●都内某所
廃墟と化した倉庫に、折り畳み式の携帯電話が保管されていた。
この折り畳み式の携帯電話は、キチンと閉じる事が出来ず、パカパカしまくっていたため、リコールが掛かったモノ。
しかし、処分費用が掛かるという理由で、半ば放置状態になっていたソレは、倉庫を所有していた会社が廃業したのと同時に、深い眠りにつく事となった。
その場所に蜘蛛のような姿をした小型ダモクレスが現れ、折り畳み式の携帯電話の中に入り込んだ。
それと同時に、機械的なヒールによって折り畳み式の携帯電話が作り変えられ、家電製品っぽい雰囲気のダモクレスに変化した。
「オリ、オリ、オリタタタタタタミィィィィィィィィィィィィィィィ!」
次の瞬間、ダモクレスが奇妙な鳴き声を響かせ、廃墟と化した倉庫の壁を突き破るのであった。
●セリカからの依頼
「嵯峨野・槐(目隠し鬼・e84290)が危惧していた通り、都内某所にある廃墟と化した倉庫でダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティ・チェインを奪われてしまう事でしょう。そうなってしまう前に、何としてもダモクレスを撃破してください」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ダモクレスが現れたのは、廃墟と化した倉庫。
この場所に放置されていた折り畳み式の携帯電話が、ダモクレスと化してしまったようである。
「ダモクレスと化したのは、折り畳み式の携帯電話です。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティ・チェインが奪われる事になるでしょう」
そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
ダモクレスは巨大な蜘蛛のような姿をしており、グラビティ・チェインを求めて攻撃を仕掛けてくるようだ。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。
参加者 | |
---|---|
キリクライシャ・セサンゴート(林檎割人形・e20513) |
肥後守・鬼灯(度徳量力・e66615) |
嵯峨野・槐(目隠し鬼・e84290) |
柄倉・清春(大菩薩峠・e85251) |
●都内某所
「あー……。実はオレ、折りたたみのガラケー未だに使ってんだよなぁ。だって頑丈だしよ、手に馴染むサイズだし、通話とメールならクッソ安いし。なんつーか……複雑だわ」
柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)は仲間達と共に、廃墟と化した倉庫の前に立ち、自分が持っているガラケーに視線を落とした。
そういった意味で、気持ちは複雑。
まるで自分のガラケーが、ダモクレスと化したような心境に陥った。
だからと言って、このまま放っておく訳にはいかない。
ダモクレスと化した以上、倒さねばならないのだから……。
「折り畳み式は、ノートパソコンのようで合理的なつくりではあるのだが、今は殆ど見かけない。いわば『懐かしの品』ということか……。閉まらないのでは仕方ないが、勿体なく思うな」
嵯峨野・槐(目隠し鬼・e84290)も、同じように複雑な気持ちになった。
おそらく、キチンとメーカー側が対応していれば、リコールされる事もなかったはず。
だが、そこまでするメリットを、メーカー側が感じなかったため、改善される事なく放っておかれたのだろう。
「例えば、ケースとセット売りするとか……改善方法はあったと思うのよね。……後付けは難しいとか、嵩張るとか問題点があったかも知れないけど……」
キリクライシャ・セサンゴート(林檎割人形・e20513)が、一般人対策のため、キープアウトテープで周辺を封鎖した。
幸い、辺りに人影はなく、誰かが現れる様子もなかった。
「その結果、ダモクレスを生み出すことになってしまったのだから、実に皮肉な話ですね。出来れば、倉庫の被害だけでも抑えたいところですが……」
肥後守・鬼灯(度徳量力・e66615)が、廃墟と化した倉庫を見上げた。
廃墟と化した建物のまわりには、幾つも工場が建っているため、ダモクレスが現れたのと同時に、まわりにも被害が出るのは確実であった。
それでも、ヒールを使えば修復する事が出来るため、あまり深く考える必要もなさそうだ。
「オ、オ、オ、オリタタミィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
次の瞬間、倉庫の壁を突き破り、ダモクレスが姿を現した。
ダモクレスは折り畳み式携帯に、蜘蛛の脚を生やしたような姿をしており、ケルベロス達の存在に気づいて、耳障りな機械音を響かせた。
この様子では、本能的にケルベロス達を、敵として認識したのだろう。
ケルベロス達に対して、敵意を剥き出しにしており、隙あらば飛び掛かってきそうな勢いで、殺気が膨らんでいた。
「……蜘蛛形と言っても、毎回デザインが違うのね」
キリクライシャがダモクレスを見つめ、その微妙な違いに注目した。
例えるなら、同じ蜘蛛であっても、セアカゴケグモとタランチュラぐらいの違いがあるようだ。
だからと言って、蜘蛛型のダモクレスとか存在していない訳では無いものの、キリクライシャが相手にしたダモクレスの多くは蜘蛛型だったようである。
テレビウムのバーミリオンも、今まで戦ったダモクレスと、似たような姿をした蜘蛛を並べて画面に表示させた。
おそらく、蜘蛛型にする事によって、どんな形状のボディであっても、支障が出にくくしているのだろう。
そう考えると、蜘蛛型ボディのダモクレスが多い事も、何となくではあるが、納得する事が出来た。
「オ、オ、オ、オリタタミィィィィィィィィィィィィィィ!」
その間にダモクレスがアスファルトの地面を蹴りつけるようにして、ケルベロス達に迫っていった。
●ダモクレス
「……元になった折り畳み式携帯と同じで、関節部分が弱そうですね。……ひょっとして、その特徴が弱点として、反映されているのかしら……?」
キリクライシャが間合いを取りつつ、ダモクレスの様子を窺った。
ダモクレスの携帯部分は、蓋がパカパカしており、今にも取れそうな感じであった。
それがまるでリズムを刻んでいるような感じになっており、何か法則があるのではないかと邪推してしまうほど規則性があった。
「……ならば狙うのは、あのパカパカとしている部分か」
槐が様子を窺いながら、ダモクレスの死角に回り込んだ。
「ケ、ケ、ケ・イ・タ・イィィィィィィィィィィィィィィ!」
それに気づいたダモクレスが、クルッと回るようにして飛び跳ね、槐に体当たりを食らわせた。
「……くっ!」
その拍子に槐の身体が飛ばされ、本人の意思に反して、軽々と宙を舞った。
「大丈夫ですか?」
すぐさま、鬼灯が槐を御姫様抱っこで受け止め、ウィッチオペレーションを発動させ、魔術切開とショック打撃を伴う強引な緊急手術で、槐の負傷を大幅に回復した。
「オ、オ、オ・リ・タ・タ・ミィィィィィィィィィィィィ!」
その事に腹を立てたダモクレスが、折り畳み式の携帯電話型のアームを伸ばし、ケルベロス達に攻撃を仕掛けてきた。
「携帯電話型のアームが、どんなモノなのか、気になっていたが……。まさか、そのまんまだったとは……。と言うか、あんなにパカパカしていて、大丈夫なのか?」
その途端、槐が複雑な気持ちになりながら、鬼灯から離れるようにして、ダモクレスに攻撃を仕掛けていった。
「ケ、ケ、ケ、ケ・イ・タ・イィィィィィィィィィィィィィ!」
それを迎え撃つようにして、ダモクレスがパカパカと音を響かせ、槐に殴りかかってきた。
だが、それはまるで駄々っ子パンチ。
派手な音が響く割には、大した痛みもなく、違う意味で心配になってくる攻撃だった。
「つーか、ヤバイだろ、あれ……。絶対に途中で取れるって! ほら、すっごくパカパカしているぞ……!」
それを目の当たりにした清春が、気まずい様子で汗を流した。
「……この場合、関節部分を狙うべきかしら……? ……私の考えが間違っていなければ、何らかの効果があるはず……」
その間に、キリクライシャが轟竜砲を発動させ、ハンマーを砲撃形態に変形すると、竜砲弾でダモクレスの関節部分を攻撃した。
「オ、オ、オ・リ・タ・タ・ミィィィィィィィィィ!」
その一撃を喰らったダモクレスがバランスを崩し、携帯電話型アームのパカパカ部分が吹っ飛んだ。
「んあ!? こ、殺す気かあああああああああああ! マジでヒヤッとしたぞ! 血の気が引いたからな、マジで……!」
それと同時に、清春の顔にパカパカ部分が横切り、涙目になってダモクレスに文句を言った。
「ケ、ケ、ケ・イ・タ・イィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
だが、ダモクレスからすれば、他人事。
むしろ、被害者はこっちの方だと言わんばかりに、ブンスカとアームを振り回した。
「そ、そんな事をしたら、パカパカの部分が千切れて……ちょっ!」
その事に危機感を覚えた鬼灯がサークリットチェインを発動させ、地面にケルベロスチェインを展開し、仲間を守護する魔法陣を描いた。
しかし、ダモクレスのパカパカ部分が、不規則に飛んでくるため、すべてを防ぐ事は難しかった。
「……あのパカパカは危険ね。……何処に飛んでくるのか分からないし……。……リオンも手伝ってくれる?」
すぐさま、キリクライシャがバーミリオンに合図を送り、ダモクレスにスターゲイザーを仕掛けた。
「……!」
それに合わせて、バーミリオンが凶器攻撃を仕掛け、ダモクレスのパカパカ部分を優先的に破壊した。
「オ、オ、オ・リ・タ・タ・ミィィィィィィィィィィィィィィィ!」
次の瞬間、ダモクレスがケモノのような咆哮を響かせ、折り畳み携帯電話型のミサイルを飛ばしてきた。
そのミサイルは通常ではあり得ない動きをしながら、あちこちに落下して弾け飛んだ。
「くっ……、L字型で重心が安定しないせいか、このミサイル……侮れん……ッ」
槐がミサイルから逃れるようにして、その場から飛び退いた。
「……!」
それと入れ替わるようにして、ライドキャリバーの蒐が、ダモクレスに対して、デットヒートドライブを繰り出した。
「どうやら、パカパカ部分以外は、随分と頑丈のようだなぁ。まあ、適当にボコッておけば壊れるだろ! 例えば、このボタン部分とかなっ! とにかく、めちゃくちゃ操作すりゃ落ちんだろ!」
その間に清春が一気に距離を縮め、ダモクレスの折り畳み式携帯部分にあるボタンを適当に押した。
「キャ、キャ、キャ・メ・ラァァァァァァァァァァァ」
その影響でダモクレスのカメラ部分が作動し、清春のセクシーショットを激写した。
「……ん? こんな感じでいいのか?」
清春もノリノリな様子で、サングラスを掛け、次々とポーズを決めた。
「シャ・シャ・シャッター・チァァァァァァァァァァァァァァァァァンス!」
それに何の意味があるのか分からないが、ダモクレスもフラッシュを光らせ、テンションアゲアゲな様子で、清春を激写しまくった。
「……」
その間、ビハインドのきゃり子は、残念なナマモノを見るような感じで、清春達を眺めていた。
「ここまで無防備だと、逆に危険な気もするが……。まあ、その時は、その時だ。ここで……終わらせる!」
次の瞬間、槐がドラゴンサンダーを発動させ、パズルから竜を象った稲妻をダモクレスに解き放った。
「ケ……イ……タ……イ……」
それと同時にダモクレスがブスブスと煙を上げ、完全に機能を停止させた。
「……ようやく大人しくなったわね」
キリクライシャがホッとした様子で、ダモクレスに視線を落とした。
ダモクレスの折り畳み式携帯の画面には、ナイスなポーズを決めた清春の姿が映っていた。
「……」
それに気づいたきゃり子が故人の如く扱いで、なむなむと両手を合わせた。
「いや、死んでねーから! 勝手に殺すなよ!」
これには、清春も思わずツッコミ。
そんな二人を眺めながら、鬼灯が苦笑いを浮かべた。
「とりあえず、仕えそうな部品は、リサイクルセンターに持ち込んでおくか」
そう言って槐がヒールで修復した倉庫の中から、折り畳み式携帯が入ったダンボールを運び出すのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年4月20日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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