服斬りドリル 魔の腕が回る

作者:大丁

 鉄骨組みの天井に設置されたライトが、映り込むほどにピカピカの床。
 ジャージ姿の数名が、モップがけをしている。男女混じっているが、年齢は中年以上だ。
 広さは、バスケットボールのコートで4面とれるほど。市営の体育館であった。
 役所や警察署、消防本部の置かれた庁舎街エリアに含まれている。
 平日も、こうした市民サークルなどに利用されていて、その日も体操教室の後片付けが行われていた。
 床に振動が起こる。
 モップ係たちは、地震かと声を掛け合ったが、フロアの中央から盛り上がっていくような、傾きが感じられた。
 建材のしなりが限界に達して、下からの突貫口が開く。破片を噴き上げながら、7mもの身長をもつ鋼の巨人が、右腕を突き上げて立ちあがった。
 穴を穿ったのは、その腕の肘から先の回転だ。
 サークルの中高年者は、誰もが転倒していた。ドリル回転は、その市民にむかって……。

「レプリカントの人たちは、使ったりしてるよねぇ。スパイラルアームぅ」
 軽田・冬美(雨路出ヘリオライダー・en0247)は、自分がクルクルと回転し、ポンチョ型レインコートの裾を広げた。高千穂・ましろ(白の魔法少女・e37948)は一緒に演台に立ち、予知のイメージ図を指し示す。
「ダモクレスも使うことがありますよね。市営体育館に出現する個体も、回転による斬撃で、被害にあわれる方々のジャージを破るつもりだったようです」
「ましろちゃんの調査で、出現がしっかり確定しているから、庁舎街ごと避難誘導が完了してるよぉ。ただし、このスパイラルアームダモクレスは、出現後7分で魔空回廊へと次元移動されてしまう、回収用なの。逃がさないように撃破してねぇ」
 冬美とましろの説明のとおり、敵は近距離の1体に、防御力低下をともなう斬撃を繰り出してくる。
 加えて1度だけ、遠距離の複数を狙える、フルパワー攻撃もあるようだ。このグラビティは、ダモクレス自身にもダメージになるが、両手両足まで回転武器に変わる、とのことだった。
 演台からましろは、周辺地図も表示させた。
「警察や消防をお休みするわけにはいきません。ケルベロスが事件を解決したら、すぐにお仕事に戻れるように待機してもらってますっ」
「体育館内の床は傾いて不安定だから、気をつけてねぇ。レッツゴー! ケルベロス!」


参加者
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)
除・神月(猛拳・e16846)
十八女・千尋(古き祭神の分魂・e23291)
エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)
高千穂・ましろ(白の魔法少女・e37948)
アーシャ・シン(オウガの自称名軍師・e58486)
皇・露(スーパーヒロイン・e62807)

■リプレイ

●戦場に展開
 体育館のフロアを傷だらけにして、起動後のロボはまだ、右手を掲げて彫像のように立っていた。
 目標めがけ、駆けるケルベロスからの先陣は、ふたりのヴァルキュリアだ。
 エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)のビキニアーマーは、胸の装甲をゆさゆさと揺らす。
 その、ちょうど同じ高さにジークリート・ラッツィンガー(神の子・e78718)の目線があった。甘ロリな、レースを重ねたドレス。手にしているのは、切っ先鋭いゲシュタルトグレイブだ。
 斜面化した床を登ったビキニアーマーからの手刀が、巨大ロボの右ひざに突き立つ。
「早めに損害を与えよう!」
「よくってよ。切り裂かれるのは御免ですもの」
 凍った個所に、小柄な甘ロリが、グレイブでも突く。穂先は、氷を増やした。
「ギィ、ギイイ!」
 右ひざを曲げられなくなったような巨大ロボは、左足でかくようにして、旋回する。
 天井近くまで跳躍していた赤い戦闘用チャイナ服と、緑のヒーローコスチュームは、敵が背中をみせたのに乗じて、両肩口を裏から蹴る。
 旋刃脚は、チャイナ服の除・神月(猛拳・e16846)。
「ヤり逃げさせてやるほド、あたしらは甘くねーゼェ?」
「露(つゆ)たちが倒して見せますわ!」
 皇・露(スーパーヒロイン・e62807)の技は、『破纏撃(ハテンゲキ)』。掌からのエネルギー体を任意の部位に纏わせられる。
 蹴り足に続いて、コスからはみ出そうな尻に触れると、ダモクレスの肩から側頭部へと移って、ヒップアタックをぶつける。
「どう? 服をやぶく不届き物のダモクレス!」
 頭を揺らされた機械は、センサーの光をぎらりと強めた。ここからが、本格的な活動のようだ。右ひじが回転しはじめた。
 アーシャ・シン(オウガの自称名軍師・e58486)は、バスケットゴールによじ登って、轟竜砲を構えていたのだが。
「なんだ、この振動は!?」
 床で建材の破片が跳ねている。名軍師はすぐに悟った。
「でっけえドリルのせいか。工事現場じゃあるまいし」
 見下ろせば、攻性植物の花弁から、『プロミネンスライン』の光線を浴びせていた機理原・真理(フォートレスガール・e08508)も、ライドキャリバーのプライド・ワンに跨って、スロットルを開けていた。
 タイヤは建材を轢き、悪路を走破する。真正面からスパイラルアームに挑んで、真理はハンドルに身を屈めた。
 背中をかすめた螺旋に、長袖長ズボンのジャージを破り取られたが、中に着ていた白の競泳水着型フィルムスーツは無事だ。敵の懐に入って、デットヒートドライブの炎を浴びせる。
 ジャージを引っかけたドリル腕は、何もない床を掘ったところで停止する。追い打ちに、アーシャが降ってきた。
「てめぇ、俺の戦術を狂わせやがって、ダッシュ踏みつけの刑だぜ!」
 ドレスをひるがえし、靴底でロボの肘部品を歪ませる。
 本当は、グラグラするゴールから落っこちただけ。でも、結果オーライだ。
 関節部を中心に攻撃され、漏れたオイルがあったのか、敵本体のほうぼうで、炎がチロチロと広がってきた。高千穂・ましろ(白の魔法少女・e37948)は、炎弾の詠唱に魔法ステッキをかざす。
「え? 千尋さん何を……」
 依頼参加者のなかで、唯一の男の子。十八女・千尋(古き祭神の分魂・e23291)が、後ろから抱きつく。
 なんの遠慮もなく、少年の両手が、魔法少女の胸を揉む。
「しっ。変身の力は、僕が元になってたんだから。こうすれば……」
「ええっ、千尋さんがこのカードの製作者なんですかっ!?」
 ましろは、驚きつつも、ブーストされた炎弾を発射する。ロボの胴体で、火の手がゴウとあがった。
「本当に……。早速、変身解除したときに服のダメージが残る仕様をなんとかしてくださいっ!」
「ほら、今は戦わないと」
 千尋はまた、ましろの言葉を遮って、指の動きを激しくした。

●魔の腕を防げ
 アーシャのドレスも赤で中華風。襟の高さと、肩の膨らみは似ていても、神月(しぇんゆぇ)のチャイナ服とは別だ。胸の下半分からお腹までを隠している。
「よーし、蹴るんだ。そして蹴ったら、もっと蹴れ!」
 ダモクレスの右腕を踏みながら適当な指示を出し、敵が身を起そうとするなら、遠気投げにいった。
 ふいに、機械は左手を回す。フルパワーではなかったが、神月が捉えられた。
 ドレスとの違いは、胸の左右を隠していたところ。バストが弾け出たと思ったら、股に垂らした布まで裂けて、後ろにぶら下がるだけになってしまった。
「おうおウ。ドリル野郎の左モ、ヤベーじゃねーカ」
 実質、襟と袖だけになった神月はバレットタイムに入り、次を喰らわぬよう、ドリル回転をスローモーションの様に知覚する。
 ジークリートは、スライムでロボの左手を食わせにいった。捕食モードがマシンに覆いかぶさるが、黒く飛び散らせるように回転が破ってくる。
 衝撃に、柔らかなスカートが捲れ、ドロワーズがのぞく。
 グレイブをかざして風圧を避けながら、ジークリートは睨んだ。
「このわたくしに、手を挙げるつもりですの? ……はっ。真理様!」
 横から割り込んできたプライド・ワンが、ドリルに乗っかり、一輪で逆回転させて、女児への乱暴をふせぐ。
「私が、盾になってみせるですよ……!」
 振動の激しさが、騎乗の真理に伝わり、フィルムスーツはビリビリに裂けていく。
「あふ、あは、あうううう!」
 ステップに踏ん張って耐える。むき出しになった局部とシートとのスキマから、ピチャピチャと漏れる液体。
 この間にブラックスライムは、なんとか再結合を試みる。
 元ダモクレスのスーパーヒロインとして、露の怒りは雷を呼ぶ。
 怒號雷撃にうたれて巨大ロボは痺れたようだが、さすがの露もエネルギーがゼロに近づき、棒立ちになった。
 先に動いたロボのアームを、ましろが庇って背中に受ける。
「ひん、あふう!」
 ……のではなく、少女の胸を揉んだままの千尋だった。声がでたのは、少年の指使いのせいである。
 ましろを挟んで露にもエレキを注入する。
「感謝ですわ。千尋さんのダメージは、平気ですの?」
 3人連れ立って、敵からいったん距離をとる。
「男だからね。あまり気にしても仕方ないから」
 パンツまで服破りにあい、小さめのお尻が丸出しで、その割に大人びたモノが立ちあがりつつある。
 床の傾きは、ひどくなってきた。エメラルドが、瓦礫をさけて光の翼で跳ぶと、敵のセンサーが瞬く。
「しまった!」
 着地を狙われ、ビキニアーマーの繋ぎ目を壊される。
 焦りの表情は一瞬だけ。すぐに、『英雄凱旋歌(ヒーローズ・コンクエスト)』を紡ぐ。
「彼の者は来たれり! 見よ!」
 鋼のブラが外れて、ふくよかな乳房がこぼれようとも。

●もげるドリル
 アラームが同時に鳴った。残り2分を知らせる。
 ダモクレスには、八方から攻性植物の蔓が巻き付いて、動きを留めていた。周回しながら真理が、次々と打ち込んだものである。
 一輪は何度もバウンドし、萌えて悶える全裸の騎乗者。
 露は、蔓の一本を駆け上がる。ヒップを当てたのと逆の側頭部に、右手を付けた。
「お返しですわ」
 肘から先をドリルのように回す。露のスパイラルアームが、髑髏を削るのだ。
 見上げたエメラルドには、ダモクレスのセンサー光が明滅しているのが判った。そして、ジュデッカの刃で凍らせた右ひざを、無理やりに動かそうとしている。
「真理殿、露殿! フルパワーの予兆ではないか?」
「誰を狙ってくるです?!」
「露は、ノーダメージですから、どんどん行けますわよ!」
 ロボの頭部付近でマントが激しく揺れる。スパイラルアームは電子回路に達しているようだ。真理は、攻性植物で引っ張ろうと、プライド・ワンを仲間たちと逆方向に走らせる。タイヤは空転し、またあの振動に股間も絞られていく。
 エメラルドは、フルパワーを妨害するチャンスに賭けて、グレイブを延ばした。パキッと腰の留め金が割れてボトムも落ちたが、下半身に力を込めなければ、この稲妻突きは間に合わない。
 だが、氷がひび割れ、ロボの右ひざから先は、回転した。
「アーシャ、お前んとこだゼ!」
 神月には見えたが、一寸遅かった。踏みつけたままだった機械の右手が、床から浮き上がる。
 バレットタイムの効果で、服斬りドリルの詳細がわかる。
 穴を開けるように使うのではなく、指の機構は生きていた。すなわち、アーシャのドレスの胸元をつまむと、ねじ切ったのだ。
「や……」
 両方のトップがはみ出すと、隠れていた下半分がほうりだされ、腹部を腰まで破られた。アーシャ自身にも回転が加わっており、布地の裂け目は背中にまわる。
 お菓子の箱でもあけるように、破れ目は胴回りを1周すると、スカートにいく。器用にも、小指が下着にかけられている。
「すげーゼ。あたしにも真似できねーかナ。あ、右足の狙いは、ましろカ?」
 声をかけても手遅れ。フルパワーのときだけ、足指が開くようだ。狙撃特化型魔法少女服の、スカートを左右につまむと、捻じりあげながら剥いていった。
 千尋は、わずかに反応し、両手でましろの胸部を押さえて抵抗したが、布は引っ張り抜かれて、おっぱい直接触りになっただけだ。
「うんッ、ああっ!」
「……やんっ」
 声が出た時には、ましろもアーシャも素っ裸にされたあとだった。
 そのかわり、機械の右手と右足は、ふたりの服を分解したように、みずからも回転によってバラバラの部品と化す。
「よーシ。ドリル野郎は、回んのに弱くなってんのカ!」
 神月は、手と上体を軸にして、足を広げたコマとなった。いわゆる、ブレイクダンスのウインドミルである。
「青竜黎明開御天道脚(セイリュウレイメイカイゴテンドウキャク)! いーもん見たかラ、滑りもよくなってんゼ♪」
 ロボはもはや立てず、アソコもあらわな連続蹴りをくらうばかり。回収まで、あと1分。魔空回廊を欲してか、左手を虚空へと延ばした。
「甘ロリの生地の量を甘くみないことですわね」
 ジークリートの翼が、明るく輝いた。ケルベロスのほとんどが柔肌晒すなか、全身を光の粒子に変えると、スパイラルアームダモクレスの胸部に体当たりして貫通する。
 口の中で、小さく祈りの言葉を呟くと、柱のように掲げていたロボの左腕にも突っ込む。
 上腕が粉砕されて、肘から先がもげた。
 体育館内にはもう、振動も機械音も響かない。

●回復
 撃破されたダモクレスの頭部から、腕を引き抜いた露は、床へと着地する。
 着替えの私服はロビーに用意しているが、もう一着のコスチュームを、マント裏に持ってきていた。なんだか、嫌な予感がして、戦闘中に着替える想定だったのだ。
 良い方に外れて不要になる。
「お疲れさんだったナー」
 チャイナ服の襟だけになった神月がニカっと笑った。
「服がないなら、露の予備でも着ておきませんこと?」
 いつもいつも、戦闘後にハダカでふらふらしている神月だ。流されるかと思いきや。
「おウ。ありがてーゼ。借りとくワ」
「え……。ええ、これも人助けですわ」
 さらに意外にも。ヒーローコスチュームが似合うのだった。お尻はブカブカだったが。
「こりぁア、動きやすくていーナ。けど、露のトレードマークだから、今だけにしとくヨ」
 露はなんだか照れて、顔を赤くする。
 などというやり取りをビキニアーマーの、いや全裸のヴァルキュリアは見ていた。
「……あの、私のサイズの着替えなら用意がありますわよ」
 ジークリートは、自分も服が無事だったので、と子供服をエメラルドにあてがう。
 悪そうな表情をしているが、別に意地悪を言っているのではない。もともとそういう顔だ。
「ふむ……」
 割れてしまった装甲はもう使えなかったが、接続していたハーネス紐はまだ身体に巻かれていた。
 甘ロリドレスの、背中をしめずに紐に引っかければ、胸ぐらいは隠れたのである。いわば、おっぱいスカートのようにして。
「感謝する。これなら、痴女よばわりされないな」
 エメラルドの凛とした笑顔に、ジークリートはちょっと慌てた。
「お帰りの際は、警察署の前を通るのは避けたほうが良くってよ」
 体育館のエントランスから出ると、最初の交差点には歩道橋がかかっている。
 この庁舎街では、車道と分離して移動できるようになっていて、横断歩道なども敷かれていない。
 もちろん、通行する人も自動車もなく、静かだった。
 そうした道を、橋の上から眺めながら、ましろは欄干に手をついて、後ろの千尋にたずねる。
「って、本当にこれ、魔法カードのメンテナンスなんですかっ!?」
「不具合があるなら、君の身体に合わせて調整しなければいけない。だから、まずは身体を診させてもらわないと」
 戦闘後に変身を解いたら、服は復元されず、そのまま連れてこられた。
 むしろ、直触りの時点で先っぽだけ接触していたように思う。それが根元まで深々と入れられると、街路にむかって大きな声が出てしまう。
「メンテナンスもだけど、ちゃんと回復もしておかないとね。そらっ」
「あっ、はわっ、ああああっ」
 出して、注ぎ込まれるうちに、カードの謎など忘れそうになるのだった。千尋のライトニングロッドの性能は、確かにいい。
 体育館内では、ましろたちを除いた皆で手分けして、ヒールがけが完了したところだ。
「床は平らになったでしょうか?」
 アーシャは、スチームバリアを仕上げにかけた。バスタオル巻きみたいな恰好になっている。戦闘中でなければ、口調もおしとやかだ。
「ピカピカに戻っているのですよ」
 真理のジャージは、背中さえ直せば、まだ着れた。アイズフォンを開くと、消防や警察、市役所に体育館職員と、待機してもらっていた各所に連絡を入れる。
 まもなく、交通は回復するだろう。ましろと千尋のメンテナンスは続いていたけれども。

作者:大丁 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年3月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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