罪人に堕ちた剣闘士

作者:なちゅい


 大阪府大阪市。
 攻性植物が現状、幅を利かせてはいるが、人々は数ある攻性植物の襲撃にもめげることなく、日々を強く生きている人たちが多い地域だ。
 季節は移り変わって徐々に暖かくなり、桜が花開くと人々は桜の木の下で楽しく花見を始める。
「わはははは!」
「おら、飲め飲め、今日はとことん楽しむで!」
 面白おかしく花見に興じる人々。
 どこかの企業の集まりや、大学サークルと思われる人々、自治体の集まりなど、この日ばかりは日頃の鬱憤を忘れて楽しいひと時を過ごそうとしていたのだが……。
 そんな桜の木々が立ち並ぶ公園へ、空気を読むことなく降り立ってくる軽装鎧を纏う巨躯の戦士。
「ここが地球か。さあ、我と戦う戦士はどこだ」
 まるで桜の美しさなど解することのないそのエインヘリアルは、巨大な剣を手にして地球に住む者達へと勝負を挑んでくる。
「「きゃあああああああっ!!」」
「しょーこりもなく、デウスエクスがきおったで!」
 とはいえ、襲撃慣れした大阪人にはいつものことといった様子で、手早く自主避難に当たるところがなんともたくましい。
 だが、今回は罪人エインヘリアル。そいつは人を見つければ全てをその巨大な刃で叩き切ろうとしてくる。
「この程度か、歯応えのある戦士は地球にはいないのか?」
 そいつは笑いすら浮かべながら、次々に逃げる人々を背から切りかかっていくのだった。

 ヘリポートのあるビル屋上に温かい日差しが差し込んでくる。
「春だね。風が心地いいよ」
 リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)が笑顔を浮かべ、やってきたケルベロス達を温かく迎える。
 とはいえ、まだまだデウスエクスの地球侵攻の手が止まったわけでなく、その討伐をと意気込むケルベロス達。
「グラディエーターを思わせるエインヘリアルが現れると聞いたのだが」
 そんなヒエル・ホノラルム(不器用な守りの拳・e27518)の言葉に、リーゼリットが頷く。
 またしても、罪人エインヘリアル……過去にアスガルドで重罪を犯した凶悪犯罪者が地球へと放たれてしまうようだ。
「放置すると、多くの人々の命が奪われるだけではなく、起こった事件が人々に恐怖と憎悪を振りまくことにも繋がるよ」
 その前に、ケルベロスの手で確実に倒してしまいたい。

 現れる罪人エインヘリアルはルシアスという名のグラディエーター……いわゆる剣闘士だ。
「エインヘリアルの平均身長は3mあるけれど、今回の相手はそれよりさらに大きいようだね」
 クラッシャーとして力任せに切りかかってくる相手。
 一撃が非常に痛い為、前線メンバーは覚悟を持って臨む必要があり、後方メンバーも全力でバックアップをして戦いたい。
 現場は、大阪市内の桜の木が立ち並ぶ公園だ。
「皆の到着とエインヘリアルの出現はだいたい同じくらいのはずだから、しばらくは抑えと避難の手が必要だよ」
 避難が完了するまでは、敵の火力を受け止める必要がある。全力で防御に回らないと瞬く間に抑えも壊滅してしまうだろう。
 また、避難勧告は到着してすぐ行って問題ない。すぐに警察も駆けつけて避難誘導を引き継いでくれる。そうなれば、全力で敵を叩くことができるだろう。
「使い捨ての戦力として送り込まれていることを、相手も認識しているから、全力で攻撃をしかけてくるはずだよ」
 攻勢に転じたら一気に攻撃を畳みかけ、この場で撃破してしまいたい。

 討伐後、ヒールグラビティなどで一通り公園を修復したなら、花見を楽しむのもいいだろう。
「花見いいわね。みんなで楽しみたいわ」
 サポートに当たるユリア・フランチェスカ(慈愛の癒し手・en0009)も乗り気な様子。事前に花見の準備をしていくのもいいだろう。
 もちろん、花見を楽しむのはエインヘリアルをしっかりと倒した後だ。
「被害を出さないようにしながら、罪人エインヘリアルの討伐を。どうかよろしく頼んだよ」
 リーゼリットはそう告げ、説明を締めくくったのだった。


参加者
水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)
エニーケ・スコルーク(黒馬の騎婦人・e00486)
楡金・澄華(氷刃・e01056)
シア・ベクルクス(花虎の尾・e10131)
ヒエル・ホノラルム(不器用な守りの拳・e27518)
アクア・スフィア(ヴァルキュリアのブラックウィザード・e49743)
ローゼス・シャンパーニュ(赤きモノマキア・e85434)

■リプレイ


 大阪府大阪市の桜の名所。
 そこに降り立ったケルベロス達はしばらく、その美しさに目を奪われてしまう。
「桃色の花がこれ程までに」
 セントールの自由騎士、ローゼス・シャンパーニュ(赤きモノマキア・e85434)は満開の桜に感嘆してしまう。
「花見ですか」
 エプロンドレスを纏う淡い青のウェーブヘアを靡かせたアクア・スフィア(ヴァルキュリアのブラックウィザード・e49743)も頭上を見上げて。
「私は騒がしい場所は苦手ですけど、のんびりと花を見ている分には楽しいですよね」
 今年は諸事情の為、やや花見客もまばら。アクアはもうしばらくのんびりと花を愛でたいようだ。
「さて、折角の花見スポットだ。いつも通りに勝って、お花見と洒落こもう」
 漆黒の髪をポニーテールとした楡金・澄華(氷刃・e01056)もゆっくりと花見をしようと考えているが、直にこのムードをぶち壊す無粋な輩が乱入してくるはずだ。
「春先になると、奴らも元気になるんだろうな」
 インディゴブルーのハットを手で押さえつつ、水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)は野良エインヘリアルの不法投棄事件の解決に臨むべく、予め近辺の見取り図を確認していた。
 なお、鬼人はその際、今度婚約者と改めて花見にと考えており、その下見も兼ねて見回っていたがそれはそれとして。
 周辺の地理を確認の上で、戦場に適した場所や避難経路の確認。
「これで何度目の討伐になるか。まぁ、いつも通りに仕事をするだけだがな」
 敵出現の僅かな間でも、できることをやっておくことは重要だと澄華も考え、現場となる公園を見回る。
 刀を持ったケルベロスがウロウロしているのはさすがに目立つし、花見客の不安を煽ると澄華は考えたのだ。
 しばし、桜の美しさに目を奪われていたローゼスだったが、彼が真っ先に木々の間へと降り立つ巨躯の男を発見することとなる。
「中々お目にかかれない光景ですが、あの巨体は中々に不釣り合いですね」
 自分が言えたことではないがとローゼスが少し自嘲してしまっていたが、今は桜の木々が立ち並ぶ公園を見回す軽装鎧を纏う大男の動向にメンバーの関心が集まる。
「ここが地球か。さあ、我と戦う戦士はどこだ」
 まるで桜の美しさなど解さないそのエインヘリアルは巨大な剣を手にし、対戦相手を求めて動き回り始める。
「こいつら罪人エインヘリアルは美しい物に興味なく、人間が楽しんでいればそれをぶち壊すのが趣味だよな」
 赤い鉢巻を頭に巻いた栗毛のセントール、ジャスティン・アスピア(射手・e85776)は生きててもしょうがない奴らだと、エインヘリアルの存在に呆れて返っていた。
「まったく……桜が美しく散りゆく光景にエインヘリアルは本当に空気を読みませんわね」
 馬の獣人女性、エニーケ・スコルーク(黒馬の騎婦人・e00486)は呆れどころか、言葉の端々に怒りすら感じさせた。
 ともあれ、現れた罪人エインヘリアルが本格的に暴れ始める前に。
 エニーケは仲間と共に、その抑えに当たり始めるのである。


 ルシアスという名の元剣闘士……罪人エインヘリアルは周囲で戦えそうな相手を見定めている。
 それを確認した澄華は隠密気流を解いて。
「デウスエクスの襲来です。どうか落ち着いて、避難を願います」
 隣人力を生かしながら、澄華は人々がスムーズに避難できるよう心掛けて呼びかけを続ける。
 事前に地理は把握できているので、彼女は公園の外に出られるルートへと花見客を誘導していく。
 なお、サポーターとして参加する泰地も通る声を響かせ、誘導の手伝いを行っていた。
 鬼人は確認していた見取り図を元にキープアウトテープで敵を含めた空間の封鎖に当たるが、桜の木々が密集する場所は花見客も多い為、比較的木々の間隔が空いた場所を中心にテープを張り巡らしていく。
「はい、そうです。それではお願いします」
 一方で、アクアは素早く警察と連絡を取り、手分けして花見客の誘導へと当たっていく。
 比較的、この場の花見客の数は落ち着いているとはいえ、誘導を続ける分にはきりがない。
 澄華は手早く避難誘導を警察へと引き継ぎ、戦線に加われるようにと急いでいたようだ。

 さて、対戦相手を探していたエインヘリアル、ルシアスには、残るケルベロス達が抑えの為にと接敵して。
 相手の手にする鉄塊剣の矛先をいち早く駆けつけたのは、セントールの男性2人だ。
「私が言えたものではあるまいが、無骨な得物を振り回す場ではなかろう」
 ローゼスはある程度接近したところで鎧装腰部から矢弾を飛ばし、エインヘリアルを牽制する。
「いいだろう。我の相手にふさわしき相手のようだ」
 槍を突き付けて対峙するローゼスに、ルシアスも満足げに頷いて横薙ぎに重い刃を振るって旋風を巻き起こす。
 ローゼスが攻撃を引き付けある間に、逃げ遅れた人々へとジャスティンが拡声器を使って周囲の花見客へと呼び掛けを続けて。
「ケルベロスだ。どうか落ち着いて避難してほしい!」
 また近場で逃げ遅れた人はジャスティンが背に乗せ、セントールランでエインヘリアルから引き離しに当たっていた。
 また、その間に、ローゼスを中心として自軍の守りを固め、盤石なものとしていく。
 近場でまだ避難を進める花見客を守るエニーケは、神斬鋸【ベアグルント】と竜騎兵銃【ランゲンカップ】を両手にそれぞれ持って。
「桜の如く、手前の血で醜く散らせてさしあげましょうかしら」
 そうして、エニーケはエインヘリアルの挑発に当たる。
 後方には、前線を支える為に回復手としてこちらへと駆けつけたユリア・フランチェスカ(慈愛の癒し手・en0009)。
「此処に居られるのは、ただ桜を、麗かな時間を楽しみにきた方々です。それを奪うのが戦士なのですか?」
 また、彼女に支援を願ったウェーブがかった緑髪にミモザの花を咲かせたおっとりとしたオラトリオ女性、シア・ベクルクス(花虎の尾・e10131)の姿もある。
「違うというならおいでなさいませ。我々がお付き合いしましょう」
 さらに、長い銀の髪を纏めた人派ドラゴニアン、ヒエル・ホノラルム(不器用な守りの拳・e27518)が敵の手前にまで進んで。
「此処は皆が友好を深める場だ。お前の様な者にこの場を荒らさせる訳にはいかない」
 手足に氣を纏って身構えるヒエルにも、ルシアスは強い関心を抱いて。
「いいだろう。のってやるぞ、ケルベロス!」
 エインヘリアルは満面の笑みを浮かべ、向かい来るケルベロス達へとその重い刃を振り上げてくるのである。


 現場となる公園の人的避難は進んでおり、さほど人も多くなかったことから、思ったよりは早く避難誘導は進む。
 精強を誇る地元警察の誘導で十分と判断した澄華、アクアはすぐ、戦線へと向かっていく。

 少ない人数で力任せに攻め来る罪人エインヘリアルの抑えに当たるメンバー達。
 前線のヒエルはまだ駆けつけていない火力役への支援を一旦見送る。
 腕力で叩きつけてくる鉄塊剣を四肢に纏わせた氣で食い止めながらも、ヒエルは不屈の闘志を抱いて魂が肉体を凌駕するが如き氣を発し、驚異の回復力で傷を塞ぐ。
「徹甲兵装を起動する。その動き縫い止めよう」
 改めて、ローゼスは鎧装腰部から誘導式のフレシェット弾を発射する。
 今度はしっかりと狙い、敵の体に攻撃を加えたローゼスは合わせて言葉も投げかけて。
「死に場所としては悪くあるまい。貴様はどう思う?」
 騎士として武張る彼のその言葉は挑発半分本音半分。
 しかしながら、エインヘリアルはこう返す。
「戦場であれば、墓標などどこでも構わん」
 あくまで、この敵は戦いだけに価値を見出しているらしく、この場の美しさは気にもかけていないようだ。
 ただ、今は相手の力が勝る状況。下手な立ち回りをしていると、こちらの名前が墓標に刻まれかねない。
「ご安心なさって。ただ前を見て下さいな」
 盾となるメンバーの癒しをと、シアは個別に薄緑色の輝きで包み込み、露草色の帳で敵の攻撃を和らげてくれる。
「合流までは気は抜けません」
 シアはさらに柳緑花紅をケルベロスチェインと同様に操り、地面に魔方陣を描いて仲間を守護し、戦線維持に努める。
 ユリアも緊急手術による回復で補佐に当たるが、やはり、相手の火力が多すぎて、多少の癒しでは追い付かない状況が続く。
 そんな中、サポーターとしてディミックが光の城壁を展開してくれる。
 少しでも手数が欲しい状況で、駆けつけてくれるものの存在は非常に心強い。
 また、こちらは防御、回復に徹するエニーケ。
 相手の獲物が命中力に難のある鉄塊剣とあって、エニーケは竜騎兵銃から魔法光線と中和エネルギー光線を繰り返し、敵の弱体化に当たる。
 ジャスティンもまた武器を持ち換えつつ素早く弾丸や砲弾を叩きこみ、ルシアスの攻勢を削ごうとしていく。
 比較的平然と堪えるエインヘリアルだったが、そこで、キープアウトテープで周囲の封鎖をしていた鬼人が前線へとやってきて。
「鉄砲玉とはいえ、戦力をこうやってこっちに嗾けるって事は……」
 無名の刀を煌めかせた鬼人は空の霊力と共に、仲間のつけた傷に重なるように斬撃を見舞って。
「よほど戦力が余ってるのか、あてにされていないか、どっちだ」
「罪人などあてにするものか」
 力任せに刃を振るうルシアスは些か自虐しながら語る。
「だが、楽しいんだから仕方ない」
 戦いに狂ったその男はやはり、狂気に縁にいるということだろう。
 前線に加わる仲間達の為、ヒエルが光の蝶を発して仲間達の第六感を呼び覚ます。
 その1人、澄華はいつの間にか敵の背後へと忍び寄っており、奇襲の刃を振り下ろす。
 忍者らしく、汚く、強烈な一撃。
 エインヘリアルは致命傷を避けたものの、首筋を大きく切り裂かれて手痛いダメージを受けてしまっていた。
 さらに、挑発しながら、アクアは涼しげに一言。
「さぁ、貴方の相手は私達がしてあげますよ」
 相手から距離を置くアクアは水龍の大槌から竜砲弾を放ち、相手の足を鈍らせようとした。
「いいぞ、こうでなくてはな」
 自らの血で高揚するルシアスはなおも、重い刃をメンバーへと叩きつけてくるのである。


 ケルベロス達は対する罪人エインヘリアルの気を引きながら、攻撃を繰り返す。
 下手に相手の興味を削げば、新たな強者をと一般人を狙うかもしれない。それだけは避けたいところ。
「力だけが取り柄なのかしら? 脳筋」
 そんな敵へと、エニーケは口汚い罵りの言葉をぶつけて。
「どれだけ鉄塊剣で格好つけようが、脳筋は脳筋ですわよ、マヌケ」
「……ぬううううん!!」
 そこで、ルシアスは鉄塊剣にグラビティ・チェインを注ぎこみ、蹂躙形態に変形させる。
「おおおおおお!!」
 さらなる猛攻を察し、ローゼスは大声で吠えてから手にする槍に雷の霊力を籠めて一気に突き出す。
 仲間が揃って応戦する状況になっても、ルシアスが繰り出すグラビティの威力はすさまじい。
 シアは薄縹色の光を発し続けて戦線を維持し続け、ユリアも消耗の激しい盾役に電気ショックを飛ばして賦活と癒しの手を止めずにいる。
 前線では、澄華が自慢の火力をと多数の霊体を憑依させた斬龍之大太刀【凍雲】で切りかかり、ルシアスの体に致命傷を負わせた上で毒へと侵して少なくなった体力をより減らしていく。
 勢いで負ければ、エインヘリアルの旋風に吹っ飛ばされかねない。
 サポーターの泰地が降魔の拳で殴りつけた直後、深海の宝珠を手にしたアクアが告げる。
「虚無球体よ、敵を飲み込み消滅させなさい」
 言葉通りに出現した不可視の球体が巨躯のエインヘリアルを飲み込まんとして。
「ぐ、うううっ……!」
 ケルベロス達の攻撃を絶え間なく受け続け、いくら頑丈な体を持つエインヘリアルとはいえ、息が荒くなってきていた。
 それでも、気力を振り絞って切りかかる敵の一撃をいなして。
「もう一度言う。お前の起こす旋風で、荒らさせはしない」
 幾度もエインヘリアルの攻撃を受けていたヒエルも、仲間のサポートを受けつつ何とか持ちこたえて。
 その直後、ジャスティンが凍結光線を放って敵の軽装鎧を凍らせると、刃を振るっていた鬼人がここぞと極めの一手を繰り出す。
「……刀の極意。その名、無拍子」
 次の瞬間、3mの巨体が重い音を立てて地面へと倒れ、地面に落ちていた桜の花びらが一気に舞い上がる。
「戦いでこの命、散らす、なら……」
 花びらが再び地面へと落ちる前に、ルシアスは事切れてしまう。
 それを確認した鬼人は首元のロザリオに手を当て、無事に戦いが終わったことを祈るのだった。


 再び、静けさが戻った公園。
 絶好の花見日和の中、戦闘跡が残っているのは良くないと、ケルベロス達は手早くその復旧に当たる。
 鬼人が気力を撃ち放ち、アクアは魔力を込めたシャボン玉に光を反射させて戦いによる傷痕を幻想で埋めていく。
「お花見には似合いませんもの」
 シアも露草色の帳を降ろして壊れたベンチなどを修復していき、ジャスティンはサジタリウスの加護を与えて修復作業を進める。
 ローゼスはヒールドローンを展開し、傷ついていた草木へと治療を施す中、ヒールグラビティを持たない澄華は抉れた地面を埋め直したり、エインヘリアルの遺体を移動したりなど手作業に当たる。
 またヒエルは光の蝶を飛ばし、戦闘で傷ついていた仲間達の癒しに当たっていた。
「こんなところかな」
 出来る限り元の状態へと近づけたことを鬼人が確認することには警察の現場封鎖も溶けて花見客が少しずつ戻ってきていた。

「さて、私たちもお花見と参りましょうか~!」
 シアの呼びかけもあり、一息ついたケルベロス達もまた皆で花見を行うことにして。
「実は桜餅とお茶を持ってきましたの。宜しければ皆さん、如何かしら~?」
 彼女は快く、所持してきた飲食物を仲間達へと率先して振舞う。
「こうして皆でお花見もいいな」
 ジャスティンはその茶を飲みつつ、皆と楽しく騒ぐ。
「綺麗な桜の樹々ですね」
 改めてのんびりとアクアは頭上の花々を見上げ、この季節ならではの風情を目で、鼻で感じる。
 ヒエルも桜を鑑賞してはいたが、徐に腰を上げた。
 大阪城の件もあるからと、ヒエルは見回りも兼ねて近場を歩くことにしていたようだった。
 澄華もお茶を用意していたが、こちらはなかなかの高級品。
 合わせてユリアが買ってきていた三色団子と合わせ、その香り立つお茶はメンバー達にも好評だったようだ。
 それに合う飲み物をと、ローゼスは赤い液体の入った瓶とグラスを片手に持っていた。
 問題ないと判断した仲間には、ローゼスもその液体を勧めていたようだ。
「確か花より団子と言いましたか。花見の作法とはこのようなものの筈」
 三色団子の器を手にしていた彼は早速口にしてみる。
 もちもちした食感を味わいながら、彼はおいしそうに赤い液体で喉を潤していた。
「うーむ、花見で一杯も飲みたい所だが、戦闘後には、な」
 鬼人はお茶をもらいつつ、桜の美しさを堪能することに。シアも飲めないと首を横に振っていた。
「おつまみにと持ってきましたのよ。散りゆく桜でも見ながら食べましょ♪」
 そこで、エニーケは野菜スティックの入った器を取り出して仲間達に勧める。
 食感とそのみずみずしさが癖になるエニーケが持ち寄った一品を、ローゼスも美味しそうに頂いていた。
 ところで彼は先程、散ったエインヘリアルにも献杯していたのだが。
 ――綺麗な場所で死ぬのはどういう心境だろうか。
 それだけを見れば羨ましい状況なのかもしれないが……。
「さて、この身はどこで死ぬのやら」
 散りゆく桜を目にした彼はふと、定命化した我が身の行く先を考えていたのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年3月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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