至高のジャンル! その名は触手!?

作者:雷紋寺音弥

●お化け屋敷ですか?
 普段であれば人気のない、街外れの空き家。そんな場所に身を隠すようにして集まった者達へ、今日も今日でビルシャナが、狂った教義を説いていた。
「諸君も知っての通り、今の世の中には様々なジャンルが溢れている。萌え要素ひとつ取っても、あまりに多過ぎて数え切れない程だ」
 人は、それを多様性と呼ぶ。しかし、そんな中においても千古不朽、永遠に不滅であり至高のジャンルは、唯一つであるとビルシャナは叫ぶ。
「それは……触手だ! 触手の歴史は古く、江戸時代には既に著名な浮世絵師が、タコに襲われる海女の春画を作っていた! 故に、触手というジャンルが、現代においても一番流行るべきだ! それ以外のジャンルなど、駆逐してくれる!」
 無駄に博識なところを見せつつ、ビルシャナはドヤ顔で主張する。まあ、確かにジャンルとしては古くからあるのかもしれないが……それだけで全てを染めてしまうのはどうなのか。
「そうだ! この機会に、水族館はメインの展示物をイカ、タコ、イソギンチャクにしろ!」
「制服も改訂だ! 学生服もナース服も、全部纏めて触手服に変更じゃぁっ!!」
 もっとも、周りにいる信者達は既にビルシャナの影響下にあり、誰も否定はしなかった。それどころか、この世の中のあらゆる存在に触手属性を付与すべきだと、イカれた妄言を炸裂させるのだった。

●いいえ、触手屋敷でした!!
「エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)さんが心配していたことが、本当に起きてしまいました。もう……いい加減に、おかしなビルシャナは滅びて欲しいです……」
 その日、ケルベロス達の前に現れた笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)は、なんとも嫌悪感を露わにした様子で、自らの垣間見た予知について語り出した。
「全てのジャンルの中で、触手というジャンルが一番流行るべきだっていうビルシャナが現れたんです。……もう、意味が分かりません」
 なんというか、相も変わらず安定の変態だった。しかも、単なる変態ではなく、かなりマニアックな方向に突き抜けた変態なので、それだけでも気持ち悪かった。
「戦いになると、ビルシャナは……その……ゆ、床を触手に変える光線とか、大量の触手を自分から生やして敵を縛る攻撃とか……あ、後は、中に触手の生えたお洋服を着せる攻撃を仕掛けて来ます」
 とにもかくにも、触手ばかり。「こいつ、本当はビルシャナの皮を被ったオークなんじゃね?」と思える程に、触手による攻めに特化している。おまけに、周囲には10名程の信者達がおり、戦闘になると彼らもビルシャナのサーヴァントのような存在となって、パンツの中に隠し持ったイカやタコなどの軟体生物を武器に襲い掛かってくる。
 もっとも、彼らの戦闘力はケルベロスの敵としては最弱レベル。そのため、グラビティの直撃を受ければ、簡単に昇天してしまうので注意したい。
「信者にされた人達の目を覚ますには、先に説得しておかないといけません。でも……普通の説得は、通用しないと思った方がいいですね……」
 説得の際に重要なのは、内容よりもインパクトだ。彼らは触手こそ至高のジャンルと思っているので、それ以上に刺激的で、かつ彼らの内なるリビドーを満たせるようなジャンルを提案すれば、あるいはビルシャナの教えを捨てて別ジャンルに乗り変えるかもしれない。
「こんな人達が増えたら……ねむの学校の制服も、触手服とかいうのにされちゃうんでしょうか? ……い、嫌です! そんなの、気持ち悪過ぎます!!」
 あ、いかん。今回ばかりは、ねむちゃんが本気で泣きそうだ。誰か、彼女を助けてやって欲しい……と、いうわけで、やはりというか成谷・理奈(ウェアライダーの鹵獲術士・en0107)さんの出番ですね。
「よ~し……触手だかなんだか知らないけど、変なことしたら、これでガツーンとやっちゃうぞ!」
 釘バットを振り回しながら、理奈はやる気満々である。どうか、彼女と一緒に現場に向かい、ビルシャナを討伐してやって欲しい。


参加者
青葉・幽(ロットアウト・e00321)
若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506)
シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)
エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)
田中・瑠々(無気力系・e36314)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)
ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)
シーラ・グレアム(ダイナマイトお茶目さん・e85756)

■リプレイ

●ニッチ過ぎる教義
 触手こそ、この世で最高のジャンルである。なんともニッチな性癖を全開にして主張するビルシャナと、それに賛同する信者達を前に、集まったケルベロス達の多くは早くもドン引きした様子だった。
「……ったく、オークが居なくなって少しは平和になったと思ってたのに、何なのよこのふざけた鳥さんは……」
 この世界から薄汚い触手が消えてくれたと思ったら、種族の垣根を越えて、これである。精神衛生的に悪過ぎるので、とりあえずマッハで死んで貰おうと、青葉・幽(ロットアウト・e00321)が拳を固め。
「今度は触手……。オークみたいなのがいいなんて、理解不能だよ」
「まったくですわ。いくらなんでも、ニッチ過ぎると思いますの」
 リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)とルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)もまた、下劣の極みである触手プレイには、嫌悪感しか示さなかった。
「触手ねえ……。オークが息してない今、単なるファンタジーの一ジャンルでしかないし」
 所詮、空想は空想に過ぎないと、シーラ・グレアム(ダイナマイトお茶目さん・e85756)も触手の良さを真っ向から否定する。その一方で、シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)は触手そのものは肯定しつつも、しかしそれだけが全てではないと思っているようだった。
「んー、まあ趣味は人それぞれっておもーけど、実害あるんだからどーにかしないとだよねー」
「うん、そうだね。ここで放っておいて、オークみたいなビルシャナが増えても困るしね」
 田中・瑠々(無気力系・e36314)の言葉に、成谷・理奈(ウェアライダーの鹵獲術士・en0107)が頷いた。なお、彼女は今日も愛用の釘バットを持っており、最悪の場合は信者達を物理的に殴り倒して止める準備は万全だった。
「まったく……毎度のことながら、頭の痛くなる連中だな」
 半ば自業自得な部分もあるが、それでも人命には代えられないと、エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)が溜息一つ。
「鳥の妄言はいつもの事なので、置いておいて……」
 そんな中、ナノナノのらぶりんにオークのイラストを持たせつつ、若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506)が少しばかり意地悪そうな笑みを浮かべ。
「信者さんは雄豚扱いしてほしいみたいなので、そうしましょう」
 触手といえばオーク。オークといえば豚。そんな方程式から、彼女は実力行使によって、信者達の目を覚まさせるつもりなのだろう。
 原初の触手を崇める明王。触手こそ至高として譲らぬビルシャナに感化されてしまった信者達を正気に戻すべく、ケルベロス達は呆れながらも、彼らの説得を開始した。

●危険な触手プレイ!
 触手こそ至高と謳い、その他のジャンルを全て否定するビルシャナと信者達。なんともアホらしい連中に、幽は端から喧嘩腰だった。
「触手、触手って……バカじゃないの? 要するにタコの足じゃない」
 たこ焼きを日常的に食べてる関西人にとって、触手なんてそんなもの。触手はエロのための道具ではなく、食べ物である。そう言って、幽はたこ焼き仲間達に勧め、横からシーラが摘まんで口に放り込んだ。
「そうそう。タコやイカは食べる為にあるのよ」
 だが、その程度で納得してくれれば苦労はしない。彼らにとって、触手の攻めを受けて女性が悶えているシーンこそが、至高にして究極なのである。
「て言うかさ、食材で遊んでんじゃないわよ。食べ物で遊んじゃいけませんって、ママンに教わらなかったの?」
「うるせー! 触手は俺達にとって萌え&フェチ要素なんだ!」
 あくまで触手は食べ物だと主張する幽と、それに反発する信者達。まあ、今の彼らからすれば、触手は一種の性的嗜好品。故に、幽のように触手を食べるという行為は、信者達からすれば変態が女性の使用済みパンツを食っているのと同程度にしか思われていなかった。
「それじゃ、触手服を制服にって言うからには、男連中もよね? さあ着なさいよ! 自分達から! 率先して! 好きなんでしょ!?」
 最後は、半ばキレ気味に迫真の演技で迫るも、しかし信者達は首を縦に振ろうとはせず。
「冗談じゃねぇ! 俺達は、女の子が触手で攻められるシチュエーションが好きなんだぜ?」
「それなのに、なんで俺達が着なきゃいけねーんだよ!」
 触手は女子を攻めるための道具。受けと攻めの関係で言えば、正に攻めであり男のポジション。
 それで男である自分達を慰めるということは、即ち男に『アーッ!』なことをされるに等しい。要するに、腐女子しか喜ばない展開であり、自分達には関係ないと言い張る始末。
「腐女子ねぇ……。確かに、男性と男性の絡みに萌えを求める女の子がいるのは事実だけど……」
 それでも、腐女子=ホモ触手好きとするのは、いささか飛躍が過ぎるのではないかと、シーラが堪らず呆れ顔。というか、今の彼らの発言は色々と問題があり、全国の腐女子の皆様に、土下座して謝らねばならない程の失言だろう。
 こうなったら、彼らの目を覚まさせるためには、少しばかり荒療治が必要そうだ。意を決し、シーラはビルシャナへ近づいて行くと、その身体に生えている羽を力任せに毟り取った。
「ぬわぁぁぁっ! き、貴様、何をするか!?」
 羽を抜かれたビルシャナがブチ切れていたが、相手にするのも面倒なので完全に無視である。そのまま、羽をヒラヒラとさせながら、シーラは信者達の脇腹や首の下、そして足の裏などを、そっとくすぐり始めた。
「あなた達の崇める明王様の手羽先よ。どう?」
「……ひっ! や、やめろ! ひゃひゃひゃ!!」
 まずは、笑いの三大ポイントからじっくりと。そのまま、少しずつ羽の場所をずらし、徐々に胸の先端や股間へと誘導し。
「明王様の手がもうすぐ、あなたの大事な所を……どうする? このまま行っていいのかしら?」
「どふっ……どふふっ!! ひゃ、ひゃめろ! ひょれは、くひゅぐったいらけ……あ……あががが……ホケホケ……モロヘイヤパパパパパァァァァッ!?」
 くすぐり攻めに耐え切れず、ついに信者の一人が崩壊した。笑い過ぎて顎が外れた挙句、顔面を涙と鼻水と涎まみれにしたまま、盛大に失禁して意識を失ってしまったようだ。
「あら? ちょっとやり過ぎちゃったかしら?」
 苦笑するシーラだったが、周りの信者達はドン引きである。
 この女はヤバい。関わったら、絶対に殺される。殆ど悪魔か何かを見るような視線を向け、徐々に距離を取り始めた。
 とりあえず、これで信者の数を1人は減らせたが、しかし殆どゾンビ状態である。無傷の救出とは言い難く、このままでは遠からず激昂した彼らとの戦いが始まってしまう。
「……ジャンル、というのは分からないのですけれど」
 話の流れを戻すべく、ルーシィドが軽く咳払いしながら言った。
「わたくしもサキュバスの端くれ、殿方の欲求には理解があるつもりです」
 だが、それでも自らの肉体を改造したり、自らにないものをねだったりするつもりはない。そんな彼女の言葉に続け、すかさずリリエッタが畳み掛け。
「触手、まだ生えてないから見てるだけしかできないけど、それでいいの?」
 人を捨てたビルシャナはさておき、未だ人間である者達には、当然のことながら触手などない。このままでは、単に見ているだけになるが、それでも良いのかと問い掛けたのだが。
「ハッハッハ! そいつは、心配無用だぜ!」
「こんなこともあろうかと……ここに、触手を用意しておいたからな!」
 そう言って、信者達はパンツの中から、タコやらイカやらを取り出して見せた。自分達に触手が生えていない分は、他者の触手を使って補おうということか。
「信者の皆さんは人の子。だからこそできる欲求の満たし方というものに、もっと目を向けるべきです。その、手とか、おしゃべりとか……く、口とか!」
 あまりに酷過ぎる教義に目を背けたくなりながらも、ルーシィドは懸命に信者達を説得した。その結果、彼女自身も恥ずかしくなる内容を口にしてしまったが、それはそれ。
「ほぅ……口、とな?」
「だったら、そっちで実演してもらおうか、お嬢ちゃん?」
 案の定、無理難題を吹っかけてくる信者達。仕方なく、ルーシィドはリリエッタを抱き寄せると、耳元に熱い言葉を囁きながら、じっと見つめ合って二人の唇を……。
「むぅ、なんだかくすぐったいよ」
「……ハッ!? コ、コホン! ど、どうですか? 触手じゃなくても、ドキドキしたりしませんか?」
 重ねる寸前で、寸止めでした。まあ、こういった展開も好きな人には好きなんでしょうが。
「おぉ、なるほど! 今までは一人の女の子を触手攻めすることを考えていたが……」
「百合カップルを、纏めて触手で堕とす展開も悪くないな。グヘヘヘ……」
 信者達は全てに触手属性を添加して、勝手に盛り上がっているので、性質が悪い。ともすれば、そのまま抱き合っている二人にタコやらイカやらを投げつけるか、あるいは縛り上げてエッチな悪戯を仕掛けようと狙いを定め始める始末。
「そっか、そんなに触手が好きなんだ。でも……最近の雑魚触手は、ぶちぃってされることも多いんだよ。……こんな風にね」
 貞操の危機を感じ、リリエッタは自身の武器にしている攻性植物の先端を、信者達の目の前で引き千切って見せた。しかし、一瞬だけ怯んだものの、信者達は直ぐに勢いを取り戻し、リリエッタ達に襲い掛からんと迫って来た。
「フハハハ! 確かに、触手は千切れやすい!」
「だが、同時に強い再生力も持っている! 故に、触手は無敵で不死身なのじゃぁっ!」
 何人も、触手の攻めに抗うことはできない。全てを触手色に染めるため、ハッスルしながら突っ込んで来る信者達に、とうとう瑠々が呆れた様子で溜息を吐き。
「他のジャンルがなくなっちったら見るものぜんぶ触手なわけだけどさー。それってつまりこーゆことじゃん? 楽しい? ねえ」
 仲間の持って来たタコを、敢えて信者達に近づけて見せる。もっとも、先にも述べたように、彼らは別に自分達が触手に巻かれたいとは思っていないため、あまり効果はないようだった。
「おにーさんたちの見たいのってぇ、ホントはこーゆーのじゃないの?」
 ならば、これはどうだと瑠々は着物の上から胸にタコを這わせてみた。途端に、どよめき立つ信者達。やはりこいつら、触手で女の子を虐めるのが好きなのだ。
「え? 結局触手だって? ばっかおめーこれは女のコジャンルじゃん」
 だが、そこで瑠々が間髪入れずに突っ込みを!
 女の子が主体になっている以上、ジャンルとしては触手ではなく女子だろうと。しかし、触手に魅せられた信者達にとっては、そんなことは些細な問題でしかなく。
「はぁ……はぁ……触手、触手ぅ!」
 卵が先か鶏が先かのような理論など、彼らにとってはどうでもよかった。
 こうなったら、最後は身体を張って止めるしかない。意を決し、エメラルドは軽く深呼吸をしてから改めて信者達に尋ねた。
「そもそも、ビルシャナである教祖にこそ触手が器官として生えているが、信者であるお前達には触手など生えていないではないか」
 その状態で触手が至高というのなら、それは即ち、人間の身体では女子に触れる権利を失うということ。果たして、本当にそれで良いのか。今すぐ触手を捨てるのであれば、人である限りは抱き止めてやっても……少し位なら、触らせてやっても良いと告げたのだが。
「「「な、なんだってぇぇぇぇっ!!」」」
 これには、さすがの信者達も興奮した様子で、エメラルドに殺到した。しかも、「俺達の触手のパワーを見せてやるぜ!」等と叫び、無駄に股間を強調しながら服を脱ぎ。
「こ、こら! 止めないか! 触っても良いと言ったが、少しだけで……だ、だいたい、お前達のそれは触手でもなんでもな……ひゃぁぁぁっ!!」
 哀れ、半裸の信者達に組み伏せられ、あちこち揉まれてしまうエメラルド。このままでは、彼女の口に触手が突っ込まれ、後ろから触手で貫かれ兼ねない程の大ピンチ!
「よく考えてください、皆さん。触手だけで人は気持ち良くなれません」
 見兼ねたシフカが自らの身体を武器に止めに入ったが、それでも信者達は止まらない。身体のあらゆる部位で気持ちよくなれると説くシフカだったが、信者達はむしろ、相手を快感で屈服させることに喜びを覚える者達だったので。
「確かに、色々な部位を使って気持ち良くなるのもいいだろう」
「だが、触手を使えば人間には不可能な同時攻めも、容易に可能となるのだ……こんな風になぁっ!!」
 シフカの胸、尻、太腿、股間……あらゆる場所にタコやらイカやらを這わせ、更には自分達の手も加えて、信者達は大ハッスル! こうなると、もう彼らの暴走は容易に止まらない。
「くっ……よ、よせ! そ、そこだけは……そこだけは止めてくれ!」
 後ろ手に組み伏せられたエメラルドの背後から信者の触手が迫り。
「あぁ……なんだか、久々に高ぶって……ふぐぅぅっ!?」
 ついにシフカの口にまで、特大のタコが突っ込まれてしまう。
 これでは、戦闘前に被害者が出るのも時間の問題。それはさすがに拙いので、めぐみが慌てて止めに入った。
「皆さんは触手が欲しいんですよね。こいつみたいに」
 らぶりんの首から下げているオークのイラストを指差しつつ、まずは信者の気を引いて。
「では、そんな扱いしますね」
 邪悪な笑みを浮かべるや否や、信者に向かって鞭を振るった。
「ふふふ……醜い雄豚は、いい声で啼きなさい」
「あぎゃぁっ! も、悶絶ぅぅぅっ!!」
 運悪く、めぐみの鞭は信者の股間にクリティカルヒット!
 抗議する信者にも鞭を見せ、人間扱いして欲しければ、ここから去れと脅してみた。
「く、くそぅ! こうなったら、貴様も俺の触手で……ぎゃぁっ!」
 そして、めぐみに襲い掛かろうとした信者は、理奈が間髪入れずに釘バットで頭をブン殴る。あまりの過激プレイに恐れを成した信者達は、一斉に悲鳴を上げてビルシャナの下から逃げ出した。

●お約束の触手バトル
 触手は女子から叩かれる物。主に恐怖を武器にして信者達を追い払ったケルベロス達ではあったが、親玉であるビルシャナとの戦いは、別の意味で大変だった。
「ひゃぁっ、なにこれぇっ!? あ……そんなところ吸っちゃやだ……んぅっ、入って来るのもダメェ!!」
 哀れ、早々に理奈が触手服攻撃の餌食となり、何もできずに悶絶させられている。助けに向かおうとするリリエッタだったが、彼女もまた触手服にやられており、おまけに回復技を持っていないので、そもそも救出不可能だった。
「んぅ……な、なんか、先っぽが変な感じ……」
 触手が胸に直接貼り付いて、なんとも言えぬ感触に悶えるリリエッタ。こんな時、彼女を助けられるのは親友しかいない! と、いうわけで、回復役のルーシィドは何をしているのかといえば。
(「あぁ、リリちゃんが悶えて……ハッ! い、いけませんわ!」)
 鼻血が溢れそうになっていて、全然役に立ってねぇ!
 慌ててリリエッタの触手服を解除するルーシィドだったが、しかし理奈にまでは回復を行う余裕がなく、彼女は触手に虐められたままだった。
「フハハハ! このまま全てを触手色に染めてくれるわ!」
 調子に乗ったビルシャナが、今度は床を触手に変えて来た。だが、快進撃も、そこまでだ。触手を恐れぬ者からすれば、彼の攻撃など屁でもない。
「エンジン全開! アフターバーナー点火! ……最大戦速で突っ込むわよ!」
 触手を引き裂きながら、幽が超高速でビルシャナに突っ込んで行く。同じく、エメラルドは星型のオーラで、シフカは手にした刃で、触手諸共にビルシャナを滅多斬り!
「食べ物で興奮する訳ないでしょ! バカじゃないの!」
「そんなに触手が好きなら……ほ~ら、こんなのはどうかな?」
 続けて、シーラがビルシャナへガチムチ兄貴オークに襲われる幻影を見せ、そのトラウマを瑠々が更に加速させて行く。それだけでなく、めぐみが蔓形態になった攻性植物で、ビルシャナを女王の如く打ち据えた。
「あなたはもっといい鞭で打ち据えてあげますね。信者さんに負けないくらいいい声で啼いてくださいね」
「ひぃっ! や、止めろ! 私にそんな趣味はな……あばばば!」
 ガチホモ触手攻めに加えてSMプレイまで加わり、ビルシャナの精神は限界寸前!
 最後は、満を持してリリエッタが影の弾丸をビルシャナの足元に撃ち込み、そこから現れた影の刃で、全身をズタズタに引き裂いた。
「影の刃よ、リリの敵を切り裂け!」
「うぎゃぁぁぁっ!」
 触手になって逃げようとしたビルシャナだったが、しかし抵抗空しくバラバラにされてしまう。奇しくもリリエッタの言っていた通り、触手明王は全身を千切られて消滅した。
「さて、終わりましたね。信者の皆さんは、まだ近くにいるでしょうか?」
「んー、どうだろーね。まあ、探してみるのもいーかもね」
 全てが終わった屋敷の中で、シフカと瑠々は、改めて信者だった者達を探しに出かけて行く。どうやら、触手以外の楽しみを全身全霊を以て教えてやるつもりらしいのだが……その結果がどうなったのかは、彼女達のみぞ知るところである。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年4月7日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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