チョコ、チョコ、チョコ三昧！

■リプレイ

●都内某所
「……ん？　この場所は……」
　柄倉・清春（大菩薩峠・e85251）は仲間達と共に、廃墟と化したチョコレート工場にやってきた。
　その工場には、どこか見覚えがあるような気もしたが、おそらく気のせい。
　何処かで似たような建物を見ただけという事で、自分自身を納得させた。
「えっと……二度あることは三度あるとは言いますが……最近ビルシャナの中では流行りなのでしょうか……？」
　彼岸花・深未（サキュバスの鹵獲術士・e01205）が、気まずい様子で汗を流した。
　何やら既視感があるものの、単なる偶然もしくは分家、はたまた本家と言った感じなのかも知れない。
　どちらにしても、ビルシャナ達がチョコスキーである事に違いはないため、やる事は……同じ。
　全力で……排除！
　二度と同じような教義を叫ぶビルシャナが現れないようにするため、元から断つだけである。
「みんな何やら誤解しているようだが、これほど素晴らしい依頼はないぞ。二度と言わず、三度……いや、何度あっても良いくらいだ！」
　そんな中、皇・絶華（影月・e04491）がチョコレートに取り憑かれた様子で、瞳をランランと輝かせた。
　絶華にとって、チョコレートは、すべて。
　身体の大半はチョコレートで出来ていると言っても、大袈裟ではないほど、絶華はチョコレートを愛していた。
　それこそ、人生の大半をチョコレートに費やしてきたと言っても大袈裟ではない程である。
「……なぜだろう。この依頼に来た時点でワシの宿業が確定してしまってる気がする。いや、きっとそんな事はない！　そんなエンディングはブレイクだ！」
　それとは対照的に、コクマ・シヴァルス（ドヴェルグの賢者・e04813）が色々な意味で危機感を覚え、拳をギュッと握り締めた。
　これは絶体絶命、ピンチの合図。
　ここで逃げねば、間違いなくバッドエンド。
　それが容易に分かってしまう程、死亡フラグが順番待ちをしていた。
　もちろん、それは単なる気のせいかも知れない。
　だが、そう思う事が出来ない程、死亡フラグの割合が多かった。
「……よし、行くぞ！」
　すぐさま、絶華がコクマの腕をガシィッと掴み、瞳をランランと輝かせながら、鼻歌混じりで廃墟と化したチョコレート工場の中に入っていった。
「あ、いや……、ワシは遠慮して……あ、あの……今から見るアニメがあるから、今日は帰らせ……い、嫌だああああああああああああああ！」
　その途端、コクマが絶望のどん底に突き落とされた様子で悲鳴を上げ、死亡フラグ達を引き連れ、廃墟と化したチョコレート工場の中に消えた。
「ともあれ、食べ物を粗末にするなんて許せません！」
　その後を追うようにして、深未がケルベロスコートを脱ぎ捨て、女子用のスクール水着姿で、廃墟と化したチョコレート工場に足を踏み入れた。

●工場内
　チョコレート工場内は天井から床までチョコレートまみれになっており、建物全体がチョコレートで出来ているのではないかと錯覚する程、チョコレートのニオイに包まれていた。
「いいか、お前ら！　この世界はチョコで出来ている！　しかし、頭の腐った奴等が土でチョコを覆い、偽りの世界を築き上げた……。故に、俺達がしている事は、世界を元に戻す事。まずは、このチョコレート工場を……次に、この街を……そして、世界をチョコレート色に染める……。それこそが俺達の使命ッ！」
　室内にはビルシャナがおり、信者達を前にして、自らの教義を語っていた。
　その間、信者達はビルシャナの教義にウットリとしながら、全身にチョコレートを塗りたくっていた。
　おそらく、信者達はビルシャナによって、洗脳状態に陥っているのだろう。
　みんな瞳孔の開いた眼で、思考停止状態に陥っているようだった。
「つーか、朝から晩までチョコだと、さすがに飽きるだろ？　どうせなら、塩気のあるもん食いたくねえか？」
　そんな中、清春がビルシャナ達の前に陣取り、次々とカップラーメンを並べていった。
　その種類は豊富で、塩、味噌、トンコツ、しょうゆ……等々。
　コンビニやスーパーで売られていたカップラーメンをフルコンプしてきたのではないかと思う程の量。
　お湯を注がれ、そこから漂うのは、香ばしいラーメンのニオイ……。
「……！」
　そのニオイに反応した信者達が、一斉にビクッと体を震わせた。
　その脳裏に過るのは、『ラーメン食べたい』という言葉。
　しかし、ビルシャナによって、洗脳されている影響で、首をブンブン。
　頭の中に浮かんだ妄想を振り払うようにして、必死に頭を振っていた。
「お前ら、騙されるな！　これは、毒だ！　炭水化物の塊だ！　そんなモノを喰らったら、身体を壊す！　間違いなく、身体を壊す！」
　その事に危機感を覚えたビルシャナが、信者達に対して警告した。
　その間も信者達がカップラーメンをガン見していたが、ビルシャナの声に驚いて、一斉に視線を逸らした。
「……阿呆か、貴様らぁ！　チョコだけ食べたって栄養が偏るに決まっておるだろうが！　そもそも人間が生命の維持に必要な栄養素はチョコだけで補填しきれるわけない！　何より……ほかにも美味しいものはいっぱいあるのだ！！　例えば、このラーメン！　見ろ！　こんなに美味いのに……食べないなんて……勿体ないぞ！　そもそも、なんで貴様らチョコに関する悟りを抱いてしまったんだ！　悪い事は言わない！　チョコから逃げろ！」
　コクマがラーメンを啜りながら、信者達を叱りつけた。
「つーか、天井や床やらに流れてるチョコなんて食いてーか、マジで。誰かの体から流れおちたもんかもしんねえぞ？　栄養だって偏りまくって死ぬだろっての」
　清春もカップラーメンを食べつつ、信者達の胃袋と心に訴えかけた。
「……！」
　そのため、信者達が一斉に腹を鳴らして、生唾をゴックンと飲み込んだ。
　その影響で腹の虫達も抗議活動を始めているらしく、信者達が動揺した様子で激しく目を泳がせた。
「……お前達は何も分かっていない！　チョコはいくら食べても飽きないし、栄養のバランスだってバッチリだ！」
　ビルシャナがムッとした様子で、フンと大袈裟に鼻を鳴らした。
　その事に気づいた信者達も、ビクッと体を震わせ、同じように鼻を鳴らした。
「……その通り！　お前達の教えは素晴らしい！　チョコは素晴らしき滋養強壮薬だ！　ならば！　チョコを愛しチョコの秘める圧倒的なパワーを信奉する、お前達ならば！　私の圧倒的なパワーを食し！歓喜の叫びをあげるだろう！　さぁ！　宇宙を感じ覚醒を果たすがいい！」
　次の瞬間、絶華がイイ笑顔を浮かべながら、カカオ300％＆虫と漢方入りチョコを、信者達の口に突っ込んだ。
「……！！」
　その途端、信者達がビクビクと身体を震わせ、ブクブクと泡を吐いて、意識を失った。
「……う、嘘だろ」
　それを目の当たりにしたビルシャナが、豆鉄砲を喰らったような表情を浮かべた。
　まわりにいた信者達も、ポカンとした表情を浮かべたまま、恐怖で足が竦んでいた。
「つーか、今回に限ってはチョコに殺されかねねーかんな。マジで帰ってこい！」
　清春が青ざめた表情を浮かべ、信者達に対して警告をした。
「わ、分かった」
　これには信者達も危機感を覚え、ぎこちない動きで、清春のところまで避難した。
　その事を歓迎するようにして、清春がハグをした上で、カップラーメンを手渡した。
「ワ、ワシも、そろそろアニメの時間じゃから……わし帰……いやあああ！！」
　その流れに乗ってコクマも退散しようとしたものの、絶華に首根っこを掴まれ、絶体絶命ッ！
「さぁ！　感じ取れ！！　圧倒的なパワーを！　……大丈夫だ！　料理とは……チョコとは……パワーだ！　ほら、感じるだろう。……体からあふれる圧倒的なパワーを！　さぁ！　大いなる覚醒がお前の体と心に発動するだろう！！　歓喜の産声をあげるがいい！」
　それと同時に絶華がコクマの口にカカオ300％＆虫と漢方入りチョコを捩じり込み、悲鳴ごとゴックンと飲み込ませた。
　それはコクマだけでなく、まわりにいた者達すべてを恐怖のどん底に突き落とすほどの破壊力。
　先程までチョコレートが至高であると訴えていたビルシャナでさえ、ドン引きであった。
「だ、大丈夫です！　悪いビルシャナはボク達が……って、あれ？　何故ビルシャナがボクの後ろに……。と、とにかく、安心してください！　ビルシャナもろとも、必ず悪を……いや、何でもないです。みんなでビルシャナを倒しましょう！」
　その空気に圧倒されて深未も、ビルシャナを絶華に差し出すようにして、戦闘を開始するのであった。

●ビルシャナ
「ちょっと待て！　この状況で真の悪は誰だ？　俺じゃないだろ、絶対に！　もっと優先して、倒すべき相手がいるだろ！　こら、お前等なんで視線を逸らす！　絶対に野放しにしたら駄目なヤツがいるだろ！」
　その途端、ビルシャナが涙目になって、ケルベロス達に抗議した。
　だが、誰も聞く耳を持たず、沈黙を貫いた。
「うるせぇ！　チョコを突っ込むぞ、この野郎！　この状況が分からねーのか！　地獄絵図を味わうのは、てめぇだけで十分じゃねえか」
　清春が我が身可愛さからビルシャナを差し出し、自分が無関係である事を強調した。
「……チョコを信奉する以上、我が圧倒的なパワーのチョコで強化される筈だ！　さぁ、体にあふれる圧倒的なパワーで覚醒するがいい！」
　絶華がイイ笑顔を浮かべて距離を縮め、ビルシャナの口にバレンタインチョコを捩じり込んだ。
　それは心に込もるバレンタインチョコレート（キョウキヘミチビクフカキシンエンヨリキタルモノ）によって作り出されたカカオ10000％の危険なチョコ。
「うわああああああああああああ！　嫌だ、嫌だ、嫌だあああああああああ！　誰か助けろ！　身代わりになれ！」
　その途端、ビルシャナが悲鳴を響かせ、超強力なビームを放った。
　そのビームは濃厚なチョコレートのビーム。
「うわっ！　な、なんて事をするんですか！　全身チョコまみれになってしまったじゃないですか！」
　そのビームをモロに喰らった深未が、全身チョコレートまみれになりながら、ムッとした様子でビルシャナに抗議した。
「う、うるさい、黙れ！　こうなったら、お前らも道連れだああああ！」
　ビルシャナがチョコレートの泡を吐きながら、涙目になって再びビームを放とうとした。
「……む！　まだ足りないか！　大丈夫だ！　体にあふれる圧倒的なパワーで覚醒を果たせ！」
　次の瞬間、絶華がビルシャナの喉までチョコレートを突っ込み、完全に息の根を止めた。
「と、とりあえず、解決ですね！　それじゃ、おいしいもの食べに行きましょー！　ただし、チョコ以外で……」
　その間に、深未が別の服に着替え、仲間達を誘って、脱兎の如く逃げ出した。
「そ、そうだな。お、お前達も行こうぜ！」
　清春もヒールとクリーニングを駆使して、信者達を綺麗にした後、一目散に退散した。
「ちょ、ちょっと待つのじゃ！　まだワシの語りが……。ま、まさか、この怪物と……い、いや、この御方とワシだけを残して……い、嫌じゃ！　ワシはアニメを……あのアニメを見るまで、死ぬわけにはいかんのじゃああああああああああああああ」
　そして、コクマの悲鳴が、廃墟と化したチョコレート工場内に響くのであった。

作者：ゆうきつかさ	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2020年4月16日 難度：普通 参加：4人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 1／キャラが大事にされていた 1
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