もうじき春ですけど鍋しません?

作者:星垣えん

●鍋は思った
 ぽかぽか陽気に包まれた、草原。
 たとえば草の上にシートなぞ敷いて、たとえばブランケットなど羽織ったら、春の匂いに誘われてたちまち瞼が重くなりそうだ。
 岩のそばにころりと捨てられていた電気鍋も、まるで眠ったようだった。
 どこの阿呆が捨てたのか。
 なんだかポップなイエロ―カラーのボディは、晒された風雨でくすんでいる。
 きっと何事もなければ、ひっそりと単なる金属塊になっていただろう。
 しかし、彼(?)の運命は違った。
 ひらひらと空から落ちてくる極小ダモクレス。
 着地した蜘蛛のようなそれは、わたわたと脚を遊ばせて、開きっぱなしの蓋から電気鍋に潜りこむ。
 ――で。
「ナベェェェェ!!!」
 お察しのとおり復活した。
 むむむん、と直径2mぐらいの馬鹿げたサイズに巨大化して、電気鍋ダモクレスはてけてけと辺りを歩きはじめる。
 そして、気づいて立ち止まる。
「ショクザイ…………」
 自分はなんだって美味しくできる電気鍋だけれど。
 肝心の入れる物がない。
 立ち塞がる現実に絶望した電気鍋ダモさんは、しょんぼりと項垂れるのだった。

●鍋パしたいと思った
「電気鍋にダモクレスが……」
「電気鍋にダモクレスです……」
「なんでも美味しくできる電気鍋が2mに……」
「なんでも美味しくできる電気鍋が2mです……」
 あまりに生産性がない会話をしながら、小柳・玲央(剣扇・e26293)と笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)は空を見ていた。
 雲はゆったりと流れてゆく。
 なんだかとってもピクニック日和である。
「外で食べる食事は美味しいだろうなあ」
「みんなでわいわい食べるのは楽しそうですね」
 ふふふふ、と笑いはじめる始末の玲央とねむ。
 これ説明とかしてくれるのかな……とか心配になった猟犬たちだったが、ラッキーなことに仔細を記した資料(A4が1枚)が落ちてたので拾って読んでみた。

 草原に電気鍋ダモクレス現る。
 今はしょんぼりしてるだけだが、いずれ暴れ出してしまうかもしれない。
 ケルベロスとしてそんな事態は看過できない。
 急いで食材を持ち寄らないと!!!

 要約すると、こんなもんだった。
 もう鍋パすることしか考えてねえじゃねーか……。
「というわけで野菜やら肉やら魚やら、行く途中で買っていくしかないよね♪」
「急がないと危ないということもないので、少し寄り道するぐらいは大丈夫です! なので途中でスーパーに寄って食材を調達しましょう!」
 すでにスマホとか弄り出して、立ち寄れそうな店を検索している玲央とねむ。
 もう鍋パを楽しむことしか考えてねえじゃねーか…………。
 しかし文句をつけても始まらないだろう。
 猟犬たちは諦めて覚悟を決めた。
 具体的には、持っている財布の中身とか確認した。
 皆のそのムーブを確認した玲央は『準備はできたようだね』と言わんばかりの、思わせぶりな笑みを浮かべた。
「さ、それじゃ行こうか。鍋奉行が待つ草原に」
「果たしてみんなが思い描くように食べられるかわかりませんが……きっとみんななら鍋奉行さんになんて負けないって信じてます!!」
 うん、そうだねー。
 とか返しつつヘリオンに向かおうとして、ぴたっと止まる一同。
 え、もしかして今日のダモさん、食い方にケチとかつけてくるんすか?


参加者
新条・あかり(点灯夫・e04291)
マロン・ビネガー(六花流転・e17169)
羽鳥・紺(まだ見ぬ世界にあこがれて・e19339)
小柳・玲央(剣扇・e26293)
陽月・空(陽はまた昇る・e45009)
犬飼・志保(拳華嬢闘・e61383)
オルティア・レオガルデ(遠方の風・e85433)

■リプレイ

●買い出し編
 大型スーパーを、鶏とモンブランがもいんもいんと歩いている。
 なに言うてんねんと思うかもしれない。
 しかし現実なのだ。
 太った鶏の着ぐるみを着た新条・あかり(点灯夫・e04291)と、モンブランの着ぐるみを装備したマロン・ビネガー(六花流転・e17169)が現実として闊歩しているのだ!
「ニンニクも胡麻油も買ったし、あとはキムチだけかな」
「野菜もキノコも豚肉も買ったのです。これで万全なのですー」
 大量の食材に加え、使い捨ての食器類やら菜箸やらお玉やらで祭り状態になってるカートをごろごろ引いて歩く鶏とモンブラン。
 その様子は控えめに言っても癒やしだった。
 すれ違う買い物客が5秒ぐらい見つめてから「可愛いわー」とか言い出すのを見て、小柳・玲央(剣扇・e26293)はふっと笑う。
「わざわざアイズフォンを使って、スーパーのセール情報を検索した甲斐があったね」
「計算どおりみたいな顔して何言ってるんですか、玲央さん」
 じっと無表情を向ける羽鳥・紺(まだ見ぬ世界にあこがれて・e19339)。
 その手には鮭とキノコ類が入った袋。
 すでに美味しい食材をお安くGET済みである。
「でもお店の情報は助かりました。ありがとうございます」
「これぐらいお安い御用さ。美味しい鍋が食べられるんだからね♪」
 ウインクする玲央の両手にも、豚や牛のしゃぶしゃぶ肉、モツやら牡蠣やらホタテやらと十分な物資が揃っている。向こう3日ぐらい鍋パできると思う。
「楽しみだなぁ、鍋」
「楽しみですね、鍋」
 鍋奉行さんに早く会いたい――とか思いつつ、自動ドアを抜ける2人だった。

「近いナ! 確信はネーけど、たぶん奉行は近いゾ!」
「えぇ、私も感じます。ダモクレスがすぐ近くにいるのを」
 短い草を踏み鳴らしながら、アリャリァリャ・ロートクロム(悪食・e35846)と犬飼・志保(拳華嬢闘・e61383)がずんずんと進んでゆく。
 本能。
 本能っぽい何かが、鍋の存在を感じ取っていらしかった。
 陽月・空(陽はまた昇る・e45009)は青空をゆっくり流れる雲を見上げる。
「外で食べる鍋……美味しいね。きっと美味しい」
「なんでか外で食べる料理って美味しいですよね。ソラマルも期待して飛び回ってます」
「たくさん食べるゾ!」
 志保が頭上を飛ぶウイングキャットを指し、アリャリァリャが買いこんだ食材の袋を振ってぶんぶんと回転する。
 そんな仲間たちを最後尾から眺めて、オルティア・レオガルデ(遠方の風・e85433)は密かに頷きまくった。
「雪見鍋……楽しみ……!」
 括りつけた鞍の腹帯をギュッと締めなおすオルティア。その鞍の上には食材の袋(数十キロ)がどっちゃりと乗っている。
「あっ」
 先頭を歩いていたあかり(鶏フォーム)が、遠く前方を指差した。
 つられて全員が視線を投げたその先には――。
「ナベェェ!」
 咆哮をあげて地団駄を踏む、鮮やかな黄色い巨大鍋さんがいたのでした。

●丸投げ編
 コンロの火の上で、フライパンの中の豚肉とキムチが踊る。
 立ち昇る胡麻油の香りに、あかりは納得したようにひとつ首を肯けた。
「うん、いい感じ」
「胡麻油の良い香りですね……お腹が空いてきます」
「ナベェ……」
 鼻腔をつく香ばしさに、志保とソラマルとダモさんも思わず唸る。
 平和だった。
 皆で下拵えしてるさまは普通に平和だった。
「白菜、そぎ切り……白葱、斜めに……鶏肉も、なるべく揃えて……」
 オルティアもまさに真剣。声をかけるのも憚られる集中力で野菜と肉を切っている。
 滑らかな包丁さばきで作業は順調に済んだ。
 が、オルティアの表情はまだ緩まない。
「問題は、大根おろし……」
 おろし金を持つセントールの目に映るのは、大量に買ってきた大根。
 そう、雪見鍋となれば大根おろしが必要だ。
 鍋がでかいならば、相応の量が求められる。
「がんばる、がんばる……!」
「オルティアさん、がんばって!」
「無事に雪見鍋ができたら、私の湯豆腐と交換こしましょう!」
「ナベェ!!」
 大根をおろし金にパイルダーオンするオルティア。あかりと志保とダモさんが温かい応援を送っているさまは何とも微笑ましい。
 一方、違うところでは不穏な動きがちらちら。
「フカヒレとコウモリの干物ハ……マダ戻ってナイか」
「コウモリ……」
 ぴくりとエルフ耳を動かす紺。
「土筆もイッパイ拾ってキタから使うゾ! 袴を取ったら水に浸シテ……取った袴のほうハ天道虫とじゃこと一緒に巾着に詰めておくカ!」
「天道虫……」
 ぴくりと頭上の栗(着ぐるみ)を揺らすマロン。
 アリャリァリャである。好き嫌いがなさすぎるアリャリァリャさんが、切り分けた牡丹肉や山芋のかんぴょう巻きやつみれに紛れさせて、明らかにアカン食材を下拵えしていたのである。
「沢山作るカラ、ミンナも食べていーゾ!」
(「どうしたものでしょう。すごい親切ですね」)
(「同じ鍋で煮て大丈夫ですかね……?」)
 いらん厚意をふりまく少女を見て、ひそひそ話が止まらない紺&マロン。
 玲央はそんな2人の背中をぽんと叩いた。
「大丈夫。私に任せて」
「玲央さん……」
「何か秘策があるのです?」
「まあ見ていて」
 2人に微笑んだ玲央は、すすっとダモさんの隣に移動。
 そして姿勢を正して横からチラ見。
「奉行ダモ君、でいいかな?」
「ナベェ?」
「君なら、皆を『同時に』美味しい鍋の境地に連れて行ってくれるだろう? 私達は食べ比べもしたいんだ……どうかな?」
「そうだね。ダモさんなら出来るよ」
 ダモさんを挟みこむ形で現れる空。
 彼もまた熱い視線をダモさんに送った。
「皆が思い思いに鍋を作れる『仕切り』を……皆の鍋への期待に応えることが出来るダモさんだって信じてる」
「ナ、ナベェ!」
 はっ、と何かに思い至るダモさん。
 そして唐突に細っこいアームを生み出して鍋の中をいそいそと改造。CM1本ぐらいの早さで容積を8等分する仕切りが完成していた。
「玲央さん、空さん、本当にありがとうございます」
「鍋パーティーの平和が守られたのですー」
「「どういたしまして」」
 これでもう天道虫とか入ってこない。紺とマロンは拝み倒さんばかりに2人に頭を下げながら、てくてくとダモさんの傍に接近する。
 で。
「私は豆乳鍋が食べたいです。あなたはお奉行様とのことですし、ぜひ調理をお願いできますか?」
「私も鍋奉行さんの指導をお願いしたいです!」
「ナ、ナベェ……!」
 具材を押しつけてくる紺、ぺこっと頭を下げてくるマロンに感動するダモさん。
 お奉行様を利用する気満々の2人だった。
 ついでに言うなら、空と玲央もその手合いだった。
「鍋を仕切って取り分けてくれるなんて、良いダモさん」
「まったくだね。さあ、奉行君。ここに寄せ鍋のために買ってきた肉もあるよ」
「ナベェ!!」
 肉やら野菜やらを差し出して全権を委任する空と玲央。2人の意思を受け取ったダモさんはアームで豪快に食材をつかみ、ポポポイッと鍋に入れ始める。
「あとは待つだけだね」
「あ、奉行君。私は肉が好きだから多めにお願いね」
「すみません、私はキノコ多めで」
 使い捨てのお椀と箸を手に、ガン待ちの姿勢を取る空と玲央と紺。
 こいつぁ、最高に満喫する予感しかしやがらねーぜ!

●春先の鍋も美味い編
「ナベェ!」
「ふむふむ、引きあげるのは今です? なるほど確かに丁度いい塩梅なのです!」
「ナベェ!」
「くったり煮えた野菜も味が沁みた豆腐も美味しい……さすが奉行君! あ、ほらオルティアの椀が空きそうだよ?」
「ナベェ!」
「ありがとう、お奉行様……」
 マロンにタイミングを支持して美味しい大根や里芋を食べさせたかと思えば、空いた手では玲央にくたくた野菜&豆腐のコンボを見舞い、返す刀でオルティアのお椀にも玲央の寄せ鍋盛り合わせを投入する。
 フル回転である。
 フル回転で鍋奉行できてるダモさんである。
「玲央さんのはお肉と魚介で豪快な味だね。マロンさんのはなんだか落ち着く味」
「芋煮風を目指してみたのです!」
「ホタテも牡蠣も出汁がよく出るよね。下のほうにモツも沈んでるよ」
「どっちの鍋も、美味しい、美味しい……!」
 鍋を食べて回っては熱心に分析を進めるあかり。玲央の寄せ鍋はたっぷりの肉と野菜で食べ応え抜群だし、マロンの芋煮風は油揚げや木綿豆腐が素朴な味わいを感じさせてくれる。オルティアが涙すら流さんばかりに爆食するのも致し方なかったんや。
「食材を買いすぎて、お財布が寂しい……だから3日分は、食べておかないと……いや、4日分……」
「オルティアさん、大変なんだね」
 一心不乱に鍋を喰らうオルティアの横で、ぎうぎうの頬をもごもごさせる空。前世はきっとハムスターだったのだろう。食いだめする姿はあまりにサマになっている。
「全部ダモさんがやってくれるって素晴らしい。ちょうどよく煮えたのをお椀に運んでくれるし、家に連れて帰れないのが惜しい……」
「本当に、本当に……!」
「ダモさん、おかわり」
「私も……!」
 しみじみ語りつつダモさんにお椀を差し出す2人。秒で「ナベェ」とおかわりが提供される神機能は、なくしてしまうのが惜しい。
「ところで僕(というかダモさん)は水炊きを作ったけど、食べたい人はいる?」
「私(というかダモさん)の豆乳鍋もいい感じです。皆さんも食べますか?」
「あ、いいですか?」
「ウチも食ベル!」
 空と紺が(ダモさんに作らせた)鍋を勧めると、志保とアリャリァリャが興味津々で近づいてきた。
 昆布と鶏の旨味がきいた水炊きはおろしポン酢でさっぱりと。豆乳鍋はマイルドな口当たりとたっぷりキノコの食感が実に美味い。
 しばし瞑目して味を楽しんだ志保は、やがてホッと息をついた。
「すっきりした味わいで……これは手が止まらなくなりそうです」
「こんなニ美味い鍋を作ルとは……(ダモさんは)天才カ……」
「ええ。私が食べたいもの以外も押しつけてくるのが玉に瑕ですが」
「ナベェ!」
「やめてください。私は鮭とキノコだけで結構です」
「ナベェ!?」
 そーっと紺の椀にお野菜を仕込もうとしたダモさんが、バシッとアームをはたかれる。
 作らせはするが仕切らせはしない。
 紺はそういう女であり、キノコ好きな女であり、椀に紛れていた人参はそっと玲央の椀に忍ばせる女であり、気づいた玲央にジト目されても知らぬ顔を通せる女である。
「ところでウチの猟師鍋も出来テルけど、食うカ?」
「食べません」
 あとアリャリァリャのゲテモノ混じりの鍋を断れる女でもある。
「美味しいんだケドな……ソーカ……」(もぐぅ)
「アリャリァリャさん、気を落とさないで。キムチ鍋食べる?」
「食ベル!」
「湯豆腐もありますよ。食べます?」
「食ベル!」
 ちょっとだけしょんぼりしたアリャリァリャが、あかりと志保がよそってくれた豚キムチと豆腐を見てケロッと復活。
「キムチと豆板醤のピリッとした辛さがたまらネー……そしてこれガ出汁がジンワリ感じらレル湯豆腐とスゲー合う……オイシイ!!」
「薬味とか無くても、これで十分ですよね」
「うん、交互に食べると本当にいい感じ」
 わいわい、とピリ辛鍋と湯豆腐のコンビネーションを味わう3人。
 するとそこに、スススッ、と紙椀が横から。
 オルティアがめいっぱい腕だけを伸ばして雪見鍋を差し出していた。
「オルティアさん……?」
「湯豆腐と、交換こ……」
「あっ、そうでしたね。今お豆腐とりますね」
「よろしく……!」
 志保が湯豆腐をすくうさまを、箸を握りしめ、目を輝かせて見守るオルティア。
 4日分、食べなくては。
 そのためならば、超苦手な人とのふれあいも頑張るオルティアさんだった。

●鍋はシメまで食ってこそ編
 小一時間が経った頃。
 数多の食材と汁に溢れていた電気鍋の中は、すっかり物寂しくなっていた。
「というわけで、そろそろうどんを頼もうじゃないか」
「ナベェ!」
 スッ、と生うどんを取り出し、ダモさんに押しつける玲央。それを煮詰まった鍋に入れてアームでちょちょっと混ぜ込めば、ほかほか湯気を立てるうどんの完成だ。
 そう、すでに戦場はシメのお時間へとシフトしていたのだ!
「鍋の美味しさは残さず味わわないとね」
「そうですね。玲央さんの言うとおりです」
「うどんの喉越しがいいですね」
 3人並んでうどんをちゅるちゅるする玲央、紺、志保。
「ご飯も用意してあるから、これで雑炊も食べよう」
「あ、私も、シメは雑炊が、おすすめ……!」
 玲央がパックのご飯をダモさんに押しつけると、横合いからササッと出てくるオルティア。
 その手に収まる椀には、つやつや輝く雑炊。
 雪見鍋で残ったくたくた野菜と一緒に頬張るそれは、淀みなく喉を落ちてゆく。
「とても優しい味わい、ほっとする……」
「味を吸った米の美味しさといったら……ね」
 熱い雑炊ではふはふしつつ、ウマウマするオルティア&玲央。
 一方、アリャリァリャはずるずるとラーメンを啜っていた。
「やっぱりシメはインスタント麺ダナ!」
 ずぞぞぞと麺を吸い上げつつ器用に喋るアリャリァリャ。
 食べているのは自分で作った鍋のシメだ。猟師鍋に激辛のネジをぶっこんで味変した激辛味噌カレー鍋、それを吸ったインスタント麺は暴力的なまでの旨味がある。
「辛い鍋って、麺が合うよね」
「中華麺は万能選手なのです。優しい芋煮風にも合うのですー」
 ずるる、とこちらもシメラーメンを食べるあかりとマロン。水分の飛んだスープは中華麺とよく絡まり、ひとつ啜るたびに満足感がお腹を満たしてゆく。
 が、それだけでシメを終えることを、あかりの料理スキルは許さない。
「シメはラーメンだけじゃない! こう、ご飯とチーズを入れて煮込めば……あっという間にチーズリゾット風に!」
「一気に洋風なのです!」
「スゲー! 何ていうカ……っぽくなっタナ!」
「チーズリゾット……なるほどそれなら豆乳鍋に合うかもしれません」
 とろりとチーズのとけたリゾットに歓声をあげるマロン、アリャリァリャ。それを見て紺も即座にチーズをダモさんにパスして、濃厚チーズリゾットを作らせた。
 で、皆してパクッと食べた。
「うん、美味しい……」
「これは止まらネーやつ!」
「とろとろのチーズは反則かもしれないのです!」
「まさかこんなに満足感のあるシメをいただけるとは、今日は参加してよかったです」
「ナベェ」
 青空を見上げて、のんびりする4人と1体。
 雲はゆっくり流れている。
 時間もゆっくり流れている。
 草の上にシートを敷いて、ブランケット羽織ってごろんとしていた空はそう思った。
「やっぱりここは、お昼寝に最適……」
 たらふく食べたお腹をさすって、うとうとする空。
 彼がそのまま心地よい眠りに落ちてゆくのは、自然の摂理というやつだった。

 なお、起きたときにはダモさんは破壊されていたし、仲間たちも1人も残っていなかったようです。

作者:星垣えん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年4月7日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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