ビルシャナは黒の下着こそ至上と説く

■リプレイ

●
「女性の下着の色は？」
　闇に沈む倉庫の中。響きわたる声が問うた。
　声の主。どうやら男であるらしい。らしいというのは、男が人の姿をしていないからで。
　男は汚れた羽根に覆われていた。鳥怪である。ビルシャナであった。
　そして、彼の前には異様な雰囲気を持つ十数人の集団があった。年齢は様々であるが、全員、男である。
「黒！」
　男たちが叫んだ。
「そうだ。女性の下着は黒に限る！　それ以外は不要！」
　ビルシャナが喚く。そして命じた。
「漆黒の下着こそ至高！　それ以外の下着を剥ぎ取り、黒の下着をまとわせるのだ！」
　どおん。
　衝撃が倉庫を震わせた。ドアが蹴り開けられたのである。
　飛び込んで来たのは七人の男女であった。名はそれぞれに日柳・蒼眞（うにうにマスター・e00793）、ラインハルト・リッチモンド（紅の餓狼・e00956）、コクマ・シヴァルス（ドヴェルグの賢者・e04813）、皇・絶華（影月・e04491）、シャルロッテ・シュトレリッツ（月ニ狂ヒシ獣・e12526）、盟神探湯・ふわり（悪夢に彷徨う愛色の・e19466）、黎泉寺・紫織（ウェアライダーの鹵獲術士・e27269）という。ケルベロスであった。
「なんだ、きさまらは？」
　さすがに驚いてビルシャナが問う。答えたのは紫髪紫瞳の少女であった。猫のウェアライダーらしい、ややつり上がったアーモンド型の目が魅力的である。
「ケルベロスよ」
　少女ーー紫織はいった。
「ケルベロス？　邪魔をするつもりか」
「そうよ。個人の好みは、なんでもいいけど、他人に押し付けるのは、間違いよ」
「黙れ」
　ビルシャナが怒鳴った。
　うーん、と赤髪の端正な顔立ちの少年が苦笑した。ラインハルトである。
「ビルシャナはいつになっても変わらないな～。さて」
　苦笑をおさめると、ラインハルトは続けた。
「貴方達の主張はわかります。女性の黒下着を見るとドキドキしちゃいますからね。けど、あえて言います！　黒が至上というのは早計ではないのかと！」
「な、なんだと？」
「反論したい気持ちはわかります。ですが、貴方は他の色の下着に劣情を抱きませんでしたか？　赤の下着に興奮したりは？　紫の下着に妖艶さを感じたことは？　ピンクの下着に可愛らしさを、白の下着に純粋さを感じた事が一度でもなかったのですか？」
「あるものか！」
　ビルシャナが叫んだ。
「愚かな」
　ラインハルトは哀しげに溜め息を零した。そして、信者たちの方に向き直ると、
「貴方達は他の色に対する理解を深めなかったのか。可能性を追求しなかったのか！　ビルシャナの言葉に踊らされて進化することを、追及することを忘れるのは…ただの停滞ではないのですか！」
「なっ」
　信者たちは反論の言葉を失った。が、まだ説得されたわけではない。
「ぐぬぬ。黒の下着もよいものだが、それ以外にも良い物はある」
　とはコクマであった。少年に見える顔を悔しげにゆがめている。
　すると黒ずくめの若者が口を開いた。絶華だ。
「下着は別に人にそこまで見せるものでもないだろう。ならば機能性が大事ではないかな」
「馬鹿め」
　ビルシャナがせせら笑った。
「下着に機能性など必要ない。下着に求められるのは美しさだけだ」
「それなら」
　ずい、とシャルロッテが前に進み出た。尻のふさふさの狐の尻尾が艶めかしく揺れる。
「黒も素敵ですけれど、私はなんだか白に惹かれてしまいますの。ですから黒の信者の皆さま、私と勝負をしましょう。ええ、逃げも隠れもいたしませんわっ」
　シャルロッテは高々と宣言した。

●
　シャルロッテの足元にすとんと白い外套が落ちた。現れたのは白銀の騎士である。
　が、シャルロッテの身を覆う鎧の胴と腰の部分はなかった。真っ白な彼女の肉体と純白の下着のみがさらされている。そのアンバランスさが妙に官能的であった。
　シャルロッテは剣を抜き払うと、
「やーやー、遠からん者も近くの者も寄って目にも見よー！」
　と叫んだ。
　信者たちは驚いて声もない。が、すぐに彼らの目はシャルロッテの肉体に吸い寄せられた。
　瀟洒な刺繍の施された下着は上品で清楚。貴族的な顔立ちのシャルロッテに良く似合っている。
　と、別の少女がシャルロッテの横に立った。ふんわりとした可憐な顔立ちの美少女だ。ふわりであった。
　人形のような繊細な肢体。が、その肉体を包んでいるのは悩殺的な黒いボンテージであった。
「黒い下着ってふわりにはちょっと似合わないかもなの！　でもでもー、ちょっと勇気を出して履いてみたのー……♪」
　愛くるしく微笑むと、ふわりはボンテージのジッパーをつうと下ろした。のぞいたのは小ぶりだが形の良い乳房と黒革の下着である。
　おお、と信者たちは歓声をあげた。黒の下着は彼らの大好物である。
「やめろ！」
　怒鳴り、ビルシャナが駆け寄ろうとした。が、その前に蒼い髪を翻らせて立ちはだかった男がいる。蒼眞だ。
「邪魔はさせないぜ」
「何っ」
「白の下着好きの次は黒の下着を着させようって方々が出てくるとは…白黒つけようってのか、下着だけに…なんてな」
　飄然と蒼眞は軽口を叩いた。
「ええい、どけ！」
　ビルシャナの目が光った。迸り出た赤光が蒼眞を焼く。
「くっ」
　蒼眞は呻いた。恐るべき威力である。体力の半分ほどがもっていかれた。
　ならばとラインハルトがするすると間合いをつめた。怨霊の瘴気が黒く尾をひく刃をたばしらせる。
　誰が想像し得ただろうか。ラインハルトの渾身の一閃が空を打とうとは。
「ははは。ざまあみろ！」
　跳んでかわしたビルシャナが哄笑をあげた。そして信者たちのもとへ再びむかおうとしーー。
「大地の精霊よ、彼の者を束縛せよ」
　紫織が叫び、地に掌を叩きつけた。
　次の瞬間だ。地から砂が噴出した。それは蔓状になり、ビルシャナにからみついた。
「まずは貴様の防御を砕いてやる」
　コクマが跳んだ。空で身を旋転させ、回転の勢いをのせて刃をぶちこむ。唸りをあげたのはコクマの身の丈よりもでかい武骨な剣であった。ものすごい衝撃に吹き飛ばされ、ビルシャナが倉庫の壁に激突した。倉庫が震える。
　が、これくらいでビルシャナはまいらなかった。ふわりにむかって怪光を放つ。背を無防備にさらしたふわりが浴びた場合、ただではすまないだろう。怪光がふわりを撃ち抜いた。いやーー。
　光は焼いた。蒼眞の身体を。ふわりを庇ったのであった。
「ああっ」
　今度こそ蒼眞はがくりと膝を折った。たまらず御業を呼び出し、鎧として身にまとう。
「とどめを刺してやる」
　ビルシャナが目を動けぬ蒼眞にむけた。
　刹那である。流星のように光の尾をひいて飛び来たった影があった。絶華だ。
「させるものか！」
　規格外の重さを秘めた蹴りを、絶華はビルシャナにぶち込んだ。

●
「でもでも黒じゃなくてピンクとかも、エッチな感じがして良いと思うのー？」
　ふわりは、黒革のパンティをするするとおろした。現れたのピンクの下着であった。布ではない。パールをつなげただけの代物であった。
　当然、局部はほとんど隠れていない。薄茶色の尻穴の皺もピンク色の秘毛のみならず秘肉の一部までもが見えてしまっている。が、ふわりに、そのことを気にしている様子はなかった。
　隣ではシャルロッテがたわわに実った乳房を持ち上げていた。さらにはむっちりと肉のつまった尻をむける。
　若妻のようにシャルロッテは恥ずかしげに頬を染め、そろそろと手をのばした。局部のクロッチをずらす。にちゃ、と濡れた割れ目が覗いた。
　そこまでが信者たちの限界であった。劣情に駆られた彼らは一斉にシャルロッテとふわりに襲いかかった。
「ああん。だめですのー」
　困ったように眉根を寄せ、シャルロッテは形ばかり拒絶した。その方が嗜虐心を煽ると承知してのことだ。
　一方のふわりは違った。
「ふわりの事、一杯愛して欲しいのー♪」
　ふわりがねだった。その求めに応じ、信者たちはふわりから下着を剥ぎ取った。現れたのは繊細な人形のような肉体である。
　信者たちがふわりの両手足を押さえつけた。そして彼女の胸の先に吸い付いた。
「はあん！」
　更に、もう一人が下半身の花びらにある蕾に吸い付き、舌先で転がした。
「ああ、ああ、ああああっ！」
　快感が電流のように肉体を走り抜け、ふわりは身悶えた。いやらしいことをされるのが気持ちよくてたまらない。
　すると信者たちは肉棒をさらけ出した。ふわりの目が輝いた。
「大きくて美味しそうなのー。その立派なもので、もっと愛して欲しいのー」
　ふわりは自ら秘肉を開いた。信者がずぷりと肉棒を突き立てる。
　もう一人はふわりの蕾のような唇を開かせた。無理やり肉棒をねじ込む。小便と精液の混じったいやらしい味がふわりの口腔内に広がった。
　信者たちが腰を振りだした。ふわりの肉体が汚されていく。が、ふわりは嬉しそうに喘いだ。
「ああん。お口もあそこも気持ちいいのー」
　刹那、信者たちが白濁液をぶちまけた。精液をあびたふわりもまた絶頂を迎える。
「ああん。ふわり、いくぅ！　いっちゃう！」
　絶叫し、ふわりは背を仰け反らせた。

「や、やめてぇっ！　……あっ、あっ」
　裸にむかれたシャルロッテは大きく足を、さらには割れ目を広げられていた。肉体の奥まで覗き込み、信者たちがニヤリと笑う。
「い、いやっ！　見ないでくださいっ！」
　シャルロッテは羞恥に頬を赤く染め、信者たちを拒んだ。が、それも信者の肉棒を受け入れるまでのことであった。悲鳴が、すぐに甘い喘ぎに変わる。
「す、すごい……こんなに……」
　犯される快感にシャルロッテの理性が溶け崩れていく。口でも味わいたくなって、シャルロッテは別の信者の肉棒を咥えた。信者の陰毛が目の前でそよいでいる。
　シャルロッテは尻をいやらしく振った。あそこだけでは足りない。尻も犯して欲しかった。薄茶色のすぼまりを自ら指で開く。
「あ、あそこは負けちゃいましたけど…ここはまだ、負けてませんのよー…」
「なら、こっちも味わってやるぜ」
　別の信者がシャルロッテの尻穴に肉棒をねじ入れた。尻にはしる激痛が、すぐに快感に変わる。
「あん！　いい、気持ちいいですの…！　出して…射精…いっぱい、中に出してぇ…！　私で赤ちゃん…作ってぇ…！」
　シャルロッテは信者の腰に足をからみつかせた。犯し尽くしてもらうまではなさぬつもりだ。
　身体を淫らにくねらせ、シャルロッテは更に快感を貪り続けた。

●
「ええい、やめろ！」
　ビルシャナが怒号を発した。
「黙れ！」
　コクマが怒鳴り返した。
「ああ忌々しい…貴様なんぞの相手よりワシはもっと楽しい事がしたい所だ。下着だけにこだわる愚かな鳥頭よ。その体全てを粉砕してくれるわ！」
　コクマが巨剣を叩き込んだ。衝撃にビルシャナの足下の地が陥没する。
「……後ろでああいう説得をされるとこの蛇の生殺し状態は色々と辛いものがあるんだけど…」
　蒼眞が、苦く笑った。そして内心、馬鹿げたことだと嘲る。
　結局は脱がして犯すのだ。ならば中身の方が重要に決まっている。
「ま、下着だけに興奮するよりも女体を貪っている方がある意味健全なんだろうけどな。それにしても黒の下着か。妙に淫靡に感じるし、白い肌と黒い下着との色の対比もまた何ともそそるものがあるな」
「私は紫の下着が好きよ」
　にこりともせず紫織がいった。えっ、と驚いて蒼眞が紫織を見返す。確かに紫織に紫の下着は似合っていそうだが、紫織は飄然としていて本気かどうかわからない。
「邪魔だ！」
　ビルシャナが炎を噴いた。紅蓮の怒濤がケルベロスを襲う。
　一瞬遅れて、紫織の手から蒼光が迸り出た。氷結輪である。
　空で赤光と蒼光が噛み合った。爆発的な衝撃が辺りを席巻する。超高温と超低温がぶつかることによる生じた霧が渦巻いた。
「たいしたものだ」
　霧を切り裂き、蒼眞がビルシャナに迫った。咄嗟にビルシャナが跳び退る。が、蒼眞の鋭い一撃は逃げることを許さない。
　どす黒い血をしぶかせ、それでもビルシャナはさらに跳び退った。がーー。
　同じ距離を跳んでビルシャナに迫る者があった。絶華だ。
「貴様らは何を勘違いしているんだ」
　絶華はいった。
「下着というのは本来見せるものではないだろう。ならば求められるのは快適性だ。そんな当たり前すぎる理論に行きつけぬ貴様はあまりにも悟りにも覚醒にも遠い。だが…安心するがいい」
　絶華はニヤリとした。その手に握られているのはチョコレートである。が、ただのチョコレートではなかった。カカオ一万パーセントという狂気の代物である。
「貴様には圧倒的なパワーで覚醒を促す素晴らしいチョコを与えてやろう！」
　絶華がチョコレートをビルシャナの口にねじ込んだ。さらにねじ込み、ねじ込みーー。
「歓喜せよ。我がチョコは数多の貴様の同族に歓喜の雄たけびを上げさせてきた！　体からあふれる圧倒的なパワーを享受するがいい！」
「ぎゃあ！」
　ビルシャナが悲鳴をあげた。ものすごい苦味が膨大な破壊力と変じ、彼の肉体を内側から浸食しているのであった。
「足りぬか？　お代わりはいくらでもあるぞ」
「もういるものか！　ーーあっ」
　ビルシャナが気づいた時、すでにラインハルトはその背後にあった。
　何時、すれ違ったのか、わからない。そして、何時、ラインハルトが抜刀したのかも。
「貴方は、間違っていない…ただ、挑戦する事と未知を開拓する心を忘れてしまっただけです」
　ビルシャナの背に告げると、ラインハルトの腰辺りでチンと澄んだ鍔鳴りの音が響いた。それがビルシャナがこの世で聞いた最後の音であった。

●
　戦いは終わった。が、まだ納得していない者もある。
　欲望の捌け口を求め、コクマはシャルロッテを襲った。無理やり肉棒を突き入れ、果てる。が、それでも満足できず、口で奉仕させた上で、再び肉棒を突き立てた。
　蒼眞はふわりを犯していた。一度や二度で許すつもりはない。
「…うん、ちょっと恥ずかしいので私は離脱するぞ」
　立ち込める精液と愛液の匂い、そしてむっとする熱気から逃れるように絶華が、そしてラインハルトと紫織が倉庫から飛び出した。

作者：紫村雪乃	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2020年4月24日 難度：普通 参加：7人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 1／キャラが大事にされていた 1
あなたが購入した「複数ピンナップ（複数バトルピンナップ）」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。