東京焦土地帯争覇戦~生きるか、死ぬか

作者:ゆうきつかさ

●東京焦土地帯
 エインヘリアルとの戦いで敗北した死神勢力が、東京焦土地帯の奪還を目指して戦いを挑んでいた。
 焦土地帯奪還軍を率いるのは、シヴェル・ゲーデン。
 漆黒の鎧を纏った彼女が率いているのは、死翼騎士団という死神の集団だった。
 それを迎え撃つのは、磨羯宮『ブレイザブリク』を支配する第九王子サフィーロが指揮する蒼玉衛士団。
 いまのところ、大きな戦いには発展しておらず、配下の軍勢による小競り合いが頻発している状況のようである。
「……いい加減に降伏しろ。お前達に勝ち目はない」
 傷だらけの死翼騎士が蒼玉衛士団の一般兵を見下ろし、冷たく言い放ちながら剣の切っ先を向けた。
 まわりには蒼玉衛士団の死体が転がっており、他の死翼騎士が討ち漏らしが無いようにするため、その死体に剣を突き立てていた。
「降伏したところで、待っているのは、拷問の末の死……。どうせ生かすつもりなどないだろ?」
 蒼玉衛士団の一般兵が歯を食いしばり、恨めしそうにしながら、傷だらけの死翼騎士を睨みつけた。
「どちらにしても、お前は死ぬ。ならば、腹に溜め込んだモノをすべて吐き出し、楽になった方がいいだろ」
 傷だらけの死翼騎士が、剣の切っ先で蒼玉衛士団の一般兵を撫で回し、不気味な笑い声を響かせた。
「その後で臓物を撒き散らせって訳か。……お断りだ。殺すなら、殺せ。覚悟は出来ている……!」
 それでも、蒼玉衛士団の一般兵は怯む事なく、死を覚悟した様子で傍に落ちていた剣を掴み取った。
 だが、まったく力が入らない。
 それどころか、意識が朦朧として、剣を持ち上げる事すら出来なかった。
「ならば、死ね!」
 傷だらけの死翼騎士が勢いよく剣を振り上げ、蒼玉衛士団の一般兵にトドメをさそうとした。
「……そこまでだ!」
 次の瞬間、別の場所で勝利を収めた蒼玉衛士団が颯爽と現れ、まわりにいた死翼騎士達を斬り捨てた。
「……クッ!」
 すぐさま、死翼騎士達が反撃しようとしたものの、蒼玉衛士団を倒す事が出来ず、次々と血溜まりの中に沈んでいった。

●セリカからの依頼
「エインヘリアルが磨羯宮ブレイザブリクによって支配している東京焦土地帯に、死神の軍勢が攻め込んで戦いになっています。攻め込んだのは、死翼騎士団という死神の集団で、東京焦土地帯を守る第9王子サフィーロの蒼玉衛士団と小競り合いを繰り返しているようです。この戦いは、東京焦土地帯で行われており、一般人の被害者などは出ていないが、この機に乗じて敵戦力を減らせれば、それに越したことはありません。そこで、この戦いに横槍を入れて、敵デウスエクスの撃破してください」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
「皆さんに向かってもらうのは、磨羯宮ブレイザブリクから出陣した蒼玉衛士団が、東京焦土地帯に攻め込んだ死神の軍勢を迎撃している戦場のひとつ。既に戦闘が行われているため、なるべく敵に気づかれないようにしながら近づき、生き残った蒼玉衛士団を相手にする事になります。もちろん、戦闘中に乱入する事も可能ですが、共闘は不可能なので、三つ巴の戦いになる事でしょう。また敵は死ぬまで戦う事を止めませんが、逃げる相手を追いかけるような事がないため、身の危険を感じるようであれば、戦いの途中で徹底しても構いません」
 セリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていく。
 戦力的に考えて、相手にする蒼玉衛士団は3人~5人程度。
 死翼騎士団との戦いで傷つき、疲れ果てているため、油断さえしなければ負ける事はないだろう。
「この戦いに乗じて敵の戦力を削っていけば、今後の戦いで有利となるでしょう。そういった意味でも、ここで負ける訳には行きません。皆さんの頑張りによって、戦況を一変させる事が出来るかも知れません」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、蒼玉衛士団の撃破を依頼するのであった。


参加者
相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)
立花・恵(翠の流星・e01060)
武田・克己(雷凰・e02613)
バジル・ハーバルガーデン(薔薇庭園の守り人・e05462)
源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)
不動峰・くくる(零の極地・e58420)
ディミック・イルヴァ(グランドロンのブラックウィザード・e85736)

■リプレイ

●東京焦土地帯
「今日も今日とてデウスエクス同士で鍔迫り合いとは、いったい何を考えているのでござろうな? まあ、問うたところで答えてはくれぬでござろうが……」
 不動峰・くくる(零の極地・e58420)は仲間達と共に、蒼玉衛士団と死翼騎士団の戦いが続いている東京焦土地帯にやってきた。
 蒼玉衛士団と死翼騎士団の戦いは熾烈を極めており、両陣営の死体が無残に転がり、戦場全体を負の色に染めていた。
「エインヘリアルと死神の小競り合いか。どっちも潰したいところだが、狙いがわからんし、最初は静観して狙いを探ろかね」
 武田・克己(雷凰・e02613)が深い溜息を漏らしながら、物陰から物陰に移動していった。
 蒼玉衛士団と死翼騎士団の戦いはあちこちで行われていたものの、状況的には 蒼玉衛士団の方が優勢のようだった。
「それにしても、敵ながら何とも必死ですね。まぁ、決着が付いたところを奇襲するのは卑怯かも知れませんが、その方が一気に相手するよりも楽ですし、ここは気持ちを切り替えていきましょう」
 そんな中、バジル・ハーバルガーデン(薔薇庭園の守り人・e05462)が、物陰に隠れて両陣営の戦いを眺めていた。
 両陣営とも目の前の敵を倒す事に集中しており、まわりに注意を払っているだけの余裕はないようだった。
「その辺が、もどかしいところでござるが、ひとまずは目の前の敵を片付けねば、でござる」
 くくるがアクアカーモ(レインコート)による光学迷彩と隠密気流を合わせ、戦場近くでジッと息を潜めた。
 その間も、蒼玉衛士団と死翼騎士団との戦いは続いており、辺りに飛び散った血で大地が真っ赤に染まっていた。
「それに、地球を守るための戦いだ。漁夫の利を狙うっていうのは少し気が引けるけど……、甘いことは言ってらんねぇよな……!」
 立花・恵(翠の流星・e01060)が物陰に隠れつつ、自分自身に言い聞かせた。
 やり方としては、褒められた事ではないかも知れないが、この場所を取り戻す事で、戦況を一変させる可能性もあるのだから、綺麗事ばかり並べている場合ではない。
 今は勝利する事だけを考え、前に進む事だけが重要なのだから……。
「東京焦土地帯で続く死神とエインヘリアルとの小競り合い……いずれにしろデウスエクスの戦力を削れる機会だから、きっちり退治しようぜ!」
 相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)が仲間達に声を掛けながら、少しずつ距離を縮めていった。
 その足元には死翼騎士の死体が転がっており、死してなお凄まじい殺気を放っていた。
「両陣営にとっても負けられない戦いのようだが、俺達もここで引き分けにはいかないしな」
 ジャスティン・アスピア(射手・e85776)がアクアカーモと消音コンバットブーツで気配を消しつつ、瓦礫の山に隠れて辺りの様子を窺った。
 両陣営とも気合と根性だけで戦っており、全身血まみれになりながら、荒々しく息を吐いていた。
「……そろそろ頃合いだね」
 次の瞬間、源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)がアクアカーモと消音ブーツで気配を消し、物陰から飛び出したのと同時に、蒼玉衛士団の一般兵を瞬殺した。
「んああ……あ……」
 そのため、蒼玉衛士団の一般兵が訳も分からず身体を震わせ、膝から崩れ落ちて動かなくなった。
「な、何故、ケルベロスが、ここに!」
 リーダーと思しき一般兵が、警戒した様子でゾディアックソードを握り締めた。
 それに合わせて、まわりにいた一般兵達も、同じようにゾディアックソードを握り締めた。
「ケルベロス達も続々とブレイザブリクを攻略している。いい加減に諦めたまえ。それとも、もうサフィーロ王子には後がないのかね?」
 ディミック・イルヴァ(グランドロンのブラックウィザード・e85736)が都市迷彩柄の外套をはためかせ、リーダーと思しき一般兵の前に陣取った。
「うるさい、黙れ! ど、どうやら、死にたいようだな。だったら、望み通り・殺してやる!」
 その途端、リーダーと思しき一般兵が動揺した様子で、ディミックに言い返した。
 どうやら、図星であったらしく、他の一般兵も動揺した様子でザワついていた。
「風雅流千年。神名雷鳳。この名を継いだ者に、敗北は許されてないんだよ」
 そう言って克己が躊躇う事なく、全力でリーダーと思しき一般兵に攻撃を仕掛けていった。

●蒼玉衛士団
「敗北は許されない? だったら、今日がお前の敗北であり、死だ!」
 すぐさま、リーダーと思しき一般兵が、ゾディアックソードを掲げ、スターサンクチュアリを発動させた。
 それと同時に、地面に描いた守護星座が光り、蒼玉衛士団の一般兵を包み込んだ。
「それじゃ、もう1回戦してもらうぜ!」
 恵がホルスターからリボルバーを取り出し、攻撃を仕掛けるタイミングを窺った。
「ただし、拒否権はないけどな!」
 それに合わせて、克己が雷刃突を仕掛け、雷の霊力を帯びた武器で神速の突きを繰り出した。
「ふ、ふざけるな!」
 その事に腹を立てた蒼玉衛士団の一般兵達が一斉に攻撃を仕掛けてきたものの、統制が取れていないため、行動はバラバラ。
 リーダーと思しき一般兵も、冷静な判断力を失っているため、指揮どころではなく無くなっていた。
「いや、本気だ!」
 その隙をつくようにして、泰地が蒼玉衛士団の一般兵に攻撃を仕掛け、リーダーと思しき一般兵を動揺させた。
「お前らが何を狙ってるのか知らないが、運がなかったな。戦いに卑怯もくそもない。奇襲も立派な兵法。そんな詰まらないことを言って戦いに水を差すなよ?」
 その間に克己が距離を縮め、リーダーと思しき一般兵に絶空斬を仕掛け、空の霊力を帯びた武器で、相手の傷跡を正確に斬り広げた。
「ええい、怯むな! やれ!」
 リーダーと思しき一般兵が、自らの動揺を隠すようにして、まわりにいた一般兵を嗾けた。
「ケルベロス達も続々とブレイザブリクを攻略している。いい加減に諦めたまえそれとも、もうサフィーロ王子には後がないのかね?」
 その攻撃を防ぐようにして、ディミックがライトバスティオンを発動させ、相手の攻撃を防ぐ光の城壁を出現させた。
 そのため、一般兵達の攻撃が阻まれ、ケルベロス達を傷つける事が出来なかった。
「うぐ……それは……」
 その言葉を聞いた蒼玉衛士団の一般兵が、激しく動揺した様子で、ゾディアックソードを震わせた。
「何も答えるな! 何も答えなくていい!」
 その言葉を遮るようにして、リーダーと思しき一般兵が、ゾディアックブレイクを仕掛け、星座の重力を剣に宿すと、あらゆる守護を無効化する重い斬撃をケルベロス達に放ってきた。
「どうやら、図星のようだね」
 その事に気づいた瑠璃がリーダーと思しき一般兵と距離を取って、マインドスラッシャーを発動させ、マインドリングから光の戦輪を具現化すると、ケルベロス達に攻撃を仕掛けてきた蒼玉衛士団の一般兵達を牽制した。
「……僕達だって負ける訳にはいかないんです」
 それに合わせて、バジルが物陰から飛び出すようにして奇襲を仕掛けて、蒼玉衛士団の一般兵を蹴散らした。
「まさか、ここに巣食ってるエインへリアルって、サフィーロとやらの他にバカ王子がいるのか?」
 その間に、ジャスティンがメタリックバーストで全身の装甲から光輝くオウガ粒子を放出し、味方の超感覚を覚醒させた。
「サフィーロ様は馬鹿王子ではない! 他の王子と比べて、何ひとつ劣らぬ素晴らしい方だ! 第一、他の王子は……」
 その事に腹を立てた蒼玉衛士団の一般兵達が、何かを口走ろうとして、リーダーと思しき一般兵に制止された。
 おそらく、これ以上失態を繰り返すような事があれば、別の王子が派遣される事になっているのだろう。
 先程と比べて空気がピリピリとしているような感じであった。
「だが、このままだと退く事になるんだろ?」
 ジャスティンが何やら察した様子で、クイックドロウを仕掛け、目にも止まらぬ速さで弾丸を放ち、リーダーと思しき一般兵が持っていたゾディアックソードを破壊した。
「この雷の嵐の前に沈むがよい!!」
 続いて、くくるが轟震天・怒號稲妻嵐(ゴウシンテン・アングリーサンダーストーム)を仕掛け、轟震天の内蔵機構でグラビティを発生させ、増幅された雷撃を蒼玉衛士団の一般兵達に放って蹴散らした。
「これが僕の全力だよ!! 喰らってみる?」
 それに合わせて、瑠璃が太古の月・満月(エンシェント・フル・ムーン)を発動させ、太古の月の力を高度の精神集中で超凝縮すると、光の玉にして蒼玉衛士団の一般兵達に放った。
「うく……」
 続け様に攻撃を喰らった事で、蒼玉衛士団の一般兵達は虫の息。
 立っている事さえ困難なほどフラつき、今にも倒れそうな状態であった。
「青き薔薇よ、その神秘なる茨よ、辺りを取り巻き、敵を拘束せよ」
 その間にバジルが青薔薇の棘(アオバラノトゲ)を仕掛け、青薔薇を咲かせる茨を飛ばし、一般兵達の身体に絡みつかせて息の根を止めた。
「さあ、どうする? 残っているのは、てめえだけだ」
 泰地が拳についた血を払い、リーダーと思しき一般兵の前に陣取った。
 その途端、リーダーと思しき一般兵が、ビクッと体を震わせた。
 しかし、この状況で逃げ出す訳にはいかないと思ったのか、足元に落ちていたゾディアックソードにチラリと目をやった。
 それは他の一般兵が使っていたモノだが、その当人が既に命を落としていた。
「ここで負ける訳には……いかないんだあああああああああああ!」
 次の瞬間、リーダーと思しき一般兵が、足元に落ちていたゾディアックソードを拾い上げ、捨て身の覚悟で攻撃を仕掛けてきた。
「……悪いけど、もともと地球は俺達のもんだ! だから……返してもらうぜ!」
 それを迎え撃つようにして、恵がスターダンス・ゼロインパクトを仕掛け、全身に闘気を込めて、神風の如きスピードで一瞬のうちに肉薄すると、リボルバーを急所に押し付け、零距離からの一撃を撃ち込んだ。
「……!」
 だが、リーダーと思しき一般兵は何が起こったのか分からず、何か言葉を吐き出そうとして、糸の切れた人形の如く崩れ落ちた。
「その命、貰ったでござる!」
 それと同時に、くくるがグレイブテンペストを仕掛け、高速の回転斬撃を繰り出し、リーダーと思しき一般兵の首を刎ねた。
 瞬時に切断された首は回転するようにして宙を舞い、勢いよく落下して地面を転がった。
「……終わったか」
 恵がホッとした様子で、リボルバーをクルクルと回し、素早くホルスターに収めた。
「いや……、まだだ」
 そう言ってディミックが戦場に残ったコギトエルゴスムは破壊するため、力強い足取りで歩き出すのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年3月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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