寿司が回ってるんですけど食べに行きません?

作者:星垣えん

●寿司に羽毛が混じる案件
 ぐるりぐるりと回る、ベルトコンベア。
 その上を運ばれて過ぎ去ってゆく、寿司。
 そして寿司が通過してゆく横で握りを口に放る、人々。
「美味っ……」
「何だろう。寿司ってなんかアガるよね……」
「ほぼ一皿110円だし最高だな!」
 値段に見合わぬほど脂の乗ったネタに震え、客は食う手を止められない。
 港町近郊にある回転寿司店は、いつもどおりの人入りで盛況だった。新鮮で大ぶりなネタを安価で食べられる。そんな庶民に優しい店が客を呼ばないわけがない。
「やはり寿司といえばトロ……」
「んー、つぶ貝おいしー……」
「そこで俺はあえてのイカですよ」
 2貫、3貫とぱくぱく食ってしまう客たち。腹に収めては熱いお茶で落ち着く。そうして落ち着いたらまたついついレーン上の皿に手を伸ばしてしまう。
 エンドレス寿司である。高くても200円という値段設定に財布の紐を緩められてしまった者たちは、まんまと美味い寿司を食べすぎて幸せになる。
 恐ろしい策略だった。
「おかあさーん、アイスたべていいー?」
「ケーキながれてるよ! あっちプリンもある!」
「ぼくハンバーガーたべたい!」
 子供たちまで夢中だった。
 もはや回転寿司なのか疑わしい完璧な品揃えで、キッズのハートまで鷲掴みだった。
 子供から大人まで余さず笑顔になってしまう恐怖の謀略だった。
 だから、彼は動いたのだった。
「回転寿司、許すまじ!!」
「きゃーっ!?」
「な、何? どうしたどうした!?」
 入り口の自動ドアを鳩胸でぶち破り、ご来店なさるビルシャナさん。客たちが瞬く間に混乱してゆくのを尻目に、彼はモデル歩きで店の中央にまで進んだ。
 そして、叫んだ。
「安くて美味しいもので人心を惑わすとは何事か! しかもスイーツやジャンクフードまであるだと? この極悪人どもめが! 貴様らを野放しにしては日本が沈んでしまう……なので今から私の毛で店内をふわふわにしていきます!!!」
 うおおお、と羽毛をぶちぶちしはじめる鳥さん。
 あーこれは業務妨害! 保健所が騒ぎ出してしまう完全なる業務妨害です!!

●攻略!
 鳥さんがやらかすだろう悪行をザイフリート王子(エインヘリアルのヘリオライダー)が語り終えると、腕組みして真剣に聞いていたセレネテアル・アノン(綿毛のような柔らか拳士・e12642)は顔を上げた。
「なるほど……つまり今日はお寿司が食べられるんですね~?」
「お前、ほとんど聞いていなかっただろう」
 サッ、と財布を出してきたセレネテアルに呆れる王子。
 たぶん寿司という単語しか頭に入っていない。そう思うしかねーほどセレネテアルさんはわくわくした顔をしていた。
「まあ、ビルシャナを倒したあとは好きにしてくれて構わない。もっとも倒さなければ羽毛で店がふわふわになるから、寿司を食べるつもりなら必然的に片付ける必要があるがな」
 改めて猟犬たちに向き直る王子。
 本日のお仕事は、美味しい回転寿司屋を襲う鳥さんの駆除である。例によって信者とかいねーのでノータイムで処して問題ないとのことだ。やったね。
「鳥さんを倒すのは楽な仕事でしょう……それよりも問題なのは新鮮なネタで提供してくれる回転寿司をどう攻略していくかです~っ」
「攻略……」
「攻略です~っ!」
 何を言ってるのか、と言いかけた王子をビシッと制するセレネテアル。
 彼女の目はガチだ。
 安くて美味しいものを前にして、セレネテアルさんの胃袋はすでにウォームアップを始めていた。ただ寿司を食べることを『攻略』とのたまってしまうほどに。
「今からお腹が……いえ腕が鳴りますね~」
「そうか……ならばもはや何も言うまい。好きなだけ腹を満たしてくるといい」
 寿司を口に運ぶ素振りさえ始めちゃうセレネテアルを見て、納得したように頷く王子。
 かくして、猟犬たちは安く美味しい回転寿司屋さんに出発するのでした。


参加者
狗上・士浪(天狼・e01564)
琴宮・淡雪(淫蕩サキュバス・e02774)
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)
レスター・ヴェルナッザ(凪ぐ銀濤・e11206)
セレネテアル・アノン(綿毛のような柔らか拳士・e12642)
キリクライシャ・セサンゴート(林檎割人形・e20513)
グラハ・ラジャシック(我濁濫悪・e50382)
ディミック・イルヴァ(グランドロンのブラックウィザード・e85736)

■リプレイ

●鳩胸がすごくて羽毛ふわふわでモデル歩きする鳥だったけど出番はなかった
 店の奥に位置する、3つのボックス席。
 店前にいたビルシャナをサクッと殺った猟犬一同は、何かを察した熟練の店員さんによりレーンの終盤になるような場所に案内されていました。
 その一角に着座していたレスター・ヴェルナッザ(凪ぐ銀濤・e11206)は、テーブルに配されていたタブレット端末をしげしげと見つめている。
「なんだこの画面は……これで頼むのか」
「ヴェルナッザ様は一体いつの時代の人間ですの……?」
 タブレットをくるくるしてるレスターにツッコむ琴宮・淡雪(淫蕩サキュバス・e02774)。
 40歳のレスターさん、ビビるほどローテク人間である。
「……どうやれば頼めるんだ?」
「頼みたいものを触ればいいのですよ」
「触る……ほう、最近の寿司はハイテクだな」
「最近って技術でもないですわよ……」
 機理原・真理(フォートレスガール・e08508)のレクチャーでタップとスワイプを覚えてゆくレスターに、やはりツッコむ淡雪。
 他方、隣のボックス席ではキリクライシャ・セサンゴート(林檎割人形・e20513)がバーミリオン(テレビウム)の開いてくれているメニュー表(紙)とにらめっこ。
「……アップルパイと林檎ジュースは外せないとして……和食の勉強に、寿司は外せないと思うのよ……でも、あまり食べ慣れていないのも事実なのよね……」
 途切れ途切れの独り言を繰るキリクライシャ。
 だよねと言わんばかりに頷き、ページをめくるバーミリオン。
「……洋風もあるのね。このカルパッチョ風とか、カリフォルニアロールは私でも食べやすそう。このあたりも狙いましょう」
 ありがとう、とバーミリオンに告げて顔を上げるキリクライシャ。
 そのまま寿司のレーンに目を向けて、待ちの姿勢に移る。
 微動だにせず、じっと。
「……早く来ないかしら」
 最近の回転寿司に明るくないのは、彼女も同じでした。
 ガン待ちのキリクライシャさんに気づいた淡雪は、どうしたもんかと戸惑った。
「何なのかしら。今日は残念さんばかりですわね……」
「淡雪さんに言われたくないと思いますよ~」
「アノン様、その意味を詳しく」
「そのままです~。あ、注文終わったならタブレット貸してください~」
「了解なのです」
 追及をさらりとかわし、セレネテアル・アノン(綿毛のような柔らか拳士・e12642)は真理から受け取ったタブレットをパパパッ。
「トロと中トロと大トロ、エンガワとサーモンも外せませんね~! 炙りも頼んでおきましょう~! あっ! ネギトロとウニとカニ味噌の軍艦もっ」
「アノン様、1度に頼みすぎですわ!?」
「コケーーッ!!」
「さゆきちは何で対抗してるの!? しかもわざわざアノン様の隣で……というかそもそもあなた今まで何してたの? 鳥さんと戦ってるとき、見かけてないんですけど!?」
 いつの間にかセレネテアルの隣で戦闘準備完了しているデブ鶏『彩雪』だが、主たる淡雪の問いはガン無視だ。寿司に全集中している。
「負けませんよ~!」
「コケーッ!」
 互いに火花を散らすセレネテアル&彩雪。その熱を感じながらアップル(テレビウム)は(顔文字で)泣いていた。
 彩雪がまだ痩せてシュッとしてた頃でも思い出しているのだろう。

 身が輝くように新鮮な、ハマチやタイ。
 見るも鮮やかな1貫をぺろりと頬張り、飲み下すと、狗上・士浪(天狼・e01564)とグラハ・ラジャシック(我濁濫悪・e50382)は静かに唸った。
「なんつーかこれは……あれだな」
「あぁ、あれだな」
 目線を交わすことなく、頷きあう2人。
「「うめぇ」」
 異口同音である。
 舌の上で踊り出しそうな絶品の寿司ネタを前にして、男たちは語彙を失っていた。元々豊富というわけでもなかったが、いつにもまして浅かった。
「いや仕方ねぇだろ。美味いもんは美味いとしか言えねぇ」
 あの士浪さん、ウニの軍艦巻きをもぐもぐしながら言っても説得力が……。
「士浪の言うとおりだ。美味いもんは美味い。いくら言葉を飾ろうが酒がうめぇ」
 グラハさんは最後まで台詞を言ってね? 明かにぐびっとやった日本酒に意識もってかれてるからね?
「っし、今度は季節ネタもいってみっかー」
「じゃあ俺は炙りマグロいっとくか」
 手元にまだ寿司を5、6貫は残したまま、追加注文を仕掛ける士浪とグラハ。
 静かにネギトロ巻きを平らげた真理は、傍らで湯気を立てるつみれの味噌汁を啜る。
「味噌汁もとても良いお出汁が出ているのです。ビルシャナ退治で疲れた身体に染みるのですよ……」
「ふむ。身体に染みるという感覚は今ひとつわからないが、とりあえず美味しいのだろうということはその顔を見れば理解できるよ」
 はふぅ、とまったりする真理を見て、ひとつ向こうのボックス席に座っているディミック・イルヴァ(グランドロンのブラックウィザード・e85736)がアイライトをぴこぴこさせる。
 ちなみに体長2m半のディミックさんはボックス席を1人で占領中である。
「お寿司美味しいですよ。イルヴァさんはやっぱりグランドロンさんだから食べないのですか?」
「確かに食べる必要はないが……しかし量を食べられることが美徳の店で、ただ見学してるだけというのも申し訳ないからねぇ。席も1人で埋めちゃってるし……」
 真理に笑いながら、おもむろにタブレット端末に手を伸ばすディミック。
「お客の平均単価分ぐらいは、味わってみようかな」
「ええ、それがいいのです」
 立ち上がる真理。
 通路に控えさせていたプライド・ワン(ライドキャリバー)を引いてゆく真理。
 ディミックの向かいに置く真理。
「もしアレでしたら、プライド・ワンに与えてやってくださいです」
「その子も寿司を食べるようには見えないが……」
「お気になさらずです」
「……」
 真理からプライド・ワンへ視線を移すディミック。
 ヘッドライトがぴかぴかと青く光っている。
 ちょっと楽しみにしてやがりました。

●忍耐強すぎた件
 つやつや美しい中トロを、あむんと頬張って。
 真理は蕩けそうになる頬を手で押さえた。
「マグロ、王道な感じですが美味しくて好きなのです」
「確かにマグロは王道ですね~」
 しゅばばば、という擬音が似合いそうな手の動きで大量のトロを吸いこむセレネテアル。
 マグロ、マグロ、マグロ。
 どこを見ても、2人の周りにはマグロの握りばかりだった。
「高そうなネタをじゃんじゃんいけるのが回転寿司ですよね~」
「ですね。あと、こういう風に頼むのを絞った注文って、回転寿司じゃないと出来ないイメージなのですよね」
「あぁ、それは何となくわかるかもしれねぇな」
 脂の乗った大トロを口に放り込んだ真理の一言に、貝の握りを持ったまま頷くグラハ。
「本格的な店はうるさそうだからな……こうやって何貫も貝を食ってたら何か言われるかもしれねぇ。イメージでしかねぇけど」
「食べる順番とか考えちゃいそうですよね」
「ふむ、そういうものなんだねぇ」
 グラハと真理の会話を傍で聞いていたディミックが、興味深そうに零す。
 そしてグラハに倣って注文した貝の握りを、ぱくっと味わう。
「これが貝の寿司というものか。魚とは違う食感が良いねぇ」
「だろ。冷凍もんのホタテも甘味が強くていいんだが、新鮮なやつはやっぱ歯触りが違うわ」
「ふむ」
「好みにゃなるものの、俺はこっちのがいいな」
 ぱくぱくと一息に1貫を食い、ビールを流しこむグラハ。
 そしてその向かいで黙々とローストビーフの握りを食らっている士浪。
「回転寿司じゃないとできねぇことか……確かにな。このローストビーフとかも普通の寿司屋じゃ到底出会えねぇだろうぜ」
 喋りながらもぐもぐと食いつづける士浪。器用。
「それこそハンバーグとかよ。初めて見た時は『何だコレ……』って思ったよ。滅茶苦茶抵抗あったよ。……あん時の俺は青かったなぁ」
 ふっ、と笑って天井を仰ぐ士浪。
「元々米に合うモンが、だよ。寿司に合わねぇはずがねぇんだよな。俺ン中で寿司の大革命が起きた瞬間だよ、ありゃあ」
 そう言いながら、士浪はちょうど流れてきたハンバーグ寿司を取る。
 どかっとハンバーグが乗ったその姿に、横から見ていたレスターは目を見張った。
「待て、本当にここは寿司屋か」
「何言ってやがる。ここが寿司屋だ」
 横から流れてきたカレーを取る士浪。
「カレーだと。回転寿司は何でもあるのか? おれはシメにラーメンなんかいいと思ってるんだがまさかラーメンなんかも」
「ある」
「どうなってるんだこの国は」
 ついにラーメンまで見せてきた士浪に、顔には出さぬが茫然とするレスター。
 そしてそれをジト目で眺める淡雪。
「ヴェルナッザ様ってもしかして三枚目なんじゃないかしら……」
 意味もなくため息をついてしまう淡雪。
 しかし彼女はレスターたちのほうを見たまま顔の向きを変えない。
「コケーーッ!!」
「なっ、それは私が頼んでおいた大トロですよ~! 彩雪さんには渡しませんっ!」
「コケェーーッ!!」
「さ、さっき戦った鳥さんより何倍も力強い動きです~……!?」
 すぐ隣でセレネテアルと彩雪がガッチガチでやりあってるから。
 今にもグラビティとか飛びそうな圧だったから。
(「どうしてアノン様の食べようとした物を狙うのさゆきち……お願いだからせめて自分か私が頼んだやつにして……寿司を巡ったガチ戦闘とか見たくないわ!」)
 虚空を見つめて無言の叫びを発する淡雪。
 しかし友達と鶏の戦いは収まる気配がなかった。むしろ余波がげしげし肩とか背中に当たるぐらい激しかった。恥ずかしくて死にたかった。
「彩雪さんと私、どちらが上か格付けする時が来たようですね……」
「コケーッ!」
(「やめて2人とも……因縁ぶった雰囲気出さないで……あぁっ、これ以上聞いていたら恥ずか死してしまうわ! 何か別のことに意識を……」)
 ぶんぶんと首を振り、どこかに逃げ場所を求める淡雪。
 すると目に入ってきた。
 未だ1枚の皿も空けず、じっと寿司のレーンを見続けているキリクライシャの姿が。
「……りんご味」
 目の前を流れてきた林檎ゼリーを無意識に取るキリクライシャ。
 これが初ゲットである。
 スプーンを取り、林檎の風味たっぷりのゼリーをもぐっと口に入れて……しかし依然として回転するレーンを凝視するキリクライシャ。
「……アップルパイ、まだかしら?」
 ゆっくり流れてゆくレーンを追って。
 キリクライシャはただひたすらアップルパイの到来を待ちつづけていた。
 仲間たちがめっちゃ食って回転寿司を堪能しちゃっている中、ただただ雨に打たれる石のようにアップルパイを待ち望んでいた。
「……なかなか来ないわね、リオン」
(「セサンゴート様……どうしてタッチパネルで注文できることに気づかないの……」)
 待ち疲れて膝上で伸びていたバーミリオンを撫でるキリクライシャ。
 見かねた淡雪が好きに注文できることを教えたとき、キリクライシャとバーミリオンはタブレット端末を見つめてしばらく固まったという。

●歳
 小さなコップに湛えられた、透き通った酒。
 刺身を食べてからくぴりと呷って、淡雪は熱い息をついた。
「うん……寿司もいいですけれど、私はこれで十分ですわねぇ……別にお腹にお肉付いてきたからご飯を控えてるわけじゃありませんわよ。本当ヨ」
 誰に問われたわけでもなくダイエット事情を告白する淡雪さん。アップルが『日本酒はOKなの??』とか訴えてくる顔文字は見えません。淡雪さんはアップルのツッコミが見えない病にかかっています。
「寿司が食べられなくても回転寿司を楽しむことはできますわ……」
「酒はいいよなぁ。このカワハギの肝の、舌に粘り付くような旨味を酒で流すのが……もう、な」
「え、何ですのそれ気になりますわ!」
 グラハが食ってる、ちょこんと肝が乗ったカワハギの握りに食いつく淡雪さん。
 そしてレスターさん。
(「確かに酒が美味く飲めそうだ……っと、いかんな」)
 小さくかぶりを振り、イクラがはみ出さんばかりの軍艦巻きを口に放るレスター。禁酒中の男はぷちぷちと弾けるイクラの旨味に集中して酒のことを忘れようとするが……わざわざ頑張るまでもなくすぐに頭は切り替わった。
「美味いな。こっちのでかいサーモンも脂が乗って……」
 もぐ、もぐ、もぐ、と寿司を平らげるレスター。
 40歳ながら食欲衰えぬ健啖家は、ちゃかちゃかと皿を積んでゆく。
 一方、痛恨の出遅れをしたキリクライシャさんも、せっせと林檎スイーツを食べていた。
「……林檎のタルトも、美味しい……」
 口に含んだ程よい甘さを、瞑目して味わうキリクライシャ。
 そしてごくんと飲みこむと、視線を落として、バーミリオンが自分に向けているメニュー表に目を通す。目ざとくスイーツメニューをチェックしていたバーミリオンが「これもこれも!」とばかりに教えてきていたのだ。
「……ケーキにも、たくさん種類があるのね。今度はこれにしましょうか」
 しゅぴぴぴ、とタブレットを連続タップするキリクライシャさん。
 次々流れてくる林檎スイーツを見て、ディミックは少し驚いていた。
「スイーツも揃えているとはね。こう魅力的な品ばかりでは客としても大変かもしれないねぇ」
「大変? わかってねぇな、ディミックのおっさん」
「ええ。イルヴァさんはわかってないのです」
 フォークでケーキを切り取る士浪、プリンをスプーンでぷるぷるさせる真理。
 2人は眼光鋭くディミックを一瞥すると――あーんと甘やかなそれを口にした!
「デザートは別腹、ってやつなのですね」
「ああ、別腹だな」
「……」
 紳士なディミックさんも拍子抜けしてしまうぐらい、どうでもいい言葉だった。
「……しかしまあ、今日1日で回転寿司というものは理解できたよ」
 気を取り直したディミックが、周りの席を見渡す。
 そこにはいくつもの塔が立っていた。
 仲間たちが築き上げた、空き皿の塔である。
「とにかく、回転寿司とは食べすぎてしまうほど楽しいものなのだとね」
「……違いない」
 からんと塔の頂上に皿を乗せたレスターが、呆れたように笑んだ。
「会計が少し怖い、な」
「何を言ってるんですか~。ちゃんとお金も持ってきているんですし、お安い回転寿司で予算オーバーなんてそうそうありませんっ」
 海鮮汁でずずっと一服していたセレネテアルが、たんっ、と卓に椀を置く。
 そしてタブレット端末を取る。
「ん?」
 当惑するレスター。
 対するセレネテアルは、満面の笑みである。
「さあ、本番はこれからです~」
「ああ、とりあえずもう1巡だな」
「甘いもん食って休憩したし、次は何食うかね」
「コケーッ!」
「……」
 セレネテアルに続いてメニューを見始めるグラハ、士浪、彩雪を見て、レスターはやや胃もたれしてるお腹をさすった。
「若さにゃ、勝てんな……」

作者:星垣えん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年4月10日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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