時の刻音

作者:崎田航輝

 かちり、かちりと音が鳴る。
 等しい時刻に螺子を巻かれた秒針達が、静かな協奏のようにその音色を響かせる。人々はそれに耳を傾けながら、どの時間を選ぼうかとゆったりと歩いていた。
 そこは街の一角にある時計店。
 旧い異国のような趣きを持った店内に並ぶのは、大きな壁掛け時計に、振り子の揺れるアンティーク。
 色も造形も千差万別な置き時計や──硝子細工のように美しく種々の世界観を持つ砂時計までが揃っている。
 時を刻むスピードは変わらないけれど、選ぶ時計によって時間の彩りが変わるのだと、まるでそんな思いを抱くように。訪れる人々はどの時計で自分の時間を送ろうかと、愉しげに品々に視線を注いでいた。
 だがその心地良い静けさは、突如崩れ去る。
 巨大な破砕音が鳴ると、砕け散った硝子が空間に飛び散った。人々が驚き振り返ると──そこに立つのは見上げるほどの巨躯。
「こんなところに、いい餌がいるじゃねぇか」
 それは鋭い剣を下げ、兜の間から獰猛な眼光を光らせる罪人、エインヘリアル。
「じゃ、遠慮なく狩らせてもらうか」
 がしゃりと破片を踏み締めて歩み入ると──無造作に刃を振るって、目についた人々を切り捨てていた。
 血潮が弾けて、悲鳴が劈く。罪人は高らかな嗤いを上げながら、完全な静寂が訪れるまで殺戮を続けていった。

「皆さんはどんな時計、使われていますか?」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)はケルベロス達へそんな言葉を口にしていた。
 何でもとある街の時計店は、種々の品が揃っていて静かな人気なのだという。
「ただ……そんな場所に、エインヘリアルが現れる事が判ったのです」
 やってくるのはアスガルドで重罪を犯した犯罪者。コギトエルゴスム化の刑罰から解き放たれて送り込まれる、その新たな一人ということだろう。
「人々の命を守るために、撃破をお願いいたします」
 現場は店の前の道。
 待ち構えておくことで外で戦うことが出来るだろう。
「今回は事前に避難が勧告されるので、こちらが到着する頃には人々も丁度逃げ終わっているはずです」
 こちらは到着後、敵を討つことに専念すればいいと言った。
 それによって、店の被害も抑えられるだろうから──。
「無事勝利できた暁には、皆さんも時計など見ていっては如何でしょうか?」
 壁掛けに置き時計、腕時計、アンティークや一点物を中心に揃っているという。様々な造形を持つ砂時計などもあって、見るだけでも飽きないはずだと言った。
「そのためにも……ぜひ撃破を成功させてきてくださいね」
 イマジネイターはそう言葉を結んだ。


参加者
ムギ・マキシマム(赤鬼・e01182)
ヴィ・セルリアンブルー(青嵐の甲冑騎士・e02187)
ミント・ハーバルガーデン(眠れる薔薇姫・e05471)
羽鳥・紺(まだ見ぬ世界にあこがれて・e19339)
七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)
アトリ・セトリ(深碧の仄暗き棘・e21602)
オルティア・レオガルデ(遠方の風・e85433)
ディミック・イルヴァ(グランドロンのブラックウィザード・e85736)

■リプレイ

●迎撃
「時計屋、か」
 針が動き、振り子が鳴る。
 静寂の中では、時を刻むその音が零れて聞こえてくるようで──道に降り立ったムギ・マキシマム(赤鬼・e01182)は、物珍しげに背後の店を見やっていた。
「あまり行く機会もないし後でちょっと見てみたいな」
「大分、旧い時計もあるようだな。私も老いぼれだが、同世代型が現役だと嬉しいものだ」
 硝子張りの扉から中を眺め──ディミック・イルヴァ(グランドロンのブラックウィザード・e85736)も機械の瞳を仄かに光らせる。
「アンティークが愛されるというのは、くすぐったくもあるねぇ」
「昔っからの時を刻むアンティークの時計も、それに新しい時計も。どれも見ていて飽きないものだよね」
 どれも美しく、どれも同じ時を歩む。そんな時計達に、ヴィ・セルリアンブルー(青嵐の甲冑騎士・e02187)も声音を和らげていた。
 ただ、だからこそと──視線を前方にやって。
「それを邪魔するやつは、御退場願わないとね」
 言って見据える、道の先。
 そこに一体の巨影が垣間見えていた。
 鋭い剣を握って闊歩する罪人、エインヘリアル。一歩一歩と、獲物を探して歩んでいたが──無論、それを看過しないのが番犬。
 そこまでだよ、と。
 地を蹴って道を阻むのはアトリ・セトリ(深碧の仄暗き棘・e21602)。目を向けてくる巨躯に、涼しい声を投げている。
「この先は刻まれる時を人々が楽しむ場所。易々と荒らしていい所じゃないんだ」
 だから食い止めさせて貰うよ、と。
 言葉に、罪人は俄に敵意を向けて刃を握った。
「……、番犬か。いいぜ、ならてめぇらを餌に、遠慮なく狩らせて貰うだけさ」
「そう。なら、こちらだって、遠慮をしてあげる、義理はない」
 と、静やかな声と共に巨躯の頭上に影がかかる。
 蹄で跳ねるよう、オルティア・レオガルデ(遠方の風・e85433)が高く跳躍していた。
「全力で、倒させて、もらう」
「その通りだ。容赦はしない、その生命、刈り取らせてもらう」
 ムギもまた、声音に戦意を込めて。腕を大振りに振るって眩い銀粒子を撒いている。
「さあよく狙え、感覚を研ぎ澄ませろ」
「……ん」
 直後、澄んだ知覚力を得たオルティアは一撃。強烈な後ろ蹴りを巨体へ叩き込んでいた。
 たたらを踏んだ罪人は歯を噛んで刃を構え直す、が。
 そこにふわりと燦めく金色の影。
「させません」
 それは穹を思わせる青の靴で、鮮やかに跳躍する七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)。舞い上がるように巨体の後背を取ると、爽風を巻き込んで体を翻していた。
「まずはその動きを、封じさせて頂きますよ!」
 そのまま突き下ろす蹴りは、針の穴を通すように。的確に関節を打ち挙動を止めていく。
「今です!」
「ええ」
 と、頷いてみせるのはミント・ハーバルガーデン(眠れる薔薇姫・e05471)。両の手に銃をくるりと握り込みながら、傍らに残霊を喚び出していた。
 ──さあ、行きましょう。
 そのミントの声に応えるように“彼女”が槍撃を繰り出すと──。
「大空に咲く華の如き連携を、その身に受けてみなさい!」
 ミントも銃撃で烈火を見舞う。閃く衝撃の応酬は『華空』の名の如く、咲き乱れて巨体を包み込んだ。
 罪人が反撃の炎刃を振るうも、アトリは鋭い脚撃で受け流し傷を抑える。
 仲間に及んだ傷も、翼猫のキヌサヤが扇ぐ癒やしの風に、アトリ自身も花吹雪を交えて治癒。同時にディミックも眩き光の城壁を顕現し、皆を守護して万全にした。
 罪人が連撃を目論もうとも、ヴィが一手疾く刺突。敵の剣先を粉砕してみせる。
 巨躯は惑いながら、それでも次手を放とうと力を込めた。
 が、その足は先へ進まない。
「誰を狩ることも、叶いませんよ」
 そっと紡ぐ言葉は、羽鳥・紺(まだ見ぬ世界にあこがれて・e19339)の『まつろう怪談』。敵自身の内奥から悪夢を顕して、その身を蝕ませていた。
 己が最も恐れる闇に、罪人が心を迷わせれば、紺はその隙に視線を横へ。
「ムギさん、今のうちです」
「流石だな!」
 応えたムギは銃口を真っ直ぐに向けて面前へ疾駆。
「行くぜ、この距離なら外さねえ」
 刹那、白色に燦めく光の奔流で、冷気の残滓を舞わせながら巨体を貫いた。

●決着
「……やってくれたな」
 よろめきながら、罪人は血混じりの吐息を零す。苦渋を顕にしながら、声音には深い殺意があった。
「全て狩ってやる、切り裂いて、ぶち壊してやる」
「いいえ」
 紺は静かに、けれど凛と首を振る。
 守るべきものを、背中にしかと守るよう立ちはだかって。
 自分は時計を選んでいる時の、ゆっくり丁寧に流れるひと時が大好きだ、だからこそ。
「そんな優しい時間を惨劇で塗り替えようだなんて、見過ごすわけにはいきません。どちらが狩人なのか、思い知らせてやります」
「そういうこった」
 ムギも拳を打ち鳴らす。
 前には倒すべき敵が、側には守りたい人がいる。これで頑張れない奴は男じゃないのだと、気合は十二分だった。
 罪人はその全てを否定しようと刃を振り上げる。だが豊かなフリルを靡かせて、既にミントが跳躍。
「さぁ、これで焼き尽くしてあげます」
 靴を覆う魔力の茨を焔に包み、鋭利にして苛烈な炎撃を見舞っていた。
「綴さんも」
「ええ──私でも、やれば出来るのです!」
 肯く綴は、奮わせた自信を力に変えて一撃。意志の篭もった打突で巨体を抉る。
 傾ぐ罪人へ、ヴィも空色の瞳で真っ直ぐに見据えて肉迫。鮮麗な炎を揺蕩わせた剣で、耀く斬閃を巨体に刻み込んだ。
 罪人が飛び退いて、狙いを変えようとしても──。
「誰も、倒れさせはしないよ」
 この身は盾と、淀まぬ心でヴィが立ち塞がって剣撃を受け止める。
 受ける傷は浅くない。だが直後にはディミックが柔らかくも清らかな光を手元から生み出していた。
 それは鉱石魔法『恋する玻璃』。ありふれた白の石英を媒介にすることで、無限の可能性を実現。瞬時に傷を消し去ってゆく。
「これで十全。問題はないよ」
「では反撃だ」
 アトリは靭やかな所作で愛銃を抜くと、発砲。先ずは罪人を牽制する。
 生まれた一瞬の隙に吹く疾風は、オルティア。
 蹂躙戦技:穿群蛮馬──魔術の追い風で己が速度を引き上げると、罪人の反応速度を越えた刺突、斬撃、打突。畳み掛ける連撃で血潮を散らせていた。
「……次の、攻撃を」
「うん」
 と、返したアトリが既に高く跳んでいた。
 罪人ははっと仰ぐが、遅い。『幻葬凍刃』──紫黒色纏う氷の力を宿したアトリは、弧を描く美しき蹴撃で巨躯を袈裟に斬り裂く。
「生命の刻が止まるのはお前ひとりで十分だ」
「……っ!」
 罪人は深い衝撃に膝をつく。それでも這い上がるように剣を掴む、が。
「てめえの思い通りにはさせるかよ、その為に俺がいる」
 ムギが滾る獄炎をナイフに纏わせ、呪詛で固めた赫き剣を創り出していた。
「合わせろ相棒!」
「──はい!」
 頷く紺が細腕を伸ばし、影を凝集した弾丸を撃ち出すと──そこへムギが斬撃。
「聞こえるだろう、怨嗟の声が! その身で味わいやがれ! 筋・肉・全・開!」
 大きく振りかぶった『心焔筋月』の一刀が、罪人の腕を切り飛ばした。
 声を上げて倒れ込む巨躯、そこへミントは慈悲を与えない。青薔薇意匠の精緻なパイルバンカーを掲げると、烈しい氷気を湛えて。
「永遠に、凍結してしまいなさい」
 稲妻の如く撃ち出した杭で、巨体の胸部を穿ち凍結させてゆく。
 同時に綴が腕を突き出し、淡い光を収束していた。
「身体を巡る気よ、私の掌に集まり──敵を吹き飛ばしなさい」
 瞬間、閃光の如き光量を得た気の塊が、掌から一直線の軌跡を描いて飛翔。『練気掌波』──直撃した衝撃が、罪人を霧散させた。

●刻音
 秒針が、時間を奏でてゆく。
 時計店は被害もなく、平和な時間を取り戻していた。番犬達が周囲のヒールや人々の呼び戻しに尽力したことで、既に客足も戻っている。
 勿論、番犬達も店内へ。綴はその美しい品々に感心の声音を零していた。
「色々と時計がありますね」
「ええ。どれも、とても精巧に作られていますね」
 隣を歩むミントもまた、芸術品のような逸品達に視線を注ぐ。
 まず目に留まるのは、振り子を揺らす柱時計。細工が荘厳で、且つ精緻だ。それから人形が可愛らしい鳩時計が並び、最も種類の多い置き時計の棚に移る。
 こちらも金属加工のものや、木造りのボディなど千差万別。
「細かな作りで、本当に凄いです──」
「そうですね。ひとつひとつ違って、見ていて興味深いです」
 綴の言葉に頷くミントは、無表情ながら視線はつぶさに動かしていた。
 何かいいものがあれば、と思ってのことだが──その中でふと視界に入った一品が、気になって見つめる。
「これは、綺麗ですね」
 それはまるで薔薇の花束の中に文字盤が置かれたような美しい時計。鮮やかながら上品で、場所を選ばず置けそうだった。
「折角ですし、買っていきましょう」
「では、私はこちらを」
 と、綴も沢山の腕時計の中から一つを選んでいた。
 化石の一部を切り取ったような、細かな紋様が刻まれたもので──派手過ぎない金色の色彩も魅力的だ。
「良い時計ばかりでしたね」
「また、いつか来たいです」
 それらを購入した二人は、頷き合って──ゆっくりと歩んでいった。

「時計の針の音がしているのに、不思議に静かに感じるね」
 同じ時間の流れの中なのに、ゆったりとした心地良さがあって──ヴィは寛いだ気持ちで店内を歩んでいた。
 品々を見ていると、新しいものを買い求めるのもいいと思えるけれど。
 今日の目的は──。
「メンテナンス、お願いできる?」
 以前に恋人にもらった懐中時計をごそごそと取り出し、男性店主へ差し出す。
 青空をモチーフにした綺麗な一品で……受け取った彼は頷いた。
「良い時計ですね」
「宝物なんだ」
 ヴィが応えると、彼は笑顔で作業を始める。
 ケースや風防の傷をチェックしてから、丁寧に分解掃除。金属粉を払い、オイルを足していった。
 暫しの後、彼は作業を終えて時計を渡す。
「大切にされているのですね、とてもいい状態でした」
「ありがとう。無理を言ってしまってごめん」
 いいえ、と応える彼から時計を受け取り、ヴィは店内を見やった。
「この時計たちも新しい持ち主の手に渡って、幸せな時を刻めるようになるといいね」
 きっとこの店ならそうなるだろう、と。大事な時計を手に、心から思いながら。

 快い時計の音色の中、ムギと紺は隣り合って歩む。
「時計をお探しなのでしたよね」
「ああ、せっかくだからここで買っていこう」
 そっと見上げる紺を、ムギは優しく見下ろし頷いて。一つ一つを見て回り始めていた。
 硝子が美しいのは、砂時計の数々。
「砂時計って、つい見入ってしまいますよね」
「うむ、確かに」
 ムギは応えつつ顎をさする。
「シンプルだからこそ奥深いんかね」
 艷やかな透明色の中をさらさらと落ちる砂は、形にされた時間の流れ。その単純さと、同時に造形の美しさにも惹かれる心持ちだった。
 それから置き時計の並ぶ一角に入る。
「この辺りだな。家に置けそうなのは、と」
 単純な角形に、流線型の優美なもの、アンティークに未来的デザイン。目に留まるものは枚挙に暇無く、どれも魅力的だ。
「お、あっちにはスケルトンタイプもあるな!」
 と、ムギが瞳を輝かすのはクリアなボディの一品。
 金属光沢の美しい動力軸にばね、脱進機が動作するのは見ていて飽きない。ものによって並びも歯車のデザインも全て違うから、紺も一緒になって見ていた。
「中身が見えて面白いですね。どれも素敵で、目移りしてしまいます」
「だろ? いや~ムーブメントが見えてるのはやっぱカッコいいなおい」
 凝縮された機巧に心躍らせつつ、ムギは更に時計を見ていく。
 するとまた紺も並んで歩んだ。
「いいものばかりですね。どうしましょうか?」
「まあゆっくり探そう、時間はたっぷりあるからな」
 こうして共に見ているだけでの楽しいのだから、と。二人はまた時計を眺め……逸品を探していった。

 アトリは置き時計の並ぶ一角を歩いている。
 今使ってる時計が古いから買い換えようと思っていたところ。良いものがあればと眺めているが──思いの外、美しい意匠の数々に興味を惹かれた。
「どれも凝ってるんだなぁ……」
「ん、本当に、綺麗なものばかり」
 と、応えるのは同道するオルティアだ。美術品のような時計達に仄かに心躍らせている。
 アトリもそうだね、と頷く。
 今まで時計は時間が分かれば良いものだった。けれどこの作品達を見ていると、そうとだけ思うのは勿体なく感じられるのだ。
 それが自分の気に入ったものなら尚良い、と、探していると──彫刻や木組みといった精緻な細工の品々の中に、黒猫の意匠のものを見つけた。
 可愛らしくも美しい逸品に、アトリは即決する。
「イメージ通りだ。これにしよう」
「猫、可愛い……」
 と、呟くオルティアも又、隣で別の猫柄に惹かれていた。
 それは砂時計。無論猫柄だけでなく、艷やかな瓶のような品や、色硝子が燦めくものもあってどれも美しい。
 元々砂時計自体も、気になっていたのだ。
「造形、すごく拘ってる……ひっくり返してみても、いい…?」
 店員に確認してからさらさらと砂を落として見ると──その流れに不思議と目を引かれる。
「……んん、これ」
 多分、長時間のものでもずっと眺めてしまう、と。
 特に意味もなくひっくり返しては、時間を計るために時間を使ってしまいそうな──そんな気持ちがした。
 それほど魅力的だからでもあったが──。
「素敵だけど……欲しいけど……ううん……」
「何か、気に入ったものはありましたか?」
 ただ、店員にそう言われると、オルティアは結局一番気に入った物を手にとって。
「じゃあ、この、猫の柄がかわいいやつを、ひとつ……!」
 誘惑と欲望には抗えず、その砂時計を包んで貰い、上機嫌に受け取るのだった。

 ディミックはクォーツ式の腕時計の前で、足を止めていた。
 クォーツといえば自身の力の触媒にもしていた、石英のことだ。それに何か、自身の心に感じるものを覚えている。
 そっと見つめて、語りかけるように。
「小さな『きみ』達も、創造主につくられて与えられた仕事をこなすのだねぇ」
 休まずに動くその機械に、己に似たものも感じながら。
「老い先短い私かもしれないが」
 残りの時を共に刻む相手を、この中から選ぶとしようか、と。
 幾つか眺めて、目に留まったのは──曲線的な部位と直線的なデザインが入り混じった、ユニークな見目の最新式腕時計。
 温度や気圧の計測に、GPSや通信機能も備えた多機能型だ。
「これは自分への追加パーツのようで、なかなか面白いねぇ」
 この時計と共に、より良い時間を歩んでいければいい。
 そんな思いと共に、時の音色を聞きながら──ディミックは静かにカウンターへと向かっていった。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年3月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 1
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