力的だと思いますが、だからと言って誘拐するのは、よくないと思いますが……。それに、綺麗なブロンドヘアーは、生まれつき持っている人は、少ないのですよ? それなのに、ブロンドヘアーだけにこだわるのは……」
 そんな中、綾奈がビルシャナ達の前に立ち、生まれながらにして綺麗なブロンドヘアーを持っている女性が少ない事を訴えた。
「……何が言いたい!?」
 その途端、ビルシャナがイラっとした様子で、表情を険しくさせた。
 まわりにいた信者達も、同じようにイラっとしていたが、そこに自分の意思はなく、ただビルシャナに合わせているだけだった。
「大抵のブロンドヘアーは、付け毛か、髪を染めているかの、どちらかなのです。貴方たちは、ブロンドヘアーであれば、カツラでも染め髪でも、良いのでしょうか?」
 それでも、綾奈は怯む事なく、ビルシャナ達に問いかけた。
「ああ、もちろん。ブロンドヘアーである事に意味がある!」
 その問いにビルシャナが、躊躇う事なく答えを返した。
 まわりにいた信者達も、同じような考えなのか、ビルシャナと一緒にキリリ顔。
 しかし、頭の中はカラッポ。
 完全にイエスマンと言った感じであった。
「随分とブロンドヘアーの女性がお好きなのね。……では、その女性の性格とか顔は気にならないのかしら? ブロンドヘアーでも、顔が不細工で性格も傲慢で我儘な女性の方だっていると思うわよ。貴方達は、ブロンドヘアーが好きなら、相手の顔や性格には何も要求しないのかしら?」
 メイがイイ笑顔を浮かべながら、ビルシャナ達の顔色を窺った。
「ああ、もちろん! ……その通りだ。大切なのは、ブロンドヘアーである事。それ以外に、求めるものはない!」
 ビルシャナが躊躇う事なく答えを返したが、信者達は激しく動揺。
 上辺だけはビルシャナに合わせていたが、激しく目が泳ぎ、動揺している様子であった。
「それじゃ、ブロンドヘアーをしている人で、見た目が女性に見えるなら、誰でもいい訳かな? 僕は、よく中性的な容姿だって言われるけど、僕がブロンドヘアーのカツラを被ったら、皆は僕の事を好いてくれるのかな?」
 そんな空気を察した司が、ブロンドヘアーのカツラを被った。
 その姿はビルシャナが求めていた女性そのもの。
 まるでビルシャナの妄想が具現化したのではないかと錯覚してしまう程、瓜二つ。
「おお、これは……!」
 それと同時にビルシャナが、カッと両目を見開き、前のめりになって大興奮ッ!
 鼻息を荒くさせながら、握り拳で司をガン見したものの、信者達はドン引き。
 『……えっ? ブロンドヘアーの女性が至高なんだよね?』と言わんばかりに、ビルシャナを二度見。
 『この鳥、絶対に自分の教義を忘れていやがる!』と言いたげな様子で、口が半開きになっていた。
 それとは対照的に、ビルシャナは上機嫌。
 人生の勝利者の如く勝ち組スマイルを浮かべ、楽しそうに鼻歌を歌っていた。
「それよりも、私みたいな紫色の髪とかどうかしら? さすがに優美さはあまりないかも知れないけど、幻想的でミステリアスな雰囲気を醸し出している点では、他の髪に比べて勝っているとは思うわ」
 その間に依鈴が信者達に迫り、フワサッと髪を掻き上げた。
「……!」
 その匂いに誘われるようにして、信者達がフラフラと頭を揺らして、依鈴のまわりに集まった。
 この時点で、既に思考停止状態。
 頭の中をカラッポにして、欲望の赴くままに行動しているため、ビルシャナをガン無視しているような感じであった。
「お、お前ら……」
 そのため、ビルシャナが豆鉄砲を喰らったような表情を浮かべ、信じられない様子でクチバシを震わせるのであった。

●ビルシャナ
「い、いや、駄目だろうが! せっかく、俺達の前にブロンドヘアーの女せ……あ!」
 そこでビルシャナは、思い出した。
 自分が手痛いミスを犯した事を……。
 ブロンドヘアーにこだわるあまり、最も大切な事を、今の今まで忘れていた事を……。 その事に気づいたビルシャナが、ハッとした表情を浮かべて、信者達の顔を見た。
 だが、信者達の反応は、冷ややか。
 まるでゴミを見るような感じで、ビルシャナを眺めていた。
「まさか、この状況で『さっきのはナシ』とか言わないよね?」
 その事に気づいた司も、ビルシャナに対して、生暖かい視線を送った。
「いや、そんな事は……ないんだが……。あ、いや、何と言うか、アレだ。ブロンドヘアーが好きなのであって、男が好きという訳では……」
 ビルシャナが脂汗を流しながら、必死になって言い訳をし始めた。
 しかし、信者達の反応は変わらず。
 『いまさら何を言っているんだ?』と言わんばかりに、みんな冷めた反応を示していた。
「さぁ、行きますよ、夢幻。……サポートは、任せます!」
 その間に、綾奈がウイングキャットの夢幻に声を掛け、ビルシャナに攻撃を仕掛けていった。
「畜生、こうなったら……!」
 ビルシャナが半ばヤケになりつつ、超強力なビームを放ってきた。
 そのビームは命中した相手の髪を、ブロンドヘアーに変える超強力なビーム。
「んにゃ!」
 次の瞬間、超強力なビームを浴びた夢幻が、ブロンドヘアーのウイッグを身に着けたような姿になり、何とも言えない微妙な空気が辺りを支配した。
 だが、それだけ。
 超強力なビームを浴びても、夢幻は無傷。
 ブロンドヘアーのウイッグに違和感を覚えつつ、とても寂しそうな表情を浮かべて、綾奈の顔を見つめていた。
「その攻撃……僕には全く関係ないと思うけど……」
 司が含みのある笑みを浮かべ、わざとビルシャナを挑発するようにして、一気に間合いを詰めていった。
「く、来るな!」
 その事に恐怖を覚えたビルシャナが、超強力なビームを放ってきた。
 しかし、その攻撃を喰らっても、司は平然、涼しい顔。
 逆にブロンドヘアーから、ほんのりとシャンプーのニオイを漂わせ、ビルシャナをドギマギさせた。
「さぁ、スライムよ。すべてを呑み込んでしまいなさい」
 その隙をつくようにして、依鈴がレゾナンスグリードを発動させ、ブラックスライムを捕食モードに変形させ、ビルシャナを丸呑みしようとした。
「のわっと!」
 それに驚いたビルシャナが間一髪で飛び退いたものの、左足を飲み込まれ、大量の血が辺りに飛び散った。
「その脚じゃ、逃げるどころか、動く事すら難しそうね」
 メイが軽く皮肉を言いながら、時空凍結弾を撃ち込み、ビルシャナの動きを封じ込めた。
「素直に丸呑みされれば、苦しむ事もなかったのに……。恨むのなら、自分の間違った判断を恨む事ね」
 それに合わせて、依鈴が雷刃突を仕掛け、雷の霊力を帯びた武器で、神速の突きを繰り出した。
「貴方を、真っ二つにしてあげます!」
 次の瞬間、綾奈がルーンディバイドを発動させ、光り輝く呪力と共に斧を振り下ろし、ビルシャナを真っ二つに斬り裂いた。
「ビルシャナにならなければ、こんな事にはならなかったのに……」
 そう言ってメイが複雑な気持ちになりつつ、ビルシャナだったモノを見下ろすのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年4月27日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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