東風の路

作者:崎田航輝

 東から吹く風に、嫋々と竹林が揺れる。
 さらさらと緑が鳴る和の景色は、華やかな春にも静やかな空気が満ちていた。
 京の街へ続くその路は、見渡す限りの竹に挟まれている。仰げば空までがその林に隠れてしまう程の眺めは、雄大ながら雅だった。
 暖かさの訪れる季節にも、いつまでも冴えた風が吹き抜けていくようで──人々はその落ち着いた爽やかさを楽しむように散策をしている。
 と──その長く続く道の先に、不意に不可思議な影が見えた。
 人々は立ち止まり、短い時間訝しむ。それは人では有りえぬ背丈を持った、巨躯の姿だったから。
「幽玄な風に、静やかな空気。心が、研ぎ澄まされるじゃあないか」
 刀を振るうにはいい日和だ、と。
 言って道を踏みしめるその巨躯は──着流しに、二振りの刀を佩く大男。人々へ歩み寄ると、刃を抜いて一つ呼吸をしてみせる罪人、エインヘリアル。
「逃げるなり、纏めてかかってくるなり好きにしな。こっちも好きにさせてもらう」
 言うが早いか、二刀を奔らせ血潮を弾けさせていた。
 人々は斃れ、噎び、血に沈みゆく。罪人だけがその中で一人滾るように、刃を振るい続けていた。

「集まって頂き、ありがとうございます」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)はケルベロス達へ説明を始めていた。
「本日は、エインヘリアルの出現が予知されました」
 現れるのはアスガルドで重罪を犯した犯罪者。コギトエルゴスム化の刑罰から解き放たれて送り込まれる、その新たな一人だろう。
 これを放置しておけば人々の命が危うい。
「そこで皆さんには撃破へ向かってほしいのです」
 現場は街へと続く道。
 両側を広い竹林に挟まれていて、道以外の場所は視界が悪いと言える環境だ。
 敵はこの道を真っ直ぐに南下してくるだろう。
「今回は警察の協力で人々は事前に避難してくれます。こちらが到着する頃には皆が逃げ終わっていることでしょう」
 こちらは到着後、迎撃に集中できると言った。
 敵は道に沿ってやってくるので、こちらは正面から迎えるか、竹林に潜んで強襲や挟撃をかけるといった作戦が考えられるだろう。
「適宜、策を練ってみてくださいね」
 敵自身もかなりの戦闘力を持っているので油断しないよう警戒を、とも付け加えた。
「それでも皆さんならばきっと勝利できますから」
 健闘をお祈りしていますね、とイマジネイターは言葉を結んだ。


参加者
四辻・樒(黒の背反・e03880)
月篠・灯音(緋ノ宵・e04557)
キリクライシャ・セサンゴート(林檎割人形・e20513)
月岡・ユア(皓月・e33389)
煉獄寺・カナ(地球人の巫術士・e40151)
笹月・氷花(夜明けの樹氷・e43390)
ラグエル・アポリュオン(慈悲深き霧氷の狂刃・e79547)
ディミック・イルヴァ(物性理論の徒・e85736)

■リプレイ

●策戦
 翠色に解けた柔らかな陽光が、深い林の中を淡く照らす。
 風に響く葉擦れの音の中、一面に広がるのは竹。和の趣きの濃いその景色を、月篠・灯音(緋ノ宵・e04557)は陰から見回していた。
「それにしても、沢山生っているのだ。もう少し朝早かったら筍掘れたかななのだー」
「筍か。そういえば暫く食べていないような気もするな」
 それも悪くない、と。
 頷いてみせるのは四辻・樒(黒の背反・e03880)。灯音の声に瞳を和らげながら──同時に警戒も欠かしていない。
 向ける視線は、道の向こう。
 程なくして顕れる──巨躯の影を、しかと捉えていた。それは揚々と歩んで獲物を探す、着流しの罪人、エインヘリアル。
「竹林と刀使い、まるで時代劇の剣豪ものだな。物語だと竹林の中に誘き寄せて動きを封じる場合もあるようだが……」
 と、樒は呟きながらも淀まずナイフを握る。
 今回はきっと、林に入れるまでもない、と。
 何故なら周囲を見れば既に、番犬の皆がしかと持ち場についていた。敵を封じ込める策は十全だろう。
 皆もそれが判っている。故に刻一刻、冷静にその時を待ち続けていた。
 その内に罪人は道を進み──ふと足を止める。
 竹林の気配に気づいたからではない。道の正面に隠れずに立つ、ラグエル・アポリュオン(慈悲深き霧氷の狂刃・e79547)を目に留めたからだ。
「いい戦気を漂わせてるじゃねぇか、一刀、交えさせてもらいたいもんだ」
 云いながら罪人は刀を抜いた。
 すると対するラグエルは、自身も喰霊刀に手をかける。
「構わないよ」
 声音は研ぎ澄まされた氷のように刺々しかった。
 それは心にも表情にも、溢れる狂気を抑えていないから。
「──こちらも、そのつもりだからね」
 と、構えた刃は禍々しい黒きオーラを纏い、握る自らの膚すらも灼く程濃密。刹那、吐息へ交えた無数の氷晶を、振り抜く斬撃で飛ばして巨体を穿った。
 吹雪の如き初撃に罪人が揺らぐと──それが開戦の合図。飛び出した樒が闇色の刃で斬りつけると、灯音も冷気を込めた銀槍で刺突を見舞う。
 一歩下がった巨躯は、驚きながらも本能的に刀を振り上げた、が。
「……させないわ」
 後方の空から声が降ってくる。
 林を縫って翼を波打たせる、キリクライシャ・セサンゴート(林檎割人形・e20513)。上空に待機していた状態から一息に翔び降りてきていた。
 そのまま放つ蹴撃は鮮やかに。靭やかに伸ばした脚で後背へ痛打を与えてゆく。
 罪人は振り向こうとするが、キリクライシャのテレビウム、バーミリオンが正面から包丁を突き立て許さない。
 そうして痛みに罪人が前方へ傾げば──それを迎えるのが月岡・ユア(皓月・e33389)。
 黒翼で風を叩くと、ラグエルと入れ替わるよう肉迫。低空で前へ廻転し、踵で月を描きながら一撃、鋭い跫音を奏でてみせる。
「──ユエ」
 同時に呼びかけられた双子妹のビハインドは、柔らかな白翼で宙を泳ぎ。膝をついた罪人を金縛りに陥らせた。
 罪人は状況を把握しようと瞳だけでも動かす、が。
 景色に溶け込んだ色には、そうそう容易に気づけない。
 ばさりと翻る迷彩柄のマントの裏から、笹月・氷花(夜明けの樹氷・e43390)が眼前に躍り出てきていた。
 ふわりと桃色の髪が跳ねて、罪人は初めてその存在を知るけれど。氷花は既に靴のリズムを交えて刃を抜き放ち。
「まずはその躰を真っ赤に染め上げてあげるよ!」
 廻りながら繰り出す『血祭の輪舞』で、雨のように斬閃を注がせ血煙を上げさせていく。
 罪人は漸く体を動かし抵抗を目論むが──その視界がぐにゃりと歪んだ。
「僅かに遅かったようだねぇ」
 と、腕を伸ばすのはディミック・イルヴァ(物性理論の徒・e85736)。密度の低い竹の陰に潜ませた機巧の躰を、敵の背後へと歩み出させている。
 手先に耀くのは『面忘れる瑪瑙』。
 その鉱石魔法が罪人の深層へ染み渡ると、心の濁りが固められて精神を内部より引き裂いていた。
 地に手をつく罪人へ、ディミックは声をかける。
「悪いけれど、もう包囲は完成しているよ」
「その通りです!」
 こつりと、煉獄寺・カナ(地球人の巫術士・e40151)は罪人の前へ立っていた。
 声音は真っ直ぐに、立ち居は凛然と。
 白妙の髪を淡く揺らがせて、鎖に清らかな魔力を込めて。魔法陣を描いて光らせると、護りの加護を仲間に齎していた。
「風情の分からない罪人! 早々にこの地より消えなさい!」
 それは拒めば力の限りを尽くすという意志の表れ。
 罪人は番犬達を見回しながら、成程、と呟く。だが戦意が消えた様子はなく。寧ろすぐに柄を握り直すだけだった。
「翠の中で剣戟。それこそ、風情豊かじゃないか。去る理由はない」
 何より趣味に合う、と。
 愉快げに言うから、灯音は呆れるように首を振る。
「ひと様に迷惑かかるような行動は、いい趣味とはいえないのだ。やれやれなのだ」
「全くだな。中々の手練れのようではあるが」
 と、樒も頷きながら──星剣へ聖なる光を纏わせて。
「私達もそうそう負ける訳には行かないのでな」
 やるのというのなら潰させてもらう、と。振り下ろす光を散らせて仲間への防護を広げていた。
 罪人はその言葉に、好戦的な笑みで奔り出してくる。
「いいじゃないか。戦意に満ちた相手に森閑とした自然。一層、心が研ぎ澄まされるよ」
 そうして振り抜かれた炎撃は確かに強烈。
 だが、氷花がナイフで受け止めてみせると──直後には巨躯の頭上に影がかかった。
「心が研ぎ澄まされる……ああ、その言葉には、同感だ」
 それは声と共に翔び上がったユア。
 速度を止めて一瞬宙に揺蕩いながら、月光色の刃を振り上げていた。
「確かに、こういう日は戦うにはとても心地がいい。僕も今日は少し戦いたい気分なの」
 だから──少し付き合ってもらうよ?
 艷やかで、何処か退廃を帯びた言葉と共に一閃。月灯りを差し込ませるような、凄絶な剣撃を叩き下ろしていた。
 均衡を失ってよろめく巨躯へ、氷花もひらりと跳躍している。柔らかな弧を描きながら、その脚に宿すのは翠の景色に映える鮮烈な紅焔。
「この炎で、焼かれてしまえー!」
 刹那、蹴り落とす一撃は熱く、それでいて刃のように鋭く。巨躯の表皮を裂きながら暴熱に包み込んでいった。

●剣戟
 灼けた紅い雫が地面を穢す。
 罪人はよろけながら浅い息を零していた。が、その表情は未だ愉しげでもあって。
「猛者ばかりか。最高だ、本物の剣戟が味わえるんだからな」
 そうして青眼に刃を握る。
 キリクライシャは静かにその姿と、そよぐ翠を見遣っていた。日本の血も入った身には、和の眺めと侘び寂びは十分に心に親しい──だからこそ。
「……風土は、好きなのだけど。……こうして敵として対峙すると、風雅な筈の事柄も厄介になるものね……」
 無論、それが和を厭う理由になりはしないけれど。
 氷花もその心が判るからこそ、頷く。
 春の爽やかな風を受けて、竹林を歩く。それはきっと風情を感じることだろうから。
「そんな風情を理解せず、殺戮を求めるなら──成敗するよ」
「……、剣戟も含めて風情さ」
 罪人は反抗するよう踏み込んできた。
 その瞳に映る殺意に、灯音は仄かに溜息する。
「戦闘狂ってやつなのだ。樒、さっさとお仕事すませたいのだ」
「そうだな。すぐに、済むさ」
 樒は剣に夜天の色を瞬かせ、涼しい声音で応えている。
「形勢は此方のものだ。囲んでしまえば、一気に畳み込むのみ。中々多彩な技を使って来るようだが──対処出来れば問題もない」
 云いながら、剣を円形に振るって星彩の軌跡を描いて防護を尚厚くしていた。
 罪人はそれをも切り捨てようと刃を掲げる、が。
 振り下ろす斬撃が烈しく弾かれる。ラグエルが陽炎棚引く刀を奔らせて、衝撃を逸らしていた。
 フフ、と、笑う声音は一層狂気に満ちている──何故ならば。
「僕はこういう手合いは案外好きだよ?」
 遠慮なく斬り合いが出来るからね、と。
 踏み込みは一瞬、一切の躊躇なく巨躯の懐に入って冥き斬閃を振るう。
 “弟のニセモノ”、そして“ニセモノをもたらした死神の欠片”──内包する魂を暴走させる刃は、多重の力を発揮して一層鋭さを得る。深々と腱を断たれた巨躯は、堪らず体勢を崩していた。
 そこへキリクライシャが一直線に翔び抜けて、陽色に瞬く光剣で斬撃を重ねる。血潮が噴き出す中、それでも罪人は剣風を放った、が。
 灯音が穂先を天へ向けて清浄な雫を降らし、皆を即座に癒やすと──その頃には巨躯の横合いで、銀の髪が柔く揺れて薫る。
「ほら、余所見してるなよ?」
 ──もっと、僕と一緒に遊ぼう?
 囁くように刃を振り抜くそれはユア。殺界の如く濃い殺気を放ちながら──鞘を鳴らして居合いの剣撃を繰り出し巨躯の肩口を斬り裂いた。
 罪人は遅れてユアへ向き直るが、既に遅く。後方より迫る別の影があった。
「隙は逃さないからね」
 と、それは可憐な声音を聞かせながら──大振りのパイルバンカーを抱える氷花。
「ドリルの杭で、貫いてあげるよ!」
 跳躍して頭上を取ると、そこから突き下ろす衝撃は苛烈。魔氷の杭が腕の一端を貫いて滂沱の血流を零させていく。
 罪人もたたらを踏みながら刃を薙がせてくる、が。
 響いたのは硬質な金属音。ディミックが前面にいでて刃を躰で受け止めていた。
 衝撃は小さくなく、余波で傷を受けた前衛もいる。だが直後にはカナが虚空へ蒼き煌めきを招来していた。
 ──我が身に宿りしは青龍。
「……不浄を清めたまえ!」
 光が海嘯の如く畝り、光の飛沫を上げる。
 瞬間、具現したのは水の聖獣だった。『四神降臨・青龍浄化水陣』──宙を泳いで蒼光の波を呼び込んだ青龍は、清らかな守りを与え皆を癒やしていく。
「もう少しです……!」
「ありがとう。後はこちらでやっておくよ」
 と、ディミックは背に接続した円陣型ユニットを駆動。複数の環型融合炉を輪転させて眩いエネルギーを顕現、光ファイバーを伝わせて飛散させていた。
 周囲を纏った暖かな輝きは、躰を蝕む毒素を揮発させ、治癒と破魔の力を与えてゆく。
「これで体力も対策も、万全というところだねぇ」
「……なら、反撃を」
 と、キリクライシャは巨躯へ肉迫。
 罪人は如実に弱化しつつある。けれど弱らせるための手を、最後まで弱める気はないから──ペティナイフで連閃、裂傷を抉り込んでゆく。

●翠
 倒れ込む罪人の瞳は既に死兆の色。
 だがそれでも自らの運命を認めぬよう、ゆらりと立ち上がっていた。
「……折角の風流な場だ。簡単に、死ねないさ」
「血に飢えた殺戮者が──風流など語らないでください!」
 カナは怯まず、細腕を伸ばして魔力を眩く発破。虹の彩の輝きで仲間の力を引き上げている。
 そこへキリクライシャが滑空。鮮やかな煌めきを帯びながら焔の滾る蹴撃を放てば──。
「……お願い、ね」
「うん!」
 応えた氷花が疾駆。己の体力を癒そうとしていた巨躯へ、正面から回転させた杭を打ち込んで即座に加護を打ち砕いた。
 罪人は血を吐きながら、最後まで喜色を崩さない。灯音はそれを視界に収めながら──にっこりと口元に笑みを見せた。
「とりあえず、こういう悪気もなにもない奴は凄く痛い方法で終わらせたい気分なのだ」
 声音は淑やかながら、目だけは笑んでは居らず。その内奥に嫌悪の情が在ることを、樒だけは理解して頷く。
「ならば、やるか」
「了解なのだ。──出ませ、焔姫!」
 同時、灯音は『焔姫召喚』。緋色の焔を燃え上がらせて己と樒に纏わせていた。そのまま銀槍を振るって灼ける傷を刻むと、罪人も反撃に刃を振るう、が。
「やらせる訳には行かないな」
 樒が二刀をナイフと剣で受け流し、横へ回転。
「──そこだ。灯の作ってくれた傷を広げさせて貰う」
 連続の剣撃を放ち、巨体の腹部を捌いてみせた。
 足元も覚束無い罪人は、藻掻くように刃を暴れさす。けれど氷花が盾となれば、ディミックが内燃させた魔力を高温度の光に変えて照射、即座に傷を祓った。
「こちらは問題ないよ」
「じゃあ、詠おうか」
 ユアは『死創曲』──酷薄な迄に澄んだ唄聲で赤月の幻影を刃と成し、巨躯を刻む。
 倒れゆく罪人へ、ラグエルは刃を高々と掲げた。
 狂気を解放することは、自身には必要なことだ。ただ、そういった時に溢れる『斬りたい』という感情は、きっとこの咎人と大差ないのだという気もする。
 そう思うと、自己嫌悪も生まれるけれど。
「……紅く美しい花を」
 斬るべき敵を斬ることへは迷いもないから。刃を振り下ろすと冥き冷気を放って『氷華咲檻』──侵食する氷で巨体を切り刻み、血の花へと散らせていった。

 涼風の中で、番犬達は周囲の修復をしていた。
「……被害は少なく、済んだわね」
 キリクライシャは水晶にも似た輝きの光の珠を生み出して、荒れた地面を直している。それに応えてバーミリオンもまた、画面をぴかぴかと明滅させて景観を保っていた。
 傷ついた箇所は多くなく、修復はすぐに終わる。
 美しい翠を見回して氷花はくるくると回っていた。
「これで、元の景色に戻ったね」
「そうだね」
 と、応えたラグエルは一人で歩み出す。
 表情には平静を保ちながら、未だ狂気は完全には治まっていなかった。故に皆には近づかずに──道の先へ。静寂の中をゆったりと散策していく。
 灯音は樒へジャンプするように抱きついていた。
「樒ー夕餉の買い物して帰るのだーっ」
「ああ、行こうか」
 それには樒も微笑んで。手をつなぎ、二人で帰還していく。
 暫しの後には徐々に、人通りも戻り始めてきた。
「この風情のある光景を、人々が楽しめてよかった……」
 平穏の戻った眺めを、カナは少しの間じっと眺めて。それから自分も歩を進めていく。

 ユアはユエと並んで散策をしていた。
 こうして共に風景を楽しめるのは勿論嬉しい、けれど。
(「――最近、この力のせいか……体が少し疲れやすい」)
 戦いたい気分だから試しに出てきたが、死の力が徐々に己の体力を奪ってきているのを、如実に自覚していた。
 さらりと髪が靡く。
「……心地よい風」
 静かに呼吸をして。それから、心配そうに此方を見るユエの手を握った。
 ──あとどれくらい、この心地よい日々を僕は過ごせるんだろう?
 思いを馳せて、今はただ、かけがえのない存在の隣でのんびりと歩んでいく。

 人の行き来が戻った道を、ディミックも交じって歩んでいた。
 竹林は雄大で、人々が感心を抱く理由も判る。日本人的な感性だと確かに、爽やかな風と穏やかな風景ではあるのだろう、と。
「しかし──」
 ディミックは改めて仰ぐ。
 地球に降りて未だ日も浅い者としては──竹は見慣れぬ存在。今はまだ風流よりも、深い色をしたミステリアスな存在に見えた。
「まだまだ未熟だねぇ」
 そんな思いと共に、風景自体は楽しみつつ。ディミックは竹林の道を進んでいく。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年4月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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