白衣の女性こそ知的で至高である!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
「俺は常々思うんだ! 白衣の女性こそ知的で至高である、と! だから絶対に汚すな! むしろ、守るべき存在だ! そもそも、彼女達は、そう言う事にまったく興味が無い! 知的な人間が不純な事に興味を持つ事もない! だからこそ、俺は言いたい! 白衣の女性こそ知的で至高である、と!」
 ビルシャナが廃墟と化した病院に信者達を集め、自らの教義を語っていた。
 病院の中は消毒液のニオイに包まれており、白衣姿の信者達がキリリとした表情を浮かべて、眼鏡をキランとさせていた。

●セリカからの依頼
「タキオン・リンデンバウム(知識の探究者・e18641)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ビルシャナが拠点にしているのは、廃墟と化した病院。
 この病院は既に閉鎖されており、ビルシャナによって、不法に占拠されているようだ。
「今回の目的は、悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事です。ただし、ビルシャナ化した人間は、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やしています。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまうため、注意をしておきましょう。ここでビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
 セリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていく。
 信者達は洗脳されており、ビルシャナの言葉を鵜呑みにしているものの、白衣を着ている相手が知的ではない事を悟れば、我に返るようである。
 そうなれば、ビルシャナの味方をしなくなるため、倒す事も容易になるだろう。
「また信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。とにかく、ビルシャナを倒せば問題が無いので、皆さんよろしくお願いします」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ビルシャナの退治を依頼するのであった。


参加者
タキオン・リンデンバウム(知識の探究者・e18641)
エリザベス・ナイツ(焔姫・e45135)
夢月・焔華(焔の様に高く・e50952)
シーラ・グレアム(ダイナマイトお茶目さん・e85756)

■リプレイ

●病院前
「これって、何処からツッコミを入れればいいのやら……」
 エリザベス・ナイツ(焔姫・e45135)は複雑な気持ちになりながら、仲間達と共にビルシャナが拠点にしている廃墟と化した病院にやってきた。
 ビルシャナは白衣の女性こそ至高であると訴え、消毒液のニオイを身に纏い、廃墟と化した病院で知的に振る舞っているようである。
 そこに何の意味があるのか分からないが、何から何までツッコミどころであるため、色々な意味でションボリ。
 思わず溜息が漏れてしまいそうなほどアレな感じになっていた。
「私もいずれ白衣を着てみたいと思っていますが、これは何か違う気がしますね」
 夢月・焔華(焔の様に高く・e50952)が、気まずい様子で汗を流した。
 どうやらビルシャナ達は白衣を着れば頭が良くなると思い込んでいる節があるため、焔華とは根本的に考え方が違うようである。
「確かに、違和感がありますね。私も普段は白衣を着ていますが、それは研究に専念するための物ですので、生半可な気持ちで白衣を着る物ではないですが……」
 タキオン・リンデンバウム(知識の探究者・e18641)が、何処か遠くを見つめた。
 相手がビルシャナの時点で、何を言っても無駄。
 そんな言葉がタキオンの脳裏に虚しく過った。
「……まあ、白衣が知的に見えるのはわかるんだけど、この鳥みたいなのが増えたら、私見たいに学のない女が低評価になっちゃうから、ここで潰させてもらうわ」
 そう言ってシーラ・グレアム(ダイナマイトお茶目さん・e85756)が仲間達を連れ、廃墟と化した病院に足を踏み入れた。
 その途端、シーラ達の身体を包み込むようにして、むせ返るほど濃厚な消毒液が漂ってきた。

●病院内
「ビルシャナ! あなたの思い通りにはさせないわ!!」
 シーラがシニヨンヘアーと三角眼鏡を掛け、ヘリウムガスを吸ってから、ビルシャナにビシィっと言い放った。
 それは実に間の抜けた声であったが、ビルシャナは……スルー!
 自分にとって都合の悪い事は、完全無視を決め込む勢いで、シーラの白衣姿に注目した。
「やはり、白衣を着ているというだけで、知的に見えるな!」
 ビルシャナが死んだ魚のような目をしながら、シーラの白衣姿を褒めた。
 女性信者達も半ば思考停止状態に陥りつつ、同じようにシーラの白衣姿を褒めた。
 しかし、誰ひとりとして、シーラのヘリウムボイスには触れず、全神経を白衣にだけ向けているような感じであった。
「白衣を着ていれば、確かに知的に見えますよね。ですが、本当に知的とはそういう物でしょうか?」
 タキオンが真剣な表情を浮かべ、女性信者達に問いかけた。
「ええ、もちろん」
 眼鏡を掛けた知的な女性信者が、躊躇う事なくキッパリと答えを返した。
 ビルシャナによって、洗脳されている影響もあってか、女性信者に躊躇いはなく、真っ直ぐケルベロス達を見つめていた。
 その間もシーラはタブレットを使って、適当に難しそうな学術論文を拾って読み上げていたため、女性信者達がハイテンションで煽てまくっていた。
 しかも、シーラが白衣=知的のイメージを木端微塵に破壊しようとするたび、完全スルー。
 その事に関しては徹底しており、自分にとって都合の悪い事は、見ない、聞かない、話題にしないを徹底している様子であった。
「……と言うか、色々とおかしいでしょ。自分にとって、都合の悪い事は、完全に無視しているし……。それに、白衣を着たから知的ではなく、頭がいい人がたまたま白衣を着ているから、知的にみえるだけだと思うの……。ちょーっとだけ冷静に考えてみて! 例えば……、髪の毛はボサボサ……。スキンケアもボロボロ……。清潔感がほとんどない……。知性も全然磨かないから、全然知的に見えない。そんな品格も知性のかけらもない感じの人が白衣を着てても……むしろ、逆に知的どころか嫌な感じがしない……?」
 エリザベスがビルシャナ達の顔色を窺いながら、否定する事の出来ない現実を突きつけた。
「……」
 だが、ビルシャナ達は、無言。
 自分達にとって、都合の悪い言葉がオンパレードだったためか、目を丸くさせながら、すべての情報を遮断しているようだった。
「そうやって現実から目を背ける事が、あなた達にとっての正義ですか? 確かに、白衣姿は知的かも知れません。……ですが、白衣は今やコスプレ衣装として、誰でも気軽に買う事ができます。それを着たからと言って、必ずしも知的とは限らないでしょう。真に知的とは、もっと大学等で勉学に励んで、研究所に所属して成果を上げる為に頑張れる者、だと思いますよ」
 そんな空気を察したタキオンが、自らの白衣姿を強調し、ビルシャナ達を現実世界に引き戻した。
 そのため、ビルシャナも完全には無視する事が出来ず『白衣を着ている奴の話は無視できない』と言った感じで、嫌々ではあるものの、話を聞いている感じになっていた。
「ハッキリ言って、貴方達はコスプレで白衣を着て満足している人達と同じです。その様なコスプレの白衣の方々が、果たして知的だと言えるのでしょうか? 本当に知的な女性と言うのは、服装ではなく、その中身ではないでしょうか? 私達から目を背けず、答えて下さい!」
 そこに追い打ちを掛けるようにして、焔華がビルシャナにビシィッと言い放った。
「うるさい、黙れえええええええええええええええええええ!」
 次の瞬間、ビルシャナが逆ギレした様子で、ケルベロス達にビームを放つのだった。

●ビルシャナ
「……って、何がしたいの、本当に……」
 そのビームをモロに喰らったエリザベスが、白衣姿になってビルシャナにツッコミを入れた。
 ビームを喰らった時には、多少のダメージも覚悟していたのだが、実際には見た目が変わっただけ。
 まったく痛みを感じることなく、見た目だけが変わっているため、拍子抜けのようである。
「クククククッ……、どうやら何も分かっていないようだな。白衣姿になった事で、お前も俺達と同類……。知的な存在になった事で、俺の崇高な教義を理解する事が出来たはずだ」
 それでも、ビルシャナは、ドヤ顔。
 何やら、やり切った感満載で、エリザベスを見つめていた。
「いや、その考えだと、私はそちら側の人間になりますが、まったく理解できませんね、この教義……。むしろ、呆れて溜息しか出ないのですが……。それとも、アレですか。教義を理解してしまったせいで、こんな残念な気持ちに包まれているのですか? ……目を逸らさず、答えてください」
 タキオンが真正面からビルシャナを見つめ、退路を塞ぐようにして問いかけた。
「そ、それはアレだ。アレがソレでコレだから……。とにかく、アレだ! そうアレ……! だから死ねええええええええええええええええ!」
 その途端、ビルシャナが激しく目を泳がせ、再び強力なビームを放ってきた。
 それは、明らかな逆ギレ。
 完全に論破されてしまったせいで、駄々っ子パンチの如く放たれた一撃。
 しかも、その攻撃を喰らったタキオンは……無傷ッ!
 何となく白衣がスタイリッシュになっただけで、ノーダメージであった。
 そのため、ビルシャナが豆鉄砲を喰らったような表情を浮かべて、キョトン。
 こうなる事が分かったはずなのに、『どうして、こうなった!?』と言わんばかりに、目を丸くさせていた。
「今のうちに動きを……! これ以上、面倒な事になる前に……!」
 その隙をつくようにして、焔華がプラズムキャノンを発動させ、圧縮したエクトプラズムで大きな霊弾を作り、ビルシャナめがけてブチ当てた。
「きゃあ!」
 その途端、女性信者達が身の危険を感じ、逃げるようにして部屋の隅まで走っていった。
 もしかすると、徐々に洗脳が解けているのかも知れない。
 そう思ってしまう程、女性信者達の表情は、恐怖で歪んでいた。
「それじゃ、いいもの見せてあ・げ・る♪」
 次の瞬間、シーラがSexy and Inferno(オイロケテンゴクカラジゴクノドンゾコヘ)を発動させ、超強化したラブフェロモンでビルシャナに虜にした。
 それと同時に、白衣を着た大勢の女性がヘリウム声でケタケタ笑いながら、ビルシャナをフルボッコにする地獄を見せた。
 そのため、ビルシャナは一瞬にして、天国と地獄を味わい、悲鳴にならない悲鳴を上げた。
「この重力を持つ一撃を、食らいなさい!」
 それに合わせて、焔華が一気に間合いを詰め、ビルシャナに獣撃拳を叩き込んだ。
「んぐ……ぐはっ!」
 その一撃を喰らったビルシャナが血反吐を吐き、何か言いたげな様子でクチバシをパクパクさせ、血溜まりの中に沈んでいった。
「……本当に何がしたかったんだろ」
 それを目の当たりにしたエリザベスが、複雑な気持ちになりつつ、ビルシャナを見下ろした。
 ビルシャナにとって、白衣は知的な存在の象徴。
 それだけは何となく理解する事が出来たものの、ツッコミどころが満載であったため、喉の奥に小骨が引っ掛かったような感じで違和感が残っていた。
 それでも、相手がビルシャナだからの一言で片づけてしまう事案でもあるため、あまり深い考えない事にした。
「やはり、白衣を着るなら、それにふさわしい努力をするべき、おそらく、ビルシャナは、そう言った事を言いたかった……と思っておきましょう」
 タキオンも何やら察した様子で、何処か遠くを見つめた。
 ビルシャナの性格から考えて、ノープランである可能性が高いものの、その事実を口にしたところで、ションボリ感が増すだけなので、あえて語らない事にしたようだ。
 そもそも、その事を語ったところで、誰も幸せにはなれない。
 真実を口にする事で、悲しみを生むのであれば、語るべきではないという判断に至ったようである。
 その間に、女性信者達の洗脳が解け、次々と我に返っていったものの、まったく状況を理解する事が出来なかったため、頭の上には沢山のハテナマークが浮かんでいた。
「おーほっほっほ! 今日も元気に鳥を成敗よ!」
 そんな中、シーラが勝ち誇った様子で、ヘリウム声を響かせるのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年3月21日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
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