花粉まき散らす害樹の駆除を!

作者:なちゅい


 大阪城が攻性植物の居城となって久しい。
 敵は勢力を広げるべく、あの手この手で事件を引き起こしている。

 大阪の市街地に飛んでくる花粉が自生、植樹されている植物へととりつき、怪物化する事件は散発しているが、今回はすでにどこからともなく攻性植物化した集団が街に現れて。
「「シャアアアアアアッ!!」」
 根を蠢かせながら道路を進んでくるのは、スギの木の集団。
 一般的にスギは10mの樹高があるが、邪魔だと判断したのか4~5m程にまで縮んでから侵攻してきている。
 そいつらの攻撃パターンはいくつかに分かれているが、枝を触手のように振るってきたり、根を地面に埋め込んで周囲を侵食したりとやりたい放題。
 また、この時期はスギが開花する時期でもある。ここで花粉を振りまくのは映像でもよく見かける光景だ。
 花を咲かせたスギはそこから光を放って攻撃してくることもあった。
「また攻性植物が現れおったで!」
「ほな、ケルベロスが来てくれるまで踏ん張らなな!」
 大阪市民ももうその出現にはこなれたもの。出現するやいなや、着の身着のままにその場から逃げていく。
 幸いにも、攻性植物の動きはそれほど速くはなく、逃げる大阪市民にすぐ追いつくとはいかない。
「「シャアアアアアアアアア!!」」
 だが、攻性植物は目ざとく逃げ遅れた市民を探し、街を破壊しながら進んでいくのである。


 少しずつ日差しが暖かくなってきたこの時期、ヘリポートに集まるケルベロス達も防寒具が少しずつなくなってきた感がある。
「今日は暖かいね」
 リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)は微笑を浮かべ、やってきたケルベロス達を迎える。
 そんな彼女へ、立花・恵(翠の流星・e01060)が挨拶しながら話を持ち掛ける。
「花粉シーズンが到来したからな! 花粉をまき散らす攻性植物が出るんじゃないかと思ってな!」
「うん、ちょっと……いや、かなり迷惑な相手だね」
 今回に限らず、大阪市内で事件を起こすことで、一般人の避難を加速させて拠点の拡大するのが攻性植物の狙いとみられている。
 大規模な侵攻ではないものの、このまま放置すればゲート破壊成功率が『じわじわと下がって』しまう。
「起こってしまう事件をしっかりと解決していきたいところだね」
 敵の侵攻を完全に防ぎ、さらに隙をついて反攻に転じたいところだ。

 現れるスギの木の攻性植物は樹高4~5m程度にまで縮んでいる。
 数は4体と多く、一般人を見つけると命を奪おうとする為、極めて危険な状態だ。
「攻性植物達は別行動することなく固まって行動しているよ。戦い始めたら逃走は行わないようだね」
 これらもあって対処は決して難しくはない。
 だが、数で攻めてくる敵は同じ植物から生まれた攻性植物ということもあり、互いに連携も行ってくる。油断は禁物だ。
「リーダーは不在だね。強さもだいたい同じくらい。ただ、所持するグラビティや状況によって変化させてくるようだね」
 敵がどういう編成で来ても対処できるよう、戦略を練っておくとスムーズに対処できるはずだ。
 大阪市街地での戦いとなるが、街に現われた攻性植物が暴れ出した直後に現場に到着することができる。
「警察、消防もすぐに駆けつけるはずだよ」
 避難誘導も比較的早いタイミングで引き継ぐことができるはずなので、手早く攻性植物の抑え、討伐に当たりたい。
 最後に、リーゼリットはそういえばと追加で口にする。
「暖かくなる前に、豚まんなんてどうかな」
 戦いで体が多少温まっても、事後のヒールなど修復活動によって体が冷えてしまうと思われるので、心も体も温めるといいかもしれない。
「少しだけご褒美にって食べると、幸せな気分になりそうね」
 ユリア・フランチェスカ(慈愛の癒し手・en0009)も乗り気になっており、是非、参加するケルベロス達と一緒に食べたいとのことだ。
「その為にも、攻性植物をしっかりと対峙しないとね」
 リーゼリットは微笑ましげにケルベロスを見つめ、自身のヘリオンへと参加を決めたメンバーを案内していくのだった。


参加者
立花・恵(翠の流星・e01060)
霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479)
イリス・フルーリア(銀天の剣・e09423)
プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)
北條・計都(凶兆の鋼鴉・e28570)
ローゼス・シャンパーニュ(赤きモノマキア・e85434)
白樺・学(永久不完全・e85715)

■リプレイ


 大阪市、市街地までやってきたケルベロス達一行。
 大阪城の攻性植物は中々厄介だが、ゲート破壊成功率を下げないよう尽力したいところ。
 桜の花が咲く銀色の髪のイリス・フルーリア(銀天の剣・e09423)はそう考えて。
「そのためにも、こういった事件を放置するわけには行きませんね!」
 彼女の一言を受け、前方のが黄色く霞がかったようなその通りに、戦場を駆ける赤と呼ばれたセントール、ローゼス・シャンパーニュ(赤きモノマキア・e85434)は思わず素直な感想を口に出す。
「なるほど、確かにこれは難儀だ」
「……それにしても、花粉症の方は辛そうです……」
「花粉がツライ季節だね。花粉症の人のためにもすぐに解決するよ」
 イリスの言葉に同意する白い紙のサキュバス、プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)は、ケルベロスも花粉症になるのかと考え、仲間の方へと向けると……。
「へっく……しゅ!! なんて最悪な相手が現れたんだ……」
 女性と見紛う容姿をした黒髪の青年、立花・恵(翠の流星・e01060)は集中力が切れることと、頭がぼーっとする感覚に見舞われている。
 くしゅん、くしゅん。
 青い肌をしたグランドロンの少年、白樺・学(永久不完全・e85715)は、助手のシャーマンズゴーストがくしゃみをしているのを冷静に見つめて。
「いや貴様、アレルギーは持ってないだろう……?」
 学の助手は指摘され、あ、そっかといった雰囲気でくしゃみを止めた。
「デウスエクスではなくとも、スギ花粉というのは厄介らしいな」
「普通の花粉ならば、このサバト頭巾により完全防備なんですけどね~。厄介極まりないですね」
 青い髪をしたセントールの弓の名手、ジャスティン・アスピア(射手・e85776)の一言に対し、怪しげな頭巾を被ったリア充爆破系サバト、霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479)が大儀そうに言葉を返す。
「ただでさえこの時期厄介なスギが、ほどよい大きさで歩いて近づいてくるなんて……」
 いつも精一杯・何にでも全力投球をモットーとする北條・計都(凶兆の鋼鴉・e28570)も目の前に現れたスギの木の攻性植物の姿に辟易としてしまっていて。
「被害が出る前に伐採してやる!」
「ああ、このまま放っておくわけには……絶対にいかない!」
 自身の意気込みに続いた恵の姿に、計都は。
「立花さんと同じ戦場に立つのは久しぶりだなあ」
 そんな感慨も抱きながら、攻性植物の対処へと当たっていく。
 この短期間に、学はスギの木の攻性植物に効果的な属性などメモを取っていて。
 何気なく渡されたそのメモを、呆けていたシャーマンズゴーストの助手は丸めて捨ててしまっていた。


「「シャアアアアアアッ!!」」
 枝や根を蠢かせて全身を揺らし、道路を歩いてくる4体の攻性植物達。
 全長4~5mほどに縮んだスギの木々、ゆらゆらと揺らす木の葉からは大量の花粉が街へと放たれており、勢力を拡大しようとする願いが明らかに見て取れた。
 ケルベロス達は大阪市民に避難を促しながら、攻性植物達へと接敵していくことになる。
「俺達はケルベロスだ。落ち着いて避難を」
 ジャスティンは拡声器を所持して自分達がケルベロスであることを強調しつつ、避難を呼びかける。
 傍には同じく、隣人力を生かしてスムーズに避難するよう呼びかける計都の姿がある。
 さらに、サポーターとして駆けつけたユリア・フランチェスカ(慈愛の癒し手・en0009)、そして、こちらも隣人力を生かす泰地が誘導の手伝いに当たってくれていた。
「此処は私達ケルベロスに任せて」
 ラブフェロモンを発するプランはセクシーな所作で人々に呼びかける。
 彼女の姿に、男性だけでなく女性までも好感を持っていたようで、速やかな避難に応じてくれていたようだった。
「ケルベロスが来たぞ! もう大丈夫だ!」
 隣人力を使って避難を呼びかけていた恵がケルベロスの来訪をアピールすべく防具特徴を発動させると、ケルベロスコートの下に着こんでいたプリンセスクロスが露わとなってしまう。
「えっ、な、なんで!?」
 本人はとてつもなく戸惑っていたが、それでも似合っているからか、避難する市民からは「頑張りや、姉ちゃん!」などという言葉が返ってきていた。
「ケルベロスです! さぁ、出来るだけ奥へ逃げてください! 此処は危険です!」
 イリスも避難を呼びかけはしているが、彼女は市民と敵の直線状に立ち、その侵攻を食い止めようとする。
「はいはーい、致死性な花粉警報ですよ~。あちらへ逃げるといいかと」
 裁一も人々に避難を促しながらも、攻性植物の動きに警戒は怠らない。
「大丈夫だ、ここは僕らが抑えよう」
 近場で一般人を見かけた学は慌てさせぬよう適時落ち着いた様子で声掛けし、程なく駆けつける警察の避難指示にしっかり従うよう促す。
 その学が言うように、すでにパトカーのサイレンの音が聞こえてきている。
 攻性植物の脅威に晒されて久しいこともあって警察の初動は早く、ケルベロスとしては実に心強い。
 避難誘導に当たっていたメンバー達も徐々に切り上げ、敵へと向かい始めていたようだ。
 さて、真っ先に攻性植物の元へとたどり着いたのは、セントールランで道路を駆け抜け、敵に剣を向けて注目を集めていたローゼスだ。
「ケンタウロス座の導きよ、有れ! 駆ける者達の道行きを照らせ!」
「「シャアアアアアアッ!!」」
 望むところと言わんばかりに、スギの木達は布陣を整えてくる。
 そこに、飛び込んできたのはイリスだ。
「銀天剣、イリス・フルーリア――参ります!」
 相手に刀を突きつけた彼女は名乗りを上げ、勢いそのままに攻撃を開始するのだった。


 それぞれに戦闘態勢を取る4体の攻性植物達。
「「シャアアアアアアッ!!」」
 前線に2体と後衛に2体。いずれも布陣はばらばらだが、明らかに初手から収穫形態をとる後方の敵。
 そいつ目がけ、穏やかさから一転、イリスは凛々しく立ち回って攻め込んでいく。
「灼き尽くせ、龍の焔!」
 凛々しい立ち回りを見せるイリスは竜語魔法を唱え、手のひらから放つ竜の幻影の炎によって敵を焼き払おうとする。
 だが、その手前へと別の攻性植物が割込み、その炎を自身の身体で受け止めてしまう。
「先にメディックから倒しましょう!」
 イリスの言葉に頷いたジャスティンが前線に入る仲間達へとオウガ粒子を振りまく。
「早めに排除するか」
 ジャスティンは敵布陣を確認しつつ、事前に考えた立ち回りと照らし合わせて実際の行動を決める。
「キャスターは不在か」
 敵の動きを確認していた彼はバスターライフルで、イリスが告げた相手を狙い撃つことに決めたようだ。
 攻性植物達の動きもここで違う。
 前線2体は蔓触手と花粉を飛ばし、メディックと別の1体は咲かせた花から破壊光線を発射してくる。
「ただの目眩しなどでは私は止まらぬぞ!」
 それらをローゼスが鎧装騎兵に花粉症など何のそのだと受け止め、ゾディアックソードで地面に守護星座を描いて自身を含めた仲間に星座の煌めきで包む。
 さらに、学が助手と共に攻撃を続けざまに受けたローゼスの回復に当たる。
「終われば褒美もある、しっかりと働けよ」
 学のそばにいた助手は大儀そうな態度で祈りを捧げていたが、またサボるかもしれないと、学はしっかりと助手を見張っていたようだった。

 避難誘導に当たっていたメンバー達も全員加わり、交戦は本格化する。
 前線の敵が地面に根を埋め込み、周囲を侵食し始めており、メンバーの精神をも侵そうとしてくるのが厄介なところ。
 また、スギと言えば、再三皆が言っているが、やはり花粉だろう。
 大量に噴射されれば、どうしても攻撃の手が止まってしまう。
「リア充と一緒にスギもまた爆散するべし!」
 意気揚々と叫ぶ裁一は前線で敵の飛ばす花粉を防ぎつつ、やや回復多めに立ち回る。
「花粉とか諸々を吹き飛ばすヒールをば」
 精神汚染や花粉を振り払おうと、裁一は黒と赤の翼を広げてオーロラの光を発し、仲間達の態勢を整えていた。
 前線にいたプランは仲間の援護を受けつつ、その身に御業を降ろして。
「縛っちゃうね」
 プランは半透明の御業を操り、後続の仲間達が攻撃しやすいようにと奥の敵を縛り付ける。
 前線を疾走する計都のライドキャリバーのこがらす丸が全身を燃え上がらせて前線の敵を牽制する間、計都は娘から借りたこがらす丸に似せた形をした特注品である竜鎚・機巧廻転鎚【荒徹】から砲弾を撃ち込む。
 そこで、態勢を崩しかけた攻性植物をひらひらした服を纏う恵が狙う。
 彼は銃と体術を織り交ぜて交戦していたのだが、動く度にひらひら舞うプリンセスクロスもあり、嫌でも自身が女装している状況なのを自覚させられる。
「う、ううっ……」
 顔真っ赤にした恵は、浮かぶ涙で照準がぶれかける。
 きっと、この目汁は花粉のせいだと言い聞かせつつ恵は全身に闘気を籠め、瞬時に狙うべき敵へと肉薄してから根元へと銃口を押し付ける。
「…………ぶっ放す」
 時折すすり上げるような声を上げながらも、恵はメディックとなる攻性植物の根元の幹を撃ち抜き、撃破したのだった。


 残るは3体。
 次に狙うは前線火力役。
「徹甲兵装を起動する」
 ローゼスは鎧装腰部に搭載された機構からホーミング性能付きのフレシェット弾を掃射し、狙った相手の体を縫い留めようとする。
 時折割り込んでくる盾役がローゼスの弾丸を遮ってくるが、メンバー達は気にせず攻撃を続けて。
 顔を真っ赤にして言葉少なに攻撃を続ける恵がオーラを纏った拳を敵の身体へと叩き込むと、グラビティの衝撃が瞬時にスギの木の幹を凍り付かせていく。
「マッスルキャノン!」
 すかさず、サポーターの泰地が両手からオーラの弾丸を放ち、さらに、イリスが素早く古代語を詠唱して。
「束縛せよ、魔呪の邪光!」
 伸ばした右腕、指先からイリスが石化光線を発射する。
 グラビティが尽きた攻性植物は全身を石化させ、ボロボロと砕け散っていったのだった。
 残る2体は、盾役と狙撃役。
 事前にチームで決めていた撃破優先順では、狙撃役が先の撃破予定ではあったが、それ以上に収穫形態をとる盾役がかなり傷つき、枝も根もぐったりとさせてきていた。
 光り輝く果実で自らに進化を促そうとする敵へ、ジャスティンがすかさず滅びの光を発動させて。
「進化などさせはしない」
 その光をジャスティンは流星雨の如く降り注がせ、強化した攻性植物の力を打ち消していく。
 逆に、攻性植物達は回復役が倒れたこともあり、こちらの強化を打ち消す手段はもうない。
 それもあって、ユリアが前線メンバーの為にと雷の壁を張り巡らせ、さらに電気ショックで仲間達を癒しつつ力を高めていく。
 助手の祈りに合わせ、学もまたライトニングロッドを振るって仲間の回復と強化を続ける。
「この力、受け取ってくれ」
 迸る雷を受け取った裁一は舞う花粉を堪えつつ、気配を消して盾役の傍へと忍び寄る。
「スギは害悪。よって、枯葉剤注入!」
 裁一は相手の根元へと薬物を注入していくと、グラビティ・チェインが切れた攻性植物は全身を枯らし、道路に横倒しになって動かなくなってしまった。
「環境破壊は楽しい。デストロイ!」
 1体を倒した裁一が上機嫌に叫ぶ……が。
 その風貌もあり、裁一の言葉は何とも誤解を招きそうな危険なセリフだったのは、さらりと聞き流しておきたい。
 残る1体、狙撃役は光花を主体とした形態をとる。
 さらに、地面の浸食も続けており、単騎でも攻撃の手を緩めることなく襲ってくる。もちろん、合間に花粉を飛ばすことも忘れない。
 回復支援してくれるメンバーが手厚いこともあり、プランは全力で攻撃を続けて。
「花粉をばら撒く木は伐採しちゃうね」
 この場にプランが呼び出すのは、暴走ロボットのエネルギー体。
 プランは自らにそれを憑依させて、宣言通りに振動刀『永夜』で残るスギの木の枝や根を伐採していく。
 暴れるスギも残り1本。ローゼスは周囲を疾走しながら氷結輪を飛ばし、浸食された地面の上から魔法の霜の領域を展開させていく。
 先程から疾走し続けているローゼスだが、これは花粉を散らす狙いがあるようで。
「流れ花粉が味方の鼻や目を刺激してる? グラビティ以外は管轄外です。すまない」
 そう茶目っ気交じりなセリフを発していたローゼス。
 一方で、地面が凍ったことで動きづらくなった攻性植物が動きを止めてしまえば、ライドキャリバーのこがらす丸がその根を轢き潰していく。
 そして、飛び上がった計都が鴉の脚状に変形させたこがらす丸を自らの右足に合体させる。
「か、彼はレプリカントではないのか……?」
 地球人である計都であるが、その姿はレプリカントとも思えるような姿であり、ジャスティンなどはいささか驚いていた様子。
 そうと気づかず、計都はその右足にグラビティ・チェインを増幅させて。
「これが! 俺達の精一杯だッ!!」
 渾身の蹴りを、彼は攻性植物の幹へと叩き込む。
 衝撃は瞬時に敵の体を凍り付かせ、さらにその部分が砕け散っていく。
 枝や根の動きが完全に止まり、最後の攻性植物は仰け反るようにその身を傾け、地響きを立てて倒れたのだった。


 スギの木の攻性植物が全て倒れ、ケルベロス達は休む間もなく戦場となった街の修復へと移る。
「ふむ、根が地の深くまで蠢いていたようですね。そこまで届くかどうか」
 ローゼスは蹄を慣らし、周辺の状況を確認してからゾディアックソードを操り、星座を描いて侵食された地面を幻想交じりではあったが、元の姿へと近づけていく。
 そんな姿を市民に見られていたことに気付いたローゼスは、勇ましいポーズを取ってみせた。
 近場では、避難時に落下した瓦礫などでけがを負った人へとプランが桃色の霧を振りまいて癒しに当たっており、ジャスティンが周囲を駆け回って花びらのオーラを街に振りまいていく。
 学は電気ショックを飛ばし、裁一は広げたオラトリオの翼からオーロラを放ち、壁や地面にできたヒビを幻想で埋めていた。
 ヒールグラビティを持たないイリスは、瓦礫や攻性植物の残骸の撤去作業へと当たる。
 同じく、計都も運搬作業を行っていたのだが。
「ありがとう。レプリカントのお兄さん!」
 彼の姿を見た一般人の子供にそう声をかけられ、違うとも言えずに複雑な表情を浮かべてしまっていた。
 それでも、恵に比べればまだましだったかもしれない。
「ど、どうしてこうなっちゃったんだ……!」
 戦いから引き続き、女装姿となっていた恵は戸惑いながらも気力を振りまいて踊ってみせる。
 その姿は板についていて見とれる者もいたのだが、本人はかなり不本意そうなのが表情に出てしまっている。
「ご無事、でしょうか?」
 そんな恵を慮ったローゼスは、気休めに彼へとヒールを施していたようだった。

 作業を終え、疲労感と空腹を覚えていたメンバー達は、事前に知らされていた中華まんを販売する店へと向かう。
「豚まん、ありがたく頂きます」
「では、ご相伴に預かりましょうか」
 ジャスティンが店員から豚まんを受け取って礼を告げると、計都も一緒になってそれをいただく。
「うん、美味い! これはいい」
 口の中に広がる肉汁と豚肉の風味を裁一はじっくりと味わう。
 何より、戦いの後の修復作業で冷えた体をこの上なく温めてくれる。
「この時期の美味しい豚まん、サイコーだなぁ!」
 ケルベロスコートを羽織ったことでようやく落ち着きを取り戻した恵は、是非食べたいと考えていた豚まんの味をじっくりと噛みしめる。
 傍ではユリアがほっこりしながら、あんまんを口にしていたのを見ていたプラン。
「豚まん以外の中華まんもあるのかな?」
 そんな興味を抱いたプランが店員にお品書きを見せてもらうと、この店には他にもチャーシューまんなるものがあるそうだ。
 さらに焼売、エビ焼売なども販売されており、イリスがウキウキしながら注文する。
「動いた後の摂食は良いものです」
 豚まんと合わせてそれらを口にしていた健啖家のイリスだが、気品を感じさせる食べ方は崩さない。
「温かみ、ありがたくいただくとしよう」
 ローゼスもおいしそうに豚まんを3つ、4つと平らげていた傍で、飲食不要のグランドロンである学も豚まんの味を堪能する。
 その隣で、シャーマンズゴーストの助手が勝手に学の財布を使い、大量に豚まんを購入してパクついていた。
「……確かに褒美があるとは言ったが、貴様……」
 助手の振る舞いに気づいた学が体をわなわなと震わせて。
「小遣いから天引きしておくからな」
 そんな主の言いつけに、激しいショックを受けた助手は愕然としていたのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年3月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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