荒ぶる聖剣!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
 光を放つ玩具の剣があった。
 その剣は作中で正義のヒーローが、悪の皇帝デスメテオを倒す時に使っていた由緒正しきモノ。
 それ故に、子供達にとって、憧れのアイテムであったものの、作品にパクリ疑惑が囁かれた事で事態は一変ッ!
 一気に人気が下降し、返品が相次ぎ、光を放つ玩具の剣が倉庫の片隅で深い眠りにつく事となった。
 その場所に蜘蛛のような姿をした小型ダモクレスが現れ、光を放つ玩具の剣の中に入り込んだ。
 それと同時に、機械的なヒールによって光を放つ玩具の剣が作り変えられ、家電製品っぽい雰囲気のダモクレスに変化した。
「ピカ、ピカ、ピカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
 次の瞬間、ダモクレスが奇妙な鳴き声を響かせ、廃墟と化した倉庫の壁を突き破るのであった。

●セリカからの依頼
「紺野・雅雪(緋桜の吹雪・e76839)が危惧していた通り、都内某所にある廃墟と化した倉庫でダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティ・チェインを奪われてしまう事でしょう。そうなってしまう前に、何としてもダモクレスを撃破してください」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ダモクレスが現れたのは、廃墟と化した倉庫。
 この場所に保管されていた光を放つ玩具の剣が、ダモクレスと化したようである。
「ダモクレスと化したのは、光を放つ玩具の剣です。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティ・チェインが奪われる事になるでしょう」
 そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
 資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
 ダモクレスは巨大な蜘蛛のような姿をしており、グラビティ・チェインを求めて攻撃を仕掛けてくるようだ。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
カシス・フィオライト(龍の息吹・e21716)
九竜・紅風(血桜散華・e45405)
紺野・雅雪(緋桜の吹雪・e76839)
四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)

■リプレイ

●都内某所
「まさか俺が危惧していたダモクレスが本当に現れるとは……。これは俺が必ず食い止めてやるしかないな」
 紺野・雅雪(緋桜の吹雪・e76839)は仲間達と共に、廃墟と化した施設にやってきた。
 ダモクレスと化したのは、この倉庫にあった聖剣の玩具。
 かつて正義の象徴であった聖剣は、ダモクレスになった事で、悪の権化になっていた。
「いまから、ここは戦場になる。だから、早く安全な場所に!」
 現場に到着した雅雪が最初にやったのは、一般人達に対する避難誘導であった。
「……ん? どういう事だ」
 一般人達も最初は雅雪の言葉に難色を示したものの、ダモクレスが現れる事を知り、態度を一変させて避難し始めた。
「今回、倒すべき相手は、聖剣のダモクレスか。子供からは、とても憧れる存在だったのだろうな。だが、それがダモクレスになるとは、堕ちた物だ」
 そんな中、九竜・紅風(血桜散華・e45405)が事前に配られた資料を持って、廃墟と化した倉庫を見つめた。
 倉庫は廃墟と化してから、しばらく経っているらしく、あちこちの塗装が剥がれて、不気味な雰囲気が漂っていた。
 そのせいで、周囲からも浮いており、そこだけ別次元であるかのような錯覚を覚えた。
「……パクリ疑惑にさらされたとは不憫な物だが……。だからと言って人々に危害を加えて良い理由にはならないね」
 カシス・フィオライト(龍の息吹・e21716)が複雑な気持ちになりつつ、倉庫を囲むようにして陣取った。
 倉庫のまわりには、工場や飲食店などがあったものの、ケルベロス達の警告を受け、避難を終えていた。
「セ、セ、セイケェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェン!」
 次の瞬間、ダモクレスが倉庫の壁を突き破り、耳障りな機械音を響かせた。
 それはまるで、怪物の誕生。
 倉庫の壁を突き破ったダモクレスは、新鮮な空気を全身に吸い込むようにしながら、禍々しい光を放って飛び上がり、ケルベロスの前に降り立った。
 ダモクレスは蜘蛛をモチーフにしているようだったが、全身に聖剣を生やしているせいで、ハリネズミのような印象を受けた。
「セ、セ、セイケェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェン!」
 それと同時に、ダモクレスが全身に生やした聖剣がガチャガチャと鳴らしながら、不規則に光を放ちつつ、ケモノの如く咆哮を響かせた。
 その影響で、アスファルトの地面が震え、ケルベロス達の身体に鳥肌が立った。
「……これは、また随分と異形な姿になったようだね。でも、人々に危害を加えるのであれば、話は別。流石に放っておくわけにはいかないから、ここで倒させてもらうよ」
 四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)が警戒心をあらわにしながら、ダモクレスの死角に回り込もうとした。
「セ、セイケェェェェェェェェェェェェェン!」
 その事に気づいたダモクレスが殺気立った様子で、再び耳障りな機械音を響かせた。
 ダモクレスにとって、ケルベロスは排除すべき敵。
「セイケェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェン!」
 その事を本能的に理解したのか、殺意を剥き出しにしながら、今にも飛び掛かってきそうな勢いで、一気に距離を縮めてきた。
「とにかく、ダモクレスが一般人に危害を加える前に、倒してしまおう」
 そう言ってカシスが仲間達と連携を取りながら、ダモクレスと間合いを取りつつ、攻撃を仕掛けるタイミングを窺うのであった。

●ダモクレス
「さぁ、行くぞ疾風丸! サポートは任せたからな! まずはダモクレスの動きを止めるぞ!」
 すぐさま、紅風がテレビウムの疾風丸と連携を取りつつ、ダモクレスにスターゲイザーを仕掛け、流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りを炸裂させ、ダモクレスの機動力を奪い取った。
「……!」
 それに合わせて、疾風丸が凶器攻撃を仕掛け、ダモクレスの脚を執拗に攻撃した。
「セ、セ、セ、セイケェェェェェェェェェェェェン!」
 その影響でビルシャナが足止めされ、耳障りな機械音を響かせた。
「ヒ、ヒ、ヒカリィィィィィィィィィィィィィ!」
 だが、思うように脚を動かす事が出来ず、見るからに苛立っている様子であった。
「さぁ、これで守ってあげるからね」
 その間に、司がエナジープロテクションを発動させ、エネルギーで盾を形成した。
「さぁ、援護するぜ。強力な一撃を頼むぞ!」
 続いて、雅雪がブレイブマインを使い、カラフルな爆発を発生させ、爆風を背にした仲間の士気を高めた。
「ライ、ライ、ライ、ライトォォォォォォォォォォォォォォ!」
 それと同時に、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、ケルベロスを狙って、光の剣状のビームを放ってきた。
 そのビームは、まるで巨大な聖剣。
 それが大地を真っ二つに叩き割る勢いで、ケルベロスに襲い掛かってきた。
「見た目は派手だけど、そのぶん避けるのは……」
 カシスがギリギリのところでビームを避け、アスファルトの地面を転がった。
 ダモクレスが放ったビームは、アスファルトの地面を破壊し、一瞬にしてビルを真っ二つにした。
 その影響で大量の土煙が舞い上がり、真っ二つになったビルが音を立て、アスファルトの地面に飲み込まれるようにして崩れ落ち、瓦礫の山が築かれた。
「難しくないけど……放っておくのは、厄介だ。忌まわしき力だが、仕方あるまい」
 紅風が美貌の呪いを発動させ、尋常ならざる美貌の放つ呪いによって、ダモクレスの動きを封じ込めようとした。
「セ、セ、セ、セイケェェェェェェェェェェン!」
 それに抵抗するようにして、ダモクレスが聖剣型のアームを振り回し、ケルベロス達に迫っていった。
 聖剣型のアームはダモクレスの背中から幾つも伸びており、それが絡み合う事なく振り回され、ケルベロス達に襲い掛かった。
「華麗なる薔薇の舞を、見切れるかな?」
 それを迎え撃つようにして、司が薔薇の剣戟を仕掛け、幻の薔薇が舞う華麗な剣戟で、ダモクレスを幻惑し、聖剣型のアームを弾き返した。
 しかし、聖剣型のアームは何度弾かれても、諦める事なくケルベロス達に振り下ろされ、隙あらば喉元を掻き切る勢いで迫ってきた。
「オーロラの光よ、皆に癒しの力を与えてくれ」
 その間に雅雪がオラトリオヴェールを発動させ、オーロラのような光で、仲間達を包み込んだ。
「セ、セ、セイケェェェェェェェェン!」
 だが、ダモクレスは諦めておらず、半ばヤケになりつつ、聖剣型のアームを振り回した。
 そのため、いくら傷ついても、勢いが衰える事なく、逆に殺意が膨らんでいるような感じであった。
「……!」
 それを目の当たりにした疾風丸が、警戒した様子で後ろに下がった。
「セ、セ、セイケ・ケ・ケ・ケェェェェェェェェェェェェェェン!」
 その事に気づいたダモクレスが、疾風丸を狙って、次々と聖剣型のアームを振り下ろした。
「……聖剣が聞いて呆れるな。まさか、俺達を相手にするのが怖いのか? まあ、負けることが分かっていながら、向かってくるほど愚かではないのかも知れないが……。それ以上、疾風丸を傷つけるつもりであれば、俺も容赦はしない」
 その死角に回り込むようにして、紅風が間合いを取りつつ、スターゲイザーを仕掛け、ダモクレスを挑発した。
「セ、セ、セイケェェェェェェェェェェェェェェェェン!」
 次の瞬間、ダモクレスがケモノの如く咆哮を響かせ、ライトミサイルをぶっ放した。
 それと同時に、大量の光る剣が上空に舞い上がり、綺羅星の如く眩い光を放ちながら、雨の如く勢いでケルベロス達に降り注いだ。
 ……それはまるで世界の終わり。
 降り注いだ聖剣によって、辺りの建物が次々と破壊され、あちこちから土煙が上がっていた。
 その影響で世界の終わりような光景になっており、ダモクレスがケルベロスを嘲笑うようにして、不気味な機械音を響かせた。
「……これは、さすがに厳しいね」
 その攻撃から逃げるようにして、司が物陰に身を隠した。
 その後を追うようにして、光る聖剣がザクザクとアスファルトの地面に突き刺さり、次々と爆発していった。
「自然を廻る霊達よ、人々の傍で見守る霊達よ。我が声に応え、その治癒の力を与え給え!」
 その間に、雅雪が青蓮の木霊(セイレンノコダマ)を発動させ、周囲に浮遊する精霊達に声を掛け、仲間を癒す力を貸して貰い、強力な治癒の力を受け継いだ。
「セ、セ、セイケェェェェェェェェェェェェェェェン!」
 その事に気づいたダモクレスが、聖剣型のアームを振り回し、再びケルベロス達に襲い掛かってきた。
「さぁ、これで焼き尽くしてあげるよ」
 それを迎え撃つようにして、カシスがグラインドファイアを放ち、ローラーダッシュの摩擦を利用し、炎を纏った激しい蹴りをダモクレスに放った。
「セ、セ、セイケェェェェェェェン!」
 それでも、ダモクレスは炎に包まれながら、耳障りな機械音を響かせ、聖剣型のアームを振り下ろした。
「……これで終わりだ」
 その攻撃を寸前で除け、紅風が血装刺突法を仕掛け、染み付いた血を硬化させ、包帯を槍の如く鋭くして、ダモクレスのボディを貫いた。
「セ、セイ……ケェェェン……」
 その一撃を喰らったダモクレスが断末魔を響かせ、ビクビクと体を震わせた後、崩れ落ちるようにして動かなくなった。
 その影響で、どす黒い血のようなオイルが漏れ、ダモクレスのまわりに広がった。
「まるで岩に突き刺さった聖剣だね。まあ、引き抜いたところで、意味はないと思うけど……」
 司がダモクレスだったモノをマジマジと見つめ、深い溜息を洩らした。
 今にも引き抜けそうな勢いで、聖剣だった部分が飛び出しているものの、完全に光を失っているため、二度と動く事はないだろう。
「このまま眠らせてやれ。今回、目覚めたのだって、聖剣が望んだ事ではないと思うから……」
 その間に雅雪がヒールで辺りを修復すると、ダモクレスだったモノに視線を落とすのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年4月17日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。