ガンコなヨゴレも、必ず落ちる！

■リプレイ

●都内某所
「……世の中には超音波洗浄器なる便利なものがあるのですね。家族で食器洗いするのが普通の私達には馴染みの薄いものですが、子供さんをお持ちの方や、お忙しい方には便利なものでしょうね」
　如月・沙耶（青薔薇の誓い・e67384）は仲間達と共に、ダモクレスが確認された都内某所にある倉庫の前にやってきた。
　ダモクレスは元々超音波洗浄機だったらしく、汚れ以外のモノまで綺麗にしてしまった事が原因で、返品の山が相次ぎ、倉庫の中で眠る事になってしまったようである。
「我が家は4人暮らしなので洗い物は家族で協力すればなんとかなりますが、お忙しい方などには便利なものには間違いないですよね。ただ、ダモクレスになって世界を破壊して洗浄する仕様に変わってしまったようですが……」
　源・那岐（疾風の舞姫・e01215）が、複雑な気持ちになった。
　おそらく、超音波洗浄機自身、破壊を望んでいる訳では無いだろう。
　だが、ダモクレスと化した事で、結果的に破壊衝動を抑える事が出来ず、暴走してしまう可能性があった。
「それにしても、君はよくよくこういった機械に縁があるな」
　そんな中、ハル・エーヴィヒカイト（閃花の剣精・e11231）が、モヱ・スラッシュシップ（機腐人・e36624）に視線を送った。
「それは単なる偶然デス」
　その視線に気づいたモヱが、落ち着いた様子で答えを返した。
　眼鏡を綺麗にするため、衝動的に超音波洗浄機を購入した事はあるものの、それだけの事で縁が結ばれる事はない。
　そう言った意味で、単なる偶然。
　もしくは、運命のイタズラである、と判断したようである。
「……とは言え、汚部屋の住人としちゃ、便利なダモクレスじゃねーの」
　柄倉・清春（大菩薩峠・e85251）がスーツ姿でバシィッと決め、自分なりの考えを述べた。
　『綺麗にし過ぎる』という点が引っ掛かっているが、その辺は上手く付き合っていけば大丈夫なはず。
　場合によっては、暴れ馬に乗りこなすほど困難な事かも知れないが、チャレンジするだけの価値はありそうだ。
「まあ、適度に落としてくれるってなら、診療所に欲しいけどな」
　戯・久遠（紫唐揚羽師団の胡散臭い白衣・e02253）が、冗談混じりに答えを返した。
　さすがにダモクレスを連れて帰る訳にはいかないものの、色々なモノ綺麗にしてくれるのであれば、悪い気はしなかった。
「そう言う訳で、蒐（ライドキャリバー）の洗車を暫くサボってみたわけだが……。案外、水垢ぐらいしかつかないものだな。ちょっとそこで水溜まりダイブして泥んこになってくれ」
　一方、嵯峨野・槐（目隠し鬼・e84290）は蒐に指示を出し、泥の中に突っ込ませた。
　そのせいで、蒐が泥だらけになってしまったが、これもダモクレスを引きつけるため。
　何やら蒐が猛抗議をしている気もするが、これも尊い犠牲であった。
「セ、セ、センジョウキィィィィィィィィィィィィィィィ！」
　次の瞬間、ダモクレスが倉庫の壁を突き破り、ケルベロス達の前に現れた。
　その狙いは蒐であったが、ケルベロス達も纏めて標的になっているような感じであった。
「今回のチームなら、ほとんど問題なく依頼も解決できそうだね！　もっと強くなりたいから……。その技、一つ一つを学ばせて貰うからねー！」
　それを迎え撃つようにして、エリザベス・ナイツ（焔姫・e45135）が間合いを取った。
「世の中を破壊して綺麗にする仕様になってしまったら倒せねばなりませんね。一緒に行きましょう、那岐」
　それに合わせて、沙耶が那岐に声を掛けながら、攻撃を仕掛けるタイミングを窺った。
「守りは頼むモヱ、槐。その間に私が出来うる限りの損害を相手に与えよう」
　そう言ってハルが仲間達に声を掛け、殺界形成を発動させた。
　その間にダモクレスが距離を縮め、蒐に襲い掛かって、そのボディをピカピカになるまで磨き上げるのであった。

●ダモクレス
「まさか、ここまで綺麗になるとは……。
　それを目の当たりにした槐が、驚いた様子で声を上げた。
　蒐は新品と見紛うほどピカピカしており、まるでワックスを掛けたような状態になっていた。
　そのためか、蒐も誇らしげ。
　見違えるほど綺麗になったボディを見せつけ、色々な意味でキラキラとしていた。
「なんか通販で紹介されそーな、ダモクレスだな。あー、一家に一台ってか？」
　それを目の当たりにした清春が、ダモクレスをマジマジと見つめた。
　ダモクレスは地味に便利そうな雰囲気が漂っており、洗車などで大活躍をしてくれそうな感じであった。
「それじゃ、いつもの験担ぎってな」
　一方、久遠は唐揚げを頬張りながら、胡散臭いオーラを放ち、金色の闘気を魔に纏った。
「セン、セン、セン、ジョウキィィィィィィィィィィィィ」
　それと同時に、ダモクレスがすべてを綺麗にする勢いで、ケルベロス達に迫っていった。
「さて……、術式開始だ。こいつは挨拶代わりだ。受け取りな」
　その気配に気づいた久遠が、ダモクレスに達人の一撃を仕掛けた。
「セン、セン、セン、ジョウキィィィィィィィィィィィィ」
　だが、ダモクレスは怯まない。
　アスファルトの地面を綺麗にしながら、再び距離を縮めてきた。
「……何やら嫌な予感しかしませんね」
　すぐさま、沙耶が警戒した様子で間合いを取りながら、運命の導き「節制」（フェイト・ガイダンス・テンパランス）を発動させた。
「何か危険な仕様になってるようなので、脅威を少しでも軽減しておきますね」
　続いて、那岐がステルスリーフを発動させ、仲間に魔法の木の葉を纏わせる事でジャマー能力を高めた。
「さて、戦いながらにはなるが、見取り稽古と行こう、エリザ。私の振るう剣をよく見ながら戦うといい」
　その間に、ハルがエリザベスと連携を取りつつ、攻撃を仕掛けるタイミングを窺った。
「まずは……急所に一撃っ！」
　それに合わせて、エリザベスがみずとつき（ミズトツキ）を仕掛け、ダモクレスの急所を強打した。
　しかし、ダモクレスの勢いは止まらず、身体が弾き飛ばされそうになった。
「……あまり無理をするな。肝心なのは……相手の僅かな隙を見極め、踏み込み、一息に斬ることだ」
　ハルがエリザベスを受け止めるようにして背後に回り、ダモクレスが迫ってきた事を横目で確認しながら、そのまま懐に潜り込み、一瞬のうちに斬り刻んだ。
「こうですか！」
　そのアドバイスに従って、エリザベスが轟竜砲を仕掛け、ハンマーを砲撃形態に変形させ、竜砲弾でダモクレスを攻撃した。
「チョ・チョ・チョオオオオオオオオオオオオ！」
　その途端、ダモクレスが殺気立った様子で、超音波ビームを放ってきた。
「あークソっ。堅っ苦しい格好だな、戦いにくいったらねーぜ」
　清春が悪態をつきながら、超音波ビームを避けた。
　いつもと違って、着慣れないスーツを着ているせいか、避けようという気持ちに反して、身体がついてこない感じであった。
　そのため、半ばヤケになりつつ、ポケットの中に忍ばせてあったスマホで、ガート。
　その影響でスマホだけでなく、手までピカピカ。
　まるで手タレの如く、綺麗になって手を見て、『なんか、気持ち悪ィ……』という気持ちになった。
「ほぉ……これはなかなか面白い」
　久遠も超音波ビームを喰らい、無駄にキラキラしている自分の姿を鏡に映した。
　何となく毒気が抜けた見た目になっているせいで、何処かの少女漫画で白馬に乗って登場しそうな雰囲気になっていた。
「これは眼福デス、この動画はアイズフォンで、クラウドストレージに同期保存しておきマショウ……hoo……」
　そんな中、モヱが男性陣を見つめ、ほんわかとした雰囲気を漂わせた。
　その後ろでミミックの収納ケースが、超音波ビームで浴びて、無駄にキラキラとしていたが、アウト・オブ・眼中であった。
　それに合わせて、槐が蒐と連携を取りつつ、ブレイブマインを発動させた。
　その間に、蒐が全身に太陽の光を浴び、ここぞとばかりに輝いた。
　それは全く意味のない行為であったが、蒐のドヤ顔（？）が見える程、誇らしげであった。
「チョ、チョ、チョ！」
　次の瞬間、ダモクレスが超音波アームを構え、ケルベロス達に攻撃を仕掛けてきた。
「こっちだけに気を取られてていいのかい？」
　その事に気づいた久遠がキラキラオーラを漂わせ、強力な超音波を避けると、わざとダモクレスの注意を引いた。
「チョウ・オン・オンパァァァァァァァァァァァ！」
　その挑発に乗ったダモクレスが、再び超音波ビームを放ってきた。
「……油断しましたね」
　それに合わせて、那岐が轟竜砲を放ち、ダモクレスを足止めした。
「だから言ったろ。油断大敵ってな、貰ったぜ」
　久遠が軽く皮肉を言いながら、ダモクレスに旋刃脚を炸裂させた。
「チョウ・オン・オンパァァァァァァァァァァァ！」
　それでも、ダモクレスは怯む事なく、執拗に超音波ビームを放ってきた。
「こんな事なら油まみれの換気扇を持ってきても良かったデスネ」
　その攻撃をモヱが真正面から、エアコンフィルターで受け止めた。
　その影響でエアコンフィルターが見違えるほど綺麗になり、思わずワォっと声が漏れそうになった。
「チョウ・オン・パァァァァァァァァ」
　その間に、ダモクレスが捨て身の覚悟で、超音波ミサイルを放ってきた。
「やらせませんよ、絶対に……！」
　すぐさま、沙耶が時空凍結弾を撃ち込み、武器から物質の時間を凍結する弾丸を精製し、ビルシャナの動きを封じ込めた。
　そのため、ダモクレスは上手く狙いを定める事が出来ず、ケルベロス達がいない場所に次々と超音波ミサイルを落とした。
「ハッハーッ！　一気に畳み掛けてやるよ」
　それと同時に、清春がアイスエイジインパクトを仕掛け、生命の進化可能性を奪う事で凍結させる超重の一撃を叩き込んだ。
「チョ・チョ・チョオオオオオオオオオオオオ！」
　その一撃を喰らったダモクレスが、断末魔にも似た機械音を響かせ、完全に機能を停止させた。
「やれやれ、なんとかなったか？」
　その事を確認した後、久遠がホッと溜息を漏らした。
「それでは、ヒールで直しておきまショウカ」
　その間にモヱがヒールを使って、倉庫の壁を修復した。
　倉庫の中には、超音波洗浄機が山積みされており、何やら悲しげな雰囲気が漂っていた。
「それにしても……凄いな」
　そんな中、槐が複雑な気持ちになりつつ、蒐のボディを優しく撫でた。
　あまりにも綺麗過ぎるせいで、ほとんど別物。
　思わず拝んでしまう程、神々しい雰囲気が漂っていた。
　そのせいで、蒐がドヤッとしている感じがするため、何となくイラッとした。
「さて、時間があるなら復習にも付き合うがどうする？」
　ハルがイイ笑顔を浮かべながら、エリザベスが視線を送った。
「よーし！　それじゃ、よろしくね、ハルさん……！」
　そう言ってエリザベスが、ハルに笑顔を返すのであった。

作者：ゆうきつかさ	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2020年3月19日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 1／キャラが大事にされていた 2
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