サメ、サメ、シャーク、トルネード!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
 廃墟と化した玩具屋に、鮫の玩具が転がっていた。
 この玩具は、とある映画に登場していた鮫のモンスターで、天候を操りながら、上空から飛来し、人々を襲う危険な存在であった。
 それ故に、鮫の姿をしていながら、モンスターとして扱われており、マニアの間では有名な作品であったようである。
 ただし、一般的には受けておらず、『そもそも、鮫は飛ばない』、『天候を操る時点でナンセナス』、『主人公がチェーンソーで、鮫を切り刻む姿がグロ過ぎ』などと評価されていた。
 だが、『利き腕にチェーンソーを移植された主人公が、時空を超えて鮫と戦う姿が爽快!』だった事もあり、少なからず商品化されたモノもあったようだ。
 そのうちのひとつが鮫の玩具であったのだが、実際にはまったく売れず、廃墟と化した玩具に放置され、埃を被る事となった。
 その場所に蜘蛛のような姿をした小型ダモクレスが現れ、鮫の玩具の中に入り込んだ。
 それと同時に、機械的なヒールによって鮫の玩具が作り変えられ、家電製品っぽい雰囲気のダモクレスに変化した。
「サメ、サメ、トルネェェェェェェェェェェェェェド!」
 次の瞬間、ダモクレスが奇妙な鳴き声を響かせ、廃墟と化した玩具屋の壁を突き破り、グラビティ・チェインを奪うため、街に繰り出すのであった。

●セリカからの依頼
「ディミック・イルヴァ(グランドロンのブラックウィザード・e85736)が危惧していた通り、都内某所にある廃墟と化した玩具屋で、ダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティ・チェインを奪われてしまう事でしょう。そうなってしまう前に、何としてもダモクレスを撃破してください」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ダモクレスが現れたのは、廃墟と化した玩具屋。
 この場所に放置されていた鮫の玩具が、ダモクレスと化したようである。
「ダモクレスと化したのは、鮫の玩具です。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティ・チェインが奪われる事になるでしょう」
 そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
 資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
 ダモクレスは鮫のような姿をしているものの、竜巻型の脚を回転させる事によって、何となく飛んでいる感じになっているようだ。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
キリクライシャ・セサンゴート(林檎割人形・e20513)
小柳・玲央(剣扇・e26293)
山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)
ディミック・イルヴァ(グランドロンのブラックウィザード・e85736)

■リプレイ

●都内某所
「ツッコミどころしかない映画ってのも珍しいけど、そういうの専門に好きな人もいるらしね。この映画も、売れ行きに関係なく、何作も作られたようだし、好きな人が多かったんだろうね」
 山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)は仲間達と共に、廃墟と化した玩具屋にやってきた。
 この玩具屋はキワモノ映画のグッズばかり取り扱っていたらしく、マニアにとっては聖地として知られた場所だった。
 しかし、それが売り上げにはつながらず、廃業と化してしまったようである。
 そのためか、玩具屋のショーウインドには、キワモノの玩具ばかりが飾られており、素人さんお断りと言った感じの雰囲気が漂っていた。
 それが原因で、何やら近寄り難い雰囲気が漂っており、近隣住民でさえ近づく事がないほどだった。
 そんな中、小柳・玲央(剣扇・e26293)がアイズフォンで資料の地図を確認しながら、拡声器を使って一般人達の避難誘導をし始めた。
 その場にいた一般人達の数は少なかったものの、避難誘導を無視する者はおらず、みんな指示に従って慌てず騒がず移動している様子であった。
「この手の映画は興行収入では売れても、グッズまではよほどの物好き中の物好きにしか売れないからねぇ……。商売というものはままならぬものだ」
 ディミック・イルヴァ(グランドロンのブラックウィザード・e85736)が、何やら察した様子で答えを返した。
 それでも、マニアの期待に応えるようにして、店側が他では扱っていないようなグッズを販売していたため、ネットではプレミア価格の商品がチラホラあった。
「でも、私は結構荒唐無稽なのって好きだよー。だって、フィクションなんだから、あり得ないことてんこ盛りの方がお得じゃん?」
 ことほがショーウインド越しに、飾られている玩具を眺め、あれこれと妄想を膨らませた。
 もしかすると、ここに通っていたマニア達も、ショーウインド越しに玩具を眺め、あれこれと妄想を膨らませていたのかも知れない。
 そのため、玩具が盗まれる事なく、ショーウインドに展示されたままになっている可能性が高かった。
「サメ、サメ、シャアアアアアアアアアアアアアアアクゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 それと同時に、ダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、ケルベロス達の前に現れた。
 ダモクレスは竜巻に乗った鮫のような姿をしており、竜巻部分を回転されながら、アスファルトの地面を削って、ケルベロス達に迫ってきた。
「……空を泳ぐ鮫、とでも言えばいいのかしら。……足払いが効かなさそう、というのは厄介よね」
 キリクライシャ・セサンゴート(林檎割人形・e20513)が危機感を覚えながら、ダモクレスをジロリと睨みつけた。
 幸い、事前にキープアウトテープを展開していたため、まわりに人影がないものの、ここで足止めする事が出来なければ、無関係な人々を巻き込む事になるだろう。
 それが分かっているためか、ケルベロス達は、ピリピリムード。
 みんなダモクレスを逃がすまいと、必死になっていた。
「それでも、まわりに人がいないだけ、映画と同じ展開にはならないと思うけどね」
 ディミックが少しずつ間合いを取りながら、攻撃を仕掛けるタイミングを窺った。
 その間もダモクレスは耳障りな機械音を響かせ、今にも飛び掛かってきそうな勢いで、アスファルトの地面をガリガリと削っていた。
「誰かを犠牲にするような子は、ここで止めさせてもらわないとね」
 それに合わせて、玲央がダモクレスの注意を引くようにして、素早く間合いを取るのであった。

●ダモクレス
「サメ、サメシャアクゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 次の瞬間、ダモクレスがケモノにも似た機械音を響かせ、シャークビームを放ってきた。
 それは雷と嵐が混ざった強力なビーム。
 フスファルトの地面をガリガリと削りながら、次第に大きくなっていき、ケルベロスを飲み込む勢いで迫ってきた。
「……血しぶきの舞う怖さがサメ映画の魅力であったと思うが、ダモクレス化してしまうとその怖さも薄れるねぇ。さらに、相手が私だと別のジャンルのようだ。それはそれで新しいサメ分野の開拓に……なるのかな……?」
 すぐさま、ディミックがダモクレスの攻撃を見切り、ギリギリのところでシャークビームを避けた。
 それと同時に、ジャークビームがビルの壁にぶつかり、照明器具やパソコンなどを巻き込むながら、部屋の中を滅茶苦茶にして消え去った。
「……何と言うか、滑稽ね。……そもそも、鮫が地上で暴れまわっている時点で、有り得ない事だけど……」
 それに合わせて、キリクライシャが陽光の珠(スベテヲテラス)を発動させ、太陽の光が持つ浄化の力を利用し、抽出した浄化の力を光の珠へと変換して、ディミックに飛ばした。
 ディミックのダメージは軽微であったものの、キリクライシャのおかげで、完全回復ッ!
 そのおかげで、ダモクレスが攻撃するよりも速く、間合いを取る事が出来た。
「私は今でこそ人だけど……それが人の怖がる鮫だろうと、機械なら怖くはないんだよ?」
 次の瞬間、玲央が炎祭・彩音煙舞(マスクレタ)を発動させ、地獄の炎で作り上げた青の爆竹を鳴らした。
「シャアアアアアアアアアアアアアク……」
 その影響でダモクレスが青の爆竹の鮮やかな火花と音に見惚れ、ほんの少しだけ動きを止めた。
「……回転が止れば、鳴き声も変わるのかしらね。……どんな悲鳴をあげるのかしら」
 その隙をつくようにして、キリクライシャが轟竜砲を仕掛け、ハンマーを砲撃形態に変形させ、竜砲弾でダモクレスを攻撃した。
「シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアクゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 その攻撃を喰らったダモクレスが、ブスブスと煙を上げながら、竜巻の部分を不規則に回転させた。
 それはまるで悲鳴のようでもあったが、ダモクレスは怯む事なく、フカヒレチックなアームを振り回し、ケルベロス達に迫ってきた。
「えっ? 何あれ? ちょっと……美味しそう?」
 それを目の当たりにしたことほが不謹慎な事を考えつつ、フカヒレチックなアームを避けるようにして飛び退いた。
「……でも、煮ても焼いても食べられないのが残念だね? まあ、私は焼くけれども♪」
 玲央がブレイズクラッシュを発動させ、両腕の地獄から青い炎を分ける形で展開するようにして纏わせ、フカヒレチックなアームをへし折った。
 その拍子にフカヒレチックなアームが千切れて、クルクルと舞うようにして宙を舞い、アスファルトの地面に墓標の如く突き刺さった。
「……どうしたの、リオン? ……何やら不満げのようだけど……。……ひょっとして、作り物の鮫だから、捌けない事がストレスなの? ……でもあなた、パティシエじゃなかったかしら?」
 そんな中、キリクライシャがテレビウムのバーミリオンにツッコミを入れた。
「……」
 その途端、バーミリオンが無言のまま、気まずい様子で視線を逸らした。
「このチェーンソー剣って、今まであんまり使ったことのなかった武器だけど……。今回の戦いで、使ってみてわかった事がある。これ……殴った方が早いね!」
 ことほがチェーンソー剣を放り投げ、気持ちを切り替えて、拳をブンブンと振る回した。
 ライドキャリバーの藍も、何やらヤル気満々。
 『何かあったら、自分が盾になる!』と言わんばかりに、ことほをガッチリとガードしている感じであった。
「サメ、サメ、シャアアアアアアアアアアアアアク!」
 それと同時にダモクレスが耳障りな機械音を響かせ、シャークミサイルらを放って、大量の鮫を雨の如く降らせてきた。
 その鮫が何処から現れたのか、全く分からなかったものの、その光景は、まさに世紀末ッ!
 この世のすべてを絶望に叩き落とす勢いで、大量の鮫が空から降ってきた。
「ねぇ、藍ちゃん。タイヤの動きとかチェーンソーっぽくできない? なんか特攻しそうな気がするから! 根拠はないけど……がんばって!」
 その事に気づいたことほが、藍に期待の眼差しを送り、拳をギュッと握り締めた。
「……!」
 これには、藍も二度見。
 その雰囲気から何となく、ことほをガン見(?)しているような感じであった。
 だが、この状況で拒否権は……ない!
 ことほが瞳をキラキラと輝かせ、『藍ちゃんなら、出来る……! 絶対に出来る!』と言わんばかりに、無意識のうちに無言の圧力をかけているため、拒否する事が出来なかった。
「……!」
 そのため、半ばヤケになりつつ、大量の鮫に体当たりを食らわせ、強烈なスピンで力任せに弾き返した。
「シャ、シャ、シャアクゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 その鮫を喰らったダモクレスが、動揺した様子でフカヒレチックなアームを振り回した。
 しかし、フカヒレチックなアームが壊れていたため、鮫の身体に突き刺さり、大量の血が噴水の如く噴き出した。
「サ、サメ、サメ、シャアアアアアアククククククククククククク!」
 その影響でダモクレスが、さらに混乱した様子で、手当たり次第にシャークビームを放ってきた。
「随分と活きがいいようだけど、そろそろ大人しくなってもらわないとね」
 それよりも速く玲央がダモクレスの資格に回り込み、鉄塊剣を扇に見立て、舞い踊るようにして竜巻部分を斬りつけた。
「シャ、シャ、シャアアアアアアアアアアアアアク!」
 次の瞬間、ダモクレスの竜巻部分から、真っ黒な煙が上がり、大爆発を起こして、機能を停止させた。
「……やっぱり、鮫は海に現れるべきよね」
 キリクライシャがダモクレスに視線を送り、深い溜息をもらした。
 ダモクレスはアングリと口を上げ、鋭い牙を剥き出しにしていたものの、二度と動く事はなかった。
「急ぎの任務だったし意外と続編出てたから予習する余裕はなかったけど、せっかくだから、このダモクレスの元になった鮫映画を観てみようかな」
 ことほがホッとした様子で、ダモクレスに視線を落とした。
 かなりマニア受けして、続編が出ていたようなので、とりあえず一作目から……。
「それなら、上映会でもしようかね。こんな事もあろうかと、ビデオを借りておいたから……」
 そう言ってディミックが周囲をヒールした後、仲間達を誘うのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年4月11日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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