●都内某所
返品が相次ぎ、生産中止になったアロマディフューザーがあった。
このアロマディフューザーは、七色の光を放ちながら、アロマのニオイを室内に漂わせ、使用者の心を癒すモノであったが、液漏れしたり、異臭が漂ったり、色の点滅が不規則だったりしたため、クレームが相次いでいたらしい。
それが原因で大量のアロマディフューザーがダンボールの中に入ったまま、倉庫の片隅で山積みにされていた。
その場所に蜘蛛のような姿をした小型ダモクレスが現れ、アロマディフューザーの中に入り込んだ。
それと同時に、機械的なヒールによってアロマディフューザーが作り変えられ、家電製品っぽい雰囲気のダモクレスに変化した。
「アロ、アロ、アロマァァァァァァァァァァ!」
次の瞬間、ダモクレスが奇妙な鳴き声を響かせ、廃墟と化した倉庫の壁を突き破るのであった。
●セリカからの依頼
「瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)が危惧していた通り、都内某所にある廃墟と化した倉庫でダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティ・チェインを奪われてしまう事でしょう。そうなってしまう前に、何としてもダモクレスを撃破してください」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ダモクレスが現れたのは、廃墟と化した倉庫。
この場所に保管されていたアロマディフューザーが、ダモクレスと化したようである。
「ダモクレスと化したのは、アロマディフューザーです。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティ・チェインが奪われる事になるでしょう」
そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
ダモクレスは巨大な蜘蛛のような姿をしており、グラビティ・チェインを求めて攻撃を仕掛けてくるようだ。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。
参加者 | |
---|---|
キリクライシャ・セサンゴート(林檎割人形・e20513) |
瀬入・右院(夕照の騎士・e34690) |
山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678) |
ディミック・イルヴァ(物性理論の徒・e85736) |
●都内某所
「なんか、日用品のダモクレスが相手なのに、いつもより本格装備なような気がする……! ま、まあ……用心に越したことはないと思うけど……」
瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)は仲間達と共に、廃墟と化した倉庫にやってきた。
今回の依頼は、いつもと比べて本格装備ッ!
ガクマスクに加えて、対閃光防御的なレンズを装備しているため、何か別の存在と戦うような感じになっていた。
その間も辺りには、ほんのりとアロマの香りが漂っており、ケルベロス達の全身を包み込んでいるような感じであった。
「とりあえず、空気を遮断して戦えば香りを食らわずに済みそうだが……。まずは近隣住民に外出禁止をお願いしておいた方がよさそうだねぇ」
そんな中、ディミック・イルヴァ(物性理論の徒・e85736)が複雑な気持ちになりながら、近隣住民に外出禁止をお願いした。
近隣住民の中には、不満げな表情を浮かべる者がいたものの、ダモクレスが現れる事を知った途端、態度を一変させてディミックのお願いを聞き入れた。
それだけ、近隣住民達にとって、ダモクレスは脅威なのだろう。
ダモクレスが現れる事を知った途端、戸締りもシッカリとし始めた。
「……と言うか、このニオイ……アロマ駄々洩れじゃん! これって、かなりヤバくない? そんな事をしなくても、素焼きの陶器のお皿の上に垂らして自然蒸発で楽しめるのに……。個々の人達は何も思っていないのかな? それとも、ずっと匂っていたから、気にならなくなったとか……。どちらにしても、何か違うような気がするね」
山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)が防毒マスクにサングラスを掛け、少し残念そうにした。
先月、陶芸教室に行って、たまたま知った事ではあるものの、アロマディフューザーには、アロマディフューザーの良さがあるため、なかなか難しいところである。
「……とは言え、かなり性能が良かったようだから、見切り発車なんてしないで、しっかり開発すればよかったのに……。……不良品じゃなければ、私も欲しいと思う品だわ」
その間にキリクライシャ・セサンゴート(林檎割人形・e20513)がキープアウトテープで周辺を封鎖した後、ガスマスクを装着した。
テレビウムのバーミリオンも御揃いのガスマスクを装着し、準備は万端と言わんばかりに胸を張った。
「アロ、アロ、アロマァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
次の瞬間、ダモクレスが廃墟と化した倉庫の壁を突き破り、ケルベロス達を威嚇するようにして、耳障りな機械音を響かせた。
ダモクレスはアロマディフューザーから蜘蛛の脚が生えたような姿をしており、濃厚なアロマのニオイを漂わせながら、ケルベロス達の前に陣取った。
「アロ、アロ、アロマァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
それと同時に、ダモクレスがケモノの如く咆哮を響かせ、アロマアームを使って、幾つものエッセンシャルオイルをブレンドするのであった。
●ダモクレス
「……ガスマスクをしているから、よく分からないけど、色々とニオイを混ぜているようね。……一体、どんなニオイなのか、気になるところだけど……。……嗅いだら後悔しそうね、雰囲気的に……」
キリクライシャが警戒した様子で、ダモクレスと距離を取った。
ダモクレスは様々なニオイのエッセンシャルオイルをブレンドする事で、新たなニオイを生み出しているようだった。
ただし、みんなマスクをしているため、そのニオイがどんなモノなのか分からず、想像する事しか出来なかった。
だが、用法・用量を守らずブレンドしている以上、マトモなニオイではないだろう。
その証拠に、近所を散歩していた野良犬が、間の抜けた声を上げ、脱兎の如く逃げ出した。
空を飛ぶカラス達も、仲間達に警告するようにして鳴き声を響かせ、通りすがりのハトの群れが、爆撃の如く勢いで大量のフンを落下させた。
それはまるで、この世の終わり。
目の前に広がっているのは、地獄の如き光景であった。
「アロ、アロ、アロマァァァァァァァァァァァァ!」
そんな中、ダモクレスが七色の光を放ちながら、独自にブレンドしたアロマなニオイを漂わせた。
それが原因で、あちこちから動物達の悲鳴が聞こえ、リラックスとは真逆の状態に陥っているような感じになっていた。
「ここまで来ると、不気味以外のナニモノでもないねぇ。一体、何がしたくてこんな事をしたのか分からないけど、七色の光のせいで、まったく落ち着かないと思うんだけど……。調光次第では落ち着くものだったのかねぇ……」
それを目の当たりにしたディミックが、複雑な気持ちになった。
おそらく、ダモクレスに悪意はない。
言うなれば、本能の赴くまま、ニオイを撒き散らしているだけ。
それが当たり前の事であり、悪い事だと思っていない事は間違いなかった。
「でも、藍ちゃんはライドキャリバーだから、匂いとか関係ないよね?」
ことほが苦笑いを浮かべながら、ライドキャリバーの藍に視線を送った。
「……!」
だが、藍はガタブル状態。
ニオイが分からなくても、目の前にいるダモクレスがヤバイ存在である事を理解しているのか、あからさまに警戒している様子であった。
それでも、そんな答えを返すほどが出来ないほど、ことほの瞳がキラキラとしていた。
「……リオンは、何処でニオイを感知しているのか分からないけど、よく似合っているわね、そのガスマスク。……何と言うか、少し強くなったように見えるわ、何となくだけど……。……それでも、あのダモクレスが怖いようね。……さっきから、身体が震えているわよ、ガタブルと……」
キリクライシャが心配した様子で、バーミリオンに視線を落とした。
バーミリオンは藍と同じようにダモクレスを警戒しているらしく、いつでも身を守る事が出来るようにするため、凶器を握り締めていた。
「アロ、アロ、アロマァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
次の瞬間、ダモクレスがケルベロス達に狙いを定め、アロマの香り漂うビームを放ってきた。
それは七色の光がブレンドされた虹色の超強力なビーム。
「さすがに、あの攻撃を食らうのは……マズイよね。何と言うか……しばらくニオイが採取れないだろうし……」
右院が身の危険を感じてビームを避け、ハンマーを砲撃形態に変形させ、竜砲弾でダモクレスを攻撃した。
「ア、ア、アロマァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
しかし、ダモクレスの勢いは衰えず、右院に反撃するようにして、ボディの中に収納されていたアロマアームを伸ばしてきた。
そのアームは濃厚なアロマのニオイに包まれていたものの、マスクを被っているケルベロス達には、まったく分からないようだった。
だからと言って、それが分かったところで、メリットがある訳でもないため、戦闘に支障はなかった。
「……邪魔よ」
キリクライシャが素早い身のこなしで、アロマアームを避けていき、スターゲイザーを仕掛け、流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りで、ダモクレスの機動力を奪った。
「……!」
それに合わせて、バーミリオンがダモクレスの死角に回り込み、手に持った凶器でボトル部分を攻撃した。
その影響でボトルに必要以上の負荷が掛かり、まるで悲鳴をあげるようにして、みるみるうちにヒビが広がった。
「ア、ア、アロマァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
その事に危機感を覚えたダモクレスが、ビクビクと身体を震わせ、アロマミサイルをぶっ放した。
それと同時に、大量のアロマミサイルがケルベロスめがけて、雨の如く降り注いだ。
「あのボトル……よほど大事なモノようだねぇ。いっそ、壊してしまうかい? そうすれば、大人しくなりそうな雰囲気だけど……」
ディミックが何やら察した様子で、黄金の果実を発動させる事で、攻性植物を収穫形態にすると、聖なる光を放つ事で仲間を進化させた。
「でも、本当に狙っていいのかな? あの中身が飛び散ったら、そのニオイが武器について消えなくなりそうだし……。そうなると困るから、なるべく被害を出さないようにしたいところだけど……駄目かな?」
右院が危機感を覚えながら、ダモクレスに攻撃を仕掛けるタイミングを窺った。
一応、お気に入りの武器を持ってきている事もあり、なるべくであれば汚したくないという気持ちが強いようである。
そのため、なかなか攻撃を仕掛ける事が出来ず、心の中に迷いが生じているようだった。
「……大丈夫。藍ちゃんなら、出来るから! だから頑張って! みんなも期待しているよ!」
そんな中、ことほがイイ笑顔を浮かべながら、期待の眼差しを藍に送った。
「……!」
それは死刑宣告にも等しい言葉であったが、藍に選択権がないほど、ことほの瞳がキラめいていた。
「!!!!」
そんな空気を察した藍が捨て身の覚悟で、ダモクレスに突っ込んだ。
それと同時にボトルが悲鳴をあげるようにして弾け飛び、大量のエッセンシャルオイルが藍に掛かった。
「ア、ア、アロマァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
次の瞬間、ダモクレスが断末魔を響かせ、崩れ落ちるようにして機能を停止させた。
「お、恐ろしい相手だった……」
右院がホッとした様子で、その場に座り込んだ。
それでも、周囲に残ったニオイが消えていないのか、何処からか飛んできたカラスが、悪態をつくように鳴き声を上げた後、Uターンをして離れていった。
「……どうやら倉庫の中に色々なモノが残っているようね。……せっかくだから、持って帰ろうかしら? デザインも悪くないようだし、全部が不良品って訳では無いでしょ?」
そう言ってキリクライシャが倉庫の中から、アロマディフューザーや、エッセンシャルオイルが入ったダンボールを運び出した。
それを目の当たりにしたバーミリオンと藍がドン引きした様子で、キリクライシャと距離を取るのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年4月18日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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