箱入り娘の様な女性が至高である!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
「俺は常々思うんだ! 箱入り娘の様な女性が至高である、と! だって、そうだろ! 世の中に溢れる女は、揃いも揃って、ビッチばかり! だが、箱入り娘は違う! 家族に大事にされ、何の穢れも知らずに育っている! だからこそ、俺達が奪う価値がある! そして、その資格が俺達にはある!」
 ビルシャナが廃屋に信者達を集め、自らの教義を語っていた。
 廃屋の横は、とある金持ちの屋敷があり、そこに住んでいる箱入り娘を攫うため、何やら如何わしい計画を練っているようだった。

●セリカからの依頼
「ルピナス・ミラ(黒星と闇花・e07184)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ビルシャナが確認されたのは、都内某所にある廃屋。
 ここでビルシャナ達はイケない妄想を膨らませているらしく、このまま放っておくと隣の屋敷に忍び込んで、自らの欲望を満たしてしまうようである。
「今回の目的は、悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事です。ただし、ビルシャナ化した人間は、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やしています。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまうため、注意をしておきましょう。ここでビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
 セリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていく。
 信者達はビルシャナに洗脳されており、箱入り娘を襲う事しか頭にないようだ。
 そのぶん他の女性に誘惑されると、洗脳が解けやすくなるため、説得する事は難しくないだろう。
「また信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。とにかく、ビルシャナを倒せば問題が無いので、皆さんよろしくお願いします」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ビルシャナの退治を依頼するのであった。


参加者
コクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813)
ルピナス・ミラ(黒星と闇花・e07184)
田津原・マリア(ドクターよ真摯を抱け・e40514)
ディミック・イルヴァ(グランドロンのブラックウィザード・e85736)
四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)
 

■リプレイ

●都内某所
「……恋愛観は人それぞれだから、本来はとやかく言うものではないのだが、このご時世に同意を得ないのはあまりに時代錯誤だねぇ」
 ディミック・イルヴァ(グランドロンのブラックウィザード・e85736)は複雑な気持ちになりながら、ビルシャナが拠点にしている廃屋にやってきた。
 ビルシャナは金持ちの屋敷に住む箱入れ娘を誘拐しようとしているらしく、信者達と一緒に廃屋でイケない妄想を膨らませているようだ。
「……箱入り娘ですか。わたくしも大事に育てられてはいましたけど、箱入り娘と言う程では無かったですね」
 ルピナス・ミラ(黒星と闇花・e07184)が、何処か遠くを見つめた。
 それでも、大切の育てられた事は間違いないため、ビルシャナがやろうとしている事の異常性だけは理解する事が出来た。
「現在の日本に、その様な女性がいるとは、にわかには信じがたいけどね」
 四季城・司(怜悧なる微笑み・e85764)が、廃屋の横にある屋敷を眺めた。
 この屋敷に住む金持ちが、どんな性格なのか、事前に配られた資料には書かれていなかったものの、娘を可愛がっている事だけは間違いなかった。
 それ故に、ビルシャナ達が狙っており、自らの欲望を満たすため、ヤル気満々になっている様子であった。
「ああー……ワシも遥か昔そんな娘に恋をして、夫婦になろうと尽くし、最終的に攫おうとした事もあったが、父親にとてつもなくひどい目に遭わされたなあ」
 コクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813)が昔の事を思い出し、激しく拳を震わせた。
 そういった意味でも、父親の事は許せない。
 許す事が出来ない、絶対に……!
「うちも勉強や修行ばっかりにかまけて恋愛絡んだお付き合いをせえへんできてしもうた口ですから、箱入り娘と言われるお嬢さん方には、ちょっと共感が湧きます。やからこそ、そういった人達を食いもんにしようちゅうビルシャナ達は許せません! 不埒な考えを叩き出すだけ叩き出して、諸悪の根源しばきます!」
 田津原・マリア(ドクターよ真摯を抱け・e40514)が、拳をギュッと握り締めた。
 おそらく、このまま放っておけば、ビルシャナ達が自らの欲望を満たすため、金持ちの屋敷に行く事は確実。
 例え、そこにどんなに障害があろうとも、それを乗り越えて、自らの思いを遂げる事だろう。
「まぁ、人々に危害が加わらない様に、ビルシャナを倒してしまおう」
 そう言って司が仲間達を連れて、廃屋に足を踏み入れた。

●廃屋内
「いいか、お前ら! ここまで来た以上、迷いは捨てろ! とにかく、さらう! その事だけを考えろ! それ以外の事を考えたところで、邪魔になるだけ。むしろ、作戦に支障が出るだけだ。そんな事をしたところで無意味。ハッキリ言って意味がない! だから何も考えるな! ただ前を見て、突き進む事だけ考えるんだ!」
 廃屋の中にはビルシャナがおり、信者達を前にして、自らの教義を語っている最中だった。
 そのためか、ビルシャナ達は、ヤル気満々。
 隣の家を襲撃するため、釘バットや鉄パイプを握り締め、今にも廃屋から飛び出しそうな勢いになっていた。
「とりあえず貴様らに聞きたい。貴様らは箱入りの娘をどうしたいのだ? エッチな事をしたいのか、それとも嫁にしたいのか?」
 そんな中、コクマがキリリとした表情を浮かべ、ビルシャナ達に問いかけた。
 見る限り、ビルシャナ達の身体は、筋肉質。
 そう言った意味で、無理矢理さらう気でいるような感じであった。
「もちろん、その両方だ!」
 筋骨隆々の男性信者が、自信満々な様子で答えを返した。
 頭の中でヤル事しか考えていないのか、ゲスな笑みを浮かべていた。
「……ようは好みだから襲いたいという話だろう? ……うむ、わかるぞ」
 コクマが何やら察した様子で、ビルシャナ達に視線を送った。
「……だろ?」
 ビルシャナが、とてもイイ笑顔を浮かべた。
 既に、ふたりの間に友情が芽生えているのか、その場でガッチリと握手!
「……とはいえ、何も知らぬ令嬢に被害を及ぼすのは望むところではない」
 その手を握り潰す勢いで、コクマが険しい表情を浮かべた。
「なん……だと!? まさか、俺達にケンカを売っているのか……!」
 その態度に難色を示したビルシャナが、ムッとした様子でコクマを睨み返した。
「そもそも、箱入り娘を奪って得るという時点で、最早箱入り娘ではあるまい。しかも、逃げるため、真っ当に生き延びるため、見知らぬ君たちに抵抗するだろう。仮に、なんやかんやで運よく奪うことに成功したとしても、付き合いを続けるうちに君たちに合わせて、強かに変わってしまうのではないかね? 何せ、それまでの生活とは資産が全く違うのだからねぇ。節約生活やヘタレ旦那の世話でオバチャン化するのが目に見えているよ」
 ディミックが何かを悟った様子で、キッパリと断言をした。
「えっ? マシか? いやいや、そんな事はないだろ。だって……」
 ビルシャナが激しく動揺した様子で、言い訳をしようとした。
「……そこまでです!」
 すぐさま、マリアが割り込みウォイスを使い、ビルシャナの言葉を遮った。
「皆さんは箱入り娘と称されるお嬢さんと恋愛関係を結びたいんですよね? それならその人の欠点とも一生付き合う覚悟があらへんとは言わせませんよ。高すぎる環境故の世間との致命的なズレ! 金銭の桁にゼロが5以上着くのは当たり前の金銭感覚! 教養豊かすぎて平凡な世間と話が絶望的に合わない! メイドさん任せの家事能力は低いどころかゼロ! そないな欠点と向き合い暮らす覚悟はありますか? 懐に入れたら最期までが甲斐性やろ?! 責任取る覚悟があらへんなら手出すなや!!」
 マリアが捲し立てるようにして、ビルシャナ達に問いかけた。
「それは、まあ……そうかも知れないが……」
 これにはビルシャナも動揺した様子で、激しく目を泳がせた。
「しかも、箱入り娘は男性と話した事とかほとんどないですから、箱入り娘と話していても退屈するだけですよ。それよりも、わたくしとお話しませんか? わたくしなら、男性の方々とも話し慣れていますから、話していても退屈させない自信はありますよ」
 そんな空気を察したルピナスが、含みのある笑みを浮かべた。
「もしくは、私とか……どうかな? 箱入り娘は、世間から隔絶されて育ったから、世間知らずな面もあるよ。その分、私みたいに自由に生きて来た人は、男性を喜ばせる術とかも知っているし……」
 司も女性用の黒色ロングヘアのカツラを被って、声色を変えて女性っぽい声を出しつつ、ビルシャナ達にニッコリと微笑んだ。
「つーか、なんで俺達が我慢する必要があるんだ!? だって、そうだろ! 別に箱入り娘だけが女って訳じゃねーだろ! それに、箱入り娘にこだわっているのは、この鳥だけだ!」
 その途端、チャラい感じの男性信者が、まわりにいた信者達を煽り始めた。
 最初は、チャラい男性信者の言葉に違和感を覚えていた信者達も、だんだん冷静になってきたのか、ビルシャナを二度見した後、ケルベロス達の所に駆け寄った。

●ビルシャナ
「な、何故だ! 何故、裏切る……! まさか、洗脳が……。いや、そんな事は、どうでもいい! こうなったら、お前ら纏めて、ぶっ殺す!」
 それを目の当たりにしたビルシャナが、殺気立った様子でビームを放ってきた。
 そのビームは超強力そうに見えたものの、相手をロングヘアにして、何となく箱入り娘っぽい感じにする力しかなかった。
「さぁ、貴方のトラウマを見せてあげますよ!」
 即座にルピナスが惨劇の鏡像を発動させ、ナイフの刀身にビルシャナが忘れたいと思っているトラウマを映し、それを具現化させた。
 それは廃屋を埋め尽くすほど、大量のビッチ達。
「く、来るなァ!」
 その途端、ビルシャナが小動物のような表情を浮かべ、部屋の隅でガタブルと震え始めた。
 だが、具現化されたビッチ達は、まったく気にしておらず、ビルシャナに代わる代わる跨って、何やらイケない事をし始めた。
 そのせいで、ビルシャナが何やら悲鳴を上げたものの、ビッチ達が気にする様子は全くなかった。
「何だか大変な事になって異様だけど、念のためみんなを護っておくね。ビルシャナが半ばヤケになって、襲い掛かってきても困るだろうし……」
 その間に、司がエナジープロテクションを発動させ、エネルギーで盾を形成した。
「うぐぐ……よくも……よくも……やったなあああああああああああ!」
 それと同時に、ビルシャナがズタボロになりながら立ち上がり、逆ギレした様子で再び超絶強力なビームを放ってきた。
「すこし頭を冷やしましょうか?」
 そのビームを喰らったマリアが、大和撫子感マシマシで、フロストレーザーを放って、ビルシャナの熱を奪い取った。
「うぐぐ……まだだ! まだ終わっちゃいない……!」
 それでも、ビルシャナは諦める事なく、ケルベロス達に対して、催眠光線を放ってきた。
「……愚かな。そんなモノが効くほど、やわではない!」
 次の瞬間、コクマが月薙ぎ(ハティノジュウリン)を仕掛け、鉄塊剣の刀身に青白い水晶の刃を纏わせ、剣を巨大化させると、そのままビルシャナに突撃して、真横に薙ぎ払った。
「うぐ……ぐおっ!」
 その一撃を喰らったビルシャナが血反吐を吐き、後ろの壁と一緒に崩れ落ちるようにして、血溜まりの中に沈んでいった。
「高嶺の花に近づくためには、それなりの努力をしておくべきだったね。それを怠って、力で解決しようとした時点で、本来なら気づくべきだったと思うけど……」
 ディミックがどこか寂しそうにしながら、ビルシャナの死体を見下ろした。
 ビルシャナは、とても不満げな表情を浮かべて、絶命していたものの、それも自業自得であった。
「それでも、魅惑的な女に惹かれるのは常であろう。だが……、どのような形であれ相手を型にはめるのはよくないのかも知れないな」
 そう言ってコクマが物思いに耽ながら、何処か遠くを見つめるのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年4月10日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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