禁断の痴漢専用車両

作者:雷紋寺音弥

●我等にも専用車両が必要だ!
 夕暮れ時の、小さな空き地。普段から閑散としているその場所にて、集まっているのは異様な集団。
「諸君! 世間では既に、鉄道における『女性専用車両』が普及して久しい。だが、それでは駄目だ! 駄目なのだ!!」
 なぜなら、そんなことをしたところで、守られるのは一部の女性だけ。専用車両に全ての女性を詰め込むわけにも行かず、どうしても乗れない者が出てしまう。そう言って、声高に叫びながら説いているのは……お約束の、ビルシャナだった。
「そもそも、女性を隔離するというのが間違いなのだ。故に、私は提案したい! 我等、マイノリティたる変態紳士のための車両……『痴漢専用車両』というものを!」
 相手の承諾なく身体に触れるのが法に反するのであれば、承諾した者同士で触り合うなら問題ない。どう考えても酷過ぎる理屈を展開し、ビルシャナは信者達の前でドヤ顔を決めていた。

●変態の聖地?
「うぅ……暖かくなってきたと思ったら、やっぱり変なビルシャナも現れました。もう、本当に出て来ないで欲しいです……」
 その日、ケルベロス達の前に現れた笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)は、毎度の如く大きな溜息を吐いて、自らの垣間見た予知についての説明を始めた。
「女の人を守るための車両じゃなくて、痴漢の人達の専用車両こそ至高っていうビルシャナが現れました。もう……後は、言わなくても分かりますよね……」
 これ以上は、できれば細かな説明もしたくない。そんなねむの気持ちを察してか、誰も彼女には突っ込まなかった。
「えぇと……一応、簡単に説明だけしますね。その……ビルシャナの主張なんですけど……許可なく女の人に触るのが駄目なら、そういうのが好きな人だけが集まって、お互いにえっちなことができる車両を作るべきだっていうもので……」
 ああ、やっぱり、そんな教義だったか。一見して、変態同士でじゃれ合っているだけにしか思えないが、それは大きな落とし穴。こんな車両の存在を認めてしまったら、公共の交通機関における公序良俗が容易に崩壊しかねない。
「戦いになると、ビルシャナは……その……たくさんの手の形をしたオーラ召喚して、皆さんを攻撃して来ます……」
 その手で何をするのかは、もはや言わずもがなである。おまけに、周囲には10名程の一般人がビルシャナの信者とされており、彼らの説得に失敗すると、彼らもまた戦闘に参加して来るのだから、やってられない。
「信者にされた人達の目を覚ますには、ビルシャナの言葉に負けないような説得が必要ですけど……そもそも、説得前から痴漢するような人達ですし……困った時は、ちょっと強引に捕まえちゃってもいいと思います」
 説得の際、重要なのはインパクト。信者達は変態ばかりだが、それを糾弾したところで逆ギレされるだけなので、変な車両やイケない趣味から意識を逸らさせるくらい、強烈なショックを受けるような提案をする必要がある。
「まあ、困った時は、これでガツーンってやればいいんだよね。オッケー、任せておいて! あ、でも、『説得』だったらグラビティは使っちゃダメなのかな?」
 そんな中、釘バットを持った成谷・理奈(ウェアライダーの鹵獲術士・en0107)が、いつになく強気な雰囲気で顔を出した。
 まあ、彼女の言うことも間違いではないが、信者達の戦闘力は恐ろしく低いため、下手にグラビティの直撃を浴びせると死んでしまうことには要注意。その点にだけ気をつければ、後はそこまで難しくない……かもしれない。
 自分達の変態行為を正当化し、あまつさえ全国の電車にふざけた車両を追加させようと企むビルシャナに天罰を。そう言って、ねむはケルベロス達を、ビルシャナと信者達の待つ空き地へと送り出した。


参加者
ミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)
ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)
除・神月(猛拳・e16846)
十八女・千尋(古き祭神の分魂・e23291)
高千穂・ましろ(白の魔法少女・e37948)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)
シーラ・グレアム(ダイナマイトお茶目さん・e85756)

■リプレイ

●禁じられた趣味
 こっそり痴漢するのが犯罪なら、むしろ堂々とできる場所を作れば良い。なんとも斜め上なビルシャナの発想に、空き地に向かったケルベロス達は、早くも呆れ果てていた。
「そもそも痴漢さんとか、危ない事が無いように作られた制度だと思うです。絶対に本末転倒なのですよね、これ……」
 危険を避けるための車両に対抗し、自ら危険地帯を作ろうとは何事か。既に発想から破綻していると、機理原・真理(フォートレスガール・e08508)は大きく溜息を吐き。
「むぅ、寒くても暖かくなっても変態はいなくならないね……」
 湧いても湧いても新たに現れる変態どもに、リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)は、少しばかり徒労感を抱いていた。
「またくだらない教義を振りかざすビルシャナが……! ですが、見過ごすわけにはいきません! 人々の平和のために!!」
「うん、そうだね。『変態死すべし、慈悲はない』……だっけ? ボクも、最近になってようやく覚えたよ」
 主に親友の社会的危機を救うべく拳を固めるミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)の横で、成谷・理奈(ウェアライダーの鹵獲術士・en0107)が釘バット片手に頷いた。いったい、何に影響を受けたのか、最近の理奈はどうにも過激だ。
「それにしても……こりゃまた嬲り甲斐のあるド変態どもね♪」
 そんな中、専用車両を作るべく意気込む信者達を横目に、シーラ・グレアム(ダイナマイトお茶目さん・e85756)は彼らをいかにして虐めるかだけを考えていた。
 いっそのこと、彼らの望み通りに専用車両を作り、そのまま御用にしてやるか。ふと、そんなことを思い付いたシーラだったが、似たようなことを考えている者は他にもいたようで。
「そもそも、痴漢専用車量を作っても、痴漢は犯罪行為なのは間違いない。乗りこんだ時点で『自分は痴漢です』と自己申告するようなものだ」
 それは、喩えるなら公共の路線を走るゴキブリホイホイのようなものだとミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)が信者達に告げた。
 だが、その程度は信者達も織り込み済み。というか、自ら『専用車両』を作ろうとしている時点で、連中は痴漢であることを隠そうなどとは微塵も思っていないのである。
「ハハハハ! 確かに、嫌がる相手に無理やりすれば、それは犯罪だよなぁ?」
「でも、専用車両を作れば、そこに乗って来るやつらとは『お互いに同意の上』でお触りできる……つまり、な~んにも問題ねぇってことだ!」
 同意さえあれば犯罪ではない。そう言って開き直る信者達。
 いや、それはそれでどうなのか。いくら同意があっても、公共の交通機関の中で、あんなことやこんなことをしてしまえば、それは公然猥褻罪だ。
「要するにあんた達、女の子に触りたいんでしょ? だったら……」
 ここはひとつ、理想の形を見せてやろうと、十八女・千尋(古き祭神の分魂・e23291)がニヤリと笑った。そのまま、高千穂・ましろ(白の魔法少女・e37948)を抱き寄せると、唐突に後ろから胸を鷲掴み!
「……こうやって触らせてくれる彼女を作るのが一番だよ?」
「ひゃ、ひゃあんっ!」
 何の予告もなく胸を揉まれ、思わずましろが悲鳴を上げた。
 ちなみに、ましろは千尋の彼女でもなんでもない。だが、恋人を作ることで痴漢行為を諦めさせるという説得だと丸め込まれ、渋々納得せざるを得なかった。
「そ、そうですよ? 彼女なら、いつでもこうやって触らせてあげるんですから……ひゃああんっ、そ、そこは触っちゃだめですっ」
 触らせてあげると言いながら、やはり駄目だと叫ぶましろ。というか、これって説得にかこつけて、単に千尋がましろにセクハラしたいだけなのでは!?
「おいおい、なんだよ! 見せつけてくれんじゃねぇか!」
「でも、それじゃ痴漢で味わえるドキドキ感がないだろ! 違法と合法の、ギリギリんところで楽しめるからこそ、『痴漢専用車両』は最高なんじゃねーか!」
 案の定、自分達の性癖を満たすものではなかったためか、信者達の反応はイマイチである。これでは、ましろが完全に胸を揉まれ損なのだが、揉まれた事実は取り消せないので、仕方がない。
「そもそも『痴漢専用』なんテ、許されたよーな場所でヤんのが本当に楽しいのカ? っつー話ダ! 草食系がどーとか言うけド、そんなトコまで草食系だからいけねーんだヨ!」
 あまりに煮え切らない信者達の態度に、とうとう除・神月(猛拳・e16846)が業を煮やしてブチ切れた。
 そんなに痴漢したいなら、むしろ隠れず堂々とやれ。男なら、そのくらいの度胸がなければ駄目なのだと、敢えて痴漢を推奨する。
 正直、これでは単なる犯罪教唆ではなかろうか。まあ、元より連中は痴漢行為を趣味にするような者達なので、遅かれ早かれ逮捕されてしかるべきなのだが。
「うるせー! それじゃ、俺達が警察に捕まるじゃねーか!」
 やはり、逮捕されるのは嫌なのか、信者達は本当に電車内で痴漢をするつもりはないようだ。もっとも、だからといって痴漢専用車両の存在を認めてしまえば、彼らをビルシャナの支配から解放できない。
 こうなったら、実際に車両を用意して、痴漢専用車両がどのようなものかを教えるしかないだろう。そして、そのために必要な車両は……助っ人に馳せ参じたセントールの青年が、自ら引っ張って来てくれました。
「喜べ! お前達の為に専用車両を用意したぞ!」
 まあ、さすがに一両で30トン以上はある大型車両を持ってくるだけのパワーはなかったので、持ってこれたのは既に使われなくなった路面電車の車両だ。市営バス程度の大きさしかないが、そもそも信者が10人程度しかいないので、満員電車の雰囲気を作るのには、むしろ好都合だったかもしれない。
 とりあえず、これで舞台は整った。後は痴漢専用車両の欠点を身を以て教えるべく、ケルベロス達は次なる作戦へと移行した。

●専用車両は危険がいっぱい!
 空き地に持って来られた路面電車。これを使って痴漢専用車両の危険性を説こうとするケルベロス達だったが、本当にそんな車両に乗りたいのかと、真理は改めて信者達に尋ねた。
「よく名前から考えてみると良いのですよ。痴漢専用って事は、痴漢さんしか乗らないのです」
 つまり、エロ目的の男だけが乗っている満員電車。そんなものに乗ったところで何の得があるのかと問い掛けるが、信者達は何も気にしてなどおらず。
「ふっ……確かに、比率的にはそういった男の方が多いだろうな」
「だが、この世は広い! 中には、触られたいと思っている女性だっているはずだ! そういう女性なら、男でなくともウェルカムだぜ!」
 痴漢行為をしたい者と、されたい者。それらの専用車両を略して痴漢専用車両と呼んでいるだと言って憚らない。
「そんなに痴漢のシチュエーションを楽しみたいなら、そういった願望を叶える風俗もある。それではだめなのか?」
「スリルを楽しまねーで何が痴漢だヨ。ヤって良い場所でヤるんだったラ、その辺のそーゆー店にでも帰っちまいナ!」
「はぁ? 風俗店とか、金が凄くかかるじゃねーか! 痴漢専用車両なら、フリー痴漢! 無料で触りたい放題なんだから、エロい店なんか目じゃないぜ!」
 今更、そんな車両を作る意味はないと説くミスラや神月だったが、やはり信者達は納得せず。ともすれば、タダで痴漢のシチュエーションを合法的に楽しめるのだと、とんでもない屁理屈をこねだす始末。
「そんな痴漢専用車両があったとして、必ずしも女性が乗るとは限りません! ボーイズラブな野郎が乗り込む事もあるじゃないんでしょうか!?」
 それでは、ガチホモが乗ってきたらどうするのかと、今度はミリムが信者達に尋ねた。なにしろ、相手は男専門の痴漢。そういったオッサンどもに、尻を掘られる覚悟が本当にあるのかと。
「痴漢の『漢』は男って意味でしょ? なら、痴漢専用車両は男しかいないからアッー!やウホッなことを楽しむのよね? こんな風に」
 続けて、シーラが駄目押しにマニアック過ぎるハードゲイのエロ動画を見せ、信者達の心を圧し折る策に出る。それこそ、イケメンとイケメンが『あ~ん💕』なことをするような動画ではなく、オッサンとオッサンが絡み合う、誰得なのかと思うような酷い作品を。
「だから、私はハードゲイ専用車両を提案するわ。そこではどんなプレイもヤリ放題よ、喜んで!」
「うげ……。さ、さすがに、そいつはちょっといただけねぇぜ……」
 こんなビデオを見せつけられた挙句、ハードゲイ専用車両などを提案されれば、気後れする者も出始めたようだ。もっとも、中にはそれでさえ気後れせず、むしろ御褒美だと言わんばかりに興奮する者もいたのだが。
「ハーッハッハッハ! 心配いらぬ! なぜなら……俺は正真正銘のガチホモだからな!」
「しかし、ハードゲイ専用車両か……。そちらの方が、単なる痴漢専用車両よりも、俺達に合っている気がするな」
 どうやら、ミリムやシーラの言っていた、ガチホモ兄貴マンが紛れ込んでいたようである。まあ、彼らは彼らで勝手に納得し、ビルシャナの傍を離れてくれたので、結果としては問題ない。
 残るは、女性を狙った痴漢のみ。こうなったら、最後はこちらも身体を張って、痴漢専用車両の危険性を説くしかあるまい。
「そういうことなら、私が奉仕しよう」
「良いゼ、あたしも、手取り足取りで教えてやるからヨ!」
 自ら実演を絡めて教えてやろうと、ミスラと神月は用意された路面電車に乗り込んだ。同じく、真理も電車に乗り込むと、こっちへ来いと手招きし。
「ヒャッハァァァッ! そういうことなら、存分に楽しませてもらうぜぇぇぇっ!!」
 信者達を電車の中に乗せたところで、タイミング良く抜け出そうとしたのだが。
「え? あ、ちょっと、手を引っ張ったらダメ……ひゃぁんっ!?」
 案の定、脱出に失敗してしまい、真理は好き放題に身体を触られてしまった。
「あっ……! い、いきなり、そんなところを触ったら……ぁんっ!!」
「ほらほら、どーしタ? 好きに触っていいんだから、遠慮すんなっテ!」
 その一方で、ミスラや神月は、どうにも一緒に楽しんでいるようだが……もう、この際、放っておいても良さそうな気がして来た。彼女達が信者の足止めをしてくれているのであれば、その間にビルシャナを倒せば問題なかろう。
「あ、ようやく戦いですか? それじゃ……あぅっ! ち、千尋さんのテクニックで……胸だけで……」
 だが、いざ戦いに赴かんとしたところで、ましろが早くも腰砕け。どうやら、千尋に延々と胸を揉まれていたことで、なんだか変な気分になってしまったようだ。
「どうしたの? 支えてあげようか?」
 紳士を装い、再びましろを抱きかかえる千尋。うん、こいつらもこいつらで、好きにやらせておく他になさそうだ。
「仕方ない……。リリ達だけでも、頑張ろう?」
「うん、そうだね。早くビルシャナをやっつけて、平和を取り戻そう」
 互いに顔を見合わせ、頷くリリエッタと理奈の二人。未だ電車の中にいる仲間のことも気になるが、とりあえず早々に敵を倒さないと、もっと面倒なことになりそうだ。

●最後はドナドナ
 戦力的にはフルメンバーを欠いた状態で、ケルベロス達はビルシャナとの戦いを開始した。
 正直、不利は否めなかったが、この状況では仕方がない。それに、仲間が信者を押さえてくれていると考えれば、必ずしも悪い状況ではない……はずなのだが。
「ハハハ! オラ、どうしたヨ! そんな遠慮せず、もっと触っていいんだゼ?」
「あ、あっ! またイクッ! お願い、中に……あぁん!!」
 どうも、神月やミスラは本気で楽しんでいるようにしか思えず、なんとも目のやり場に困る展開になっていた。
「フハハハ! やはり、痴漢専用車両は至高の存在だ! お前達も、私に触れて痴漢の素晴らしさに目覚めるが良い!」
 調子に乗ったビルシャナが、ケルベロス達目掛け、大量の手を召喚して嗾けてきた。攻撃力こそ大したことのない技だが、それでも多数の手に拘束されてしまえば、満足に動きが取れなくなってしまうわけで。
「ちょ、ちょっと、どこ触って……きゃっ! 服の中に手を入れちゃダメぇぇぇっ!!」
 真っ先に狙われ、まずは理奈がお約束の如く犠牲となった。ちなみに、彼女へのセクハラ攻撃を庇おうと身体を張ったミリムは、既に多数の手に捕まれて、より大変なことになっていた。
「アヒャヒャヒャヒャ! ちょ……も、もうダメ……ウヒャヒャヒャヒャ!」
 四肢を拘束された状態での、全身くすぐり地獄である。顎の下、脇の下、そして足の裏といった笑いの三大ポイントをボロボロになるまで攻め続けられ、もはや反撃する余裕もない。
「むぅ……この手、しつこい……」
 リリエッタに至っては、多数の手にスカートの中へ入り込まれ、下着を脱がされそうになる大ピンチ! 誰かを助けようにも、これでは三人とも自分のことで精一杯だ。
「このままじゃ、やられちゃうね。よし、パワーアップだよ、ましろさん♪」
「……って、ひゃあっ! 今、胸触られた時、ビリって……」
 そんな中、ドサクサに紛れ、千尋がましろの胸から電流を流し込んで強化した。その際、ちょっとだけ意識が遠のいてしまったのは、ましろとしては永遠の秘密にしておきたかった。
「あれ? どうかした?」
「ふえっ!? な、なんでもありませんよっ!?」
 適当に誤魔化して、気を取り直し反撃開始! ビルシャナに向けて、御業より放たれし特大の焔を、火炎呪文として発射する。
「ぐぇぇぇぇっ! お、主に顔面が熱ぃぃぃっ!!」
 真正面から頭を焼かれ、ビルシャナが悶絶しながら転がっている。この鳥頭、痴漢行為の腕はプロ級でも、戦闘力という点では随分と見劣りするようで。
「うふふ……いいもの見せてあ・げ・る♪」
 ここぞとばかりに、シーラが禁断のグラビティを大解放! ビルシャナの脳内をフェロモン漬けにして溶かした上で、見せるは極楽ではなく、この世の地獄!
「な、なんだ、貴様は! よ、よせ! 私にそういう趣味はな……ぁぁぁぁぁっ!!」
 シーラの見せた幻覚は、大勢のふんどし兄貴にワッショイされる漢祭り。触られたくないのに触られた、痴漢被害者達の気持ちを思い知れ!
「はぁ……はぁ……よ、ようやく、出られました……」
 ビルシャナが精神を侵されて行く中、信者達を辛うじて振り払った真理が、ようやく電車から解放された。その横では、やはり十分に堪能した様子で、神月もまた電車を降りて。
「あ~、久しぶりに、いい汗かいたゼ!」
 こちらは、満面の笑顔で大きく手を伸ばす。まあ、本人が楽しめたようですから、細かいことは突っ込まないでおきましょう。
 なお、ミスラは未だ信者達とお楽しみモードだったが、これ以上は、本当に放送コードに引っ掛かってしまう。そこで、車両を引っ張って来たセントールの青年が、世界一臭いニシンの缶詰を開封すると、それを車両の中へ放り込んだ。
「「「うぎゃぁぁぁっ!!」」」
 溢れ出す臭気に、次々と倒れる信者達。密閉された空間の中、くさやの8倍近い臭気を誇る物体の匂いをかがされたのだから、当然だ。
 ちなみに、ミスラも一緒に倒れていたが、彼女は全身を謎の白濁液で汚しながら、それでも笑顔でピースサインをしていた。この先、戦える状況ではないが、信者達の足は止めてくれたので、結果オーライである。
「ここからが反撃ですね。さあ、行きましょう」
 まずは、真理が攻性植物の蔦を伸ばし、その先端をビルシャナに噛み付かせた。続けて、今度はライドキャリバーのプライドワンが、ビルシャナの脚を轢き潰し。
「そっちの手も、砕いてやりますよ! はぁぁぁっ!!」
 今度はミリムが手にした大剣で、ビルシャナの翼を叩き壊した。
「ぎゃひぃぃぃっ! な、何故だぁ!」
 翼を圧し折られ、追い込まれて行くビルシャナ。さすがに、これは敵わない悟って逃走を試みるも、それを逃すケルベロス達ではなく。
「逃がすかよ! これでも食らいナ!」
 逃げだそうとしたビルシャナの背後から、神月が強力な気弾を放つ! それはビルシャナの尻に直撃し。
「ルー、力を貸して!  ―――これで決めるよ、スパイク・バレット!」
「ま、待て! これ以上は……うぎゃぁぁぁっ!!」
 最後は、友の幻影と共にリリエッタが放った魔弾が、更にビルシャナの尻を穿つ! 哀れ、棘荊に尻を貫かれ、変態鳥頭は世にも情けない恰好のまま消滅した。
 なお、未だ信者達の倒れている車両ごと、彼らはリリエッタの呼んだ警察に回収された。まあ、元が痴漢なので、遅かれ早かれこうなっていたことだろう。
「終わったね。あ、そうだ! カードのメンテナンスが必要だから、ちょっと帰りにホテルへ寄って行かない?」
「……なんか、いろいろえっちなことされてる気がするのですが、これもカードのメンテナンスのため……なんですよね?」
 その一方で、千尋は魔法カードのメンテナンスと称して、ましろをホテルへと連れて行く。その後、千尋とましろに何があったのかは……まあ、二人だけの秘密にしておいてあげた方がよさそうだ。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年3月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 3
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