春めく猫の街

作者:崎田航輝

 花咲く春が訪れて、海風にも華やかな薫りが溶けていく。
 新たな季節の訪れを喜ぶように──そこに響く猫の声も長閑で伸びやかだった。
 緑豊かな山を背に抱き、広い海に面した港町。
 栄えた都会からは遠いけれど自然と融和した景色は美しく、穏やかでゆったりとした空気が流れている。
 そんな街にはそこかしこに猫が歩み、游び、寝転んでいた。
 過ごしやすい環境でもあるからだろうか、塀や屋根を飛び越え、公園で日向ぼっこして、神社の境内を横切って。暖かくなって一層沢山の猫が垣間見える。
 大きな街ではないけれど、猫を見るために少なくない観光客も訪れる。茶虎に黒白、三毛に灰色、歩けば猫に出会う中で、人々は存分に猫達を可愛がっていた。
 と、そんな猫に溢れた景色の中へ遠くから歩んでくる大男が一人。
「ええい、どけ、邪魔だ……!」
 猫を掻き分けるようにして、威嚇の声を上げるそれは鎧兜の罪人、エインヘリアル。
「はっ、ようやく見つけたぜ。狩りがいのある得物をよ」
 視線の先に人間の姿を見つけると、そこで喜色を浮かべて剣を抜き放っていた。
 人々は悲鳴と共に逃げてゆく。だがエインヘリアルは逃すものかとそこへ追いつき、襲いかかっていった。

「集まって頂きありがとうございます」
 柔らかな陽光の差すヘリポート。
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)はケルベロス達へと説明を始めていた。
「本日出現が予知されたのはエインヘリアルです」
 アスガルドで重罪を犯した犯罪者。コギトエルゴスム化の刑罰から解き放たれて送り込まれる、その新たな一人ということだろう。
 現場は野良猫の多い港町で、それを目当てに訪れる観光客も多数いる。これを放っておけば人々が危機に晒されるだろう。
「猫さんの平和のためにも、この敵の撃破をお願いしますね」
 戦場は港にほど近い、開けた道。
 無論、多くの人がいるが……今回は警察の協力で事前に避難が行われる。こちらが到着する頃には人々も逃げ終わっていることだろう。
「皆さんは猫さん達を逃してあげつつ待ち伏せし……敵が現れたら迎撃してください」
 周囲の環境を傷つけずに倒すこともできるはずだ。
「無事勝利できれば、街を散歩したり猫さん達と遊ぶ時間もあるでしょうから。ぜひ撃破を成功させてきてくださいね」
 イマジネイターはそう声音に力を込めた。


参加者
メリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)
輝島・華(夢見花・e11960)
ランドルフ・シュマイザー(白銀のスマイルキーパー・e14490)
マイヤ・マルヴァレフ(オラトリオのブレイズキャリバー・e18289)
キリクライシャ・セサンゴート(林檎割人形・e20513)
カシス・フィオライト(龍の息吹・e21716)
キャルディム・ヴァレファール(黒猫は自由を求め天意に叛逆す・e84163)

■リプレイ

●海風
 波音が耳朶を撫ぜ、潮風が薫る。
 長閑な港町。そこに交じる猫の鳴き声にキャルディム・ヴァレファール(黒猫は自由を求め天意に叛逆す・e84163)は道を見回していた。
「猫がいっぱいね」
 楽しみ、と。心に素直に思う。
 何せ眺める程に無数の猫が垣間見えるのだ。
 人々は既に退避を始めている。故にそれを見送った輝島・華(夢見花・e11960)は紅桔梗の瞳を猫達へ向けていた。
「では、猫さん達も住民の方と同じ方向へ避難させましょう」
「そうね」
 頷くキャルディムは早速、たむろする黒猫達へしゃがみ込む。
「後で遊んだげるから、アンタ達はちょっとどっか隠れてなさい」
 すると猫達はなーご、と声を返す。キャルディムを自分達の仲間と感じ取ったか、素直に従い始めていた。
 道の端で丸くなっている白猫には、ランドルフ・シュマイザー(白銀のスマイルキーパー・e14490)が自身の尻尾を巨大猫じゃらしにして。
「ほらこっちだ。今は離れとけ」
 ふるふると注意を引くと、その猫はにゃあにゃあと誘導されていった。
 そんな中でも子猫が元気に走り回っていると。
「猫、ねこ、ネコ……」
 マイヤ・マルヴァレフ(オラトリオのブレイズキャリバー・e18289)は目をくるくる回しながら、それでも匣竜におやつを持たせる。
「ラーシュも協力して!」
 ふたりで一緒に封を切り、そのまま与えつつ──。
「ほら、こっちだよ、安全な場所で待っててね」
 飛びついてくる猫を街の中の方へ連れていったのだった。
 港の傍の子猫達は、ラウル・フェルディナンド(缺星・e01243)がおやつで引き付けつつ、ぽんぽんとボールを転がして。
「さあ、向こうで遊んでおいで」
 誘うように神社の方面まで案内。人に慣れて動かぬ猫も、そっと抱えて連れ出していく。
 塀や柵、草むらといった隙間に紙袋を置くのはキリクライシャ・セサンゴート(林檎割人形・e20513)。
 狭い所が好きな猫が、頭からごそごそ入ってくると──そこを優しく捕まえて、戦場外へと運んだ。
「……逃げ遅れた猫は、いないかしら……」
「わたしが見つけて、連れて行くよ」
 と、笑みを返すのはメリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)。
 敵の気配を感じてか、隅で固まり動けなくなっている猫が居れば──メリルディは白翼をふわりと広げて飛翔。優しく抱きかかえて離れた街中へ降ろしていく。
 静寂が訪れれば、周囲を見て回っていたカシス・フィオライト(龍の息吹・e21716)が、竜翼でひらりと降り立っていた。
「残っている猫はいないよ。後は……戦うだけだね」
 と、言うと反対方向へ視線を向ける。
 その先に──道を歩んでくる巨躯の姿が見えていた。
 獲物を探して彷徨う、罪人だ。
 皆で頷き合うと、先ずはラウルがその面前に立ちはだかっている。
 やあ、とかける言葉は柔らかに。けれどその奥に澄んだ戦意を秘めさせて。
「君が咎人か。長閑な港町の中、愛らしい猫達が穏やかに寛げる場所を襲うなんて……いい度胸してるじゃないか」
「もう逃げてもらったけど、もし一匹でも傷つけたら許さないからね」
 勿論人間にだって手出しさせないけれど、と。
 キャルディムも包囲しながら言えば、罪人は此方を見回していた。
「……お前ら、番犬か」
「そういうことだ。どうする? 借りてきた猫みてえに大人しくしてくれりゃ、コッチも楽なんだがな」
 と、ランドルフは腕を広げてみせる。
 罪人は無論、剣を握り締めていた──故に、ラウルは声音をナイフのように尖らせて。
「──相応の報いは覚悟してるんだろうな」
 刹那、跳躍して風纏う蹴り。烈しい初撃で罪人の顎を打ち払った。
 傾いだ巨体へ、ランドルフも走り寄り一撃。
「こうなったら、楽に死なせるつもりはねえぞ!」
 業風の如き蹴りで足元を蹴り砕いた。
 マイヤも大空へ翔び上がっている。
「可愛い猫達を守るのはわたし達の使命だよ! 弱い者いじめみたいなマネは絶対に許さない!」
 そのまま滑空して蹴り落としを見舞うと、声を明朗に響かせて。
「行くよみんな! 獲物はエインヘリアル!」
「うん」
 応えたメリルディも『粉砂糖雨』。星の如く燦めく粉砂糖を撒き、巨体を滑らせ動きを阻んだ。
 罪人はよろめきながらも氷波を放つ。だが華が杖先から雷光の蕾を花開かせ、皆を眩く癒やすと──。
「さあ、ブルーム」
 華の声音に応えたライドキャリバーが、箒が宙を滑るかのように加速。花風と共に突撃を敢行していった。
 その隙にカシスもロッドを翳して。
「雷の障壁よ、仲間を護る力となってくれ」
 ばちりと閃光を瞬かせて天空より稲妻を招来。弾ける雷壁で皆を回復防護する。
 キリクライシャも蔓を撓らせ、潤沢な煌きを湛えた林檎を生らせていた。その爽やかな芳香で後方に護りを拡げると──。
「……リオン」
 言葉を受けたテレビウムのバーミリオンが麺棒で一撃、罪人へ反撃を叩き込む。
 罪人も張り合わんと刃を振り上げた、が。
「無駄よ」
 キャルディムが剣の双刃へ粒子を収束。烈しいビームで剣先を弾き上げる。
 直後にはランドルフが懐へ入り込んでいた。
「コイツは鎧じゃ止まらねえぞ! しっかり味わいな!!」
 刹那、渦巻く螺旋を宿した掌打。旋風の残滓と共に巨体を吹き飛ばす。

●決着
 浅い息で立ち上がる罪人は、既に深手。
 だがそれ故に、声音には憎しみが浮かんでいた。
「やってくれたな……猫も人も、……街ごと破壊してやる……!」
「そんなことは、許さないよ」
 人にも猫にも何の罪もないのだから、と。
 カシスが怜悧に返せば、華も力強く頷いている。
 今自分が飼っている大切な猫も、ここのような港町で出会ったから。
「こんな素敵な街をエインヘリアルの好きにはさせません。私達が守ってみせます!」
「そうだね。守り切るよ」
 人間はもちろん、猫にだって犠牲になってほしくない。故にメリルディは風を滑り巨躯の横合いを取ると、花咲く蔓で膚を咬み裂いた。
 血潮を散らす罪人を、キャルディムは無数の光剣で縫い付ける。
「要するにアンタはお呼びじゃないってこと。だからさっさとくたばりなさいよカス野郎」
 同時、噴火させた溶岩で包みながら光の鎖で縛り、火柱を爆破させ宙へ。
 そこへ光刃を縦横から放ち串刺し。『シャイニングイラプション』──耀ける衝撃の連鎖に、巨体は倒れ込んだ。
「……まだ、だ。俺は狩りを……」
「まだ分からねえか。猫の手を借りるまでもねえ。キッチリ叩き込んでやるよ」
 どっちが狩られる側なのかをな、と。
 ランドルフは肉迫して紅の刃を踊らせる。
「授業料はテメエの命だ!」
「がっ……!」
 血煙に塗れた罪人は、声を零しながらも剣を掲げた、が。
 そこに舞い降りる風。
「……させないわ」
 林檎が樹から落ちるように。直下に羽撃いたキリクライシャが彗星の如き蹴りを打ち込んでいた。
 膝をつく巨躯は、それでも殺意を収めず光の波動を飛ばすが──。
「その邪な心、燃やしてあげる!」
 焔の流線を描いてマイヤが蹴り。巨体を下がらせながら、相棒へエールを送った。
「頑張ってね!」
 鳴き声で応えたラーシュは、飛来していた波動を盾として受け止める。すぐ後には華がはらりと魔法の花弁を降ろして苦痛を癒やし──。
「もう少しですわ」
「じゃあ、俺が施術を」
 継いだカシスが小さな雷の刃で切開。魔力の糸で縫合し跡まで消し去ると──続けて雷を力の源泉に返るよう、メリルディへ与えた。
「援護するよ。強力な攻撃をお願いするね」
 頷くメリルディが幾重もの斬線を閃かせると、ラウルは同時に『弥終の花』。指先の軌跡へ花を咲かせ、無限の彩と香で咎人の心を囚えてゆく。
「後は頼む」
「ああ、やってやる」
 ランドルフは朦朧とする巨躯へリボルバーを突きつけた。
「喰らって爆ぜろ、Hunter気取り! コギトの欠片も残さず逝きな!!」
 鮮烈なマズルフラッシュを焚かせ『バレットエクスプロージョン』。爆裂する弾丸で巨躯を焔に散らせていく。
「これでわかったろ、ドッチが獲物だったか。ご愁傷様だ」
 くるりと回して銃を収める。火の粉を海風が流すと、鎧の欠片すら残ってはいなかった。

●猫街
 潮騒に猫の声がこだまする。
 戦いの痕を直した番犬達は、人々へ無事を伝えて平穏を齎していた。猫達も戻り始め、猫だらけの景色が帰りつつある。
 番犬達もまた街へ散歩に出てゆく──そんな中、沢山の猫に埋もれた影があった。
 麗らかな公園の一角。
 すぅすぅと伏せたお腹を上下させるそれは……銀色の狼。猫達がその毛並みに寄り添って温まる中、一緒になってお昼寝をしていた。
 道行く猫も目を留めるその狼は……紛れもない、ランドルフが巻いていたのと同じマフラーを着けている。
 歩む人々も、時折物珍しげに見つめる中で……狼自身はそれも気にせぬようにゆったりと寝息を立てていた。

 道端の猫の群れを、メリルディは少し離れて見ていた。
 遊んでくれそうな子を探す為だ。
「あっ、あの子──」
 と、その中で目が合ったのは先刻逃してあげた一匹。白に薄っすら橙を刷いた色の、綺麗な猫だった。
「遊んでくれるの?」
 声をかけるととことこ歩いてくるので、メリルディはネズミ型ミニカーを用意。するとなーごと鳴いて、猫が走ってくるので暫し追いかけっこ。
 そのまま上手く自分の傍に誘うと……猫用かつおぶしを取り出した。
 猫は駆け寄って、もふもふぱりぱり。存分に味わって、ごろごろと懐いてくる。
「美味しかった? 少し休もうか」
 膝の上に乗ってくると、メリルディはそのまま日向ぼっこ。
「今日は、暖かいね」
 快い温度の中で、長閑な時間を過ごした。

 春の陽光と、海の香りを包んで流れる風。
 心地好い空気に白金の髪を靡かせ、ラウルは石畳の階段を上って神社へやってきた。
 すると境内には、のんびり日向ぼっこしてる猫達の姿。
「寛いでいるね」
 目元を和らげ見渡す。
 賽銭箱で寝転がる茶猫、灯篭の上で毛繕いする虎猫。歩みつつあくびする斑猫。どの姿もとても愛らしくて、心が癒される思いだ。
「──おや」
 と、足元を見れば、黒猫が擦り寄ってきていた。
 ラウルはそっと屈んで喉元を優しく撫でる。
「君達はまるで狛猫みたいだね」
 福々しい顔で喉を鳴らす可愛い黒猫に、双眸を細めた。
 優しい風の吹く、猫達の楽園。こんな場所だからこそ──あの温かな瞳を心に浮かべて。
「また会いに来るよ」
 次は友人と一緒にね、と柔く笑む。にゃあという猫の返事を聞きながら、歩み出す心は穏やかで、楽しみな気持ちだった。

 右に猫、左に猫。
 屋根の上や物陰にも見えるその姿を、華は歩みながら確認していた。
「猫さん達は皆、無事のようですね──」
 すっかり日常の空気というように、どの猫も遊び、眠り、ひだまりに転がって各々の時間を過ごしている。
 公園の広場で、華はそんな光景に心和ませながら……猫じゃらしも使ってみた。
「こっちにおいで、一緒に遊びましょう」
 すると、にゃっ、と反応したキジトラと三毛が小走りに寄ってくる。華は芝に座ると膝に乗せてそっと撫でた。
 柔らかな毛並みに触れる度、二匹はごろごろと目を細める。
 時がゆったり流れる、春の昼下がり。華は暫し暖かな時間を寛ぐと──最後は抱っこしてお別れ。
「楽しかったです、どうもありがとう」
 またきっと来ますね、と。
 こちらを見つめる猫達に少しだけ名残惜しい気持ちで、手を振った。

 マイヤは戦場から遠くに逃げていた猫探しへ。
 街の奥、静かな並木に赴くと……そこに沢山の猫が溜まっているのを見つけていた。
「まだ怯えてるのかな? もう大丈夫だよ」
 声をかけながら、同時に取り出すのはめざしだ。
「これで来てくれるかな……ラーシュもいる?」
 と、差し出してみると、ラーシュは喜んでそれをはぐはぐ。
 するとそんな様子を見てか、木陰から猫達も少しずつ出てくる。
「お疲れ様」
 静かな灰猫に、やんちゃな茶虎。マイヤはそれぞれにめざしをあげて労った。
 猫達はにゃーごと応えるように鳴き、めざしを噛み始める。そうして他の猫達も集まり賑やかになった。
「こうやって穏やかな時間を過ごすと、無事終わったって思えるよね」
 もふもふと、寄ってきた猫の毛並みを撫でながら。
 頑張って良かったと、マイヤは平和を実感していた。

「この辺りは景色が綺麗だね」
 潮風の吹く路は、家並みも海も垣間見えて美しい。
 カシスはそんな眺めの中を散策中。足元には深いグレーが藍色を帯びて見える、艷やかな猫がついてきていた。
 散歩を楽しむカシスの雰囲気に惹かれたのだろう、既にそれなりの距離を共にしている。
 すると、そこに追随するように茶猫が一匹、サバ白猫が一匹。そのうちに群れとなるように多くの猫が集まった。
 浜を歩み、坂を上り、階段を越えて。
 公園の芝に座ると、猫達はカシスの肩や足に乗ってきた。
「やはり猫と一緒にいると、平和を実感できるよね」
 そんな感触に微笑みつつ。カシスは和やかな空気を味わいながら、猫達を撫でて──また散歩へ歩み出していく。

「……あ」
 公園のベンチの傍。
 キリクライシャは、先刻袋へ入れて猫を逃した場へ赴き──その姿を見つけていた。
「……心穏やかに待てたかしら」
 しゃがんでそっと覗くと、その猫は返事をするように、なー、と鳴く。
 ここに運んだ他の猫も、全て元気だ。
「……ここで、過ごしていてくれてありがとう」
 お礼というのは変かもしれないけど、と。
 キリクライシャはにぼしを取り出して差し出してみる。
「……食べる?」
 すると、にゃご、と反応した猫達が群がってきた。皆にあげると、キリクライシャは次に猫じゃらしをふりふり。
 ごろごろ転がる白猫や、バーミリオンが持つ手毬を追いかけるサバトラ猫達と共に──麗らかな時間を過ごしていく。
「……ここの猫達は、人と共存しているのね」
 そして街並みを見れば、人に懐く猫が多く見えるから……実感するように、そんな優しい景色を眺めていた。

 キャルディムはなだらかな丘に座っていた。
 そこには青空の下、沢山の猫達が居る。キャルディムはそんな子猫や若猫、親猫達をゆっくりと撫でていた。
「はあ、やっぱ人といるより猫といる方が落ち着くわ」
 にゃあ、と快さげに鳴く黒白の猫を見下ろしつつ……軽く息をつく。
「アンタ達は仲間がいっぱいでいいわね。まああたしは別にそんなのいらないんだけど」
 声音は心の全てを映したものではない。
 けれど、今はただ猫達だけを相手に静かに過ごし──遊びたそうな子猫には、魔法の光球をボール代わりに出して。
 ぽんぽんとつつき合いもしながら、陽が落ちて深い夜になるまで遊びを続けた。
「そろそろ、緋色が来てくれるかしら」
 そして静寂の中、猫達もそれぞれの夜に帰り始めると──キャルディムも立ち上がって歩み出していく。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年3月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 4
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