荒ぶるワイヤレスマウス！

■リプレイ

●都内某所
「単体では何の役にも立たないマウスの暴走とは……。主たる親（PC）に逆らう反抗期の子供のような雰囲気を感じマス。……あっ、でも下剋上カプみたいで……いえ、何でも御座いマセン」
　モヱ・スラッシュシップ（機腐人・e36624）は仲間達と共に、廃墟と化したジャンクショップにやってきた。
　その途中で、何やらイケない妄想を膨らませてしまったせいか、『次のネタは、これで……！』と言う気持ちが強まった。
　つまり、パソコン×ワイヤレスマウスはアリ！
　むしろ御馳走と言った感じで、妄想に拍車が掛かっている様子であった。
「とりあえず、突っ込みどころが多いんだが、なんでＦ１みたいな形をしているんだ」
　コクマ・シヴァルス（ドヴェルグの賢者・e04813）が、思わずツッコミを入れた。
　事前に配られた資料を見る限り、ダモクレスと化したワイヤレスマウスは、Ｆ１カーをモチーフにしているようだが、まったく意味が分からない。
　おそらく、何らかの意図があると思うが、頭の上に浮かんでいるのは、沢山のハテナマークであった。
「……見た目の格好よさ……？」
　キリクライシャ・セサンゴート（林檎割人形・e20513）が、資料に添付されていたダモクレスのイメージイラストに視線を落とした。
　イメージイラストを見る限り、それが一番納得のいく答え。
　だが、何故Ｆ１カーを選んだのか、答えになっていないような感じであった。
「……もしかして、マウスでレースをするつもりだったのか。いや、レースゲームをやるなら、ハンドル型になるだろうし……。マウスの歴史は長いがワイヤレスマウスは電池が持たないという話を聞いた気がするが……、何か違うような気もするな」
　コクマが腑に落ちない様子で、険しい表情を浮かべた。
　何か深い理由があると思ったが……、何か違う。
　絶対に違えと言う考えが脳裏に過ったため、頭の中がハテナマークでいっぱいになった。
「……どうやら、私には理解できない領域みたいね」
　キリクライシャが、深い溜息を漏らした。
　このまま、いくら考えても、時間の無駄。
　その結論に辿り着いてしまったため、考える事を止めたようである。
　テレビウムのバーミリオンも、やれやれと言わんばかりに顔文字を作った。
「ワイ、ワイ、ワイヤレスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ！」
　次の瞬間、ジャンクショップの壁を突き破り、ダモクレスが姿を現した。
　ダモクレスはＦ１カーのようなボディから、蜘蛛のような脚を生やしており、耳障りな機械音を響かせた。
「うわっ！　なんだ、あれは……！」
　それを目の当たりにした住民達が驚いた様子で、辺りに悲鳴を響かせた。
　みんな予想外の出来事が起こっているため、パニック状態。
　ある者は、その場に崩れ落ち、またある者は神に祈った。
　それが向け意味である事が分かっていても、その答えに辿り着く事が出来ない程、動揺しているようだった。
「皆さン、落ち着いてお離れクダサイ。脅威はワタシ達が討伐致しますので問題御座いマセンガ、飛来物などがあるかもしれませんので、念のため落ち着いてお離れクダサイ」
　すぐさま、モヱが凛とした風を使い、住民達に避難を促した。
　その指示に従って、住民達がダモクレスを二度見しながら、不安げな様子でフラフラと逃げていった。
「マウ、マウ、マウスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ！」
　それに気づいたダモクレスが、両脚をガシャガシャと鳴らしながら、住民達の後を追った。
「……蜘蛛脚そのものは嫌いじゃないわ。……でも、Ｆ１マシンの形状を保っていた方が、移動も上手だったのではないかしら？」
　キリクライシャがダモクレスの行く手を阻み、マジマジと見つめた。
　ダモクレスのＦ１マシン部分には、一応タイヤが取り付けられていたものの、蜘蛛の脚が生えているせいで、まったく意味を成していなかった。
「ワイ、ワイ、ヤレスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ！」
　その途端、ダモクレスはエンジンの音にも似た機械音を響かせ、キリクライシャの前に陣取った。
「最近は光で反応すんのが多いけどよ、ガキの頃あったコロコロいうやつな。あれネズミみたいで可愛かったよなぁ。それに比べて、今のヤツは……マウスって言うよりも、別物だな、これは……」
　柄倉・清春（大菩薩峠・e85251）が、しみじみとした表情を浮かべた。
　確かに格好いいデザインではあるものの、トゲトゲシサが強調されているせいで、何やら気持ちは複雑のようである。
「確かに、昔は丸っこいデザインのものが多かったようだね。まあ、流線形で機械的の方が、個人的には親しみが湧くけどねぇ」
　ディミック・イルヴァ（グランドロンのブラックウィザード・e85736）が、清春に対して答えを返した。
「ダモクレスであり素体となったマウスの影響もあるだろうからな。そこも含めて分析を行うとしようぞ」
　そう言ってコクマが間合いを取りつつ、攻撃を仕掛けるタイミングを窺うのであった。

●ダモクレス
「……そもそも私、マウスじゃなくて、トラックボール派なのよね」
　キリクライシャがダモクレスに冷たい視線を送りつつ、エナジープロテクションを発動させ、エネルギーで盾を形成すると、仲間達に守りを固めた。
「なあ、きゃり子。お前にお似合いの可愛い子がいんぞ！」
　そんな中、清春がノリノリな様子で、ビハインドのきゃり子に声を掛けた。
　その途端、きゃり子がデスクトップＰＣ（９８）を持たされたまま、不思議そうに首を傾げた。
「あー。ほら、マウスならパソと接続してえかなって……」
　清春が『それ以上、言わなくてもわかるだろ』と言いたげな様子で、きゃり子の肩を抱き寄せた。
　しかし、きゃり子は不満げ。
　イラついた様子で、清春に肘鉄を食らわせ、デスクトップＰＣ（９８）を突き返した。
「ワイ、ワイ、ワイヤレスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ！」
　それと同時に、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、マウスポインタ風のビームが放たれた。
「あっ、目はやめろ。てめ……チカチカしてイラッとすんだよ！」
　その影響で清春が目を閉じ、バランスを崩してフラついた。
「見ちゃダメ、絶対ってやつデスネ。これは……妄想が掻き立てられマス」
　モヱがパソコン×ワイヤレスマウスの妄想を膨らませつつ、ライトニングウォールで雷の壁を構築した。
　何やら脳内でハードなプレイが繰り広げられているため、色々な意味で見ちゃダメ絶対な状態になっていた。
「……確かに、この光は目に良くないね」
　ディミックも危機感を覚えつつ、俤偲ぶ蛍石（リメンバリング・フローライト）を発動させた。
「マウ、マウ、マウ……」
　その間にダモクレスが距離を縮め、マウスっぽいアームを振り回した。
「見た目プラスチックっぽい物同士の戦いデス。これは負けられマセン、期待しておりマス」
　その事に気づいたモヱが期待の眼差しを送りつつ、ミミックの収納ケースに声を掛けた。
「……！」
　それに合わせて、収納ケースがガブリングを仕掛け、マウスっぽいアームを噛み千切った。
「……リオン、出番よ」
　キリクライシャも何やら察した様子で、バーミリオンに視線を送った。
「……！」
　そんな空気を察したバーミリオンが、凶器攻撃でダモクレスを殴って、殴って、殴りまくった。
「……おらっ、これでコード付きだぜ！」
　続いて、清春が我が望みを繋げ鎖（クサリ）を使い、ケルベロスチェインを操って、ダモクレスの動きを封じ込めた。
「マウ、マウ、マウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ！」
　そのため、ダモクレスは旧型のマウスの如くケルベロスチェインに繋がれ、自由に動き回る事が出来なくなった。
「……まるで猛犬だねえ。それだけストレスが溜まっていたのかも知れないけど……」
　ディミックが間合いを取りつつ、アイスエイジインパクトを放った。
「……役目を全うできなかった無念はあるかもしれないけれど、余計なパーツが多過ぎよね。……いらないわ、特に此処とか……」
　キリクライシャがスターゲイザーを仕掛け、流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りを炸裂させ、ダモクレスのパーツを弾き飛ばして機動力を奪った。
「ワイ、ワイ、ワイヤレスゥゥゥゥゥゥゥゥ！」
　その途端、ダモクレスが怒り狂った様子で、マウスミサイルをぶっ放した。
　次の瞬間、在庫処分の如く勢いで、大量のワイヤレスマウスが雨の如く降り注いだ。
「そもそも、なんでマウスがこんなにいっぱいあるんだ！？　一個あれば十分だろう！？　いったい、どういうコンセプトのマウスだったんだ、これ！？」
　コクマが色々と考えを巡らせながら、大量のワイヤレスマウスから逃げた。
　その後を追うようにして、アスファルトの地面に落下したワイヤレスマウスが次々と爆発を起こした。
「電池抜きゃぁ問題解決とはならねーけどよ。大事なもんを入れとく場所は変わんねえだろ！」
　その隙をつくようにして、清春が投げバールを仕掛け、元々マウスの電池が入っていた場所に、エクスカリバールをブン投げた。
「マウ、マウ、マウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ！」
　その一撃を喰らったダモクレスが、ブスブスと真っ黒な煙を上げた。
「……やはり、このマウスは色々と問題がありそうだな」
　コクマがＰＣＰファイズ（ペンギンロボコンバットパターンファイズ）を発動させ、自作した五体のペンギンロボを召喚した。
　それと同時に、ペン五郎とペン四郎が銃撃でダモクレスの動きを封じ込め、ペン三郎とペン次郎が左右から回り込むようにして電磁ワイヤーを絡めると、そのまま電撃と共にミサイルによる集中砲火を浴びせ、リーダーの角付ペンギンロボが電磁ランスで突撃した。
　それに合わせて、残りの四体がダモクレスに突撃すると、大爆発を起こして弾け飛んだ。
「でも、このまま放っておくのは勿体ないよねぇ。中身の機構を入れ替えれば、まだ商品になりそうだし……。どこかのメーカーで、再生する事が出来ないか、相談だけでもしてみようか」
　そんな中、ディミックが複雑な気持ちになりながら、廃墟と化したジャンクショップを眺めた。
　廃墟と化したジャンクショップは壁が壊れ、大量のダンボールから、ワイヤレスマウスが転がり落ちていた。
「とりあえず……、残骸の一つを拾って作り直すとしようか」
　そう言ってコクマが足元に転がっていたワイヤレスマウスを拾い上げた。
　その後ろで、いつの間にか再生したペンギンロボ達が、格好よくポーズを決めていた。

作者：ゆうきつかさ	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2020年4月12日 難度：普通 参加：5人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 2／キャラが大事にされていた 0
あなたが購入した「複数ピンナップ（複数バトルピンナップ）」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。