純白のワンピース姿こそ至高である!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
「俺は常々思うんだ! 純白のワンピース姿こそ至高である、と! 故に、俺はそれ以外で発情しない! 何故なら純白のワンピース姿に勝るモノなどないからだ! 例え、どんな状況であっても、それ以外で反応する事はない! 少なくとも、俺は他の奴等とは違う!」
 ビルシャナが廃墟と化した施設に信者達を集め、自らの教義を語っていた。
 信者達は洗脳状態に陥っており、完全にビルシャナの言葉を鵜呑みにしており、『さすがビルシャナ様! 俺達が尊敬するだけの事はある!』と言った感じで、納得している様子であった。

●セリカからの依頼
「日下・魅麗(ワイルドウルフ・e47988)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ビルシャナが拠点にしているのは、廃墟と化した施設。
 信者達は純白のワンピース姿こそ至高であると思い込んでおり、老若男女関係なく純白のワンピース姿になっているようだ。
「今回の目的は、悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事です。ただし、ビルシャナ化した人間は、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やしています。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまうため、注意をしておきましょう。ここでビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
 セリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていく。
 信者達は自分達の恰好に違和感を覚えているものの、ビルシャナが間違った事を言う訳がないと思い込んでいるようだ。
 そのため、ビルシャナの言葉が偽りである事を知れば、洗脳が解けて我に返る事だろう。
「また信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。とにかく、ビルシャナを倒せば問題が無いので、皆さんよろしくお願いします」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ビルシャナの退治を依頼するのであった。


参加者
平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547)
カトレア・ベルローズ(紅薔薇の魔術師・e00568)
若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506)
キリクライシャ・セサンゴート(林檎割人形・e20513)
香月・渚(群青聖女・e35380)
モヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)
日下・魅麗(ワイルドウルフ・e47988)
不動峰・くくる(零の極地・e58420)

■リプレイ

●都内某所
「まるで、お城みたいだね」
 香月・渚(群青聖女・e35380)は仲間達と共に、ビルシャナが拠点にしている施設にやってきた。
 施設は既に廃墟と化しているものの、ビルシャナが純白のワンピース好きと言うだけあって、その外観は眩いばかりの……白!
 まるで城の如く存在感があるせいか、まわりの建物と比べて、無駄に浮いていた。
 そのため、色々な意味で近寄り難い雰囲気が漂っており、痛々しさすら感じる程だった。
「それにしても、白のワンピース姿こそ至高、でござるかぁ? ……相変わらず鳥頭の連中は妄執の如き頑なな主張を繰り返すばかりでござるな」
 不動峰・くくる(零の極地・e58420)が、何処か遠くを見つめた。
 おそらく、その考えに至った経緯があるはず。
 だが、それを知ったところで、ションボリするだけ。
 そう確信してしまう程、ビルシャナが拠点にしている施設が、視界の片隅で存在感を放っていた。
「まあ、純白のワンピースは確かに鉄板では御座いマスガ、純白で在り続けられる時間は長くはないのデス。それはまさに、青春のように……」
 モヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)が濃色のドレス姿で、何処か遠くを見つめた。
 何やら分かるような、分からないような、そんな感じ。
 何となく、ふわふわ感満載の教義のため、分かっているようで、分かっていない感じになっていた。
「この鶏の主張はわからなくもないですけど……で、何をしたいんでしょうか?」
 若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506)が、不思議そうに首を傾げた。
 何やらツッコミどころが満載ではあるものの、これだけは断言する事が出来る。
「まあ、他の服装では絶対『反応』しないそうですので、試してみましょうか」
 めぐみが物凄く悪い顔で、含みのある笑みを浮かべた。
 そのため、ナノナノのらぶりんが、ドン引き。
 何かを悟った様子で、めぐみと距離を取り始めた。
「何だか、嫌な予感しかしないんだけど……」
 日下・魅麗(ワイルドウルフ・e47988)が、乾いた笑いを響かせた。
 おそらく、それは危険なフラグ。
 ビルシャナにとって、死亡フラグであるソレは、ケルベロス達にとっては、成功フラグ。
 ソレが勝利の鍵である事が分かっていても、なるべく選びたくないアレな選択肢であった。
「でも、相手はビルシャナだし、大丈夫でしょ」
 平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547)が、楽観的な様子で妙なフラグをへし折った。
 しかし、フラグは単なる死んだフリ。
 それが何を意味しているのか分からないが、何かのフラグが折れずに残ったままのようである。
「……それが一番、不安だったりしますけどね」
 カトレア・ベルローズ(紅薔薇の魔術師・e00568)が、ゲンナリとした表情を浮かべた。
 この時点で家に帰りたい衝動に襲われているものの、そう言う訳にもいかないのが、現実。
 あくまで前向きに、依頼を解決する事だけを考えておかねば、ションボリする事、間違いなしの事案であった。
「……この子羊背肉のリンゴソースかけを完璧なテーブルマナーで食べてくれるといいけど……」
 そんな中、キリクライシャ・セサンゴート(林檎割人形・e20513)が、無表情のままビルシャナが拠点に足を踏み入れた。
 何やら場違いな感じがするものの、キリクライシャはまったく気にしていない。
 むしろ、それが正解とばかりに、迷いがない様子であった。

●施設内
「じゃじゃーん! ボク登場! 純白のワンピースがお望みなんだってー? ほらほらー、どうよこれー。このさらさらの長い黒髪も白いワンピースとマッチしてるでしょー?」
 施設に足を踏み入れた和は、ビルシャナ達を前にして、純白のワンピース姿を披露した。
「お、おお……これは!」
 ビルシャナが感動した様子で、瞳をランランと輝かせた。
 まわりにいた信者達も、『め、女神だ……』と言わんばかりに、感激ムード。
 『全米が泣いた。俺も泣いた』とばかりに、みんな涙を浮かべていた。
「さらにこれだー! 純白のワンピースに麦わら帽子……今は冬だけど、こうして夏の向日葵畑を歩いてる姿を想像してみるのだー!」
 そこに追い打ちを掛けるようにして、和がつばの広い麦わら帽子を取り出し、ニコッと笑って頭に被った。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! 素晴らしいッ! 凄い! 凄いぞ!」
 その途端、ビルシャナが、ガッツポーズ。
 『この世の幸せ、俺が総取り』と言わんばかりに、ヘヴン状態。
「どうなのだー? こういうのが、お好みなんだろー?」
 そんな空気を察した和が天使の如く舞い踊り、ビルシャナ達の顔色を窺った。
「……真夏、燦々と降り注ぐ太陽の日差しの下、麦わら帽子を被り、白いワンピースを着たキミ……うむ、実に素晴らしい姿でござるな! だが、しかし! その素晴らしさはTPOを弁えているからでござる。例えば、真冬、しんしんと降り積もる雪の中、麦わら帽子を被り、白いワンピースを着たキミ……寒そう過ぎるでござろう!? 顔を青くし、凍える姿、あまりに痛々しいでござろう!? シチュに合わせた姿こそが素晴らしあのであって、一様に1つが至高などとは思考停止も甚だしいでござる!!」
 くくるが赤いマフラーを揺らし、ビルシャナにキッパリと言い放った。
「クククククッ! 甘いな! 例え、冬であろうと、俺達からすれば御褒美だ!」
 ビルシャナが妄想全開のニンマリ顔で、拳をギュッと握り締めた。
 頭の中では、あんな事や、こんな事……言葉に出来ない程、破廉恥なシーン全開のため、今にも表情全体にモザイクが掛かりそうな勢いだった。
「ところで、今お召しになっている服は、本当に純白でショウカ? 廃墟で白など着ていては、すぐに裾や袖口が薄汚れてしまいマス。お持ちしたまっさらな新品の純白の布と比較致して見マショウ」
 モヱがミミックの収納ケースを呼び寄せ、そのままから純白のワンピースを取り出した。
 それはビルシャナ達が持っている純白のワンピースと比べて、明らかに白さが違っていた。
 一言で言えば、使用前と使用後の違い。
 ビルシャナ自身も、悔しそうな表情を浮かべて、気まずい様子で視線を逸らした。
「反論なし……かな? ……と言うか、出来ないよね。間違った事を言われた訳でもないんだし……」
 魅麗が残念なナマモノを見る感じで、ビルシャナをマジマジと見つめた。
「い、いや、これは白だ! 純白だ!」
 その途端、ビルシャナが顔を真っ赤にして、必要以上に強がった。
「……そこまで純白に拘りがあるなら、色彩センスも素晴らしいのでしょう? ……キャンバスは困らないし、洗濯と漂白担当が居るのだから……」
 キリクライシャが無表情のまま、自らの正義を押し倒す勢いで、ビルシャナ達に迫っていった。
「洗濯と漂白担当……?」
 ビルシャナがキョトンとした様子で、一筋の汗を流した。
 ……洗濯と漂白担当って、何っ!?
 何となく言いたい事は分かるのだが、その事を理解したら、最後。
 絶対脱出不可能の迷宮に迷い込み、純白ワンピースが至高であると、叫んでいる場合ではなくなってしまいそうな感じであった。
「まあ、落ち着きなさい。まずは子羊背肉のリンゴソースかけね。……このあふれる肉汁も、ソースも残さず食べてもらうわよ。それが食べ終わったら、ナパリタンに、カレーうどんに、野菜ジュース。きちんと行儀よく食べてもらうわよ」
 キリクライシャが全く気にせず、テーブルの上に料理を並べていった。
「……えっ!?」
 そのため、ビルシャナ達が、一斉にキョトン。
 純白のワンピースと料理の共通点が見つからず、ビルシャナ達の頭上に大きなハテナマークが浮かんでいた。
 しかし、キリクライシャかイイ笑顔を浮かべていたため、無言で料理を食べ始めた。
 一応、テーブルマナーを守っているようだが、それは危うい吊り橋状態。
 見ている方も、食べている方も、ヒヤヒヤな感じであった。
「食欲を満たしたのであれば、次はメイドのめぐみがご奉仕しますね」
 めぐみがメイド姿でビルシャナに迫り、ミルクの詰まったウインナーをシゴき始めた。
「そんな事をしても、俺は反応しない!」
 ビルシャナが自信満々な様子で、踏ん反り返った。
 だが、自慢のウインナーも踏ん反り返っており、ビルシャナの言葉に反して、サムズアップしている感じになっていた。
「……あれ? 何をされても平気なんですよね? なのに、なんでガチガチになっているんですか? ひょっとして、もう出ちゃう。出ちゃうんですか? ほら、先からミルクが……って、凄く濃いのが……うそつきですね」
 めぐみがビルシャナを天国に導き、口から溢れたミルクを拭いた。
「はあはあ……これは誤解だ。俺が興味を持っているのは、純白のワンピースだけだァ!」
 ビルシャナが自らの過ちを誤魔化すようにして、和のスカートに頭を突っ込み、違和感を覚えた。
 何やら見覚えのあるモノが、コンニチワ。
 一瞬、鳩が豆鉄砲を喰らったような表情を浮かべたものの、その正体が御馴染みのモノである事を悟ると、腰を抜かす勢いで飛び退いた。
「お、お、お前、ま、ま、まさかァ!」
 ビルシャナが半ばパニックに陥りつつ、クチバシをパクパクさせた。
「……ボクは男だ! でも、何その反応! 自分からスカートの中に頭を突っ込んでおいて、何だよ、その態度ッ!」
 和が顔を真っ赤にしながら、スカートを押さえた。
「うるさい、黙れ! 俺だって被害者だ!」
 ビルシャナが涙目になりつつ、被害者オーラ全開で、猛抗議し始めた。
「……あれ? 純白のワンピースが至高……なんだよね?」
 その反応に気づいた渚が、不思議そうに首を傾げた。
「……あっ……」
 その言葉を聞いた信者達が、一斉にビルシャナをガン見。
「お、お前ら、騙されるな! これは……罠だ!」
 ビルシャナが色々な意味で危機感を覚え、信者達に対して自分の無実を訴えた。
 だが、信者達の反応は、冷ややか。
 『何を言っていやがるんだ、このクソ鳥……』と言わんばかりに、冷たい視線を送っていた。
「……罠ですか。それなら、遠慮する必要もありませんわね」
 そう言ってカトレアが一気に間合いを詰め、ビルシャナに攻撃を仕掛けていった。

●ビルシャナ
「ほら、見ろ! やっぱり、罠だ! だから言っただろ! やっぱり、俺が正しかったって事じゃねえか! お、おい、誰か話を聞けよ! 頼む、聞いてくれ!」
 ビルシャナが真剣な表情を浮かべ、信者達に語り掛けても、彼らはガン無視ッ!
 『何言ってんだ、クソ鳥』感満載で、冷ややかな反応を示していた。
「それじゃ、行くよおおおおおおお!」
 その間に、魅麗がビルシャナの懐に潜り込み、容赦なく獣撃拳を叩き込んだ。
「まだ話の途中だろうが! 畜生! ふざけやがって! もう許さん! 絶対に許さん!」
 ビルシャナが顔を真っ赤にしながら、半ばヤケになりつつ、純白ビームを放ってきた。
「……ん? いま何かした?」
 しかし、和はキョトン。
 ノーガードだが、ノーダメージ。
 何故なら、和は普段から白いワンピース姿。
 例え、純白ビームを喰らっても、多少デザインが変わる程度の影響しかなかった。
「まさか、これで終わり?」
 渚も拍子抜けの攻撃に、ビルシャナを見つめて、目を丸くさせた。
「やはり純白はイイ! 俺にパワーを与えてくれる!」
 それとは対照的にビルシャナが全身にパワーを漲らせ、禍々しいオーラを身に纏った。
「……これが純白? ほぼ灰色のワンピースを純白と言い切るおつもりデスカ? どうやら、心だけでなく、目まで腐ってしまったようデスネ。御可哀想に……」
 モヱが残念なナマモノを見るような感じで、ビルシャナに生暖かい視線を送った。
「うるさい! 誰が何と言おうが、これは白! 白なんだァ!」
 ビルシャナが鬼のような形相を浮かべ、再び純白ビームを放ってきた。
「……!」
 それに気づいた収納ケースが純白ビームを浴び、真っ白なワンピース姿で華麗に舞った。
「なん……だと!?」
 その途端、ビルシャナが激しく動揺した様子で、こめかみを激しくピクつかせた。
「やはり、屠殺しましょう。それしか方法がありません」
 めぐみがミルクまみれになった手をウェットティッシュで拭い、ビルシャナを見つめて嫌悪感をあらわにした。
「……仕方がありませんね」
 キリクライシャが深い溜息を漏らした後、テレビウムのバーミリオンと連携を取りつつ、ビルシャナにスターゲイザーを炸裂させた。
 それに合わせて、バーミリオンが凶器攻撃を仕掛け、ビルシャナの脛を執拗に攻撃した。
「うぎゃあ! 痛い、痛い! 地味に痛いッ!」
 ビルシャナが悲鳴を上げて、涙目になっていたものの、バーミリオンは容赦なし。
 匠の如く絶妙な角度で、打つべし、打つべし、打つべしだった。
「左腕『震天』、氷結粉砕機構稼働。唸れ絶対零度の氷刃! 凍結手裏剣!」
 その間に、くくるが左腕『震天』・凍結手裏剣(サワンシンテン・アブソリュート・ゼロ・シュリケン)を発動させ、左腕『震天』の氷結粉砕機構を単独稼働すると、巨大な氷の手裏剣を形成し、ビルシャナめがけて投げつけた。
 それと同時に氷の手裏剣がビルシャナの身体を斬り裂き、深々と突き刺さったところで炸裂した。
「その身に刻め、葬送の薔薇! バーテクルローズ!」
 続いて、カトレアがバーテクルローズを仕掛け、克己と共に薔薇の模様にビルシャナを斬り裂き、最後の一突きで薔薇の花弁を散らすかの如く爆発が起こした。
「変態はー……撲滅だ!」
 それに合わせて、和が全知の一撃(ディクショナリー・クラッシュ)を発動させ、ビルシャナの頭上に一冊の本を錬成した。
 それと同時に、落下した本の角でビルシャナの頭が割れ、大量の血が噴水の如く噴き出した。
 そのため、ビルシャナは悲鳴を上げる間もなく、クチバシをパクパクさせ、血溜まりの中に沈んでいった。
「白ワンピ、でござるかぁ……夏にはそう言うのも悪くはないかも知れぬでござるかな」
 くくるが何処からかキセルを取り出し、一服した後に煙を吹かせた。
 その煙がユラユラと宙を舞い、そのまま天まで昇っていった。
「悪は、滅んだ! ふええええええええええええん」
 そんな中、和が我に返って、わんわんと大声を上げて、泣き出すのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年3月10日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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