無人島生活のススメ

作者:星垣えん

●どちらかといえば有人
 ざざーん、と海水が足をさらう砂浜。
 そこに悠然と、鳥さんは立っていた。
「人間の真の力が試される場所……それが無人島だと思うんだ」
 腰に手を当て、この世に我ありとか言わんばかりに堂々と言う鳥。
 ところで彼が立つ砂浜は、左右を見渡しても人がいない。時季じゃないと言えばそれまでだが、にしても周囲何百メートルってレベルで人の気配がない。
 とゆーことは、である。
「うん! やっぱり無人島はいいね!」
 はっはっは、と笑い飛ばす鳥さん。
 現在進行形で無人島に滞在していました。
「なぁ、皆もそう思うだろう!?」
『ええ! 無人島サイコーっすよ!!』
 ぐるんと振り向いた鳥さんに、一列に並んだ男たちが親指を立てる。
 信者さんまでいらっしゃったようです。
「無人島でこそ、人間の生存力が試される! 現代社会はとかく財力に偏重しがちだ……あるい武力ある者が強者だなどと世迷言をほざく……だがそうではないのだ!」
 ぐっと拳を握る鳥さん。
「強い人間とは! 生き延びることができる者のことを言うのだ!」
「生き延びること……生存した者こそが強いということですね!」
「そうだ! いくら金を持とうと、武術の達人であろうと……そもそも生きることができなければ意味がない! その身ひとつで無人島ライフを送れないようでは、真に強い人間とは呼べぬのだ!」
『な、なるほどぉ!!』
 ざわっ、と鳥さんのお言葉に反応する信者たち。
 言うなればサバイバルできる奴こそが強い、という考えに彼らはいたく感銘を受けているらしい。その証拠に全裸に葉っぱパンツである。
「さぁ! みんなで力を合わせて生き抜こう!」
『おぉーー!!』
 鳥さんの号令に呼応し、気勢を上げる全裸信者たち。
 果たして今の状況が無人島と呼べるのかどうかは、疑問である。

●いざ海の孤島
「――という感じで、ビルシャナが無人島に信者を集めて似非サバイバル生活を目論んでいるようです。対処をお願いします」
 裸の葉っぱ男たちの状況を淡々と説明して、イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)が頭を下げる。
 静かに聞いていたマヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)は、眉をひそめた。
「無人島……そんなところで生活なんて、寂しくないのかな? アロアロだったら……たぶん無理だね」
 隣でふるふるとバイブレーションしていた常夏色なシャーマンズゴースト――アロアロが小刻みに首を縦に振る。人見知りさんなアロアロが逞しく生きているさまはマヒナでもちょっと想像できなかった。
「……いやでも、逆に無人島だから生き生きできるのかな? 人がいないから」
 もう1度アロアロを見るマヒナ。
 アロアロは小刻みに頷いている。いったいどっちやねん。
「まあ、今回向かってもらう島はビルシャナと信者で合わせて11人もいますから、無人島と呼べるかは怪しいですけどね」
 ぽつりと呟くイマジネイター。
「でもそれって無人島生活じゃ……」
「ええ、無人島生活とは言えません。ですからそこを指摘するのが早道かと思います」
 マヒナの指摘に、イマジネイターはこくりと頷いた。
「そんな大人数では、たとえサバイバルできたとしても生存力があるとは言えません。仲間がいればこそ気が大きくなってる部分もあるでしょうから、1人でやっていけるのかと問えば彼らも揺らぐと思います」
「なるほどなるほど」
「それから、単純に無人島で生き抜くのは大変だと主張すれば上手く運ぶでしょう」
「うんうん」
「信者が改心したあとは、普段通りにビルシャナを片付けてください」
「そこは大丈夫!」
 眩しいほどの笑顔を見せるマヒナ。なんという絶対的自信。そろそろビルシャナさんは種族あげての名誉回復に努めるべきなのではないだろうか。
「それでは、用意ができたらヘリオンに乗ってください。海に浮かぶ孤島に皆さんをお連れします」
「どんな島かな。ちょっと楽しみ」
 ヘリオンへ歩いてくイマジネイターについていきながら、期待に胸を膨らますマヒナ。
 かくして、猟犬たちは自然あふれる無人島に向かうことになりました。


参加者
ピジョン・ブラッド(銀糸の鹵獲術士・e02542)
新条・あかり(点灯夫・e04291)
玉榮・陣内(双頭の豹・e05753)
キリクライシャ・セサンゴート(林檎割人形・e20513)
マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)
クロウ・リトルラウンド(ストレイキャリバー・e37937)
アーシャ・シン(オウガの自称名軍師・e58486)
ディミック・イルヴァ(グランドロンのブラックウィザード・e85736)

■リプレイ

●ナイフはやめよ
 目いっぱい両腕をひろげて。
 ピジョン・ブラッド(銀糸の鹵獲術士・e02542)とマヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)は、降りそそぐ陽光を浴びていた。
「青い海!! 広い空!!!」
「故郷を思い出すなぁ、あったかくて海もキレイで最高だね!」
 透き通る海を並んで見渡す2人。
 砂浜の感触を懐かしむマヒナは碧色のビキニ姿。ピジョンも涼しげな軽装だ。浜の縁で遊んでいるマギー(テレビウム)も水着姿で、アロアロと一緒に引いてゆく波を追いかけている。
 一方、アーシャ・シン(オウガの自称名軍師・e58486)は長い釣り竿を肩にかける。
「無人島なら魚もスレてなさそうだし、大漁の予感ビンビンね!」
 この人また釣りしようとしてるよ……。
「よく釣れるといいねぇ」
「ええ! きっと美味しいお酒が飲めるわ!」
 ディミック・イルヴァ(グランドロンのブラックウィザード・e85736)の一声にアーシャがジョッキをあおる仕草を返す。
「この時期ならチヌやスズキ、アオリイカも狙えるわ。それを新鮮な刺身にしてビールを飲む……もう落ちない人間はいないわね」
「食のことは私にはわからないが、彼らもそれで目を覚ましてくれるといいね」
 後ろを振り返るディミック。
 物腰柔らかなグランドロンが視線を向けた先には――。
「サバイバルの始まりだー!!」
『うおおおおおおおおおお!!!』
 新生活に向けて気合を入れている鳥さんと仲間たちがいた。
 羽毛ふわふわの鳥はともかく、信者たちは股間の葉っぱがぴらぴらして、誰もが損するサービスシーンを提供してくれていた。
「ひどいなあ……」
 惨状に呆然とするクロウ・リトルラウンド(ストレイキャリバー・e37937)。すぐ横でぱたぱたしてるワカクサ(ボクスドラゴン)も紙の翼がしおしおである。海風のせいかはたまた萎えているのか。
 しかし! そのとき横合いから黒い疾風が!
「な、なんだ!?」
「悪いが隠させてもらった」
 鳥さんの前を通過した黒風――玉榮・陣内(双頭の豹・e05753)が、豹顔の横にぴらりとチラシを上げる。
 股間。
 鳥さんの股間が同じチラシで見事に隠れていた。
「は、速い……!!」
「そんなものを多感な年頃の女の子に見せるわけにはいかないからな」
 クールに言ってのける陣内さん。
 少し離れたところにいた新条・あかり(点灯夫・e04291)が、後ろ手に忍ばせていた惨殺ナイフを仕舞う。
「タマちゃんに隠されちゃった……」
 ちっ、とかすかに舌を打つあかりちゃん。ナイフでどうするつもりだったんでしょう。
 一方、クロウは別のことで頭をぐるぐるさせていた。
「タマちゃん……? ああ、陣内のことか! え、二人は知り合いなの?」
 耳慣れぬ呼び方に驚いたクロウがあかりの隣にススッ。
 2人が恋仲だと聞かされたときは、それは大きな声をあげてしまいました。

●葉っぱはやめよ
 のんびりとした静寂。
 それを打ち破ったのは、ざばぁんと弾けた水飛沫だ。
「よーし大物ーー!!」
「すごい! クーラーボックスがもういっぱいに……」
「アーシャの釣りの腕はなかなかのようだね」
 絶賛釣りまくっているアーシャさんの仕業だった。大量の釣果でクーラーボックスをいっぱいにして、見物していたマヒナとピジョンを感心させていた。
「連続ヒットね! これも大物……」
 再び大物を釣り上げるアーシャ。
 だがオウガの怪力で引きあげられ、宙を舞う姿はおよそ一般的な魚のサイズではない。
 なんか3メートルぐらいある。
「またサメか」
 サメだった。
 超強靭な釣り糸とアーシャの腕力により、さっきから何度もヒットしてるサメだった。
「こいつらいっつも、俺様の獲物を横取りしやがる。次やったら海面から出た鼻っ面に銛(を握ったぐーぱん)叩き込んでやるからな」
 砂浜で踊るサメを掴み、海へ放り返すアーシャ。
 そのサメさんが沖のほうで着水する音を聞きながら、一方でディミックは黙々と大きな石を運んでいる。
「座れるぐらいの石を持ってきたよ。これに座って魚を食べたりするといい。あとは日よけに大きな葉でも採ってこよう」
「わっ、ありがとうディミック!」
「助かるね。砂に座るより汚れずに済む」
 すぐさま石にぺたんと座るマヒナ&ピジョン。
 そしてその一幕を2分ほど見つめていた鳥と愉快な信者たち。
「なんやこれ」
「無人島感ゼロじゃね?」
 放心ぎみの男たち。
 すぐ横でサメ釣ってるし歓談してる。
 そんな状況で夢見た無人島ライフなど送れるわけがねえのだった。
「貴様ら! 騒ぐのなら今すぐ出ていけ!」
「あ、ごめんね。でも本当にステキな島だね……」
「謝罪が軽いし話も聞いてない!」
 憤慨する鳥さんをさらっとあしらい、海を眺めるマヒナ。
「皆で力を合わせて、この島を開拓していくんだよね! はるか昔、ハワイに辿り着いたポリネシア人達がそうしたみたいに……!」
「いや別に開拓者になるつもりとかないよ!?」
「え? 違うの?」
「違うよ! 俺たちはサバイバル生活するために来てるんだよ!」
「サバイバルって……11人もいるのに?」
「あっ」
 マヒナの指摘にフリーズする鳥。
「自分たちも含めたら20人ぐらいいるけど……それってもう無人島じゃなくない?」
「ね。ワタシもそう思う」
「いや待とう。違う。違うから」
 ヒソヒソ話して胡乱な目を向けてくるクロウとマヒナに、鳥が掌を向ける。
 そうして鳥さんが会心の言い訳を練っている隙に、マヒナたちは信者らに近づく。
「一人で生きられたら強そうだけど、ワタシはやっぱり一人じゃ生きられないと思う。人を何より蝕むのは孤独だから……病気になっても助けてもらえない、命を落としても誰にも気づいてもらえないなんて悲しすぎるよ」
「は、はぁ……」
 急な重い話にリアクションも濁る信者たち。
 だが真実だ。無人の空間に自分ひとりというのは、想像しただけで意外と心にくる。
「厳しいかも……?」
「ポリネシア人達も、皆で力を合わせたからこそ命を繋いでこれたと思うの。11人もいるんだから、一人で頑張るより皆で南の島を楽しめばいいんじゃないかな?」
「確かになー……」
 ね、と微笑むマヒナを見て考えこむ信者。
 さらにそこへクロウの叱咤が響く。
「大体なんなのその格好! ちゃんとした服を着てないのはサバイバルする上でもかなり不利だよ! 体温を維持できないし、変な虫に刺されて風土病を貰ったり、毒草に触れてやられたり、リスクばっかり増えちゃうんだから!」
「む、虫!?」
「毒草……!」
「硬い植物や岩場で肌を切ってしまう……それだけで最悪の場合、破傷風みたいな重症になるかもしれないよ? 無人島には病院だって無いんだ! 葉っぱだけなんて甘い考えでサバイブできるわけないだろ!」
「く、くそう! 仰るとおり!」
 反論したくてもできない信者が、つい素直に頷く。
 畳みかけるならば今。
 機敏に察知したピジョンは、服の仕立て屋として到底見過ごせない無様な葉っぱパンツを指差す。
「人はパンのみに生きるにあらず! パンツのみが衣類にあらず! そのパンツ、一見風通し良さそうだけど通気性悪くてムレない? なんか虫もたかりそうだし衛生面が心配だよ……君たちが布やら何やら作る知識があるならいいけど」
「虫がたかる……こわ」
「生地なんて作れないしなぁ……」
「じゃあ考え直すべきだね。服は『衣食住』って言われるくらい生きるのに必要なものなんだよ? 死因が葉っぱパンツってカッコ悪くない?」
「確かにそれを聞かされた家族のことを思うと……」
 両手で顔を覆う信者たち。
 クロウは彼らの肩に手を置き、顎で鳥さんのほうを示す。
「見なよ。しれっと一人だけ羽毛で完全防護してる。ずるいと思わない? みんな騙されちゃダメだ!」
「本当だ!」
「俺たちは葉っぱなのに……!」
 信者たちが『謀りおって!』とばかりに拳を握りしめる。
 順調に全裸メンの心が鳥さんから離れてゆく――そんなときだった。
「……研究試料、たくさん」
 島内に続く茂みをガサガサとかき分けて、銀髪のオラトリオ――キリクライシャ・セサンゴート(林檎割人形・e20513)が砂浜に姿を現した。
 片手に虫取り網を持ち、背中に籠をつけた状態で。
 さながら現地でフィールドワークする学者、という風情であった。

●危ないのはやめよ
「ど、どちら様で……」
 信者がおずおず尋ねると、キリクライシャは籠を下ろしながら彼らを一瞥した。
「……日本には便利な言葉があるわよね。衣食住って」
「そうっすね……」
「葉っぱで最低限を隠せる。食べられれば生きられる。何処でも眠れれば都。無人島で暮らそうと言うのは大方そんな考えね? ……けれど、それって最低限の基盤があってこそできる事なのよ」
 籠の中をごそごそと漁るキリクライシャ。
 というか彼女が探る以前から、何か籠がひとりでに動いたりしている。ついでに言えば彼女が連れているテレビウム――バーミリオンが持つ袋もがさがさしている。
 嫌な予感しかなかったよね!
「……果たして過去にこの島を訪れたことがある人はいるのかしら。生態系は把握してる? 毒の判別は出来るの? 食肉種への対応策は? 病気媒介種だっているかもしれないわ」
「そ、そうですね……」
「てゆーかその荷物怖いんですけど……」
「……もし確かめながら切り開くと言うなら、今ここでやってみなさい」
 籠の中身を並べだすキリクライシャ。
 画像加工したのかってぐらい極彩色のキノコ、およそスーパーマーケットには並ばない歪な形の果実、そして見るからにヤバみがヤバい多足の蟲……。
「やめろォァァーー!!?」
 秒で絶叫する信者たちだった。
「……さあ、生き延びると言うなら適切に対処してみせなさい?」
「すいません無理です!」
「ご容赦くだされ! どうかァ!」
「……つまらないわ。ね、リオン?」
 見下ろしてくるキリクライシャに、バーミリオンが肩を竦める。ちなみにブツの採集はだいたいバーミリオンさんがナイフでサクッとやりました。
 キリクライシャの爆撃じみた仕掛けで信者たちは半数以上が戦意喪失。
 しかしまだ半数が無人島生活を諦めない。
「いかなる苦難があろうと俺たちは無人島を離れんぞ!」
 とか言い出して、抗議デモでもするみてーに砂浜に座りこむ信者たち。
 そんな彼らの前に、真っ白なワンピースを着た女がふらりと現れる。
「無人島生活かあ……確かに『強き者』かもね」
 海風に揺れる赤い髪を押さえるのは、エイティーンで5年先の姿となったあかりだ。
 あかりは手振りで周囲を示すと、信者たちのほうへ目を向けた。
「周りにコンビニもない。勿論女の子もいない。出会いもない。デートもない。孤独を埋める二次元もない。それでも良いってことだもんね……僕は、無理だなあ」
 言いながら、てくてく歩いて陣内に近づくあかり。
 で、彼のふさふさ獣腕に自分の腕を絡める。
「一人より二人がいいし。何より好きな人とくっついてたい……」
「そうだな。俺もだ」
「え、なんかイチャついてる……?」
「急に殺意がみなぎってきたぜ」
 木の枝とかで素振りを始める全裸メン。
 が、彼らが凶行に走る前に、あかりが1枚のチラシを取り上げる。
「あ! こんなとこに無人島体験ツアーのチラシが!」
「体験ツアー?」
「そんなお手軽なものが!?」
 チラシに興味を示す信者たち。
 そのチラシは鳥の股間につけたのと同じもので、陣内の両親が沖縄で営んでいるダイビングショップのものだ。営業ヨロシクとばかりに送られてくるそれは、捌いても捌いてもなくなる寸前でまた送られてくる模様。
「こういうの一緒に行ってみたいと思わない? ね、タマちゃん」
「綺麗な海眺めて、時間も文明社会も明日の仕事も忘れてのんびりする。いいよな」
 見上げてくるあかりに微笑みながら、タマちゃんは懐からチラシの束を出し、慣れた手つきで配りはじめる。
「島までの送迎有! BBQ付きの日帰りプランからキャンプ用品込みの一泊プランまであるぞ。ゴムボートやシュノーケリング道具はここの料金参照な」
「え、あ、はい」
「ダイビングのガイドもやってるから興味ある奴はオプションコースつけてくれ。何よりスタッフの接客が抜群でアットホームなツアーだ。今ならピーク前だから安くできる」
「お、おうふ……」
「1日1組限定でゆったりリゾート気分を味わうといい」
「わかった……って違ぁーーう!!」
 陣内の怒涛の営業トークを聞き終えた信者たちが、ばさぁっとチラシを放り上げた。
「違うだろうが! こんな至れり尽くせりは違うだろうが!」
「サービスはあったほうがいいと思うがな」(チラシを拾う陣内)
「うん。僕もそう思う」(一緒に拾うあかり)
「いやいや! 食べ物を獲ったり寝床を作ったりとか、そういうのだよ求めてるのは!」
 思い描く理想の無人島ライフを語る信者たち。
 けれど傍で聞いていたディミックが、その主張に待ったをかける。
「狩猟に、設営にと、頑張るのも良かろうよ。だが……地球人の体調はまず睡眠ありきだというじゃないか。寝床を作るまでの睡眠はどこでとる?」
「え、そりゃ草とか敷いたり?」
「草の上に寝ころべば葉の端で肌を切り、虫に刺されること請け合いだね」
「じゃ、じゃあ砂の上でも……」
「そうしたら体が汚れるが、全身を洗い流せる水場となると限られるだろうねぇ」
「いや探せばどこか絶好の場所が……」
「奇跡的に見つけられたとしても寝入っているところを野生動物に襲われることもあるんでないかい? 無人の島ではあるけれど、人間以外の先住民はいるだろうしね」
「くそう! 詰んでる!!」
 だむっ、と砂を叩く信者たち。
 そも自分には睡眠が要らないのだけどね、とか言ったら八つ当たりで襲われるかもしれない……と思いつつディミックは彼らの背に手を当てた。
「ある程度は文明の利器に頼りつつ、普通にバカンスしたほうが楽しいと思うよ。ほらちょうど美味しそうな宴をしている」
「宴……?」
 促されるまま、前方を見やる信者たち。
 彼らが見たものは――。
「お酒が進むわ。やっぱり新鮮な刺身は最高ね!」
 アーシャがビール片手に、釣った魚の刺身でワンマン宴してるシーンだった。
 刺身を豪快に食らい、旨さを噛みしめながら冷たいビールを飲みまくる。そしてアテが尽きれば新たな魚を捌いてまた食らう。
 信者たちは喉を鳴らすしかなかった。
「美味そう……」
「食べ終わったら大人しく帰る? 帰るならまぜてあげる」
「い、いいのか!?」
「帰るならね」
「帰る! 帰るよ!」
「どのみち無人島生活は危険っぽいし!」
「なら呑むわよ! 付き合いなさい」
『うおおおおお!!!』
 アーシャの誘いに応じて、我先にと刺身にダッシュする全裸メン。

 なお、言い訳を練り練りしていた鳥さんは事態に気づくや襲ってきたけど、何事もなく海の藻屑になりました。

作者:星垣えん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年4月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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