●都内某所
廃墟と化した倉庫に、変身ヒーローのベルトが、大量に保管されていた。
そのベルトはリアルさが売りであったものの、『リアルなのに、変身できない!』というクレームが相次ぎ、返品されまくったようである。
その分、ベルト自体はリアル仕様であったが、それ故に『変身できなきゃ、おかしい』と言う考えが広まってしまったようだ。
その場所に蜘蛛のような姿をした小型ダモクレスが現れ、変身ベルトの中に入り込んだ。
それと同時に、機械的なヒールによって変身ベルトが作り変えられ、家電製品っぽい雰囲気のダモクレスに変化した。
「ヘン・ヘン・ヘンシィーーン!」
次の瞬間、ダモクレスが奇妙な鳴き声を響かせ、廃墟と化した倉庫の壁を突き破るのであった。
●セリカからの依頼
「リゼリア・ルナロード(新米刑事・e49367)が危惧していた通り、都内某所にある廃墟と化した倉庫でダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティ・チェインを奪われてしまう事でしょう。そうなってしまう前に、何としてもダモクレスを撃破してください」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ダモクレスが現れたのは、廃墟と化した倉庫。
この場所に保管されていた変身ベルトが、ダモクレスと化してようである。
「ダモクレスと化したのは、変身ベルトです。このままダモクレスが暴れ出すような事があれば、被害は甚大。罪のない人々の命が奪われ、沢山のグラビティ・チェインが奪われる事になるでしょう」
そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
ダモクレスは巨大な蜘蛛のような姿をしており、グラビティ・チェインを求めて攻撃を仕掛けてくるようだ。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。
参加者 | |
---|---|
金元・樹壱(修行中魔導士・e34863) |
リゼリア・ルナロード(新米刑事・e49367) |
アクア・スフィア(ヴァルキュリアのブラックウィザード・e49743) |
紺野・雅雪(緋桜の吹雪・e76839) |
ジャスティン・アスピア(射手・e85776) |
サリナ・ドロップストーン(絶対零度の常夏娘・e85791) |
●都内某所
「まさか私が危惧していたダモクレスが本当に現れるとはね。さすがに、これは放っておく訳にもいかないし、責任を取るって意味でも倒しておかないと……」
リゼリア・ルナロード(新米刑事・e49367)は仲間達と共に、ダモクレスが確認された倉庫にやってきた。
ダモクレスと化したのは、倉庫にあった変身ベルト。
本来であれば、二度と日の目を見る事がなかった玩具であった。
それがダモクレスとして目覚め、人々を襲おうとしているのだから、実に皮肉な話である。
「そう言えば、子供用の玩具なんて、定命化前は見たことなかったな。クレームが殺到と言うことは子供本人ではなく親からなのか? ……全く大人げないな」
ジャスティン・アスピア(射手・e85776)が複雑な気持ちになりつつ、キープアウトテープを使用した。
事前に配られた資料を見る限り、クレームを出したのは、子供達の親が大半。
自分達では子供を説得できなかったため、半ばヤケになって、クレームを出したような感じであった。
「でも、変身するのって、心が躍るよね? 子供達が変身できなくて、ガッカリしちゃうのも、ちょっとわかる気もするし……。資料を読む限り、少なからず、大人の人もガッカリしていたようだけど……。まあ、大人にも純真な人はいるからね!!」
サリナ・ドロップストーン(絶対零度の常夏娘・e85791)が超ポジティブな考えで、さらりと流した。
おそらく、大人達でも騙されてしまう程、変身ベルトのクオリティが高かったのだろう。
それは悲劇以外のナニモノでもないが、そこに追い打ちをかけるようにして、ダモクレスと化した事を考えると、不運の星の元に生まれた商品と言っても、大袈裟ではなかった。
「変身ヒーローのベルトか、俺も一時期は憧れた事もあったが……。まぁ、玩具だから実際には変身できなくても仕方ないな」
そんな中、紺野・雅雪(緋桜の吹雪・e76839)が、何処か遠くを見つめた。
しかし、変身する事が出来ると錯覚してしまうほどのクオリティだったのだから、そう思ってしまっても仕方のない事なのかも知れない。
もしかすると、テレビの向こう側にいるヒーローと、心を重ね合わせ、自分もヒーローになれると思ってしまったのかもと知れないのだから……。
「まぁ、実際に変身できないのは、確かに夢を壊されて、怒る気持ちも分かりますが……」
金元・樹壱(修行中魔導士・e34863)が、何やら察した様子で答えを返した。
それだけクオリティが高く、ショックが大きかったのかも知れないが、この件に限ってはメーカー側を責めるのは間違っている。
メーカー側も、なるべく作品のクオリティに近づけるため、努力した結果なのだから、もう少しマシな解決法を模索すべきだったのかも知れない。
だが、現実には怒りの矛先がメーカー側に向けられ、変身ベルトが回収される事になった。
「それが本当に変身できるものなら夢も広がるのですけど……。こればかりは仕方がありませんね」
アクア・スフィア(ヴァルキュリアのブラックウィザード・e49743)が、少し残念そうにしながら深い溜息を漏らした。
「ヘン・ヘン・ヘンシィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!」
次の瞬間、ダモクレスがケモノにも似た機械音を響かせ、倉庫の壁を突き破って、ケルベロス達の前に現れた。
ダモクレスは変身ベルトの電飾を輝かせながら、今にも変身しそうな勢いで、ただならぬ気配を放っていた。
●ダモクレス
「ほらほら見て見て、ワタシ達も変身できるんだよ!!」
すぐさま、サリナがアルティメットモードに発動させ、夏祭り装束に変身した。
「ヘン・ヘン・ヘンシィイイイイイイイイイイイイイイン!」
それはダモクレスも、嫉妬するレベルの変身ッ!
あまりに見事な変身っぷりに、ダモクレスが変身ビームを放つほどだった。
「こ、これは……!」
その攻撃をモロに喰らったジャスティンが、ハッとした表情を浮かべた。
その姿は、まるでメタル系ヒーロー。
おそらく、一時的なモノだと思うが、見た目は完璧。
何となく強くなったような気持ちになっているものの、だからと言って実際に強くなった訳では無いようだ。
それでも、何の事情も知らなければ、『メタル系ヒーローになった』と思い込んでしまうレベルであった。
「……えっ? 嘘っ! 本当に変身するの!? 何それ、凄い……!」
それを目の当たりにしたサリナが、驚いた様子で声を上げた。
予想外の出来事に、思わず感動ッ!
興奮した様子で、瞳をキラキラ輝かせ、拳をギュッと握り締めた。
「……ダモクレスと化した事で、願いを叶えたという訳か」
雅雪が警戒した様子で間合いを取りながら、ブレイブマインを発動させた。
だが、ジャスティンの反応を見る限り、影響があるのは、見た目だけらしく、何か特別な力を与えたわけではないようだ。
「ヘ、ヘ、ヘンシィィィィィィィィィィィィィィン!」
その事実をダモクレス自身が、自覚しているのか謎ではあるものの、ゴキゲンな様子で変身ビームを放っていた。
「気の毒な存在かもしれないけど、倒させてもらうぞ」
その間に、ジャスティンが恰好よくポーズを決めながら、スターサンクチュアリを展開した。
何となくノリノリではあるものの、その気持ちは複雑。
ダモクレスに対しては、同情する気持ちがあるものの、このまま放っておいたとしても、犠牲者達が増えるだけ。
そういった意味でも、ここで迷いを捨てて、ダモクレスと戦う必要があった。
「それじゃ、まずは景気よく、そーれっ!!」
続いて、サリナが紙兵散布を発動させ、団扇で紙兵を扇いで巻き上げ、辺りにぶわっと散布した。
「ヘ、ヘ、ヘンシィィィィィィィィィィィィィィィィィン!」
次の瞬間、ダモクレスがケルベロス達を狙うようにして、変身ミサイルをぶっ放した。
それはまるでヒーローが変身する時の如く、ド派手で、カラフル!
「さすがに、これはマズそうですね」
その事に危機感を覚えた樹壱が、自らの身を守るようにして、変身ミサイルから逃げていった。
それと同時に、変身ミサイルが次々と地面に落下し、何かが変身しそうな勢いで、ド派手な爆発が起こった。
それは格好良さすら感じてしまうモノであったが、変身ミサイルが落下した場所には、大きな穴がいくつも開いていた。
「……先ずは、その動きを封じてあげるわ」
その間に、リゼリアが死角に回り込み、ダモクレスにスターゲイザーを炸裂させた。
それが原因で、ダモクレスは狙いを定める事が出来ず、見当違いの場所で、変身ミサイルが爆発していた。
「今まで、よくもやってくれましたね。今度は、こちらの番です。この卓越した技術の一撃を喰らってもらいましょうか」
それに合わせて、樹壱が達人の一撃を仕掛け、ダモクレスの装甲部分を破壊した。
「ヘ、ヘ、ヘンシィィィィィィィィィン!」
装甲部分をダモクレスは、怒り狂った様子で変身アームをいくつも伸ばし、ケルベロス達に反撃を仕掛けてきた。
それはまるでメタル系ヒーローが変身しているような感じであったが、感情的になっているせいか、恰好良さのカケラもなかった。
しかも、その事が災いして、隙だらけ。
普通に考えれば、変身中は攻撃しないのが御約束かも知れないが、ダモクレスや変身ベルトにも適用されるのか、怪しいところ。
例え、御約束を守ったところで、ダモクレスが感謝する事もないため、ケルベロス側にメリットはまったくない。
「貴方に悪夢を見せてあげるわよ」
そのため、リゼリアが『考えている時間が勿体ない』と言う結論に至り、ダモクレスにトラウマボールをぶち当てた。
「ヘ、ヘ、ヘ、ヘン、シ、シ、シィン……」
その影響でダモクレスは、変身ベルトが売れず、クレームが殺到した悪夢を見せられ、苦しそうに機械音を響かせた。
それはダモクレスにとって、文字通り……悪夢!
いくつもの心ない言葉が、ダモクレスの心を傷つけ、容赦なく蝕んだ。
「次の心だけでなく、その身体を、内部から汚染してあげましょう」
その隙をつくようにして、アクアがケイオスランサーを仕掛け、鋭い槍の如く伸ばしたブラックスライムでダモクレスを貫き、損傷部分を汚染した。
「ヘ、ヘ、ヘ!」
それと同時に、ダモクレスが激しく体を震わせ、大量のオイルを血の如く垂れ流した。
「さぁ、皆に士気を高めるパフォーマンスを与えよう」
その間に、雅雪がブレイブマインを発動させ、仲間達の背後にカラフルな爆発を発生させ、爆風を背にした仲間達の士気を高めた。
「どんどん行くよ、ソイヤッ!! ソイヤッ!!」
その流れに乗ってサリナが九涙裂き(クルイザキ)を仕掛け、ダモクレスの脚部に、えげつない損傷を負わせ、移動を不可能にした。
「虚無球体に飲み込まれ、消滅してしまいなさい」
それに合わせて、アクアがディスインテグレートを発動させ、不可視の『虚無球体』を放って、ダモクレスを完全に消滅させた。
「何とか倒す事は出来ましたが……」
樹壱がホッとした様子で、ダモクレスがいた場所を眺めた。
おそらく、ダモクレスと化した変身ベルトにとっても、不本意な最後。
ある意味、二度目の死であった。
それでも、これ以外の結末が浮かばないのが、悲しいところ。
例え、このまま眠っていたとしても、日の目を見る事など、なかったのだから……。
「これ作ってた会社は、結局潰れちゃったのかな?」
サリナが変身ベルトの保管されている倉庫を眺め、不思議そうに首を傾げた。
さすがに、そこまでは資料に乗っていなかったため、詳しい事は分からないが、どのダンボールも今まで埃を被っていた形跡があったため、しばらく放置されていた事は間違いない。
そんな中、ジャスティンが身勝手なクレームを付けられた変身ベルトに同情し、その場で両手を合わせるのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年3月31日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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