ボクのかんがえた最強の戦車!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
 ……『ボクのかんがえた最強の戦車』。
 そんな謳い文句で売り出された戦車の玩具があった。
 色々な戦車のイイトコ取りで造り出された、その戦車は、文字通り最強!
 ケタ外れの性能を誇っていたものの、あまりにも現実離れしていたため、まったく売れず在庫の山を築き上げていた。
 そんな中、蜘蛛のような姿をした小型ダモクレスが現れ、戦車の玩具の中に入り込んだ。
 それと同時に、戦車の玩具が機械的なヒールによって作り変えられ、家電製品っぽい雰囲気のダモクレスに変化した。
「セン、セン、センシャアアアア!」
 次の瞬間、ダモクレスが奇妙な鳴き声を響かせ、倉庫の壁を突き破ると、その場にいた一般人達に襲い掛かっていくのであった。

●セリカからの依頼
「機理原・真理(フォートレスガール・e08508)が危惧していた通り、都内某所にある玩具倉庫でダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティ・チェインを奪われてしまう事でしょう。そうなってしまう前に、何としてもダモクレスを撃破してください」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ダモクレスが現れたのは、都内某所にある玩具の倉庫。
 この倉庫には社運をかけて売り出した玩具が眠っており、それがダモクレスと化して暴れまわっているようだ。
「このダモクレスは近づくモノに砲撃を浴びせ、グラビティ・チェインを奪っているようです」
 セリカがケルベロス達に対して、ダモクレスに関する資料を配っていく。
 最強の戦車と言うだけあって、何でもアリ。
 強さだけを追求したような外観のようである。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)
マルレーネ・ユングフラオ(純真無表情・e26685)
地留・夏雪(季節外れの儚い粉雪・e32286)
柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)
ヘリヤ・ゲイルスコグル(グランドロンの鹵獲術士・e85735)
 

■リプレイ

●都内某所
「最強の戦車……。男子には心惹かれるフレーズですね……」
 地留・夏雪(季節外れの儚い粉雪・e32286)は仲間達と共に、ダモクレスが確認された都内某所にある玩具倉庫にやってきた。
 玩具倉庫からは異常な機械音が鳴り響いており、警察達によって既に一般市民の避難が終わっていた。
 そのせいで、余計に機械音が際立っており、背筋にゾッと寒気が走るほど、不気味な雰囲気が辺りを支配していた。
 だからと言って、ここで退く訳には行かない。
 このままダモクレスを放っておけば、グラビティチェインを求めて、人々を襲うことになるのだから、絶対にここで阻止する必要があった。
「確かに、心惹かれるフレーズかも。たとえ兵器としてのバランスを壊してでも盛り盛りに武器を乗せてしまう。それはロマン、最強という名の業……。こんな事になっていなかったら、素直に喜ぶ事が出来たんだけどね」
 マルレーネ・ユングフラオ(純真無表情・e26685)が、複雑な気持ちになった。
 しかし、ダモクレスと化した以上、やるべき事は……ただひとつ。
 そこに迷いはなく、ケルベロスとしての、役目を果たすのみ。
 そういった意味で、少し寂しい気もするが、人に危害を及ぼす以上、破壊する以外の選択肢は存在していなかった。
「セ、セ、セ、セセンシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
 そんな中、ダモクレスが産声にも似た機械音を響かせ、玩具倉庫のシャッターを砲撃で破壊した。
 それと同時に玩具倉庫のシャッターが勢いよく吹っ飛び、大量の黒煙が辺り一面を支配した。
 その影響でケルベロス達が、黒煙から逃れるようにして、玩具倉庫から離れていった。
「最強の戦車と言うだけあって、破壊力も半端ないようだな。実に夢があってよろしい。だが、あくまで夢は夢、現実になればただの困りモノ……。初仕事だが、仲間の足を引っ張らぬよう頑張らねば……」
 ヘリヤ・ゲイルスコグル(グランドロンの鹵獲術士・e85735)が、自分自身に言い聞かせながら、警戒した様子で間合いを取った。
「セ、セ、セ、セン・シャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
 その間に、ダモクレスが黒煙の中から姿を現し、ケルベロス達を威嚇するようにして、ケモノの如く機械音を響かせた。
 それはまるで自分が最強である事を、まわりに示しているような感じであった。
「見た目的には、ちょっと格好良いかもですね。男の子に人気出そうですが……あんまり凄すぎても、やっぱり売れないのですかね?」
 その気迫に圧倒されつつ、機理原・真理(フォートレスガール・e08508)がダモクレスを見上げた。
 ダモクレスは圧倒的な存在感を放っており、一般人であれば即座に腰を抜かしてしまう程のレベルであった。
 それ故に、『最強』という言葉が相応しく、戦車と言うよりも、怪物と言った感じであった。
「主砲に副砲、多目的ミサイルに、反動装甲……。これは凄い……」
 その横でマルレーネが興味津々な様子で、ダモクレスを眺めていた。
 ダモクレスは現実離れした見た目をしているものの、沢山の夢が詰まっているだけあって、隙のないデザインであった。
 そのためか、無駄に可動部分が多く、色々な箇所が有り得ない動き方をしつつ、獲物を捜しているような感じであった。
「セ、セ、セ、セ、セン・シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
 次の瞬間、ダモクレスが殺気立った様子で、ケルベロス達の砲口を向けた。
 しかも、すべての照準がケルベロス達に向けられているようだった。
「まぁ、普通なら敵うわけねぇが……。こちとらケルベロスっつーバケモンだぜ。二度と動けねえようにしてやるよ、オンボロ。クククク……」
 その事に気づいた柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)が、ヤル気満々な様子でバットを肩に担ぎ、ダモクレスの前に陣取った。
 普通に考えれば、それは死亡フラグであったが、運命の女神にハーレム状態で愛されているのか、清春に迷いはなかった。
 おそらく、これがネタ依頼であれば、このまま集中砲火を浴びて、ズタボロになっていたかも知れない。
 しかし、清春は身も心もシリアスモード。
 それ故に、微塵も迷いがない様子であった。
「セ、セ、セ、セン・シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
 その事に腹を立てたのか、ダモクレスがキャタピラ音を響かせ、目にも止まらぬ速さで間合いを取ると、一斉に砲撃を仕掛けて、砲弾の雨を降らせるのであった。

●ダモクレス
「この場合、さすが最強の戦車……と褒めておくべきか」
 それに気づいたヘリヤが砲弾の雨を避けるようにして、後方に下がりつつ、近くの物陰に身を隠した。
 だが、砲弾の破壊力はすさまじく、地面がえぐれて、アスファルトの地面が砕けて舞い上がり、壁にめり込むほどの勢いで、大量の破片が無数の弾丸の如くケルベロス達に向かって飛んできた。
「これは、さすがに……」
 すぐさま、夏雪が晩夏の雪融け(バンカノユキドケ)を発動させ、晩夏の暑さを鎮めながら地に融けゆく雪の様に、粉雪状のグラビティに触れた仲間達の傷を癒した。
「セ、セ、セ、セン・シャアアアアアアアアアアアアアアアア!」
 その間に、ダモクレスが不気味な機械音を響かせ、今度は迎撃ミサイルでケルベロス達を攻撃した。
「君が最強なのは、わかった。じゃあ、どっちが強いか勝負しよう」
 それと同時に、マルレーネが真理にアイコンタクトを送って、二手に分かれながら、迎撃ミサイルを避けつつ、ダモクレスを観察し始めた。
 どうやら、ダモクレスはケルベロス達と戦いながら、欠点をカバーするようにして、独自の進化を遂げているらしく、いつの間にかキャタピラから蜘蛛状の脚が伸びていた。
「セ、セ、センシャアアアアアアアアアアアアアアア!」
 次の瞬間、ダモクレスがアスファルトの地面を蹴って、飛び跳ねるようにしながら、ケルベロス達に襲い掛かってきた。
 それは、戦車にあるまじき機動力。
 既に、戦車の概念から、逸脱した何か。
 そもそも、これを戦車と呼んでいいのか、疑問に思う程、不気味で独自の進化を遂げていた。
「売れなかった玩具かも知れないですが、こんな事になるのは望んでないと思うのですよ」
 真理がマルレーネと息を合わせ、ダモクレスの攻撃を避けつつ、反撃を仕掛ける機会を窺った。
 しかし、ダモクレスはバッタの如く飛び跳ね、一気に距離を縮めると、殺気立った様子で戦車アームを次々と伸ばし、ケルベロス達に襲い掛かった。
「クククククッ……、売れねえポンコツおもちゃが調子のってんじゃねぇよ」
 その隙をつくようにして、清春が過剰摂取 ibogaine(カジョウセッシュ)を発動させ、勢いよくバットを振り上げ、砲塔をへし折った。
「セ、セ、セ、センシャアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
 その途端、ダモクレスが悲鳴にも似た機械音を響かせ、半ばパニックに陥りながら、まるでダンスを踊るようにして、不気味に脚を動かした。
「オラオラ、どうした! 掛かって来いよ!」
 その間に、清春が脚の可動部分に、バットを突っ込んだ。
「セ、センシャアアアアアアアアアアアアア!」
 そのため、ダモクレスが耳障りな音を響かせながら、その場に崩れ落ちつつ、戦車アームを使って、自らの脚を修理し始めた。
「随分と進化しているようですが、それもここまでです……!」
 それを邪魔するようにして、真理が、ライドキャリバーの『プライド・ワン』に指示を出し、マルレーネと一緒に攻撃を仕掛けていった。
 続いて、プライド・ワンがデットヒートドライブを仕掛け、清春のビハインド『きゃり子』がビハインドアタックで、ダモクレスを攻撃した。
「セ、セ、センシャアアアアアアアアアアアアアアアア!」
 そのため、ダモクレスは自らの脚を修理する事が出来ず、イラついた様子で戦車アームを蠢かせた。
「……どうやら無駄な足掻きだったようだな」
 マルレーネが皮肉混じりに呟きながら、戦車アームを避けつつ、焼霧嵐舞陣(アシッドストーム・ピンク)を発動させ、強酸性の桃色の霧でダモクレスを包んだ。
 その影響でダモクレスのボディが溶けていき、無防備な可動部分が剥き出しになった。
「セ、セ、セ、センシャアアアアアアアアアアアア!」
 それでも、ダモクレスは怯む事なく、無理やり体を動かし、戦車アームでケルベロスに攻撃を仕掛けてきた。
「……残念だが、今回は相手が悪かったようだな」
 それを迎え撃つようにして、ヘリヤがダモクレスの懐に飛び込み、戦車上面を狙ったスカルブレイカーでプレッシャーを与えつつ、脆くなった装甲にボルトストライクを叩き込んだ。
「そのアームも邪魔です……!」
 次の瞬間、夏雪が呪怨斬月を仕掛け、呪われた武器の呪詛を載せ、美しい軌跡を描くようにして斬撃を繰り出した。
「……さようなら、最強戦車。玩具のうちに会いたかったよ」
 それに合わせて、マルレーネが真理と連携を取りつつ、ダモクレスにトラウマボールを炸裂させた。
 その途端、ダモクレスが倉庫に山積みにされたまま朽ち果てていく幻覚に襲われ、悲鳴にも機械音を激しく響かせながら、崩れ落ちて動かなくなった。
「折角、玩具の倉庫に来たので、少し見学して帰りましょうか」
 そんな中、夏雪がダモクレスだったモノに別れを告げ、興味津々な様子で倉庫に視線を移した。
 倉庫の中には他の玩具も山積みされており、友達が好きそうなカッコいい玩具もあった。
「そういや、ガキん頃はよく作ってたな。お、これは……」
 清春もレア物の玩具を見つけ、瞳をランランと輝かせた。
 それは既に絶版になっていたモノだが、清春にとっては思い出深い玩具であった。
「マリー、こんなのもあるですよ」
 真理も面白そうな玩具を見つけ、マルレーネと一緒に、時間を忘れて眺めるのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年2月28日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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