チョコはカカオ濃度が高ければ高い程いい！

■リプレイ

●都内某所
「これは中々に素晴らしい教義だな！　だが、まだ足りない。我が圧倒的なパワーのチョコでこの教義を完成させようではないか！」
　皇・絶華（影月・e04491）は使命感にも似た感情を抱きながら、仲間達と共にビルシャナが拠点にしているチョコレート工場にやってきた。
　チョコレート工場は寝る間も惜しんで、チョコレートを作っているらしく、室内から信者達の陽気な歌声が聞こえてきた。
　その歌声が無駄にハイテンションであったため、信者達は色々な意味で危険な状態。
　色々な意味で限界を突破してしまったため、理性の留め金が完全に外れている感じであった。
「ところで……カカオ100%って、何っ！？」
　そんな中、ルルリラ・リラリル（お絵かきさん・e85600）が、気まずい様子で汗を流した。
　チョコと聞いて喜び勇んで依頼に参加したものの、事前に配られた資料に目を通した瞬間、一気に血の気が引いて、嫌な汗が止まらなくなってしまった。
「まあ、ビルシャナだから……」
　彼岸花・深未（サキュバスの鹵獲術士・e01205）が、乾いた笑いを響かせた。
　少し前に似たような依頼に参加したのだが、その時はホワイトチョコで、次は濃すぎるカカオチョコ。
　何やら運命的なモノを感じるものの、色々な意味で体に悪い事は間違いない。
「これってチョコが好きすぎるのか？　それとも、健康に気を使い過ぎてるのか？　どちらにしても、行きすぎで逆に不健康そう」
　ルルリラが複雑な気持ちになりながら、事前に配られた資料に目を通した。
　色々とツッコミどころが満載ではあるものの、相手がビルシャナという時点で、解決してしまうのが怖いところ。
　それでも、気になるのは、カカオ100%の一文。
　これだけは、ビルシャナだからという一言で、片付けてはイケない感じであった。
「……すみませーん！　ワシおなかが痛いので早退します！　お疲れ様でした！」
　そんな空気を察したコクマ・シヴァルス（ドヴェルグの賢者・e04813）が、身の危険を感じて、回れ右。
　そのまま全力ダッシュを決めて、敵前逃亡を図ろうとした。
「一体、何処に行く気だ？」
　その気配を察知した絶華が、地獄の門番の如く勢いで瞳をキュピィーンと輝かせ、コクマの前に陣取った。
「……え、ダメ……？」
　その途端、コクマが膝から崩れ落ちる勢いで、絶望のどん底に突き落とされた。
　おそらく、絶華が知っている。
　チョコレート工場内で、行われている事を……！
　それが分かっていながら、こんな事をしているのだから、控えめに言っても外道であった。
「……安心しろ。何も怖くない。例え、怖かったとしても、最初だけ。最初だけだから……」
　それが容易に想像する事が出来てしまう程、絶華がイイ笑顔を浮かべていた。
「な、何その、誘い方！　絶対にヤバイって！　ワシは帰りに女の子を襲って楽しむのだ。……だから、こんな処から帰るのだぁぁぁぁぁ！！　嫌だぁぁぁぁぁぁあぁぁあぁぁあ！」
　その途端、コクマがすべてを理解し、悲鳴を響かせながら、絶華に引きずられるようにして、チョコレート工場に入っていった。

●ビルシャナとチョコレート工場
「ある意味で、絵のモデルさんのよーですね」
　チョコレート工場に足を踏み入れた途端、ルルリラの視界に飛び込んできたのは、陽気に歌を歌うビルシャナ達の姿であった。
　ビルシャナ達は全身チョコレートまみれになりながら、独特なダンスを踊りながら、何かに取り憑かれた様子でチョコレートを作っていた。
　だが、催眠の影響で無駄に統制が取れており、まるで芸術作品と言わんばかりのクオリティに仕上がっていた。
「お前たちの教えは素晴らしい！　確かにカカオこそ最高の滋養強壮薬といってもいい！　……安心するがいい。我が技を以てして圧倒的なパワーのチョコをお前たちに提供してやろう！」
　それを目の当たりにした絶華が、ビルシャナの教義に共感した様子で一緒に作業をし始めた。
「やはり、わかる奴には、わかるようだな！　いいぞ、一緒に手伝ってくれ！」
　ビルシャナがゴキゲンな様子で、力強くウンウンと頷いた。
　その間も信者達は陽気な歌声に合わせて、チョコレートを作っていた。
「……と言うか、チョコを作りつつ、身体に浴びるのって、何かおかしくありませんか？　そんな濃すぎるチョコを浴び続けたら、固まって体の芯までチョコに変わってチョコの像になってしまうかも知れませんよ？」
　その事に危機感を覚えた深未がケルベロスコートを脱ぎ捨て、女子用のスクール水着姿になった。
「何か勘違いしているようだが、それは誤解だ。こっちの機械で作っているのが食べるチョコで、俺達が作っているのが浴びるチョコだ」
　ビルシャナがキリリとした表情を浮かべ、躊躇う事なく答えを返した。
　深未にはまったく同じように見えるのだが、濃度や味が異なっているようだ。
「だからと言って、これはやり過ぎじゃろ。薬も度が過ぎれば毒となるということを知らんのか、貴様らは！？　……んなもん食ったら、まず脳髄が崩壊するわ！」
　コクマが呆れた様子で、ビルシャナ達に嫌悪感をあらわにした。
「ならば、試してみるがいい！」
　その事にイラっとしたビルシャナが、バケツ一杯のチョコレートを、ケルベロス達にぶっ掛けた。
「にふゃい！！」
　そのチョコレートをモロに浴びたルルリラが、ゲンナリとした表情を浮かべた。
　身体に塗るために作られただけあって、濃度が低めではあるものの、それでも口の中の水分が持っていかれる程の濃さがあった。
「どうだ！　チョコを浴びた事によって、俺達の気持ちが分かっただろ？」
　ビルシャナが自信満々な様子で、踏ん反り返った。
「いや、まったく分からん。理解をしたくもないが……。そんなモノより、ちゃんと甘いチョコを食べるがいい！　糖分だって立派な栄養素だぞ！」
　コクマが口の中に入ったチョコを吐き捨て、イラッとした様子で答えを返した。
「……論外だな」
　ビルシャナがムッとした様子で、フンと鼻を鳴らした。
「それなら、シンプルにプリンなんて、どうですかー？　さぁさぁ、遠慮なく、どうぞ、どうぞ！」
　そんな空気を察したルルリラが、イイ笑顔を浮かべながら、ビルシャナ達にプリンを勧めた。
「いや、いらん」
　だが、ビルシャナは全力で、拒否。
　まるで親の仇を見るような感じで、プリンを睨みつけていた。
「こんなに美味しいのに……」
　ルルリラが少し残念そうにしながら、美味しそうにプリンをパクついた。
「いい加減に目を覚ませ！　……よいか！　何事もバランスが大事なんだ！　食べすぎはよくない！　濃すぎもよくない！　美味しさも体が求める栄養としての在り方の基準であると知るが良い！　……でないと、あれを食わされるぞ……！」
　コクマが横目で絶華を見つつ、ビルシャナ達に対して、必死に警告をした。
「むしろ歓迎すべき事じゃないか！　お前も食え！」
　ビルシャナがイイ笑顔を浮かべ、コクマにヘッドロックを食らわせた。
　そのため、コクマは絶体絶命のピンチに陥り、全身にブワッと鳥肌が立った。
「さぁ！　このチョコを食べて圧倒的なパワーを、その身に宿すのだ！」
　次の瞬間、絶華がカカオ濃度は200％のチョコレートを、コクマの口に捩じり込んだ。
「や、やめろ！　それはチョコじゃない！　チョコという名の別のナニカだ！　ぐあああああああ！！！！！」
　その途端、コクマが絶望の中で悲鳴を上げ、今にも死にそうな勢いで、ビクビクと身体を震わせた。
「……感じるだろう、宇宙を！　さぁ、存分に味わい体からあふれる圧倒的なパワーに酔いしれるがいい！」
　絶華が今にも劇画タッチで高笑いを響かせそうな勢いで、強引にチョコレートを完食させた。
　そのせいで、コクマの魂が口から抜け出ていたものの、絶華は気にせず魂の口にもチョコレートを押し込み、二つの意味で地獄に導いた。

●ビルシャナ
「えーっと、何か違うような気が……」
　それを目の当たりにしたビルシャナが、気まずい様子で汗を流した。
　この様子では、本能的に絶華が危険な存在である事に気づいてしまったのだろう。
　みんな鳥肌を立てながら、『これ以上、コイツにかかわりたくない！』と言わんばかりに涙目だった。
「何も恐れる事はない。さあ、カカオを信じろ！　チョコの可能性に身を委ねるのだ！」
　そんな中、絶華が大魔王の如く闇のオーラを身に纏い、ビルシャナ達に迫っていった。
「ヒィィィィィィィィィィィィィィィ！」
　そのため、ビルシャナ達は、ガタブルモード。
　信者達に至っては、小動物の如く瞳を潤ませ、部屋の隅で震えていた。
「大丈夫、怖くない、怖くない」
　その事に気づいた絶華が、ホラー映画顔負けのダーティスマイルで、信者達にカカオ濃度200％＆漢方＆虫類の混じったチョコレートを食べさせた。
　それは、この世のモノとは思えない程の不味さ。
　いくらチョコレート好きの信者であっても、失禁するレベルの不味さであった。
　そのため、ビルシャナの洗脳が解けたのと同時に……気絶ッ！
　言葉にならない悲鳴を響かせ、ブクブクと泡を吐いて、気絶であった。
「ええい、来るな！　来るな！　来るなァァァァァァァァァァア！」
　その事に危機感を覚えたビルシャナが、チョコレートビームを放ってきた。
　それは高濃度なカカオチョコレート。
「さすがに今回もチョコまみれにはなりませんよ！」
　すぐさま、深未がアイスエイジを発動させ、チョコレートビームを凍らせようとした。
　だが、凍り付かせる事が出来たのは、チョコレートビームの極一部ッ！
　勢いよく噴き出したチョコレートを完全に凍らせる事が出来ず、全身チョコレートまみれになって、カチコチに固まった。
「ど、どうだ、思い知ったか！　それじゃ、俺は帰るぞ！　か、帰らせてくれ！」
　ビルシャナが涙目になって、脱兎の如く逃げ出そうとした。
「好き嫌いはよくないのー　好きなチョコならいくらでも食べれるよね？」
　その事に気づいたルルリラが、含みのある笑みを浮かべながら、【暴走する殺戮機械】を発動させ、暴走ロボットのエネルギー体を一時召喚すると、ビルシャナの動きを封じ込めた。
「さぁ……宇宙を感じるのだ！」
　それと同時に、絶華が心に込もるバレンタインチョコレート（キョウキヘミチビクフカキシンエンヨリキタルモノ）を発動させ、全霊を込めたカカオ10000％諸々なバレンタインチョコをビルシャナの口に捩じり込んだ。
「んごごごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ！」
　その途端、ビルシャナが悲鳴を上げたものの、絶華は情け容赦なく、喉の奥までグググイッと押し込んでいった。
「……あ、そうだ、ちょっとこの光景を絵に残してみよう」
　そんな中、ルルリラがナイスアイデアとばかりの勢いで、ビルシャナの姿を描き始めた。
　それは、まさに地獄絵図。
　天国を夢見たビルシャナが、地獄に突き落とされて、絶叫を響かせているような絵であった。
　そのためか、ルルリラ自身も『これって残しておいていいのかな』という気持ちが脳裏に過ったものの、捨てるのも勿体ないような気がしてきた。
「……」
　そして、ビルシャナが壮絶な最後を遂げた。
　その姿はモザイクな死では直視する事が出来ない程、無惨で、残酷。
「うぅ……今回もチョコまみれ……うっ……ホントに濃すぎます……。毎年のバレンタイン…思い出してしまいそうです……」
　その間に、深未が自分の身体に張りついたチョコレートをバリバリと割り、魂が抜けた様子で溜息を漏らした。
「気のせいか、この凄くごく扱いな扱いを受けていた気もするが、まあ……いいだろう。さあ、帰るぞ」
　そう言って絶華が複雑な気持ちになりつつ、コクマの首根っこを掴み取った。
「ちょっと待て！　そのチョコをワシに向けるな！　……やめろ！　ワシは女の子とエッチなことがしたいだけで、そんなおぞましいものを食しに来たわけではなっ……なぜだぁぁぁぁぁ！！　わしはかえるんだぁぁぁぁ！　や、やめろ……！　いやぁあああああああ！！！！！！」
　そのため、コクマは絶望の中、辺りに悲鳴を響かせ、絶華にズルズルと引きずられて、その場を後にするのであった。

作者：ゆうきつかさ	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2020年4月1日 難度：普通 参加：4人 結果：成功！
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