第八王子強襲戦~撤退セヨ

作者:遠藤にんし


 贅を尽くした宮殿のバルコニーに立つホーフンド王子。
 視線を下げた先には軍勢――ホーフンド軍に加え、レリとヘルヴォールの残党軍もいることから、集まった人々はかなりの人数に上ることだろう。
「……」
 ホーフンドの後ろ、秘書官のユウフラは不安げにホーフンドを見つめ。
「……♪」
 ホーフンドの後ろ、娘のアンガンチュールはうきうきと笑みを浮かべている。
「――みんな」
 そんな中で、ホーフンドは口を開く。
「僕の大切なヘルヴォールを殺したケルベロスを倒しに行くよ!」
 小さい声でも、軍勢には届く。
 ヘルヴォール配下の熱狂的な声に、残党軍らのおざなりな声が続いた――。

「集まってくれてありがとう」
 高田・冴は挨拶もそこそこに、状況の説明に入る。
「死神の死翼騎士団との接触によって得られた『ブレイザブリク周辺のエインヘリアルの迎撃状況』に関する巻物を検証したところ、エインヘリアルの陣容におかしなところがあったんだ」
 迎撃ポイントやタイミングには、明らかに不自然な穴があったのだ。
「……もちろん、死神の欺瞞情報である、という可能性もあったんだけどね」
 しかし、副島・二郎(不屈の破片・e56537)をはじめとする焦土地帯の情報を探っていたケルベロスたちがもたらした情報によって、新たな情報が判明したのだ。
「焦土地帯のエインヘリアルの動きは、『大軍勢の受け入れの為の配置展開』によるものだったんだ」

 之武良・しおんの調査と冴の予知によって、指揮官が第八王子・ホーフンドであることが判明した。
「彼は、大阪城のグランドロン城塞でレリ王女と共に撃ち倒した、三連斬のヘルヴォールの夫だ」
 報復を目的として出陣した――ということだろう。

「ホーフンド王子の軍勢には、レリとヘルヴォールの残党も加わっている」
 彼らの戦力は高い。
 もし彼らがブレイザブリクに合流することがあれば、攻略は難しくなってしまうだろう。
「ヘルヴォールの復讐のために、東京都民の大虐殺が起こる可能性も高い。ブレイザブリクへの合流は、絶対に阻止しなければいけないんだ」

 そのための作戦は――合流前のホーフンド王子の軍勢を奇襲する、強襲作戦。
「君乃・眸さんの作戦に従って、作戦を実行しよう」

 ホーフンド王子の軍勢は、レリ配下・ヘルヴォール配下の残党軍が前衛につく。
「急造の前衛軍だから、前衛と本隊はうまく連携が取れないはずだ」
 ホーフンド王子は敵討ちのために出陣するが、王子を想う配下たちは、地球への侵攻に消極的な者が多いようだ。
「元々、ホーフンド王子も好戦的なタイプではないからね。本隊に危機があれば、撤退の選択を取るだろう」
 臆病とも取れるほど消極的なホーフンド王子の性格を利用する必要があるだろう。

「戦力の配分は、実際に現場に行く君たちに任せるよ」
 前衛部隊は旧レリ軍の氷月のハティ、炎日騎士スコル率いる、白百合騎士団一般兵たち。
 ほかに、旧ヘルヴォール軍のエインヘリアルとシャイターンたちがいる。

「本隊左翼は、ホーフンド斥候隊と攻撃隊……そして、秘書官ユウフラがいる」
 指揮能力・戦闘力のいずれもが優れたユウフラと戦うのなら、覚悟が必要だろう。
 ユウフラは、ホーフンド王子を前線に立たせたくないと考えているようだ。
「もしもホーフンド王子の本隊が攻撃されたと知ったら、残党軍も放り捨てて全力で撤退をするだろうね」
 撃破すればホーフンド王子軍を大きく弱体化させられるが、ホーフンド王子軍がブレイザブリクに合流、サフィール王子軍が強化されてしまうだろう。
「一長一短というところだから、決断はみんなに任せるよ」
 そう微笑んで、冴は続ける。

「最後に、本体中央のホーフンド王子についてだ」
 見た目は幼さがあり、臆病さも持つ王子だが、戦力を考えると、今回は討ち取ることは不可能に近い。
「今回はまず、撤退に専念してほしいんだ」

 そこまでひと息に説明してから、冴はケルベロスたちを見つめる。
「複雑で決めることも多く、みんなには大変な思いをさせてしまうが……どうか、力を貸してほしいんだ」


参加者
喜屋武・波琉那(蜂淫魔の歌姫・e00313)
相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)
リューデ・ロストワード(鷽憑き・e06168)
ルベウス・アルマンド(紅い宝石の魔術師・e27820)
美津羽・光流(水妖・e29827)
瑠璃堂・寧々花(甲冑乙女・e44607)

■リプレイ


「そこだな」
 リューデ・ロストワード(鷽憑き・e06168)は呟き、金の視線を前に向ける。
 旧レリ軍の撃破を目指し、右手側より進軍していたケルベロスたち。
 果たして前方には旧レリ軍の軍勢が見えてきた。既に交戦している者がいるのだろう、戦場の熱気がここまで伝わってくるようだった。
「さて、相手は大軍勢……どこまでやれるかしら、ね……」
 呪銭『混世魔王』を手にするルベウス・アルマンド(紅い宝石の魔術師・e27820)は、静かに戦いへの備えを固め。
 瑠璃堂・寧々花(甲冑乙女・e44607)は周囲を見回して、警戒を怠らない。
「ふ、伏兵は……いない、みたいです……」
「急いで向かうとするか!」
 相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)の言葉にうなずく美津羽・光流(水妖・e29827)は、身を低くして接近し、近づかれないように用心。
「片っ端から倒せば良えねんな?」
「そうだね、一般兵達を抑えよう」
 返答する喜屋武・波琉那(蜂淫魔の歌姫・e00313)は、頭の中で今回の作戦内容を今一度思い返す。

 別方向から、旧レリ軍へ突入する仲間たちもいる。
 指揮官の突破を狙う仲間のために、一般兵を誘導・足止めし、殲滅することが、ここに集まったケルベロスたちの狙いなのだ。

 敵の間近にまで迫っている――全員で目を合わせ、うなずき合ってから、泰地は素足で地を蹴った。
「行くぞっ!」
 グラビティの力を乗せた泰地の拳が旧レリ軍の一人に叩きつけられる破裂音を合図に、リューデの背中からオウガ粒子の煌めきが散る。
 煌めきに交じるは桜吹雪。
「リューデ先輩、助かるで!」
 桜吹雪の中心に立つ光流は手にした夜絃刀を振り上げ、最も近くにいた者どもを斬り伏せる。
 煌めきを浴びての斬撃に、旧レリ軍どもがひるんだように立ち止まり、守りを固めてケルベロスたちと対峙。
 防御の大勢を取る旧レリ軍の一人へと、波琉那はゲシュタルドグレイブを手にして突撃。
「やっちゃうよ!」
 勢い任せに突き入れて、防御の姿勢を崩さんとする波琉那。
「この……何しやがる!」
 悪態をつく旧レリ軍の者が反撃を仕掛けるが、
「させないわよ」
 呟くルベウスの足元から湧き起こる光――鎖で作り上げた守護陣によって、その攻撃による裂傷はたちまち塞がる。
「クソがっ!」
 それでもなお果敢に飛び掛かる旧レリ軍の凶刃を、寧々花は掴んで押しとどめる。
 掴んだ刃ごと旧レリ軍を自分へと引き寄せる寧々花。至近にまで顔を寄せると、甲冑の口元は大きく開き。
「――――!」
 迸るブレスが、敵群に迸って辺りを炎の海に変える。
 炎にたたらを踏む旧レリ軍の隙をつくかのようにルベウスは黒鎖を解き放つ。
 放たれた鎖は敵を締め上げようとうねるものの、旧レリ軍は自らの得物で鎖を打ち砕き、隙を作らない。
「厄介ね」
 戦場を取り巻く熱気に赤い髪を揺らし、独りごちるルベウス。
「この身が燃えるまで、彼らの義憤を見届けるとしましょう」
 うなずくリューデの手には黒羽ノ軍配。
 ふわり舞い起こる風に背中を押されて飛び出た波琉那はオウガメタルを拳に纏い、旧レリ軍の一人の顔面を殴りつける。
 ――振り抜いた拳に確かな手応え。
 だが、受け止める旧レリ軍はふらつきもしない……即座に周囲の者が癒やしを送り、二撃目を警戒するかのように飛び退く。
「まったく、やりづらい……!」
 旧レリ軍は踏み込んでくることはなく、ケルベロスたちを警戒しながら守りを固めるばかり。
 攻撃を与えても、ヒールがすぐさま帳消しに。
 ほとんど攻勢に転じることない旧レリ軍たちの動きに苛立ちを覚えながらも、泰地は仲間たちのために癒やしの波動を届け。
「今解き放つぜ癒しのオーラを、はああああああっ!」
 ヒールを受けたケルベロスたちは何度も旧レリ軍へ立ち向かうが、数の多い旧レリ軍は徐々に距離を詰め、こちらを取り囲もうとしている。
「……囲まれる」
 呟きは、リューデのものだ。
 守りを固め続ける旧レリ軍。彼らはこちらへ決して致命的なダメージを与えはせず、ほとんど人員を減らさないまま包囲網を完成させようとしている。
 突破の道筋を求めて一同の視線がさまよう――だが、厚い防御の布陣は、突破を許すまいと立ちはだかる。
「それでも、やるしかないやろ」
 言って、光流は胸の前で波を描く。
「西の果て、サイハテの海に逆巻く波よ。訪れて打て。此は現世と常世を分かつ汀なり」
 空間を裂いた途端、流れ出るのは仄暗い海水。
「この程度――どうということはないぞ、ケルベロス!」
 荒れ狂う冷たい波に襲われながらも、敵は互いに癒しを施し合ってダメージを帳消しにしようとして――、
 その目論見を、迸る炎に遮られる。
「なんや……?」
 突如生まれた熱気に目を細めて、光流は声を上げる。
 無数の木の葉が火焔を宿し、水流と火焔は敵の命を摘み取り、無へ還す。
 光流が業火の元を辿って振り向けば、そこには緑がかった薄灰の髪を持つ娘――アリシスフェイル・ヴェルフェイユの姿。
「……一歩ずつよね、急いても良い結果になるとは思えないもの」
 淡く微笑む彼女に、光流も口元を緩める。
「――そうやな。焦らんで、出来ることをやっていかんとな」
「くそ――そこをどけ!」
 旧レリ軍が、助力に入った彼女を光流もろとも追い払おうと刃を振るう。
「行かせません」
 敵の道行きを阻むのは寧々花。
 デバイスシールドで攻撃を受け止めると、伝わる衝撃に腕部の鎧が弾ける。
「……っ!」
 衝撃に息が詰まった姿を好機と捉えたか、敵兵の視線が一気に集中し。
「そこだ、狙え!」
 甲冑の破壊を受け、更なる攻撃を加えようと寧々花に殺到する旧レリ軍。
 魂の鎧による癒しは間に合わない。しかし、これだけの軍勢から一度に攻撃を受けてしまえば無事ではいられない。
 浴びせかけられた攻撃に、寧々花の身体が宙に浮いては叩きつけられる。
 衝撃で全身の鎧が外れ、ボディスーツを纏った素顔があらわになる――真正面からの刃を前にしても、身構える余裕すらなく、刃は首筋にまで迫り――、
 ――眼前に立ちはだかる男が、凶刃を受け止めるのを見た。
「互いに為すべきことを為そう」
 告げる奏真・一十のかざした腕から、一筋の血が滴る。
「はい……ありがとうございます」
 掛けられた言葉にうなずいて、寧々花は己へと言葉を掛ける。
「この身に消して消えぬ魂の鎧を」
 受けた傷が、痛みが消えていく――自らの魂に鎧を纏い、改めて最前へと立ちはだかる。
 加勢するケルベロスたちが包囲網を切り崩し、旧レリ軍たちは陣形を変えて立て直しを図る。
 包囲が解けたことを確かめたルベウスは、胸元で赤熱する宝石に指を添えて。
「この身が燃えるまで、彼らの義憤を見届けるとしましょう」
 氷結輪を叩きつけ、凍てつく力で敵を阻む。
 狙いすました一撃は敵の胸元に直撃。
 直撃を受けた者は苦しげに息を詰まらせ、不快さを滲ませてルベウスを睨みつける。
 今にも襲い掛かろうとする敵を前にして、リューデは手にしたライトニングダガーで宙を刻む。
 雷霆の壁の護りがあるから寧々花の守りは今まで以上に堅牢。絶え間なく響く調べもまた守護の力に替えて、ケルベロスたちは立ち向かう。

 ――だが。
「何か変やな。戦おうとしてないっちゅうか」
 戦う敵兵の様子に、光流は首を傾げる。
 復讐に燃える兵が多いかと思っていたのに、この辺りにいる兵士たちから強い闘気は感じられない。
「もしかして、逃げようとしてるのかな」
 蜂蜜の黄金酒を掌に、甘い香りで周囲を満たす波琉那も疑いの声を上げた。
 波琉那の見渡す限り、敵は積極的にケルベロスを狙ってはいない……防御と回復に努める彼らは時折目配せし合い、迷いの見える攻撃を仕掛けるばかりだ。
「戦いを避けようとしているのは確かだな」
 波琉那の言葉にうなずく泰地は、敵兵の拳をたやすく押し返す。
 攻めに守りで返されて、ようやく一人に膝をつかせたかと思ったらその者は退いてまた別の者が前に出る。
「数の多さが厄介ね」
 ルベウスは何度目かの黒鎖を放ち、それでも大きな変化の見えない敵陣に溜息を漏らす。
 この状況がいつまで続くのか……打破の道筋が見えない中で戦う彼らの元に、それは突然訪れた。
「っ!?」
 スコル軍の一団が、戦場へと一気に流れ込んできたのだ。
「何が起こっている!?」
「クソ、隊列が滅茶苦茶だ!」
 敵としても予想外のことなのだろう、混乱した声がそこここで上がる。
 ーー混乱を更にかき乱すかのように、荒れ狂うは花嵐。
 美しき花嵐の舞い踊る中、静かな声が響く。
「――お待たせ。これより反撃に移行する」

 直後、款冬・冰の手中より巨大な侘助椿が敵めがけて喰らいつく――眼前に展開される思わぬ助力に、リューデの黒髪のペンタスが花開く。
「助かった」
「ここからは、ボク達も援護するデスよ!」
 シィカ・セィカの明るい声が弾けたかと思えば、烈しい水の奔流が敵を呑み。
 水が引けば視界は開ける。周囲を見渡す泰地は、大地を踏みしめて花びらのオーラを作り出しながら声を上げた。
「今だ、血路を開く!」
「任せとき!」
 即座に刃を手に、光流が敵兵との距離を詰める。
 キソラ・ライゼの作り出した氷嵐の中、梅香を名残のように残して光流は刃を滑らせ、敵の持つナイフと打ち合う。硬質な音が二、三響いたかと思えば敵のナイフは弾け飛び、無防備になったところを斬り伏せる。
 斬撃を浴びた敵が地面に倒れ込むのと同時に、ルベウスは宝石を煌めかせ。
「轍のように芽出生せ……」
 ルベウスの声に呼応して、黄金色の槍を思わせる魔法生物が姿を見せる。
 敵兵はとっさに退却し守りを固めようとするが、魔法生物の前には無駄――執拗なまでに追いすがるソレは、赤い瞳を敵から決して逸らさない。
 切り開かれた道を突き進むソレが突き立てられた敵兵は、最後の力を振り絞って矢を射る。
 迷うことなく飛んできた矢を受け止めるのは、寧々花の役目。
「まだ、負けません」
 長く編んだ黒髪を揺らして、寧々花は敵と対峙する。
 奏でられる歌声は、仲間たちを鼓舞する優しさに満ちて響き渡り。
 ――敵の前に立ちはだかるのは寧々花だけではなく、リューデも。
「覗いてみるか?」
 問いかけと同時に、金の瞳の奥底で地獄の炎が揺らめく。
 見据える視線が敵を侵す――縛り付けられたかのように動きを止めた敵兵たちの脳を、心臓を、あるいは魂を、地獄の炎が食い殺す。
 リューデの炎から辛うじて逃れた者が動き出そうとした瞬間、日本刀を手にした波琉那が刃を掲げる。
「絶対に、先には行かせない!」
 月光を思わせる刀運びで大気が割れ、延長線上にいた敵の胴は両断。
 更に跳ねるように波琉那は別の者との距離を詰め、今度は刺突によって道を切り開く。
 ――そうして波琉那が切り開いた道を塞ぐ敵がいないのは、泰地が敵を押さえ込んでいるから。
 単純な力の押し合いに、泰地の額に血管が浮き、背には汗が滴る。
 それでもここを通すわけにはいかないと抑え込む泰地は、今まさに指揮官の元へ向かおうとする彼らへと声を張り上げる。
「ここは俺達が抑え込む! 今のうちに行ってくれ!」
 開かれた血路を進む者がいる――泰地の体は軋んで悲鳴を上げるが、そこに降り注ぐ薬液が、肉体を見る間に修復する。
「私達も力を貸すわ。連中に思い知らせてあげようじゃない」
 届けられた癒やしでもって泰地は敵へグラビティを叩き込む。
 よろけたところへ、波琉那はすかさず打撃を加えて追撃。
 鳩尾に打撃を受けた敵兵の体が崩れ落ちる――そのまま消滅しかかった彼へと、波琉那は。
「ごめんなさい……私達はまだ未熟だから……こういう方法でしか悪い因縁を絶つことが出来なかった……」
 魂の安寧を祈りながら囁きかけて、それから前を向く波琉那。
 寧々花も果敢にも敵に迫り、バスタードソードによる超重の一撃で敵を弾き返し、仕込まれたカウンターを真正面から受け止める。
 競り合いの中、戦場に響き渡る雷鳴はリューデの元から。
 雷の力を受け止めれば防衛の力はより増し、リューデは雷光を帯びた短剣を携えたまま、油断なく敵を見つめる。
 ケルベロスたちの足元で花開くオーラは泰地によって。
 重なるヒールによって守りは強固、だからこそ攻撃に集中できると、光流は錨を象るペンダントを揺らして螺旋の氷結を解き放つ。
「ハールと言い、レリと言い……損な役回りだわ」
 深紅の翼を広げて、ルベウスは殺戮衝動を持つ魔法生物を喚ぶ。
「でも、ここで止まるわけには行かない。ハールともいずれ……」
 呟きの中、猛る魔法生物は敵兵を貫いた。

 ――そうしてケルベロスたちが倒した敵兵の数が、二十に至った頃だろうか。
「戦線が崩れ始めたわね。撤退を始めたようだわ」
 赤い瞳を細めて、ルベウスは言う。
 ルベウスの言う通り、乱戦状態だった戦場で、敵兵たちは次々に退却しようとしている。
「陣形も崩れています……」
 寧々花もルベウスの言葉にうなずく――指揮官の撃破がもたらした結果だ、と信じるように。
「じゃあ、この後はどうする?」
「まだ終わらへん、追撃やな」
 波琉那の言葉にそう返して、光流は夜絃刀を握る手に力を籠める。
「行くか」
「ああ――行くぞ!」
 泰地の張り上げた声に、リューデは微かに翼を広げ。
 ケルベロスたちは、更なる戦いへと己の身を投じる――――。

作者:遠藤にんし 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年4月14日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
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