魔法少女とダモクレス!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
「ボクを救うため、魔法少女になってよ」
 そんなキャッチフレーズと共に始まった魔法少女アニメがあった。
 だが、可愛らしい絵柄に反して、内容がグロ一直線だったこともあり、アニメが全く受けず、関連グッズが不良在庫の山となって、倉庫の片隅で深い眠りについていた。
 そんな中、蜘蛛のような姿をした小型ダモクレスが現れ、ダンボールの中からはみ出していた変身ステッキの中に入り込んだ。
 それと同時に、変身ステッキが機械的なヒールによって作り変えられ、家電製品っぽい雰囲気のダモクレスに変化した。
「マホ、マホ、ステッキィィィィィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、ダモクレスが奇妙な鳴き声を響かせ、倉庫の壁を突き破ると、その場にいた一般人達に襲い掛かっていくのであった。

●セリカからの依頼
「瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)が危惧していた通り、都内某所にある玩具倉庫でダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティ・チェインを奪われてしまう事でしょう。そうなってしまう前に、何としてもダモクレスを撃破してください」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ダモクレスが現れたのは、都内某所にある玩具の倉庫。
 この倉庫には某魔法少女アニメの関連グッズが保管されており、その中にあった変身ステッキがダモクレスと化して暴れまわっているようだ。
「このダモクレスは魔法少女を捜しているらしく、それに相応しい相手を見つけようとしているようだ」
 セリカがケルベロス達に対して、ダモクレスに関する資料を配っていく。
 おそらく、ダモクレスはマスコット的な存在。
 故にパートナー的な少女を捜している可能性が高いという事だった。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
東雲・苺(ドワーフの自宅警備員・e03771)
ハル・エーヴィヒカイト(閃花の剣精・e11231)
ペル・ディティオ(破滅へ歩む・e29224)
瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)
リゼリア・ルナロード(新米刑事・e49367)
不動峰・くくる(零の極地・e58420)
柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)
シーラ・グレアム(ダイナマイトお茶目さん・e85756)

■リプレイ

●都内某所
「まさか地球さんをお手当てする系のグッズを予想して調査したら、宇宙の為に死んでくれるかい的な悪魔を引き当てしまうとは……。まあ、それなら心置きなく殺せるってもんですね、ポジティブに考えましょう! ……うん、そうしましょう!」
 瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)は自分自身に言い聞かせるようにしながら、仲間達と共にダモクレスが確認された玩具倉庫にやってきた。
 玩具倉庫の中からは、野太いオッサンが裏声を出しているような感じで、『マジカルゥ……マ・ジ・カ・ルゥ……』と不気味な機械音が響いていた。
「魔法少女のステッキのダモクレス、でござるかぁ? またけったいなものがダモクレス化したものでござるな」
 不動峰・くくる(零の極地・e58420)が、複雑な気持ちになった。
 おそらく、そこに意図的なモノはないが、何やら運命めいたモノを感じてしまうのが、本音であった。
「せっかくの魔法少女グッズにまでダモクレスが悪さしちゃうなんて……。これは許せないよねーダモクレスとは契約したくないし、しっかり壊しちゃおう」
 東雲・苺(ドワーフの自宅警備員・e03771)が、仲間達に声を掛けた。
 これでは、せっかくのグッズが台無し。
 だが、ここでうまい具合に注目を浴びれば、再評価される可能性もあった。
「うう……、なぁんか寒気がすんなぁ」
 そんな中、柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)が、ぶるっと身体を震わせた。
 この時点で嫌な予感しかしない。
 一言で言えば、不幸の女神に囲まれているような感覚。
 ある意味、ハーレムモードに突入しているものの、相手が不幸の女神達であるため、嫌な予感が行列を作って、順番待ちにしているような状態になっていた。
「……魔法少女か。幼い頃は私も憧れたりはしたけど、ダモクレス化した以上、更に子供の夢を崩す方向に向かってしまう気がするわ。念のため、倉庫の近くに人が近づかない様に、人払いをしておいた方がよさそうね」
 リゼリア・ルナロード(新米刑事・e49367)が、警戒した様子で辺りを見回した。
 いまのところ、人の気配はないものの、最悪の場合はダモクレスの標的になってしまうため、常に警戒を怠らないようにしているようだ。
「確かに、そうね。面倒な事になる前に、避難を終わらせておきましょう」
 それに合わせて、シーラ・グレアム(ダイナマイトお茶目さん・e85756)が拡声器で近隣住民に避難を呼び掛け、キープアウトテープを使用した。
「マ・マ・マホゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 次の瞬間、ダモクレスが玩具倉庫のシャッターを突き破り、ケモノの如く勢いで咆哮を響かせた。
 その姿は、まるで機械で来たハリネズミ。
 ハート型のステッキのせいで、ラブリーキュートな雰囲気が漂っているものの、ケルベロス達に向けられた殺気はホンモノだった。
「魔法少女を探しに行くつもりのようだが……、ここまでだ。代わりに、奇跡と魔法と苦悶の力を見せてやろう!」
 すぐさま、ペル・ディティオ(破滅へ歩む・e29224)が外套を翻し、ダモクレスの前に陣取った。
「君に罪があるわけではないが、ダモクレスであれば倒すしかない。状況を開始する」
 そう言ってハル・エーヴィヒカイト(閃花の剣精・e11231)が境界・曙(ホライズン・ブレードライズ)を発動させ、無数の刀を内包する領域を展開し、領域を舞う刀剣を自分や味方に纏わせ、攻撃能力を強化するのであった。

●ダモクレス
「マ・ホ・ウ・ショ・ウ・ジョ・オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
 ダモクレスがアスファルトの地面を削る勢いで、ケルベロス達に迫ってきた。
 そこに迷いはなく、すべてを破壊する勢いで、一気に距離を縮めているようだった。
「そのなりでマスコットは無理があろう? いたいけな少女が襲われる前に、拙者の『轟天』と『震天』を持って打ち砕かせてもらうでござる!」
 その行く手を阻むようにして、くくるが赤いマフラーを揺らしながら、ガジェットの巨大手甲『轟天』と『震天』を展開した。
「存分に技を振るうがいい。サポートは任せろ」
 すぐさま、ハルが仲間達に声を掛けながら、ダモクレスの射程外から離れていった。
 ダモクレスは血に飢えたケモノの如く、ケルベロス達に対して、容赦のない攻撃を繰り出してきた。
「なるべく酷い壊し方はしたくないけど……やるしかないよねっ!」
 苺がボクスドラゴンのマカロンと連携を取りつつ、ダモクレスに地裂撃を炸裂させた。
 去れと同時に、大地を断ち割るような強烈な一撃を繰り出され、ダモクレスのボディが破損し、パーツの一部だった魔法ステッキがクルクルと宙を舞った。
 そこに追い打ちをかけるようにして、ボクスドラゴンのマカロンが、ダモクレスにボクスブレスを吐きかけた。
「建前とはいえ今の時代はジェンダーフリー、それなのにどうして……どうして魔法男子じゃダメなんですか!!」
 その隙をつくようにして、清春がダモクレスに語り掛けながら、過剰摂取 ibogaine(カジョウセッシュ)を発動させた。
「そんな事を言ったら、大人の女も論外でしょ。だったら、上等よ。二度とそんな考えが出来ないように、大人の女の色香をたっぷり味わわせて、地獄に突き落としてあげるわ」
 それと同時に、シーラがスターゲイザーを仕掛け、流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りで、ダモクレスの機動力を奪った。
「凍てつけ、そして捕らえよ」
 続いて、ペルが暗黒縛鎖でエゴを具現化した無数の黒鎖を放出し、ダモクレスを捕縛しようとした。
「ヘ、ヘ、ヘ、ヘンシィィィィィィィィィィィィィィィン!」
 その事に危機感を覚えたダモクレスが、ケルベロスに対して、変身ビームを放ってきた。
 それは、とってもマジカルでファンシーなピンク色のビーム。
「うくっ!」
 次の瞬間、ペルの身体が魔法のヴェールに包まれ、魔法少女の恰好になった。
「なんだ、このおかしな攻撃は……? 我が魔法少女姿になっているではないか」
 その事に違和感を覚えたペルが、自分の恰好を確認し始めた。
 不覚を取ったとは言え、物凄く似合っている上に、キュートと言わざるを得なかった。
「……おっ! なかなか、イイじゃねぇか! 衣装も派手じゃないし、儀礼的な印象を残した意匠の数々が凄くイイ!」
 その巻き添えを喰らった清春も、魔法少女の衣装に身を包み、エイティーンを使用し、満足した様子でポーズを決めた。
 そのためか、何か大切なモノを失ってしまったような気がするものの、身も心も魔法少女化しているせいか、『悪いダモクレスさんに、御仕置きです』的な発想になっていた。
「まあ……多少は分かっているようね」
 シーラも同じように変身ビームを喰らって、魔法少女(闇堕ちスタイル)に変身し、まんざらでもない様子で、ダモクレスに視線を送った。
 一体、どういう仕組みになっているのか分からないが、ビームを浴びた相手によって変身する姿が大幅に異なっており、シーラに至っては、セクシーに全振りしているようなデザインであった。
「でも、魔法少女っぽくなったら、怖いものなしだよね? もうビームも効かないしっ! ……あっ、だからと言って変身してる時は攻撃しちゃいけないのはお約束だからね、わかるよねっ?」
 苺が警戒した様子で、ダモクレスに釘をさした。
「マ・ホ・ウ・ショ・ウ・ジョオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
 だが、ダモクレスは、おかまいなし。
 『御約束、何それ、美味しい』とばかりの勢いで、ケルベロス達に迫ってきた。
「……確かに。もう何も怖くない……」
 右院も魔法少女の恰好でスカートを揺らし、天鵞絨に繁る運命の糸(ビロードニシゲルウンメイノイト)を発動させ、リボンの如く伸びた魔法の糸でダモクレスを絡め取り、ガトリング連射で攻撃した。
「でも、変な契約をしたら、駄目だからねっ」
 その間に苺がダモクレスの死角に回り込み、マカロンと一緒に攻撃を仕掛けていった。
 それに合わせて、マカロンがボクスタックルを仕掛け、ダモクレスに体当たりを食らわせた。
「まずは、その足を止めるでござるよ! 我が『轟天』『震天』の力、とくと見るが良いでござる!」
 くくるが左腕『震天』・凍結手裏剣(サワンシンテン・アブソリュート・ゼロ・シュリケン)を発動させ、左腕『震天』の氷結粉砕機構を単独稼働すると、巨大な氷の手裏剣を形成し、ダモクレスめがけて投擲した。
「さぁ、貴方のトラウマを見せてくれるかしら?」
 続いて、リゼリアがトラウマボールを発動させ、黒色の魔力弾を撃ち出し、ダモクレスに悪夢を見せた。
「マ、マホ、マホ……ショウ……ジョオオオオオオオオオオオオ!」
 その途端、ダモクレスがギチギチと不気味な機械音を響かせ、何かから逃げるようにして、手当たり次第に変身ビームを放ってきた。
 そのビームは先程とは異なり、闇堕ちカラー。
 見るからにヤバそうな雰囲気が漂っているため、みんな警戒ムードに一変した。
「ちょ! ちょっと! ……もう怒った! 全力全開で、お仕置きしちゃうよ。半端な覚悟で魔法少女に関わろうとしたのを、後悔させちゃわないとね」
 苺が変身ビームを避け、プンスカと怒った様子で、ダモクレスに攻撃を仕掛けていった。
 共に行動していたマカロンも、ヤル気満々!
 苺と息を合わせて、ダモクレスに攻撃を仕掛け、頑丈な装甲を剥がしていった。
 その間もダモクレスがケモノのような鳴き声を響かせ、変身ビームを放っていた。
「体が軽い……こんな気持ち初めて……」
 次の瞬間、右院が舞い踊るようにして、ダモクレスの攻撃を避けていった。
 それに合わせて、ハルが自らの領域から具現化した刀剣を取り出し、美しく舞い踊るようにしながら、フローレスフラワーズを発動させ、仲間達を癒やす花びらのオーラを降らせていった。
「ぐふふ、寄宿舎で紡がれる魔法男子の物語……あ、ダメ、成仏しそう。腐陀になっちゃう」
 その間、清春は妄想全開で、魔法ステッキを振り回した。
 それとは対照的に、ビハインドのきゃり子が、様々な考えを巡らせているような感じで、微妙な雰囲気を漂わせた。
「この世界は君が生まれた世界ほど残酷ではない。奇跡を見せよう」
 一方、ハルは呪われた武器の呪詛を載せ、美しい軌跡を描いて、ダモクレスを斬りつけた。
「本当の魔法の力と言うものを、見せてあげるわ!」
 続いて、リゼリアが怒號雷撃を仕掛け、怒りを激しい雷に変えて、ダモクレスを攻撃した。
「もう絶望する必要は無いんだぞ」
 それと同時に、ペルがディスインテグレートを発動させ、触れたもの全てを消滅させる、不可視の『虚無球体』を放ち、ダモクレスを消滅させた。
「魔法少女よりも魔法悪女の方が上よ、おーほっほっほ!」
 その事を確認した後、シーラが勝ち誇った様子で、高笑いを響かせた。
「魔法男子よ、永遠なれ……って、オレなにしてたんだ?」
 その途端、清春がハッと我に返って、恥ずかしそうに頭を抱えた。
「魔法少女、でござるか……」
 くくるが複雑な気持ちになりながら、何処からかキセルを取り出し、一服して煙を吹かせた。
「……まったく。グロ一辺倒では意味がないだろう。シビアな世界を表現する手段にとどめておけば、残酷な世界に一筋の救いがあれば結果は違っただろうに……」
 そんな中、ハルがダモクレスだったモノを見つめ、呆れた様子で溜息を洩らした。
 おそらく、間違っていたのは、方向性。
 その道が正しい方向に向いていれば、このような結果にはならなかっただろう。
「ところで、他にもグッズが沢山あるね? 全部売れなかったものなら、わたしが買い取ってもいいかな。このまま倉庫で眠らせておくのもかわいそうだしねっ!」
 その間に、苺が倉庫の所有者と交渉をするため、マカロンと一緒に歩き出した。
「それじゃ、その交渉が終わったら、とびっきりのケーキをご馳走しましょう、いい紅茶も入ったんですよ」
 そう言って右院が魔法少女の恰好のまま、苺達の帰りを待つのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年3月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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