●都内某所
廃墟と化した工場に、懐中電灯が転がっていた。
この工場は肝試しスポットとして有名だったものの、カップルにとってはデートスポットでもあったようである。
その場所に蜘蛛のような姿をした小型ダモクレスが現れ、懐中電灯の中に入り込んだ。
それと同時に、機械的なヒールによって懐中電灯が作り変えられ、家電製品っぽい雰囲気のダモクレスに変化した。
「カイ・カイ・カイィィィィィィィィィィィィィイ!」
次の瞬間、ダモクレスが奇妙な鳴き声を響かせ、廃墟と化した工場の壁を突き破るのであった。
●セリカからの依頼
「山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)が危惧していた通り、都内某所にある廃墟と化した工場でダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティ・チェインを奪われてしまう事でしょう。そうなってしまう前に、何としてもダモクレスを撃破してください」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ダモクレスが現れたのは、廃墟と化した工場。
この場所に忘れ去られた懐中電灯が、ダモクレスと化したようである。
「ダモクレスと化したのは、懐中電灯です。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティ・チェインが奪われる事になるでしょう」
そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
ダモクレスは巨大な蜘蛛のような姿をしており、グラビティ・チェインを求めて攻撃を仕掛けてくるようだ。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。
参加者 | |
---|---|
キリクライシャ・セサンゴート(林檎割人形・e20513) |
伊礼・慧子(花無き臺・e41144) |
ディ・ロック(オウガの光輪拳士・e66977) |
柄倉・清春(大菩薩峠・e85251) |
山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678) |
●都内某所
「……何とか間に合ったようだな」
ディ・ロック(オウガの光輪拳士・e66977)は仲間達と共に、廃墟と化した工場に駆けつけた。
「カイチュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウデントゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
ダモクレスは既に目覚めており、ケモノの如く機械音を響かせ、辺りにいた住民達の心に恐怖を植えつけた。
ダモクレスはクモをモチーフにしており、無数の懐中電灯をハリネズミの如く生やし、辺りにあるモノを手当たり次第に壊していた。
それはまるで駄々っ子のようでもあったが、その機械音に恐怖を感じた住民達が半ばパニックに陥りながら、蜘蛛の子を散らすようにして逃げていた。
そこに追い打ちをかけるようにして、ダモクレスが光を放っていたが、殺傷能力はなく、相手を気絶させる程度の威力であった。
それでも、住民達にとっては、恐怖そのもの。
まるで命を落としたような勢いで悲鳴を上げているため、逃げ惑う住民達にとっては恐怖以外のナニモノでもなかった。
「あー? 今回も荒ぶってんなぁ。にしてもだ、カップルの肝試しねぇ……ククク、いいこと聞いちまったなぁ、オイ」
柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)が含みのある笑みを浮かべ、ダモクレスの前に陣取った。
その間もダモクレスが暴れまわっていたものの、ケルベロス達が行く手を阻んでいるせいで、住民達に被害はなかった。
しかし、ダモクレスが存在している限り、安心してはいられない。
こうしている間も、ダモクレスはケルベロス達の包囲網を突破し、住民達に襲い掛かろうとしているのだから……。
その事を本能的に理解してしまう程、ダモクレスの殺気は鋭く、禍々しかった。
「こんな単純な機械でも乗り移れたりするんだぁ……。もう訳わかんないよね、ある意味めっちゃ省エネじゃん」
そんな中、山科・ことほ(幸を祈りし寿ぎの・e85678)が、ダモクレスをマジマジと見つめた。
ダモクレスの元になった懐中電灯は、単一電池を二本使っているモノで、明るさはそこそこ。
その分、重量感があるため、見方によっては多脚型の戦車にも見えた。
「人の生活の役に立っていても、こうなってしまうと倒さなきゃいけないってなんだか悲しいですね」
伊礼・慧子(花無き臺・e41144)が複雑な気持ちになりながら、ダモクレスに視線を送った。
おそらく、ダモクレスと化した懐中電灯も、こんな事は望んでいなかった……はず。
だが、肝試しスポットに置いて行かれる事を考えると、少なからず人間に対して恨みを抱いていてもおかしくない話であった。
ただし、それは懐中電灯に自我があった場合という前提。
実際には自我が無かったはずなので、考えるだけ時間の無駄だった。
「カイチュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥデントゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
次の瞬間、ダモクレスがケルベロス達を威嚇するようにして、ミラーボールの如くあちこちに光を当て、不気味な機械音を響かせた。
「……今回は任せたわよ。たまには私がサポートする側、というのも良いかと思うから……」
それを迎え撃つようにして、キリクライシャ・セサンゴート(林檎割人形・e20513)が、テレビウムのバーミリオンに声を掛けるのであった。
●ダモクレス
「カイ・カイ・カイチュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
ダモクレスの咆哮が辺りに響いた。
それはケモノにも似た咆哮であったが、機械音が混ざっているせいで、不気味で、おどろおどろしい雰囲気が漂っていた。
そのせいで、ケルベロス達の背筋にゾッと寒気が走ったものの、だからと言って『逃げる』という選択肢が追加される事はなかった。
むしろ、『どんな事があっても、破壊する……!』と言った感じで、みんなヤル気満々。
ダモクレスの行く手を阻むようにして陣取っている事もあり、どちらにとっても戦闘を回避するという選択肢が存在していない状況であった。
「さすがに直視するのはキツそうだね。念のため、コレをかけておかないと……。だって、目がくらむスナイパーとかカッコ悪いじゃん?」
すぐさま、ことほがサングラスを掛け、警戒した様子で間合いを取った。
「カイチュウ・カイチュウ・カイチュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!」
その挑発に乗ったダモクレスが、イラついた様子であちこちに光を当て、ライトビームを放ってきた。
その光は眩しいだけでなく、強力な破壊力も秘めたビームで、当たったモノを飲み込む勢いで、光と共に消し去るほどの威力があった。
「まだまだ、この程度で……!」
そのビームを喰らったディがキャバリアランページを発動させ、唇をグッと噛み締めて、全身の筋肉を隆起させ、超加速突撃でダモクレスの脚部を攻撃した。
まるで火傷を負ったような傷を負ってしまったものの、ケルベロスである事が幸いして、致命傷にはならなかった。
その代わり、全身が痺れているような感覚に陥っていたため、息をする事さえ困難になった。
「カ、カ、カイチュウウウウウウウウウウウウウウウウ!」
一方、ダモクレスはディの攻撃を喰らった脚部からは悲鳴にも似た音が響かせ、今にもバランスを崩して、倒れそうな勢いだった。
それでも、ダモクレスの戦意はまったく喪失しておらず、残った脚で上手くバランスを取りながら、再びライトビームを放ってきた。
「……照らして、全てを明るみの中へ」
その間に、キリクライシャが陽光の珠(スベテヲテラス)を発動させ、太陽の光が持つ浄化の力を利用し、抽出した浄化の力を光の珠に変換すると、ディの元に飛ばして傷ついた身体を癒した。
「カイチュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!」
次の瞬間、ダモクレスが苛立った様子で、ケルベロス達に狙いを定め、再びライトビームを放ってきた。
そのビームはケルベロス達には当たらなかったものの、アスファルトの地面を削って土煙を上げた。
「あなたの相手は、私がします」
それに気づいた慧子がキリリとした表情を浮かべて、間合いを取りながら、ダモクレスを挑発するようにして大声を上げた。
「カイ、カイ、カイィィィィィィィィィィィィィィ!」
それと同時にダモクレスが殺気立った様子で地響きを上げ、躊躇う事なく真っ直ぐ慧子に向かっていった。
「つーか、俺を無視するんじゃねーよ! それとも、俺は雑魚扱いか!? だったら、二度とそんな事を思わねーように、その体に刻んでやるよ! オラオラ、これでも雑魚扱いするってか」
清春がオラオラオーラ全開で、ダモクレスに飛び乗り、一心不乱にドラゴニックハンマーを振り下ろした。
「カイカイ、チュウウウウウウウウウウウウウウウウウ!」
そのため、ダモクレスが手当たり次第にライトを上げ、清春を振り落とすために激しく暴れた。
「……!」
その巻き添えを食らったビハインドのきゃり子が、ダモクレスに何度もライトを当てられながら、悲鳴を上げつつ暗いところに逃げていった。
「あなたの相手は、私だと言ったはずですが……」
すぐさま、慧子がダモクレスの行く手を阻み、きゃり子を庇うようにしながら、ステルスツリーを発動させ、魔法の樹を足元から呼び出した。
「……光には光を、家電には家電を……かしらね。……リオン、懐中電灯に眩しさで勝ってしまいなさい。……眩ませるのが得意なのは、こちらもだと証明するの。……あなたのナイフ、振るってらっしゃい」
その隙をつくようにして、キリクライシャがバーミリオンに声を掛けた。
「……!」
その指示に従って、バーミリオンがナイフを握り締め、ダモクレスの弁慶的な急所をザクザクと攻撃し始めた。
「カ、カ、カイチュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
その事に腹を立てたダモクレスが、ライトアームを次々と伸ばし、バーミリオンを攻撃した。
「……!」
それに気づいたバーミリオンが、ダモクレスの脚の隙間を利用しつつ、再び弁慶的なところをナイフで斬りつけた。
(「……まだ痛みは残っているが、やるしかないか」)
ディが自分自身に言い聞かせながら、ルーンディバイドを発動させ、光り輝く呪力と共に斧を振り下ろした。
「カイチュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!」
だが、ダモクレスは怯まない。
全身が鋭い刃になったのではないかと錯覚するような勢いでディに迫り、ライトアームで動きを封じ込めながら、ライトビームを放ってきた。
それでも、ディは臆する事なくライトアームを掴んで引き千切り、ダブルディバイドを仕掛けて、2本のルーンアックスを高く掲げ、ダモクレスをクロスに斬りつけた。
「ほらほら、こっちだよ」
それに合わせて、ことほがライドキャリバーの藍と連携を取りつつ、ダモクレスにプラズムキャノンを撃ち込んだ。
「カイ、カイ、チュウウウウウウウウウウウウウウウ!」
これにはダモクレスもブチ切れた様子で、ライトミサイルを発射した。
ダモクレスから放たれたライトミサイルは、雨の如く降り注ぎ、ことほ達に襲い掛かった。
「……って、嘘、嘘、嘘ぉー!」
そのため、ことほが涙目を浮かべつつ、藍と一緒に全速力で、ミサイルから逃げていった。
「つーか、ヨソ見ばっかりしているんじゃねーぞ、ゴラァ!」
次の瞬間、清春がドラゴニックスマッシュを仕掛け、ドラゴニック・パワーを噴射すると、加速したハンマーでダモクレスのコア部分を破壊した。
「カ、カ、カイチュウウウウウウウウウウウウウウ……!」
その一撃を喰らったダモクレスがビクビクと身体を震わせ、大量のオイルを血の如く撒き散らし、崩れ落ちるようにして動かなくなった。
その途端、バーミリオンがダモクレスだったモノに飛び乗り、ドヤ顔(?)を浮かべた。
しかも、『今回の功労者は自分!』と言わんばかりに、えっへんと胸を張っていたため、キリクライシャが無表情のまま、物凄く寂しそうにしながら、生暖かい視線を送っていた。
「さて、これから、どうしましょうか?」
そんな中、慧子が複雑な気持ちになりつつ、廃墟と化した工場を見上げた。
廃工場である以上、ヒールの必要性は感じられない上に、倒壊する心配もないため、このまま放っておいても良さそうだ。
「だったら、何かヤバイモノがないか調査しようよー」
ことほが廃墟と化した工場内を探検する気満々で、懐中電灯を照らし始めた。
「それなら、肝試しにやってくるヤツ全員、驚かしてやろうぜ!」
そう言って清春が『リア充、死すべし! 慈悲はない!』と言わんばかりに気合を入れ、幽霊の仮装をし始めるのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年4月3日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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