冥漠を這う

作者:崎田航輝

 低い震動音と共に、闇が揺れている。
 空の覗かぬ地下深く。
 昏き土壌に満たされた地中の空間を、巨大な虫の如く這う影があった。
 土を貪り、躰を波打たせながら進行し、空洞を只管に押し広げて。
 硬い地盤すらものの苦ではないように。阻む壁を喰らいながら進行するそれは──巨大攻性植物。
 畝る躰に長く伸びた触手、零れる溶解液。二十メートルの巨体を持つ、『プラントワーム・ツーテール』。
 掘り進むのは大阪城地下。
 その拠点を拡充するために、“工事”を進めているのだ。
 護衛に、植物を纏った骸の戦士を従えながら──流動するその巨体は刻一刻と、地下を我が物へと変えていく。

「集まって頂きありがとうございます」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)はケルベロス達へ説明を始めていた。
「大阪城の攻性植物勢力が、大阪城地下に巨大空洞を作り……拠点を広げている事が判りました」
 これは周辺の地下鉄の状況を厳重に監視していた君乃・眸(ブリキノ心臓・e22801)によって発見された情報だ。
 攻性植物達は、地下を掘り進める事に特化した巨大攻性植物『プラントワーム・ツーテール』を使い、今も、地下拠点の拡大を進めている。
「地下拠点は、地下鉄の路線のすぐ下まで拡張されているようです」
 それは脅威と言える事実ではある。
 だが、この地下鉄の路線を爆薬で爆破すれば、拠点を掘り進める敵に奇襲をかける事が出来るだろう。
「この機を逃さず──皆さんには奇襲作戦を行って頂きたいんです」

「まず、皆さんは爆薬を持って、封鎖された地下鉄路線に潜入して頂きます」
 そして予定された地点で爆薬を爆発させ、地下路線とつながった敵拠点へ侵攻。すぐ近くに居るであろう、作業中のプラントワーム・ツーテールと護衛を撃破するのが作戦だ。
「プラントワーム・ツーテールは全長二十メートルという巨体を持ちますが……拠点工事に特化しているようで、知能や戦闘力は高くはないでしょう」
 撃破するにあたっては、護衛に警戒をする必要があるという。
「それが植性竜牙兵です──攻性植物製の竜牙兵、とでも呼ぶべき存在でしょうか」
 プラントワーム・ツーテールが貴重な存在だからだろう、この護衛は十体と数も多く揃えられており、一体一体も油断できない強さだといった。
「是非、気をつけて戦いにあたってくださいね」
 また不測の事態を避けるため、敵の撃破後は、速やかに撤退した方が良いだろうとも付け加えた。
「敵の動きを察知出来た幸運を生かし……確実な撃破をお願いしますね」
 イマジネイターはそう言葉を結んだ。


参加者
フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)
ジョルディ・クレイグ(黒影の重騎士・e00466)
平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547)
火倶利・ひなみく(スウィート・e10573)
エリオット・アガートラム(若枝の騎士・e22850)
ケイト・クゥエル(セントールの鎧装騎兵・e85480)
ディミック・イルヴァ(グランドロンのブラックウィザード・e85736)

■リプレイ

●突入
 纏わり付くような暗がりに靴音が響く。
 封鎖された地下鉄。既に地上は遠く、空の見えぬ構内はしんと冷え切っていた。
「大阪城の潜入調査から1年半、爆殖核爆砕戦からは3年経つのか……」
 エリオット・アガートラム(若枝の騎士・e22850)は階段を下りながら呟く。静寂ながら張り詰めた空気に、多くの戦いを想起させられた。
(「奪回への道は遠く、ハールや他勢力の参入で敵の戦力は増える一方……」)
 だがそれ故に、この戦いも重要なのだと判っている。
 大阪の人々の安全のために。
 潜入調査の時に見たような犠牲者をこれ以上出さないために。
「行きましょう。場所はもうすぐです」
「うん。……あ、音が聞こえるよ」
 線路に降りた平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547)は、微かな震動に見下ろす。
 それは蠢くような低い音。
 この直下に何かが居ると感じるには十分の、地鳴りを伴った気配だった。
「地下掘りして陣地拡大かー。攻性「植物」だもんね、そういう攻め方もそりゃあるよね……全然気づかなかったけど」
 しかーし! と、和は爆薬を取り出す。
「頭のいい人が監視しててくれたおかげで見破ることが出来た! あとはしっかりかっちり、叩きのめすだけだね! がんばろー、おー!」
 皆もその声には頷いて、発火装置と共にセット。
 合図を交わし合い──少しの距離を取って、起爆。ばちりと火花が弾けた一瞬、赤色の爆炎が線路もろとも地盤を粉砕した。
 大音と共にその下に覗いたのは、広大な空洞。
 皆で一斉に飛び降りると、着地するよりも早く視界に巨大な異形の姿が飛び込んでくる。
 フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)は風に黒髪を踊らせながら、前頭葉の地獄を活性化、サークレットを開き始めていた。
「地下から奇襲できる程度でしたらー、ぎりぎり地上権の侵害ですわねぇー。違反で罰則ですのよー」
 異議申し立てはー、受け付けておりませんのでー、と。
 異形を守る骸達に向くと、ぎらりと金色瞳を開眼させて。
 顔に狂笑を宿し、額の弾痕から獄炎を迸らせると──。
「──滾rU焔デ灼kI討チ、祓ッtE見セmAセウ」
 刹那、独鈷状の杖を脈動させ、空中を蹴って素早く着地しながら炎を放射。暴力的な迄の火力で敵前衛を包み込んでいく。
 骸達はそこで初めて強襲に気づいたように視線を向けてきた。
 が、漆黒の全身装甲で暗所に溶け込んだジョルディ・クレイグ(黒影の重騎士・e00466)の姿を容易に捉えられない。
 瞬間、敵に気づかれもしない内に、ジョルディは主砲からミサイルを発射。惑う骸達へ炸裂する衝撃を見舞っていく。
 敵前衛の幾らかが麻痺に陥ると──ジョルディは漆黒の戦斧を突きつけた。
「攻性植物の兵よ。我が嘴と爪を以て……貴様達を破断する!」
 骸達は頭蓋を鳴らして敵意を顕にする。そのまま植物を揺らして仲間の回復にかかっていた、が。
「──無駄なことだ」
 刃のように、静かで鋭い声音が骸へ迫る。
 地を蹴って風の如く駆ける、ヴォルフ・フェアレーター(闇狼・e00354)。
 敵陣の只中へ飛び込むことへ一切の躊躇もないのは、敵をただ純粋に殺す対象として見ているから。
 戦闘狂の心で寧ろ、刃を振るうことを楽しむように。
 一閃して裂傷を刻むと『Vorzeit zauber』──太古の魔術により精霊を喚び、生命を蝕み治癒を進ませない。
 同時に敵の挙動をつぶさに見取ってもいた。
「後ろの敵が動いています」
「私にお任せを」
 と、肯くのはケイト・クゥエル(セントールの鎧装騎兵・e85480)。既に砲身を真っ直ぐに構えていた。
 タクティカルライトを主砲へ接続しているため、暗闇に困ることはない。しかと砲口を向けると、粉塵を上げて後衛の一体を狙い撃った。
 威力に相応する反動が訪れても、ケイトは頑強な馬体と蹄で微動だにしない。直撃を受けた骸だけが吹き飛ばされて正体を失っていた。
 それでも中衛の骸が槍を飛ばしてくるが──和とエリオットが防御。
 直後には火倶利・ひなみく(スウィート・e10573)が鮮やかな花咲く蔓を宙へと踊らせていた。
「回復もするから、待っててね!」
 眩い光を伴って結実するのは艷やかなる黄金。きらりと耀く甘露が皆へ癒やしと共に守護を齎していく。
「では、これで十全にしておこうかねぇ」
 と、腕の機巧を廻転させて光を零れ出させるのはディミック・イルヴァ(グランドロンのブラックウィザード・e85736)。
 溢れた輝きを地面へ拡げ、次の瞬間にそれを立体へ構成する。形を持った光が堅牢な城壁となって、皆を護ると共に治癒の効果も与えていた。
「これで前衛の防護は憂いないよ」
「後方も、すぐに」
 言って星剣を翳すのはエリオット。喚び込んだ星々の輝きで星座を構成し、加護を仲間に拡げていく。
 ディミックは肯きながらも、長身を活かして戦況を見逃さない。
「敵の中衛が力を蓄えているようだ」
「大丈夫だよ!」
 と、手をのばすのはひなみく。『ドロレス夫人の踵』──強い戦意をヴェールのように揺らめかせ、優しい心地で魔を砕く力を味方に宿していた。
「これで、後は攻撃してほしいんだよ!」
「りょーかーい!」
 ぽん、とそこで飛び出たのが和。自身にも破魔の能力を加えた上で、かっと見開いた目元から閃光の如き光線を放っている。
「ひゃっはー! 薙ぎ払ってやるー!」
 名に違わぬ『目からビーム!』の一撃は、敵中衛の力を纏めて砕いていく。
 その間にも、ケイトが星屑を蹴り出し敵後衛を削ると──攻撃を目論む敵前衛にもヴォルフが疾走。
 蔓を振り上げた盾役に至近から射撃を撃ち込み傾がせた。
 その一体をジョルディが斧で粉砕すれば──フラッタリーが地面へ刃を突き刺し、獄炎を浸透。一帯を蠢く炎で満たし、眩い高熱を波打たす。
 ──暗躍を晒せ、罪を糺せ、獄刑に処せ。
「流rUル焔nI嚥マrEヨ」
 何者も地獄から逃れる事能わず。暴炎の濁流が前衛三体を呑み込み溶解させた。

●闇戦
 轟音に地が揺れる。
 骸に護られていた異形が、漸く此方に敵意を向けていた。
 この空間を彫り出した巨大攻性植物──プラントワーム・ツーテール。
 全長は二十メートル。視界に収まらぬ程の体躯を、ケイトは今一度見据えている。
「地下を掘り進む巨大ミミズ、ですか」
「この個体が、こんな空間を作っていたのだね」
 見回すディミックは何処か感心を覚えるようでもあった。
「掘削というものは、常に落盤との戦いだが……なるほど植物が根を張るように行えば、というわけか」
 地球に降りる前、嘗て土木系の重労働も経験したことを想起する。
「自由に地層を喰らえるとなれば、成程、中々に空恐ろしい存在だねぇ」
「ほんとうだよ! ただでさえ大阪城陣営は鬱陶しいってのに! わずらわせないでほしいんだよ!」
 ひなみくも頬を膨らませるけれど──無論植物達の答えは殺意。
 ならばこそ、ひなみくとて迷う理由はなく。攻めてきた盾役を“気”で掴むと──。
「潰れろッ!」
 腕を振るって一撃。遠方から投げ落として四散させた。
 同時に七彩の光を拡げて皆の膂力を押し上げてもいる。
「みんなもごーごー! なんだよ!」
「もちろんだぜ!」
 と、応えた和は敵後衛にビームを掃射し炎上させていた。
 その骸達は自己の回復を目論む。が、エリオットがそれを許さず槍を投擲。分散した矛先で射抜いて意識を阻害した。
「今です!」
「ええ、仕留めさせてもらいましょう」
 頷いて蹄で加速するのはケイト。
 中衛の敵が邪魔な場所に居れば、焔を放って薙ぎ払ってみせながら。風を切る速度で標的の横合いを確保していた。
 骸は抵抗しようにも朦朧として動けない。ケイトはそこへ違わず砲を発射。一直線に爆炎の軌跡を描いて後衛の一体を爆散させた。
 プラントワームが遣り返すように体当たりを放ってくる。が、生まれる慣性力は大きくも──それもまた耐えられぬ程ではない。
 和が上手く防いだと見れば、ディミックが素早く掌に光を湛えていた。
 こがね色の輝きを宿すそれは濃密な魔力。治癒の力へと転化されることで、傷口を覆って苦痛を拭い去ってゆく。
「傷は深くないようだから、これで十分だろう」
「ありがとー!」
 和が笑んで応えていると、敵中衛が攻撃を重ねようとしてくる、が。
 その初動を一瞬で察知したヴォルフが、既に手元にオーラを溜めていた。
「──させると思うか」
 その研ぎ澄まされた感覚もまた、嘗ての職の名残。一番疾い一体へ暴風の如き衝撃を撃ち込んで、攻撃を相殺していた。
 他の敵中衛の足元も、煮え滾る溶岩に囚われている。
 フラッタリーが何処までも拡げる、焔の地獄。
「業炎nI沈ミ征ケ」
 藻掻く骸へ、フラッタリーは炎の塊を頭上からも浴びせていた。
 一体はそれでも這い出て蔓を振るってくる。だがジョルディは二振りの斧と二枚の大盾を重ねて鉄壁の防御。
「重騎士の本分は守りにあり!」
 真正面から衝撃を殺し、すかさず反撃の一手。蔓を弾き返して斧を振り下ろし、力任せに一体を押し潰した。
「さあ、皆も続け!」
「ひゃっはー!」
 和は言わずもがなとばかり、御業に烈しい炎を噴射させている。
「もえろもえろー! 燃える攻性植物だけが良い攻性植物なのだー!」
 そのまま目も眩む程の火力が灼熱を齎すと──滂沱の火花と共に一体が燃やし尽くされていった。
 中衛の骸は残り一体。足掻くように蔓を振り回すが、それもエリオットが剣で絡め取るように防ぎ、被害を最小限に抑える。
 僅かに残った傷も、ディミックが幻影を生み出して躰に同化させて。即時に傷を消し去っていった。
「よし、能力も強まったはずだ」
「ええ。この力──活かさせて貰います」
 エリオットが言いながら狙いを向けるのは、後衛に残る敵だ。
 その骸は隙を見て回復を図ろうとしていたが──エリオットはそこへ聖剣を掲げる。
 ──天空に輝く明け星よ。赫々と燃える西方の焔よ。
 刹那、祈りと守護の意思を込めて放つのは『いと高き希望の星』。闇を裂く光芒を真っ直ぐに輝かせて骸の命を貫いた。
 いつしか、骸は単騎を残すのみ。
 その一体は声を上げて踊りかかってくる、が。
 相手から奔ってくるなら、ヴォルフにとっては良い的でしかない。瞬間、ヴォルフは目にも留まらぬ速度でナイフを投げ放つと──骸の頭蓋を破砕して絶命させた。

●帰還
 忿怒か、或いは恐怖か。
 近衛を失ったプラントワーム・ツーテールは、戦慄くように鳴き声ともつかぬ音を洩らしていた。
 そこへひたひたと踏み寄るフラッタリーは、獲物を捕らえた猛禽。
「喰ラヒtSUクゾ、喰ラヰ衝イタゾ!!」
 伸ばした邪手は今絡め取られたのだと。奔って組み付くと、刃に炎を纏わせ振り上げる。
「咽喉元ヲ縊リ引キ毟rUゾ!!」
 そのまま突き立てた衝撃に、プラントワームは掠れた嘶きで苦悶した。
 それでも抵抗をするつもりか、触手を四方八方へと振り回し前衛を打ち据える。が、エリオットが花舞う風を吹き抜けさせると、早々に皆の傷が払い除けられていた。
「威力は、問題ないようですね」
「それじゃあみんな、あとは一気に倒せるように──頑張るんだよ!」
 と、ひなみくは手を広げて魔法粒子を振り撒いて。皆の意識を研ぎ澄ませ、最後の一手までの継戦力を養っている。
「では私も、前線の助力をさせてもらおうかねぇ」
 背部ユニットを大きく広げ、眩く発光させるのはディミック。光線を雨と注がせてプラントワームの巨体へ風穴を開けていた。
 のた打つ異形へ、ヴォルフも慈悲無く一撃。神速の蹴撃を叩き込んで長大な躰をくの字に曲げさせる。
 僅かに浮いたプラントワームに、和も流体を飛ばしていた。
「ここだ! 渾身のー……てややー!」
 流動して鋭利な槍と化した黒色は、そのまま胴を貫き飛沫を上げさせる。
 悲鳴の如き音を零す巨体は、横穴を掘って背後に回り込もうとしてきた。が、それを超える速度で逆に敵の背を取るのが──ケイト。
「疾さでは劣りませんよ」
 蹄を奏で、円周を奔る。同時に砲撃を見舞って爆煙と共に触手を粉砕していた。
 その間にも蛇行して、背後からの溶解液を避けるのも忘れない。巨体が追走を望むには、ケイトは悪い相手でしかなかった。
「では──もう一撃」
 更に振り返って一弾を撃ち込み、敵の動きを止めさせる。
 同時にジョルディが二振りの斧を連結。薙刀上へ変形させていた。
「征くぞ、薙刀モード……E.N.D・Breaker!!」
 刹那、下段の構えからブースターで肉迫。
「HADES機関フルドライブ! 戦闘プログラム『S・A・I・L』起動! ──受けよ無双の必殺剣! ライジィング……サンダァァァボルトォォォッ!」
 弾ける雷光を伴って、斬り上げる一撃は『Rising Thunderbo』。鮮烈な撃力に、プラントワームは跡形もなく砕け散った。

 ジョルディが斧を振るって血を棄てる頃には、静寂が戻っている。
「いえーい! びーくとりー!」
 と、そんな隣で和はぴょんと跳ねてブイサイン。朗らかに勝利を喜んでいた。
 武器を収めたフラッタリーも、おっとりとした物腰に戻っている。
「これでー、目的は達成できましたわねぇー」
「ええ。皆さんも無事ですね」
 ケイトが見回すと、皆は健常な言葉を返していた。
 それから残存した敵がいないかを確認して──和はふと長く伸びた地下通路を覗く。
「うーむ、この穴をさかのぼっていくと、どこに繋がるんだろうねー。気ーにーなーるー」
「掘削されてきた末端……ならば、ここから逆に道が開ける可能性はありますね」
 エリオットも、果てない暗がりへ視線を注いでいた。
 それでも、来た道を仰ぐ。
「尤も、今は撤退を急ぐのが先ですね」
 見ると、爆破跡からぱらぱらと塵が落ちている。
 ひなみくはハッと口元に掌をやった。
「ひなみくゎ、大切なことに気付いてしまった……。無断掘り掘りに加えこの爆破……此処、もうすぐ崩れるのでゎ?」
「ふむ」
 ディミックも見上げて顎をさする。
「地盤が脆くなっているだろうし、無きにしもあらず、かな」
「ならいっそ、大阪城ごと崩れてしまえばいいのでゎ……?」
「それで敵勢力が潰れればいい、が。中々上手くは行かないだろう」
 ジョルディはひなみくに返しつつ、瓦礫の山を指して皆を促した。
「撤退しよう」
「はーい、大人しく帰りまーす」
 手をぴっと上げた和は、言葉に従って瓦礫を足場に地下鉄路線へ戻っていく。
 続くヴォルフも、一切振り返らない。
 戦いが済めば、討った相手のことなど興味を失ったように──ただ素早くホームへ上がり、地上を目指した。
 離れていく闇の入り口を、エリオットは今一度振り返る。
「また、調査をしたいところですね」
 それがきっと反撃の契機になる。今はただそう誓い、戦果を胸に前へと向き直って、帰路へ急いでいった。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年3月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。