男装は絶対に許さない!!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
「俺は常々思うんだ。男装を許すべきでない、と! だって、そうだろ! 女性は女性らしくあるべきだ! それなのに、男装して、何の意味があるッ! ハッキリ言って男になっても意味がない。そんなモノに価値はない! それなのに……それなのに、何故……男になろうとする! だからこそ教えてやるべきだ! 男になる事に、意味などない、と! そして、思い出させてやれ! 自分が女である事を……!」
 ビルシャナが廃墟と化した施設に男性信者達を集め、自らの教義を語っていた。
 男性信者達は男装した女性達を襲うため、色々な意味でヤル気満々ッ!
 頭の中で、あんな事や、こんな事を考えつつ、ケモノの如く叫び声を上げていた。

●セリカからの依頼
「ローレライ・ウィッシュスター(白羊の盾・e00352)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ビルシャナが確認されたのは、廃墟と化した施設。
 男性信者達は、男装している女性を襲う事で、男性に対する嫌悪感を植え付けようとしているようだ。
「今回の目的は、悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事です。ただし、ビルシャナ化した人間は、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やしています。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまうため、注意をしておきましょう。ここでビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
 セリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていく。
 男性信者達は男装した女性だけしか襲わない事になっているため、その枷を外すような行動をすれば、洗脳を解く事が出来るだろう。
「また信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。とにかく、ビルシャナを倒せば問題が無いので、皆さんよろしくお願いします」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ビルシャナの退治を依頼するのであった。


参加者
オイナス・リンヌンラータ(歌姫の剣・e04033)
地留・夏雪(季節外れの儚い粉雪・e32286)
天野・しずく(フラミンゴ天使・e41132)
不動峰・くくる(零の極地・e58420)
柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)

■リプレイ

●都内某所
「……何だか不気味なところだね」
 天野・しずく(フラミンゴ天使・e41132)はボクっ娘のフリをして、フラミンゴのぬいぐるみを抱き締め、仲間達と共にビルシャナが拠点にしている施設の前にやってきた。
 施設からは禍々しい空気が漂っており、今にもケルベロス達を飲み込みそうな勢いで広がっていた。
「男装女子って、そんなに変ですかねぇ? むしろ魅力的だと思うんですが……」
 そんな中、オイナス・リンヌンラータ(歌姫の剣・e04033)が、疑問を口にした。
 だが、ビルシャナ達にとって、男装は嫌悪の対象。
 どんな事があっても、考えを改めさせる必要があった。
 それは過去にビルシャナ自身が、トラウマになるほど、酷い目に遭ったため。
 それ故に、どうしても許す事が出来ないようだ。
「ふぅむ、相も変わらず、鳥頭は狭量でござるなぁ……」
 不動峰・くくる(零の極地・e58420)が、呆れた様子で溜息を漏らした。
 そもそも、どこからが男装で、何処までがNGなのか、分からない。
「ひょっとして、宝塚とか見なかったのかしら?」
 ローレライ・ウィッシュスター(白羊の盾・e00352)が、不思議そうに首を傾げた。
 おそらく、ビルシャナ達は見ていない。
 場合によっては、見る価値すらないと思い込んでいるため、考えを改めさせる必要があった。
「それ以前に、女性向けの服を着ている訳でもないのに、何故かよく女性と間違われますが……」
 地留・夏雪(季節外れの儚い粉雪・e32286)が、何処か遠くを見つめた。
 別に望んで、そうなった訳では無い。
 しかし、今回に限っては、それが役に立つ。
 その事実が夏雪の気持ちを複雑にさせていたが、ここで考えたところで、どんよりとして気持ちに包まれるだけ。
 そんな気持ちになったところで、ションボリするだけなので、あえて考えない事にした。
「はあ……、稼ぐためとはいえ、まさか二度目の女装をするとは思わなかったわ」
 そう言って柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)が、海よりも深い溜息をついた。
 正直言って、帰りたい。
 帰って、ゆっくりと眠りたい。
 そんな気持ちがあるものの、いまさら帰る訳にはいかないのが、現実ッ!
 まるで人類を超越したようなオネェが爆誕してしまったものの、ここで気にしたら負けである。
 そして、清春は心の中に芽生えた常識と理性を叩き潰し、仲間達と共に施設の中に入っていった。

●施設内
「な、なんだ、お前らは……!」
 その気配に気付いたビルシャナが、男性信者達と一緒に警戒心をあらわにした。
 みんなイケない事をするため、悶々と計画を語り合っていたためか、『部屋に入る時はノックぐらいしろよ!』と叫びそうな勢いで動揺している様子であった。
「えー、こほん。お主ら! 男装が女性らしくないとは、どういうことでござるか!? 男子が男子の格好をすることを男装とは言わぬでござろう? つまり、男装は女性だけにしかなせぬ行為でござる! 故に、男装は最も女性らしい行いにござる!! 男装であるがゆえに、その女体美が強調され、真の女性らしさをあらわにするのでござるよ!!!」
 そんな中、くくるがビルシャナ達を前にして、自らの考えを語り始めた。
「それは違う! 男装とは下の下の人間がする事! 決して褒める事の出来ない愚かな行為でしかない! そもそも、男は穢れた存在……。故に、わざわざ好き好んでなるモノではない!」
 その事に腹を立てたビルシャナが、興奮気味に答えを返した。
「それじゃ、僕も女装すべきかな? だって、男の子は穢れているんでしょ? だったら、スカートを履いて女装しなきゃイケない事になるけど……。でも、僕は飛べるからヒラヒラした服装はちょっとなぁ……」
 その言葉を鵜呑みにした、しずくが捲し立てるようにしながら、ビルシャナ達に問いかけた。
「いや、別に無理をして女になる必要はない。男はあるべきままに……欲望のままに突き進めってヤツだ」
 ビルシャナが『男は、どうでもいい』感満載で、キリリとした表情を浮かべた。
 元々、男には興味がないため、何をしようと、どうでもいい事。
 自分に害さえなければ、何をしても問題ないという考えのようである。
「……とは言え、ボーイッシュとか男装の女性って、むしろかわいいと思うんですが……。具体的には男装しているローを見ていただければ、かわいいですよね? それに、ああ言う格好の良い女の子が、ふとした時に見せる女性らしい表情とか……いわゆるギャップ萌えってやつです」
 オイナスがローレライを激推ししながら、ビルシャナ達の顔色を窺った。
「いや、ないな、マジで」
 だが、ビルシャナは死んだ魚のような目で、塩対応。
 いきなり襲い掛かるような事はなかったものの、嫌悪感丸出しで、あからさまに嫌そうな感じであった。
「ないのは、そっちよ! そもそも今のあんた達の肉体や態度が男らしいと言えんのっ?!」
 それを目の当たりにした清春が、デキるオンナのオーラ全開で、半ギレ気味に叫び声を響かせた。
 それは紛う事なきオネエ。
 見方によっては『アリかも。……えっ? アリ? ないない!』と言った感じのアレだった。
 そのせいか、きゃり子(ビハインド)の反応は、冷ややか。
 物陰から半分だけ顔を出し、清春に生暖かい視線を送っていた。
「もちろん……ある!」
 その問いかけに応えるようにして、ビルシャナ達が上半身裸になって、一斉にポージングを繰り出した。
 しかし、その自身に反して、ビルシャナ達の肉体は中途半端。
 男らしい性格とも言えないため、何とも言えない微妙な雰囲気が漂っていた。
「いい加減にしてください。女性の立場から言わせてもらうと、自分をカッコよく見せたいと思っているのは男性だけではないです……。女性だってカッコよくみられたいですし、男らしくありたいと願って男性用の服を女性が着たって良いのです……。僕も周りから可愛い服をよく勧められますが、こうやって男性の服を着ていても似合っていると思いませんか……?」
 夏雪が男装をしている女性という立場で、実際には男性である事を隠し、ビルシャナ達に問いかけた。
「その考えが間違っているんだ! 俺達は間違っていない。絶対に、な!」
 ビルシャナが表情をくわっと険しくさせ、キッパリと断言をした。
 まわりにいた男性信者達も、何かに取り憑かれた様子で、『そうだ、そうだ!』と狂ったように連呼した。
「そこまで男装の良さが分かっていないのなら、あなた達も女装したら、わかるんじゃないだろうか。メイク道具と、ドレスにワンピースもあるし、女装してみないか?」
 そんな中、ローレライが舞い踊るようにして距離を縮め、メイク道具を駆使して、ビルシャナ達を女装した。
 それはビルシャナ達にとって、あり得ない状況であったが、拒絶しようにも既にキラキラ大変身♪
「こ、これは……!」
 その途端、ビルシャナが手鏡片手に、ほんわかウットリ。
 誰が、どう見ても見違えるほどグロくなっているものの、ビルシャナはウットリ。
 どうして、その姿を魅力的に感じられるのか分からないが、まんざらでもない様子で、手鏡に映った自分の姿を眺めていた。
「かわいいじゃないか、子猫ちゃん……! ……どうだい? 女装をしてみて、どんな気分か教えてごらん?」
 そんな空気を察したローレライが、ビルシャナに壁ドン!
「……えっ? あ、あの……その……」
 ビルシャナは、その態度に赤面。
 まるでスイーツが大好き可憐な乙女っぽい雰囲気を漂わせ、『……嫌じゃないかも』と答えを返した。
「……あれ? さっき男はあるべきままにって言っていたよね? それなのに、おかしいなー。もしかして、嘘をついていたって事? それなら、ピンクの翼も生やしてみる? ほら、僕と御揃いで可愛いし。自前の翼と合わせれば、天使みたいに可愛いよ?」
 しずくもノリノリな様子で、ビルシャナにハリボテの翼を手渡した。
 この時点で珍獣大図鑑のトップを飾りそうな勢いで、ビルシャナが微妙な姿になっているものの、本人はウットリ……。
 それとは対照的に、男性信者達は、ドン引き。
 『うわっ……ないわ』とばかりに、ドン引きだった。
「つーか、オンナにだって選ぶ権利あんのよ、バカっ。そんなんだからアタシ達が男化しなきゃいけないんじゃないの! アンタ達が、ちゃんとした男になるか、それがダメなら、いっそオンナになっちゃいなさぁいっ」
 そんな気持ちをぶち壊す勢いで、清春がオネエ回路をフル稼働させ、ビルシャナに股間を蹴りつけた。

●ビルシャナ
「な、何をするのよ! 痛いじゃない!」
 その途端、ビルシャナが内股になりながら、裏声になりつつ、大声を響かせた。
「その痛みはアンタ達が傷つけた女達の痛みッ! いえ、もっと痛い目に遭って、反省しなきゃダメ!」
 その流れに任せて、清春がビルシャナを背負い投げ!
 次の瞬間、ビルシャナがオネエにあるまじき態勢で、激しく尻餅をつき、男性信者達が一斉に吐いた。
「僕らと戦う気は……ないようですね」
 夏雪が何やら察した様子で、男性信者達に視線を送った。
 男性信者達は完全に戦意を喪失させており、まるで御通夜のような表情を浮かべていた。
「あなた達、許さないわよ!」
 ビルシャナがヒステリックな声を響かせ、強力なビームを放ってきた。
「僕は正義のヒーローだぞ。そんな攻撃、効かないよ」
 それに気づいたしずくが格好いいポーズで駆け回り、ビルシャナが放ったビームを避けた。
「やれやれ、これじゃ可愛い子猫ちゃんが、台無しじゃないか。でも、戦うのであれば、私も手加減はしないよ」
 続いて、ローレライがフルスクリーン火力のフォートレスキャノンで、ビルシャナの身体をマヒさせた。
 それに合わせて、テレビウムのシュテルネが、凶器攻撃でビルシャナの泣き所を、執拗に攻撃した。
「右腕『轟天』、グラビティ吸収機構稼働! お主の力、頂くでござる!」
 次の瞬間、くくるが右腕『轟天』に備えられたグラビティ吸収機構を稼働させ、ビルシャナの身体を鉤爪で引き裂いた。
 だが、ビルシャナはマヒ状態に陥っており、身体を動かす事が出来なかった。
「修行の成果……見せてやるのです!」
 その隙をつくようにして、オイナスがオルトロスのプロイネンと連携を取りつつ、氷晶炎舞(ヒョウショウエンブ)を発動させ、右の『揺らがぬ炎』と、左の』砕けぬ氷』の二刀による舞いのような連続攻撃で、ビルシャナの身体を斬り裂いた。
「……ぐはっ!」
 続けざまに攻撃を喰らった事で、ビルシャナは血反吐を吐き、血溜まりの中に沈んでいった。
「命を捨てる価値があるほど、男装を嫌悪する事に意味があったのか謎でござるが……とは言え、一件落着でござるな」
 そう言った後、くくるが何時もの様にキセルを取り出し、一服しながら煙をくゆらせるのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年3月22日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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