第八王子強襲戦~復讐心を撤退させよ

作者:陸野蛍

●我が愛する妻の為に
 武装した多くのエインヘリアル、そしてシャイターンの兵達。
 その視線の先には、まだ成熟さを見せていない、エインヘリアルの第八王子・ホーフンドが彼生来の気弱な雰囲気を抑え、強い意志を瞳に湛えながら立っていた。
 その後ろにはホーフンドの秘書官ユウフラとホーフンドの娘アンガンチュールが、それぞれの心境を表情に覗かせ控えている。
 前者は心配そうに、後者はこれから起こることが楽しみで仕方ないと言った様子だ。
 そして、ホーフンドは、意を決して、一歩前に歩み出る。
「僕の大切なヘルヴォールを殺したケルベロスを倒しに行くよ」
 声こそ小さいが意を決して告げるホーフンドに、彼の亡き妻、ヘルヴォールの配下達から熱狂的な声が上がる……その他幹部配下からは、あくまで儀礼的なおざなりな掛け声しか上がらなかったが。
「待ってて、ヘルヴォール。僕が必ず……」
 心根が強くなくても、愛する妻の為に……ホーフンドは配下を鼓舞するように、得物を頭上へと掲げた。

●第八王子襲来
「みんな! ブレイザブリク及びエインヘリアル勢力に関する重要な作戦を行うことになった。今回の作戦の成功の可否によって、デウスエクスの地球においての勢力図が書き換えられる可能性があるから、しっかりと俺の話を聞いてほしい」
 そう前置きすると、大淀・雄大(太陽の花のヘリオライダー・en0056)は、今回の作戦の説明を始める。
「まず、死神の死翼騎士団との接触によって得られた『ブレイザブリク周辺のエインヘリアルの迎撃状況』に関する巻物を検証した結果、エインヘリアルの陣容に不自然な点が発見された。だから、情報を詳しく分析したんだけど、エインヘリアルの迎撃ポイントや迎撃タイミングに、明らかに不自然な穴があったんだ」
 死翼騎士団との交渉及び戦闘は、ケルベロス達にとって比較的新しい記憶だ。
 その後の作戦にも影響すると、警戒していた者も多い。
「この情報だけなら、死神の欺瞞情報である可能性もあったんだけど、副島・二郎(不屈の破片・e56537)等、焦土地帯の情報を探っていたケルベロス達の情報と組み合わせた結果、焦土地帯のエインヘリアルの動きが、『大軍勢の受け入れの為の配置展開』によるものであると判明し、予知を得る事が出来た。で、その軍勢なんだけど、之武良・しおん(太子流降魔拳士・e41147)の調査と、予知の結果により、大軍勢の指揮官は、エインヘリアル第八王子・ホーフンド王子であることが分かった。ホーフンドは、大阪城のグランドロン城塞でレリ王女と共に撃ち倒した、三連斬のヘルヴォールの夫らしくて、その報復の為に出陣となったらしい」
 ホーフンド王子は、元々『極度のビビリで泣き虫』らしいのだが、妻であるヘルヴォールを殺されたことにより、震える足でも出陣するとのことだ。
「ホーフンド王子の軍勢には、大阪城で撃破した、レリとヘルヴォールの残党も加わっていて、その戦力は高く、彼らがブレイザブリクに合流すれば、その攻略は難しくなるだろうことが予想される。……また、ホーフンド王子は、ヘルヴォールの復讐の為、東京都民の大虐殺なども行いかねない。だから、この王子のブレイザブリクへの合流はなんとしても阻止してほしい」
 ブレイザブリクの戦力増強もさることながら、東京都民の大虐殺……決して起こってはならないことだ。
「そこでだ。君乃・眸(ブリキノ心臓・e22801)の作戦に従い、合流前のホーフンド王子の軍勢を奇襲する、強襲作戦を決行する事になった」
 合流される前に叩く、簡潔に言えばそう言うことだ。
「ホーフンド王子の軍勢は、レリ配下、ヘルヴォール配下だった残党軍を前衛としているから、前衛と本隊との連携がうまく取れていない。また、ホーフンド王子はヘルヴォールの敵討ちの為に出陣するけど、王子を大切に思う配下達は、ホーフンド王子の地球への進行に消極的みたいなんだよな」
 その『大切』が『忠義』なのか『心配』なのかは、分からないのだが。
「で、ホーフンド王子本人もエインヘリアルには珍しく、本来は好戦的な性質では無くて、臆病な程慎重な性格で、ケルベロスの攻撃で本隊に危機が迫れば、狼狽して撤退を決断すると予測される。つまり、戦意は高いが連携が取れていない前衛軍を壊滅させ、前衛軍の援護に向かわざるを得なくなった本隊の動きに対応しつつ、精鋭部隊がホーフンド王子に肉迫する。そこまで出来れば、ホープンド王子の安全を守る為に配下が撤退を進言し、ホーフンド王子も危険を恐れ、撤退を受け入れる事になるはずだ」
 つまり、今回の作戦は、ホープンド王子の撃破を目的としていない。
「『ホーフンド王子がブレイザブリクに到着』する前、撤退が可能な進軍中にビビらせて追い返す。これが本作戦目的となるからな!」
 雄大は強く言うと、次の資料に目を通し、説明を続ける。
「作戦内容を説明していくけど、情報量が多いから、資料にも纏めておく。各自把握をよろしく頼むな」
 言う雄大の横に置いてある机には、今回の作戦司令書が既に用意してある。
「さっきから言っている通り。今回の作戦は、ブレイザブリクに合流しようとするホーフンド王子の軍勢に対し、ブレイザブリクの警戒網の穴をついて、精鋭部隊を浸透させて奇襲する作戦になる。第八王子ホーフンドは、妻であったヘルヴォールの仇討の為に出陣してきたけど、臆病で慎重な性格だから、ケルベロスが本陣を強襲して危険を感じれば、撤退の判断を下すだろうからな」
 それほど慎重な王子が妻の仇を取りに来たのだ、『彼等にも愛はあったのだろうか?』と考えるケルベロスもいる。
「前衛は、グランドロン城塞の戦いで、レリやヘルヴォールの配下として戦っていた部隊の残党だから、士気は高いけど、ホーフンド王子の本隊との連携に隙があるから、各個撃破が可能だな。前衛の右翼はレリ配下で前衛左翼はヘルヴォール配下で構成されている」
 前衛は、ケルベロスに敗れたエインヘリアル達の配下、当然、ケルベロスに対しての復讐心は強い。
「前衛部隊を壊滅させれば、救援の為にホーフンド王子の本隊部隊が駆け付けてこようとするから、この部隊を迎撃して、ホーフンド王子の本隊に合流できないように足止めしてもらう。で、最後に救援の為に手薄になったホーフンド王子の本隊に派手に襲撃をかけ、ホーフンド王子をビビらせて、慌てたホーフンド王子が撤退していけば、作戦成功って訳だ」
 作戦の成功目的こそ単純だが、敵はエインヘリアルの大軍勢、一筋縄でいく作戦とは思えない。
 各ケルべエロス、それぞれのチームの連携が重要になってくるだろう。
「ホーフンド王子の配下には、大阪城にいた戦力が多く含まれてる。大阪城と東京焦土地帯で軍勢の貸し借りが可能って事だと、これから先、かなり面倒な事になるかもしれないな。だからこそ、今回のホーフンド王子の合流は、必ず阻止してほしい。……準備が出来たらへリオンに搭乗、すぐに出発だ! 頼んだぜ、みんな!」
 一度ケルベロス達の顔を見回し声を上げると、雄大はヘリオンへと駆けて行った。


参加者
八千草・保(天心望花・e01190)
伏見・万(万獣の檻・e02075)
シルディ・ガード(平和への祈り・e05020)
小車・ひさぎ(ハッピィクレッシェンド・e05366)
月原・煌介(白砂月閃・e09504)
イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)
マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)
霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973)

■リプレイ

●八王子焦土地帯
 日本の首都東京の喉元に突き刺さった、デウスエクスの前線基地たる八王子焦土地帯。
 その焦土地帯を守護する磨羯宮ブレイザブリクの防衛網を浸透突破したケルベロス達は、アスガルドより派遣された、ホーフンド王子の軍勢を迎え撃つべく、廃墟に身を潜めていた。

「あれは、ヘルヴォールの連斬部隊で間違いなようや」
 廃墟に身を潜め、ホーフンド王子軍の前衛をやり過ごした小車・ひさぎ(ハッピィクレッシェンド・e05366)は、通り過ぎた敵軍の様子にそう嘆息する。
 連斬部隊の残党が、ユグドラシルのゲートを通ってアスガルドに移動し、アスガルドのゲートから八王子焦土地帯へと攻めてくる。
 これが意味するのは、エインヘリアルと攻性植物の連携に他ならない。
 だが、
「復讐のためか、政治のためか……。エインヘリアルはんらにも、色々あるんやなぁ。だけど、ボク達がいる限り、好き勝手はさせん」
 八千草・保(天心望花・e01190)は、ひさぎの危惧を理解しても、ひるむことなく断言した。
 敵がどれだけ強大であろうとも、目の前の敵をひとつづつクリアしていけば、最後に勝利するのはケルベロスになる。
 そして、その一歩こそ、エインヘリアルの新たな王子ホーフンドを、アスガルドに叩き返す今回の作戦となるのだ。

「どうやら、前衛部隊が戦闘を開始したようだぜ。予定通り、本隊も動き出したようだ」
 廃墟の高所に陣取り、戦場の様子を俯瞰していた伏見・万(万獣の檻・e02075)が、そう仲間に伝える。
 今回のホーフンド王子本隊への襲撃は、4チームがそれぞれ別方向から攻め寄せる分散進撃という作戦をとっている。
 ただでさえ少ない戦力を、更に分散させるという、本来ならばありえない作戦であるが、それ故に、敵を撹乱する効果が期待できるだろう。

「腕が鳴りますねぇ」
 イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)は、腕まくりをして、戦意を高める。
 増援部隊が本隊から離れたならば、合図と同時に戦闘を開始する手はずだ。
 せいぜい、派手に暴れるとしよう。
 そして、イッパイアッテナの期待通り、廃墟の上から万の声が下りてくる。
「おめぇら、お待ちかねのバイオガスたぜ! 思い切り、あばれてやれ!」
 その声を合図に、8名のケルベロスが、戦闘態勢を整え、廃墟から躍り出た。

「これが、私の全力です!」
 イッパイアッテナが、鎧装騎兵を最終決戦モードに変形させると、爆音と共にホーフンド本隊へと突撃を開始する。
 まずは、接敵する前に、砲門からの一斉射撃を喰らわせる。
 距離がある為、効果は期待できないが、その派手な攻撃によって、部隊の規模を誤認させるには十分だろう。
「仲間達の作戦が成功するように、ボクも精いっぱい派手にやりましょ」
 イッパイアッテナに続いて、戦場に駆けだした、重武装モードの保は、ブレイブマインをぶちあげる。
 保達の背後に打ち出された派手な爆発は、目にしたホーフンド本隊の軍勢に動揺を走らせる。
 ブレイブマインは味方を回復させつつ士気をあげる為のグラビティ。
 回復の必要ない戦闘前に、それが使われたという事は、襲撃者は相応の軍勢に間違いないのだ。
 そう誤認して動揺したホーフンド軍を、イッパイアッテナを先頭にした8名のケルベロス達が強襲する。
 いや、他のチームも同時に突入しているのだから、32名か。
「いっくよーフラワージェイル! 花嵐マシマシだぜ!」
 そして、ホーフンド軍の前衛に躍り込んだ、ひさぎが放った、花の嵐を合図に、ホーフンド軍とケルベロス達は、本格的な乱戦へと突入した。

●本隊外周の乱戦
 ひさぎの生み出した花嵐の花道を、月原・煌介(白砂月閃・e09504)、霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973)が押し通る。
「さぁ……戦おうか、俺達は、負けない」
「えぇ、戦いましょう。……墜ちろッ!」
 最終決戦モードとなった煌介が、敵群に向けてブラックスライムをぶちまけると、解き放たれたブラックスライムは、魔法防御ごとホーフンド兵に襲い掛かる
 同じく最終決戦モードを装った和希が、敵兵を撹乱するように大きく機動しながら、バスターライフル『ブラックバード』から、ゼログラビトンを撃ち放つ。
 ゼログラビトンのエネルギー光弾を受けた敵兵が怯んだ隙に、中和した重力を両の足に込めると、大きく空を舞って飛び蹴りを喰らわせる。
 スターゲイザーの一撃は、対象となったホーフンド兵だけでなく、周囲の兵士たちの機動力にまで影響を及ぼし、敵軍の動きが悪くなった。
 これを勝機とみた保は、重武装モードのまま、翼飛行で空に舞い上がった。
 敵の軍勢の前で空に舞う。
 ひとつ間違えば、集中砲火で一瞬で沈められるような愚行だろう。
 だが、今のホーフンド軍に、その指揮を取れる者は存在していない。
 それどころか、敵軍の指揮官は、空を舞う保の姿を見て、慌てて自分を護らせようとする不甲斐ない臆病者なのだ。

「ホーフンド王子は、あそこやな!」
 上空から右往左往する本陣の様子を確認した保は、賭けに勝ったとばかり着地すると、乱戦を戦う仲間達に、ホーフンドの居場所を伝えていく。
 この保の貴重な情報に、万は、戦場で戦いながらも、ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、大きく息を吸い込んだ。
 そして、
「周りから引っぺがして喰ってってやンよ、怖ェか? 怖ェよなァ」
 腹の底からの大声で、ホーフンド王子を嘲ってみせた。
 万とホーフンド王子の間には、幾百の敵軍が遮っており、更に万の周囲はエインヘリアルとケルベロスとの乱戦の喧騒があり、その声は、本来ならば通る事は無かっただろう。
 だが、ホーフンドの位置さえ確認できているのならば、それらの邪魔を押しのけて、ホーフンド王子に声を届ける事が出来るのだ。
 つまり、保と万の連携が、割り込みヴォイスを可能としたのだ。

「おめぇら! あと少しだ、あと少しでホーフンドの野郎をぶっころせるぜ!」
 更に、仲間に伝えるように見せかけて、ホーフンドに向けてそう怒鳴る万。
 現実は、彼らとホーフンド王子の間には数百の兵団がいるので、突破など不可能事だ。
 だが、混乱した乱戦の戦場から切れ切れに届く割り込みヴォイスは、ホーフンド王子の心に対して、的確にダメージを与える事だろう。

「万さんは、さすがですね」
「……俺達も、負けてはいられない。今こそ……強くなった力を見せる時だよ」
 万の意図を理解した和希は、万を支援するように魔導散弾の魔法光波が戦場を照らして敵を射抜くと、煌介もまた、聖月雷閃の真白に閃く雷光によって敵陣を十重二十重に穿ち、敵の動きを止める。
 2人のアルティメットモードから放たれる、光の攻撃は、敵兵さえも魅了する程に華麗であり、敵兵に強い印象を与えていく。

「もう、本陣が危ないのか?」
「ホーフンド王子を助けにいかなければ!」
「ユウフラ様から命令は無いのか!」
 混乱する兵卒を、下士官が落ち着かせようとするが、その下士官が、和希に狙い打たれると、それを鎮めるものがいなくなる。

 この戦場のホーフンド王子軍は、たった8人のケルベロスに戦列を乱され、不毛な乱戦に轢きづり込まれたのだ。

●戦場の違和感
 重武装モードや最終決戦モードで戦場を威圧するケルベロス達。
 乱戦において、その偉容は衆を圧し、わずかな手勢を大部隊へと誤認させるに至った。
 だが、威圧するばかりが戦いでは無い。
 この戦場には、可愛らしくも美しい二輪の花が、華麗に咲き誇っていたのだ。

「復讐なんて、良くないんだよ! 復讐は復讐を生んで平和にならないんだから! ボクが、この戦いを止めて、そして、みんなで幸せになるんだよ」
 可愛らしい担当のシルディ・ガード(平和への祈り・e05020)が、プリンセスモードで華麗に舞う。
 こんなにプリンセスモードが似合う少女は、女の子の筈がない。つまり、彼女は男の娘に間違いない。
「もちろん、そうだよね☆」
 嬉しそうに同意するシルディが、更に嬉しそうにコウモリさんエフェクトを発生させると、
 美しい担当のマヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)も、シャーマンズゴーストのアロアロと共に、ふわりと戦場を舞いながら、オフショルダーのAラインドレス姿で優雅さを際立たせながら、敵兵の頭の上にココナッツを落とした。
 ゴインと痛そうな音がして、敵兵が昏倒すると、アロアロが怖い物を見たかのように、ふるふると震える。
「ワタシ、怖くないんだよー」
 マヒナはアロアロの臆病さを、ちょっと心配しつつ、昏倒した敵に「ごめんあそばせ」とばかりに、ふわりとカーテシー。

 強く可憐に美しく戦うシルディとマヒナを横目に、ひさぎも負けじと、ドラゴニックハンマーに氷の御業を込めて振り下ろす。
「爆ぜろ、“凍星”」
 インパクトの瞬間に、その氷を収束して、一気に爆発させると、敵兵を鏤氷敲氷弾・零にて地に沈めていく。
「イクス、貫き砕きなさい」
 その隣では、和希が全身を覆うオウガメタル『イクス』を鋼鬼にかえて、兵士を鎧ごと突き砕く。
 しかし、それぞれ目の前の兵士を撃破した、ひさぎと和希は、その間隙を埋めるように現れた新たな兵士との戦いに引き込まれる。
 連戦の疲労から肩で息をする2人は、それでも、その兵士達と戦い続けたが、技の精度が落ち、次第に追い込まれていった。

(「鬱陶しいじゃん! はやく崩れるんだぜ」)
 ひさぎは、目の前の敵を打ち砕こうとドラゴニックハンマーを振り回すが、戦況はより悪化していく。
(「これは、敵が持ち直してきた? だが、指揮官のホーフンド王子が建て直せる状況では無かった筈……」)
 更に敵の痛打を受けて、膝をついた和希が、このままでは戦線を維持できないと危機感を抱く。

 一方、プリンセスな2人もまた、敵に押し込まれ始めていたが、それ以上に危険な兆候を察知していた。

「マヒナさん~。大変だよ!」
「シルディ? 今、忙しいから後にするんだよ」
「そんな事いってられないんだよ! 敵軍から別動隊がでて、ボク達の背後にまわろうとしてるんだ!」
「なんですって」
 慌てて周囲を見渡すマヒナ。
 乱戦によって全てのケルベロスが目の前の敵と戦いに集中してしまっていたが、良く見れば、敵の動きは混乱していた当初に比べて、組織的になっている。
 更に、別動隊による包囲挟撃を企むのだとすれば……。

「みなさん! ワタシの話を聞いて! おそらく、ユウフラが撤退してホーフンド王子に合流したんだよ。指揮を引き継いだユウフラは、ケルベロスを殲滅すべく包囲を狙っている!」
 マヒナがシャウトで叫べば、シルディもシャウトで続く。

 和希を初め、ギリギリで戦っていたケルベロスは、この2人のシャウトで、体力を回復させつつ、最悪の状況を察知していた。

「ここまでのようね~。ずらかるんよ!」
 ひさぎが、号令と共に撤退の為の花道を作ると、乱戦中のケルベロス達も、撤退すべく動き出した。

●危険地域から撤退せよ
 ひさぎのフラワージェイルを道しるべとするように、マヒナとシルディは、乱戦の戦場から抜けだして退路を確保する。
 シルディは、そのまま後背に回り込もうとする敵部隊の状況を確認し、マヒナは撤退しようとするケルベロス達にブラズムキャノンで援護射撃を行いつつ、合流した仲間をアロアロに迎えさせて回復してもらう。
「マヒナさん! あと3分くらいしかないんだよ!」
 シルディが切迫した声をあげる。
「包囲が閉じる前に脱出しないと……全滅だよね」
 マヒナも焦りながら、声を出して皆の撤退を支援するが、時間までに撤退できるかは厳しい所だ。
 そんなマヒナに、アルティメッドモードを解除したイッパイアッテナが、落ち着くように声をかけてくれた。

「おじょうさんがた、支援助ありがとうございました。あとは、私達に任せてください」
 そう言うと、イッパイアッテナは、アームドフォートのシナジーアタックで近接距離に爆炎を振りまき、追撃してきた兵士達の足を止めると、マヒナ達を両脇に抱えて後退する。
 後退した先では、煌介が待ち受けており、
『月光に聖別されし雷…かつて傲慢の塔を崩し言葉を引き裂いた、その名残。今こそ閃き来たりて、敵を滅せ』
 詠唱と共に3人を出迎えた。
 詠唱を終えた煌介から放たれるは猛き力。荒ぶる雷鳴が、撤退する仲間と敵兵を巻き込んで轟渡る。
「あぶないんだよ!」
 イッパイアッテナに抱えられていたマヒナは驚いて叫ぶが、煌介は大丈夫だと、安心するように微笑んだ。
 彼の言葉の通り、彼の雷は最新の注意をもって制御されており、決して仲間を傷つける事無く、そして、撤退する仲間達に、これ以上ないチャンスを与える事に成功したのだ。

「包囲されるまで、あと30秒くらいだよ!」
 シルディが声をあげるが、それだけあれば問題は無い。
「全員一緒に脱出できるんだね♪」
 嬉しそうなシルディの声と共に、8名のケルベロスが包囲の輪が閉じる前に戦場から脱出していった。

 戦場を後にしたイッパイアッテナ達ケルベロス達は、自分達と入れ違えるように、アンガンチュール軍がホーフンド王子軍に合流していくのを確認する。
 その後、ホーフンド軍は、ケルベロス軍を追撃する事無く整然と撤退を開始。

 第八王子強襲戦は、ケルベロスの勝利に終わったのだった。

作者:陸野蛍 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年4月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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